日本呼吸器外科学会雑誌
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31 巻 , 1 号
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巻頭言
原著
  • 坂井 貴志, 青景 圭樹, 三好 智裕, 松原 伸晃, 石井 源一郎, 関原 圭吾, 菱田 智之, 吉田 純司, 坪井 正博
    2017 年 31 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    背景:縦隔原発非セミノーマ胚細胞腫瘍(non-seminomatous germ cell tumor:NSGCT)の治療は化学療法が第一選択であり,手術は通常,腫瘍マーカーが正常化した症例における残存病変に対して行われる.一方,正常化が得られない場合にも手術が施行されることがあるが,その治療成績,予後は明らかにされていない.対象:2008年8月から2013年2月までに当院で施行されたNSGCTに対する手術症例7例.結果:AFPは初診時全例で高値,化学療法後正常化せず手術に臨んだ症例は3例であった.そのうちviable cellの遺残を認めた1例で術後再発があり原病死しているが,他2例においては無再発生存が得られている.結語:縦隔原発NSGCTでは,化学療法後にAFPが正常化しなくても大幅な減少が得られれば,残存病変切除により長期生存を期待できる症例がある.

  • 山田 典子, 宮元 秀昭, 小田 誠
    2017 年 31 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    2012年8月から2016年3月に当院で手術した急性膿胸16例のうち,80歳以上の4症例について術前術後の状態や,予後等を検討した.男性3例,女性1例,年齢は80~96歳で,2例が救急搬送された.術前期間は平均3.5日,手術時間は平均57分で,全例胸腔鏡手術を行った.術後のドレナージは平均11日であった.3例で手術当日または翌日に食事,歩行可能であり,2例が独歩退院,1例はASOに対する血管内治療後に肺炎を併発し死亡,1例は術後2ヵ月目に老衰で亡くなった.高齢者膿胸症例では,早期手術に加え術後管理も重要であると考える.胸腔鏡手術は高齢者においても低侵襲かつ安全に施行することが可能であった.

  • 戸矢崎 利也, 富岡 泰章, 千葉 直久, 上田 雄一郎, 坂口 泰人, 後藤 正司, 石川 真也, 中川 達雄
    2017 年 31 巻 1 号 p. 13-19
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    【背景】当院では小型肺腫瘤に対し,自動縫合器を用いない胸腔鏡下肺部分切除術を行っている.【対象と方法】病巣を電気メスで切離後,切離面をソフト凝固で閉鎖する方法(凝固閉鎖法;C法)と肺縫縮を追加する方法(凝固縫合閉鎖法;CS法)の成績を比較した.【結果】C法は18例19病巣,CS法は19例20病巣に行われた.病理診断は原発性肺癌が最多で,21例22病変を占めていた.腫瘤径や胸膜表面からの距離は,両群で大きな差を認めなかった.手術時間はCS法で長かった.術後肺廔はC法で4例に認め,1例で再手術を要した.CS法では1例認めたが,自然閉鎖した.術後CTでC法の3例とCS法の5例に空洞形成を認めた.全例で局所再発は認めていない.【結論】C法は簡便だが肺廔が遷延する可能性がある.CS法は確実な肺廔防止が可能だが,手術時間短縮のため縫合技術の習熟が重要である.

症例
  • 松本 真介, 梅田 幸生, 森 義雄, 滝谷 博志
    2017 年 31 巻 1 号 p. 20-26
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    鈍的胸部外傷後,遅発性に急性心タンポナーデを発症し,術後に心膜切開後症候群による心膜炎を合併した1例を経験したので報告する.症例は34歳の男性.80 cmの高さからの転倒による多発肋骨骨折,軽度の血気胸と診断しドレナージされた.受傷から4日目に血気胸の悪化がないことを確認してドレーンを抜去したところ,同日夜に心タンポナーデと血胸を発症した.緊急で開胸手術を行い,骨折した肋骨による心囊・心外膜の損傷と診断して修復した.術後23日目に心膜切開後症候群を合併したため,再度開胸して心囊を開窓した.術後に消炎鎮痛剤の投与により炎症は軽快した.非常にまれではあるが本症例のような経過を辿ることがあるため,胸部外傷後の経過観察は慎重に行うべきである.また心膜切開後の合併症を念頭に置いて診療する必要がある.

  • 木村 賢司, 奥村 典仁, 中島 尊, 高橋 鮎子, 松岡 智章, 亀山 耕太郎
    2017 年 31 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,男性.咳嗽・喀痰・労作時呼吸困難が出現し近医を受診.肺炎の診断で抗生剤加療開始も症状の改善なく,1週間後の胸部Xpで左下肺野の透過性低下進行のため,当院呼吸器内科を紹介受診となった.気管支鏡で左主気管支を閉塞する腫瘍を認め,生検で扁平上皮癌と診断した.肺癌(cT3N0M0 stage IIB)の評価で左上下葉は完全無気肺であり,左肺全摘術を施行した.術後経過は良好であり,術後2日目に胸腔ドレーンを抜去し,術後7日目に退院となった.術後病理診断では炎症性筋線維芽細胞腫瘍の診断であった.術後1年経過した現在無再発生存中である.気管支内に鋳型状に進展した気管支原発炎症性筋線維芽細胞腫瘍は非常に稀であり文献的考察を加えて報告する.

  • 岩田 輝男, 門司 祥子, 田中 文啓
    2017 年 31 巻 1 号 p. 32-35
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は51歳女性.健診の胸部CTで右S10に7 mm大のすりガラス影を認め,肺癌の疑いで胸腔鏡下右肺下葉部分切除術を施行.腫瘍は境界不明瞭な黒褐色の硬い8×7 mm大,拡張した毛細血管が密に増生していたが悪性所見は認めず,CD31陽性,CD34陽性で孤立性肺毛細血管腫と診断された.非常に稀な疾患であり,組織像が類似する肺毛細血管腫症や,早期肺癌との鑑別を含め若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 安川 元章, 川口 剛史, 河合 紀和, 東条 尚
    2017 年 31 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    今回,自覚症状にて発見され,自然縮小した胸腺腫の2例を経験したので報告する.症例1は71歳女性.胸痛,発熱を主訴に前医を受診し,胸部CT検査で前縦隔に径8×10 cm大の腫瘍と,心囊液および両側胸水の貯留を認めたため,当科紹介となった.自覚症状出現後,1ヵ月で手術となったが,術直前のCT検査では,腫瘍は径6.5×7.5 cmと縮小し,心囊液および両側胸水は消失していた.症例2は59歳女性.前医で肺炎にて加療後,咳嗽が遷延していた.胸部CT検査で前縦隔に径6×2 cmの腫瘍が認められたため当科紹介となった.肺炎発症後6ヵ月後に手術となったが,術直前のCT検査で腫瘍は径5×1 cmと縮小を認めた.いずれの症例も摘出術を施行し,病理組織検査で胸腺腫の診断であった.腫瘍内部に壊死像を認め,胸腺腫の自然縮小と壊死には関連があると考えられた.

  • 岩渕 裕, 長束 美貴
    2017 年 31 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    肺原発リンパ上皮腫様癌(lymphoepithelioma-like carcinoma LELC)症例を経験したので報告する.症例は71歳 男性.S状結腸癌術後経過観察中に右肺下葉に1 cm大の腫瘍が発見された.結腸癌肺転移ないし原発性肺癌を疑い,右肺下葉切除+リンパ節郭清術を行った.術後病理で上記診断を得た.LELCは本邦では稀な腫瘍である.発症にはEpstein Barr(EB)ウィルス感染の関与が示唆されているが,本例ではEBV-encoded RNA-1(EBER-1)in situ hybridizationは陰性,しかし抗VCA IgG抗体および抗EBNA IgG抗体は陽性で,過去にEBウィルス感染の既往を示す結果であった.

  • 山本 恭通, 戸矢崎 利也, 小阪 真二
    2017 年 31 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は63歳女性.左上下肢ミオクローヌスと歩行障害で緊急入院となった.頭部MRI上大脳皮質と皮質下に10日間で拡大するびまん性のT2高信号域を認めた.胸部CTで胸腺腫を疑う腫瘤影を認め,抗アセチルコリン受容体抗体が高値を示した.ステロイドパルス療法後に漸減療法を行ったが,失語,筋力低下,痴呆症状など神経症状と脳機能低下は急速に進行した.寝たきりとなり下肢静脈血栓症を併発した.傍腫瘍性神経症候群と診断し入院31日後に拡大胸腺摘出術を行った.胸腺腫Type ABでWHO分類pT1N0M0 I期,正岡分類I期であった.術後神経症状や脳機能低下は劇的に改善し術後32日に独歩退院した.

    比較的急速に進行する傍腫瘍性神経症候群は胸腺腫などの腫瘍と神経組織に共通する抗原に対する自己免疫が原因といわれ,悪化する神経精神症状に躊躇することなく胸腺腫に対する早期の外科治療が必要である.

  • 松岡 弘泰, 松原 寛知, 椙村 彩, 内田 嚴, 市原 智史, 中島 博之
    2017 年 31 巻 1 号 p. 52-57
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は30代女性.咳嗽,発熱を主訴に近医を受診し,CTで右上葉の囊胞感染を指摘された.

    抗菌薬にて加療されたが,改善と増悪を繰り返したため,当科へ紹介となった.胸部CTにて,右上葉に周囲の浸潤影と内腔の液体貯留を伴う多房性囊胞を認めた.抗菌薬投与を行ったが,感染を制御できなかったために右上葉切除を施行した.右上葉は胸壁・縦隔と強固に癒着し,剥離に難渋した.そのため,後方より肺動静脈・気管支を順次処理し,最後に癒着剥離を行って肺を摘出した.病理組織診断にて器質化肺炎を伴う先天性肺気道奇形1型と診断した.成人の先天性肺気道奇形の多くは感染を契機に発見される.感染を繰り返すことで癒着が強くなり手術困難になることや,囊胞内感染により病勢が制御できなくなる可能性があることから,先天性肺気道奇形を疑った場合には早期の手術が望ましい.

  • 河合 瑛香, 上原 浩文, 松谷 哲行, 斉藤 光次, 石田 毅, 川村 雅文
    2017 年 31 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳女性.十二指腸球部腺腫の術前胸部CTにて,前縦隔に多発,融合傾向をもつ腫瘤影を認めた.MRIで小結節はT1低信号,T2低信号を示し,FDG-PETで集積を認めた.縦隔腫瘍の診断で,胸腺腫もしくはリンパ腫を疑い,拡大胸腺摘出術を施行した.術中所見では胸腺左葉に20 mm大の腫瘤とその他胸腺内に多数の結節を認めた.術後の病理診断では,コレステリン結晶,炎症細胞,異物巨細胞を認め,コレステリン肉芽腫と診断された.コレステリン肉芽腫は中耳以外の報告例は少なく,胸腺に発生した報告例は本邦で検索した限りみられなかった.

  • 渡 正伸, 熊田 高志, 井上 聡
    2017 年 31 巻 1 号 p. 63-68
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は胸痛を主訴に受診した42才の男性.胸部CTで右肺S6胸膜下に結節を認め隣接する胸椎に骨破壊像があり,骨浸潤を伴う進行肺癌を疑い胸腔鏡下針生検術を施行した.悪性像は認められず確定診断が得られなかった.その後,十分な検体による生検診断が必要であると判断し,後側方切開下に肺結節と癒着する傍脊柱組織を一塊として切除した.病理組織学的診断では膿瘍形成を認めるが悪性像は無く,膿瘍から黄色ブドウ球菌が検出され,化膿性脊椎炎と診断された.脊椎浸潤する肺癌を疑う場合は,化膿性脊椎炎は鑑別診断として常に念頭に置くべき重要な疾患と考えられた.

  • 田中 伸岳, 飯森 俊介, 利根 安見子, 清水 秀浩, 宮原 亮
    2017 年 31 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    非セミノーマ胚細胞性腫瘍の進行例において,化学療法によって腫瘍マーカーの値は正常化したにも関わらず,病変が増大傾向を示したもののうち,切除標本の病理組織学的検索で成熟奇形腫のみより構成されていると診断されたものをGrowing teratoma syndrome(GTS)と呼んでいる.今回我々は,完全切除し,GTSと診断した症例において,術後1年4ヵ月に胸壁に再発をきたした症例を経験した.手術により腫瘍を切除したところ病理組織学的に紡錘細胞を伴った肉腫を認め,前回切除標本で認めた筋線維芽細胞腫症の悪性転化と考えられた.GTSは組織学的には良性疾患であり,手術での完全切除により良好な予後を得ることができるが,悪性転化による再発を起こす可能性もあり注意を要する.縦隔原発のGTSは極めて稀であり,文献的考察を含め報告する.

  • 藤永 卓司, 池田 政樹, 村田 祥武
    2017 年 31 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    左主気管支入口部に発生した粘表皮癌に対して大動脈脱転を行い,気管支切除および吻合を行った症例を経験したので報告する.症例は22歳男性,血痰があり当院紹介となった.胸部造影CT検査にて左主気管支入口部を閉塞する血流豊富な腫瘤を認め,壁外浸潤の可能性が示唆された.気管支鏡検査では膜様部に基部のある腫瘍は易出血性であった.手術では大動脈の前方への牽引を行い,左主気管支と気管分岐部を十分に露出した.良好な視野で腫瘍を含めて左主気管支を楔状に切除し,吻合を行った.

  • 安川 元章, 川口 剛史, 河合 紀和, 東条 尚
    2017 年 31 巻 1 号 p. 81-86
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は54歳女性.他院で左乳腺葉状腫瘍に対して手術施行後,経過観察され,再発を指摘されていなかった.乳腺腫瘍術後6年目に咳嗽,胸部圧迫感を認めた.胸部CT上,左肺上葉中枢側を主座に内部不均一な長径16 cmの腫瘤影を認めた.CTガイド下生検を施行し,紡錘形細胞腫瘍を認めた.他臓器に転移病巣を認めず手術の方針となった.審査胸腔鏡検査で播種病変を認めず切除可能と判断した.左主肺動脈への腫瘍浸潤があり,胸骨正中切開でアプローチし左肺全摘除を施行した.最終病理診断で,肺腫瘍は乳腺葉状腫瘍の肺転移であった.乳腺葉状腫瘍は比較的まれな腫瘍であり,予後は比較的良好とされているが,再発症例や悪性転化症例の報告もある.今回我々は乳腺葉状腫瘍術後6年の経過で,左肺に孤立性に肺転移した症例に対して完全切除し得たので,若干の文献的考察を加え報告する.

  • 和田 崇志, 伊藤 祥隆, 宮澤 秀樹, 新納 英樹
    2017 年 31 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は50歳,女性.咳嗽を主訴に受診し,後縦隔腫瘍を発見された.画像上脂肪成分と軟部組織成分の両方を認め脱分化型脂肪肉腫と診断した.手術所見では脱分化型の領域が接する臓器は腫瘍との固着が強固であった一方,分化型の領域が接する臓器との剥離が容易であった.術前の画像所見を十分に検討することが,最適な手術術式を選択する上で重要となると考えた.

  • 大槻 雄士, 桑原 博昭
    2017 年 31 巻 1 号 p. 92-97
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    呼吸器外科領域の手術において自動縫合器は,肺・気管支・血管などの安全な切離・閉鎖を目的に多用される.今回,我々は自動吻合器を用いて切離した気管支断端のステープルが肺動脈に穿通し,術後出血を認めた症例を経験した.気管支を自動縫合器にて切離する際は,断端と血管などの周囲組織との位置関係を注意深く観察し,気管支断端と肺動静脈が直角に接する場合はシート材や生体弁を用いて断端の被覆を考慮するべきであると考えた.

  • 田内 俊輔, 田中 宏樹, 藤井 真央, 戸部 智
    2017 年 31 巻 1 号 p. 98-102
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は32歳女性.乳糜胸を伴うリンパ脈管筋腫症に対して前医通院中であったが,その経過中膿胸を発症した.胸腔ドレナージと抗生剤で加療するも改善せず,当院転院となり手術を施行した.術後膿胸は改善したが,胸腔ドレーンを抜去後,喀痰の出現や,酸素化の低下など肺炎症状が出現した.胸部レントゲンやCTでも両側肺に網状粒状影,浸潤影を認めた.しかし,胸水や喀痰からは有意な起炎菌は認めなかった.喀痰Sudan染色を提出したところ,脂肪貪食マクロファージを認め,外因性のリポイド肺炎と診断された.手術によって生じた微少な肺瘻から乳糜胸水を逆行性に吸い込むことで発症したと思われた.治療は抗生剤等は使用せず,経過観察のみで症状は徐々に改善した.リポイド肺炎は稀な疾患だが,乳糜胸水を合併した胸部手術では,術後合併症として念頭に置く必要がある.

  • 山田 昌弘, 安孫子 正美, 布山 繁美, 加藤 博久, 遠藤 誠
    2017 年 31 巻 1 号 p. 103-108
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,男性.肝細胞癌の術前検査で前縦隔腫瘍が発見され,先に肝細胞癌を手術.術後に前縦隔腫瘍は31 mmから14 mmに自然退縮したが,新たに7 mmの結節も確認されたため,本人の同意を得て胸骨正中切開下に胸腺摘出術を施行した.病理組織検査の結果,主病巣は広範な壊死を認める胸腺非定型カルチノイドと診断.胸腺内の7 mmの病変は,胸腺内の他の部位にも播種様の転移巣が確認されたため,胸腺内転移と判断した.術後50 Gy照射し,14ヵ月を経て再発を認めていない.

    主病巣の自然退縮と同時に胸腺内転移が認められた胸腺非定型カルチノイドの症例報告は過去になく,それぞれ文献的考察を加え報告する.

  • 河北 直也, 先山 正二, 鳥羽 博明, 滝沢 宏光, 広瀬 敏幸
    2017 年 31 巻 1 号 p. 109-114
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    ブレオマイシンによる間質性肺炎は総投与量依存性に頻度が増加する.高容量投与が必要となる縦隔胚細胞性腫瘍において,治療中に間質性肺炎を生じた場合は,その後の手術にも影響がおよぶ可能性がある.今回BEP(bleomycin+etoposide+cisplatin)療法中に生じた間質性肺炎を治療し,早期に手術を施行した2例を報告する.症例1は19歳の男性,症例2は24歳男性で,ともに前縦隔に約10 cmの腫瘍を認め,針生検で卵黄囊腫瘍と診断された.BEP療法を開始し,それぞれ,ブレオマイシン総投与量360,330 mgで間質性肺炎を発症した.化学療法開始103日目,109日目から3日間のステロイドパルスを行い,その後内服で維持療法を行った.画像上,間質性肺炎の改善を認めたため,手術はパルス療法開始後17日目と26日目に残存腫瘍切除と肺部分切除を行った.ともに術後呼吸不全の発症なく経過良好であった.

  • 柴田 英克, 眞田 宗, 池田 公英, 白石 健治, 森 毅, 鈴木 実
    2017 年 31 巻 1 号 p. 115-121
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は69歳男性.筋力低下,体重減少を主訴に当院を受診した.胸部造影CTにて,左肺動脈内腔に突出するポリープ状の結節を認めた.神経学的検索からは,Lambert-Eaton症候群を疑う所見を得た.組織学的検索は行えなかったが,ポリープ状の結節は腫瘍随伴性症候群を合併する悪性腫瘍と判断し左下葉切除,リンパ節郭清を施行した.術後病理結果は小細胞肺癌,pT1aN1M0 stage IIAであった.癌の進展は,間質に浸潤しながら増殖し,血管やリンパ管に浸潤し,血流やリンパ流により遠隔転移やリンパ節転移を来す.血管内に進展する場合,腫瘍と一塊となって進展し,血管を閉塞することはある.しかし,腫瘍本体と細い茎のみで連続したポリープ状の進展形式を示す報告は検索する範囲においてなかった.左肺下葉に発生した小細胞肺癌が,肺動脈A6に浸潤し,肺動脈の内腔にポリープ状に突出した症例を経験したので報告する.

  • 杉村 裕志, 山崎 郁郎, 伊藤 有祐, 叢 岳, 野守 裕明, 武士 昭彦
    2017 年 31 巻 1 号 p. 122-126
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    非術後性乳び胸は病態が複雑で治療に難渋することが多い.腹水を伴う肝硬変に併発した難治性乳び胸を逆行性経静脈的アプローチによる胸管塞栓術で治療した.症例は60歳代の男性.絶食期間と2回の胸膜癒着療法を経ても乳び胸水の流出が続いた.鼡径部穿刺による経リンパ節リンパ管造影法により右胸腔内へのリンパ漏の部位診断を行った後に逆行性静脈アプローチによる胸管塞栓術を行い乳び瘻の速やかな停止を得た.近年のIVR(interventional radiology)手技による乳び瘻治療法は低侵襲であり非術後性乳び胸はもとより術後性乳び胸においても有用な治療選択肢たり得ると思われた.

その他:診断の工夫
  • 荒木 邦夫, 万木 洋平, 若原 誠, 三和 健, 谷口 雄司, 中村 廣繁
    2017 年 31 巻 1 号 p. 127-131
    発行日: 2017/01/15
    公開日: 2017/01/15
    ジャーナル フリー

    微小浸潤肺腺癌を疑う術前未確診の小型肺癌においては,術中の迅速病理診断の目的で標本に割を加えてしまうと,永久標本ではその挫滅により浸潤範囲や胸膜浸潤の評価に苦慮することがある.そこで標本の挫滅を防ぎ正確な組織学的形態と浸潤度を評価するための工夫を紹介する.手術時には切除後に体外へ摘出した肺からの針生検による迅速病理で病変が含まれていることの確認に留め,術後に切除肺のホルマリン固定標本で最大割面を作成して厳密な組織学的評価を行う.本法は胸腔鏡下手術時には正確な診断が困難なスリガラス陰影を伴う肺癌に対して,微小浸潤の有無,胸膜浸潤の有無を正確に診断することができ,新WHO分類にも対応できる点で有用である.

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