日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
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31 巻, 7 号
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巻頭言
原著
  • 野島 雄史, 清水 克彦, 前田 愛, 最相 晋輔, 沖田 理貴, 中田 昌男
    2017 年 31 巻 7 号 p. 836-841
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    2007年1月から2014年12月までに当院で切除を行った非小細胞肺癌症例426例のうち,術前にFDG-PET/CT検査で原発巣・肺門縦隔リンパ節以外にFDG集積を認めた57症例を検討した.

    12例(2.8%)が同時性重複癌と診断され,重複癌の発生部位は甲状腺癌4例(I期:2例,III期:1例,IV期:1例).食道癌1例(III期),胃癌1例(I期),肝細胞癌1例(III期),腎細胞癌1例(I期),大腸癌1例(II期),前立腺癌1例(III期),乳癌2例(I期:1例,II期:1例)であった.術前のFDG-PET/CTは手術適応のための病期診断に有用なだけでなく,同時性重複癌を発見しうる頻度が約3%あることを念頭に,転移好発部位以外に異常集積を認める場合は精査を行う必要があると思われる.

  • 正村 裕紀, 数井 啓蔵, 敦賀 陽介, 坂本 聡大, 矢部 沙織
    2017 年 31 巻 7 号 p. 842-846
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    近年高齢化に伴い血液透析(以下HD)患者の肺癌を手術する機会が増加している.2010年1月から2015年12月までに当院で原発性肺癌に対して手術を施行したHD患者症例7例(男性4例,女性3例)を対象にその成績を検討した.平均年齢は70.3歳,透析歴は平均9.6年であった.術式は肺葉切除5例,区域切除,部分切除が各1例であった.病理病期はIA:4例,IB:2例,IIA:1例であった.手術時間は平均149分,出血量は平均281 mLであり,1例で輸血を行った.すべての症例で胸腔鏡下に行ったが2例で開胸移行した.術後在院日数は平均13.8日であった.術後合併症はシャント閉塞1例,肺膿瘍1例であった.予後は2例で再発をきたした.また1例が脳梗塞で他病死した.HD患者に対する肺癌外科治療は心血管などの合併症を高率に有するため手術操作および周術期管理には十分な注意が必要であると考えられた.

症例
  • 栃井 祥子, 須田 隆, 河合 宏, 金田 真吏, 栃井 大輔, 星川 康
    2017 年 31 巻 7 号 p. 847-852
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は59歳の男性.健診で胸部異常陰影を指摘され,原発性肺癌の疑いで当院紹介となった.胸部X線写真上,右胸心と左中肺野に径3.0×2.5 cmの腫瘤影を認めた.胸腹部CTでは,両肺とも2分葉で,気管支と肺動脈の形態は左右反転していた.また,右側大動脈弓,右胸心,上大静脈遺残,多脾症,対称肝,上腸間膜回転異常および膵尾部低形成を認めた.内臓錯位症例に発症した左中葉肺癌c-T2aN0M0 stageIBと診断した.3D-CTを含む画像により解剖学的位置関係を十分に評価した上で,胸腔鏡下左肺中葉切除術+リンパ節郭清を施行した.しかし,術中に左反回神経を同定できず,一部の縦隔リンパ節はサンプリングに留めた.

    内臓錯位症候群は,血管・気管支走行異常や合併奇形を認めることが多いため,総合的に術式決定することが重要であり,3D-CTを含む十分な術前精査を行っておくことが肝要である.

  • 川島 峻, 深見 武史, 井上 雄太, 中尾 啓太
    2017 年 31 巻 7 号 p. 853-858
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    慢性閉塞性肺疾患既往の68歳男性.CTにて右S1に75 mm,右S3に25 mm,右S2に17 mmの腫瘤及び結節を認め,S1病変は気管支鏡検査で扁平上皮癌と診断.病変は右上葉内に限局していた為,胸腔鏡下右肺上葉切除+ND2a-1を施行.病理はS1が腺扁平上皮癌,S3が大細胞神経内分泌癌,S2が大細胞神経内分泌癌の肺内転移であった.#11sリンパ節に腺扁平上皮癌の転移を認め,病期は腺扁平上皮癌がpT3c(pl3)N1M0-IIIA,大細胞神経内分泌癌がpT3(pm1)N0M0-IIBとなった.S1病変は胸壁切離断端陽性であった為58 Gyの術後照射を追加した.稀な組織型の二重肺癌切除例を経験したので報告する.

  • 古屋敷 剛, 須田 一晴, 近藤 晴彦, 呉屋 朝幸
    2017 年 31 巻 7 号 p. 859-863
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は53歳女性.検診でレントゲン異常を指摘され当施設へ紹介となった.胸部CTにて左上区に周囲肺血管や気管支を圧排する5.6 cm×3.2 cmの辺縁平滑な腫瘍を認めた.診断治療目的にて手術方針となり術中診断にて肉腫疑いの診断のため肺癌に準じ胸腔鏡下左上葉切除を施行した.組織学的所見では肺組織内に紡錘形腫瘍細胞が錯綜する像を認め,免疫染色ではEMAやki67が陽性を示した.SYT-FISH検査にて腫瘍細胞にSYT転座融合を認める分離シグナルをみとめ二相型滑膜肉腫と診断された.滑膜肉腫Synovial sarcomaは本来,四肢の関節などに発生する軟部組織腫瘍で,肺原発切除報告例は非常に稀である.

  • 藤本 遼, 大政 貢, 長田 駿一, 中西 崇雄
    2017 年 31 巻 7 号 p. 864-867
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    82歳男性.関節リウマチ,間質性肺炎に対してステロイド治療されていた.4年前に左続発性気胸に対して3回の外科的治療(肺縫縮,部分切除)および胸膜癒着術にても早期再発を繰り返す難治性気胸に対して左上葉の肺漏に有茎前鋸筋弁を縫着することで治癒せしめた.今回左気胸再発に対する胸膜癒着術にて不応のため手術施行した.初回手術では,左下葉S10の瘻孔からエアリークを認めた.瘻孔部の直接縫合で治癒した.しかし術後7日目に気胸再発し再手術となった.初回と同じ下葉S10の瘻孔からリークがあり,瘻孔を縫合閉鎖し,更に広背筋の一部を有茎で瘻孔部に縫着した.以降は再発なく経過した.胸膜癒着術,度重なる外科治療は間質性肺炎の増悪のリスクが高くなる.再発を繰り返す間質性肺炎を合併した難治性気胸に対する有茎筋弁の肺漏部への縫着は有用である.

  • 闞 秋明, 田川 公平, 石田 輝明, 西村 光世, 青山 克彦
    2017 年 31 巻 7 号 p. 868-873
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    アスベスト曝露歴のある44歳女性.I度の左気胸経過観察中,I度の右気胸を併発したため,両側気胸に対して手術を施行した.術前胸部CTでは明らかなブラを認めず,肺尖部の胸膜肥厚と横隔膜上の小結節を認めた.術中所見では両側胸腔内に少量の胸水貯留と壁側胸膜,臓側胸膜,横隔膜表面に径1~3 mmの小結節をびまん性に認めた.右上葉の葉間胸膜面に小孔を認め,そこから気瘻を確認したため同部を縫縮した.その周囲には白色小結節を伴っていた.左肺には明らかな気瘻は認めなかった.小結節の生検結果は,上皮型悪性中皮腫であった.術後施行したPET-CTでは右肺門と縦隔リンパ節に高集積を認めた.両側同時発生(IMIG分類右stage III,左stage Ib)または右胸膜原発で左胸膜へのリンパ行性や血行性転移(IMIG分類stage IV)の可能性を考えた.現在CDDP+PEMによる化学療法中である.

  • 宮本 英明, 佐藤 泰之, 磯和 理貴
    2017 年 31 巻 7 号 p. 874-879
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    52歳男性.左下葉肺腺癌cT2aN1M0 c-Stage IIAで,原発巣が左A6及びB6根部に及び,左肺全摘出術の可能性があり,シスプラチン及びゲムシタビンの導入療法を2コース施行後,左下葉切除術,気管支楔状切除術,肺動脈形成術,リンパ節郭清術を施行した.ypT2aN1M0 yp-Stage IIAと診断,カルボプラチン及びパクリタキセルによる補助化学療法を2コース施行した.術後1年2ヵ月に右前頭葉転移病巣に対して,開頭腫瘍摘出術を施行した.術後3年11ヵ月に両側頸部リンパ節転移を認め,合計40 Gyの放射線照射を施行したが縮小が得られず,エルロチニブの内服を開始した.使用後約1ヵ月でMRI上陰影が消失し,使用後4ヵ月でFDG-PET/CT上異常集積が消失したが,薬剤性肺炎の可能性が否定できずエルロチニブを中止した.原発巣術後12年3ヵ月,最終治療から7年10ヵ月の現在,再発なく生存中である.

  • 小島 健介, 尹 亨彦, 名越 章裕, 内海 朝喜, 松村 晃秀
    2017 年 31 巻 7 号 p. 880-884
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    66歳男性.2003年に特発性肺線維症と診断,経過観察されていた.2014年9月,非結核性抗酸菌症の診断で化学療法を開始したが,内服継続拒否で2015年5月から経過観察となっていた.2016年5月,発熱,右胸痛で当院を受診,M. intracellulare感染による膿気胸と診断し,胸腔ドレナージ,化学療法を開始したが気漏,炎症の改善に乏しく手術の方針とした.下葉S6に肺瘻孔を認め,遊離脂肪組織を充填,有茎壁側胸膜弁を作製,瘻孔を被覆し手術を終了した.肺の拡張,気漏消失を得たが術後5日目に気胸の再発を認めた.右下葉虚脱が持続し,術後14日目に再手術とした.有茎肋間筋弁を作製,下葉全面の醸膿胸膜剥皮を追加し筋弁を瘻孔に縫着,被覆して手術を終了した.術後気漏を認めずドレーンを抜去,膿胸の再燃もなく治癒した.非結核性抗酸菌症に合併した膿気胸の治療に醸膿胸膜剥皮後の有茎肋間筋弁被覆が有効であった.

  • 大隈 宏通, 田中 雄悟, 内田 孝宏, 小川 裕行, 法華 大助, 眞庭 謙昌
    2017 年 31 巻 7 号 p. 885-889
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は43歳男性.原動機付自転車で走行中に自動車と衝突事故をおこし,当院救命救急科に搬送された.胸部CTにて左多発肋骨骨折,左血気胸,左下葉内に巨大肺囊胞を認めた.リザーバー付酸素マスク流量15 L/minで酸素投与も呼吸状態が保てなかったため挿管の上,人工呼吸器管理となった.入院2日目に気道内に出血を認め,経気道的に出血が疑われる左B6にトロンビン散布を行い一旦止血し得たが,翌日には再出血を認めた.再度トロンビン散布を試みたが止血できないため,当科紹介後に左下葉切除術を施行した.術後経過は良好であった.外傷性肺囊胞は胸部外傷に合併する肺内空洞性病変である.治療方針は保存的加療が基本だが,難治性出血,肺膿瘍,持続する肺漏を併発した症例に対しては手術適応となる.難治性出血を伴う本疾患は外科的治療を念頭に置いた診療が必要である.

  • 大野 雅人, 稲葉 真由美, 中野 隆仁, 植村 芳子, 金田 浩由紀
    2017 年 31 巻 7 号 p. 890-895
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,女性.肺腺癌に対し左肺上葉切除を行いその後の画像フォロー中に,右中葉にすりガラス状結節の増大を認めた.陰影は徐々に明瞭化し,中心部の濃度上昇を認めた.他の部位にも,すりガラス状結節の出現・増大を認めた.術前血液生化学所見では,蛋白分画パターンでγ-グロブリン分画が25.6%と異常高値であった.CT画像の経時的な変化から異時性多発肺癌を疑い,前回手術より約5年後に胸腔鏡下中葉切除術を施行した.病理所見では形質細胞とリンパ球の間質への浸潤がみられ,MALTリンパ腫が一見疑われたが,In situ hybridizationではκ鎖とλ鎖の発現が同程度であり多クローン性であったことから,形質細胞型のキャッスルマン病に合致する所見であった.画像上すりガラス状結節を呈する病変では,γ-グロブリン高値であれば多中心性キャッスルマン病の肺病変を念頭におく必要がある.

  • 井上 玲, 飯村 泰昭, 長谷川 直人
    2017 年 31 巻 7 号 p. 896-900
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    縦隔腫瘍に対して症例に応じて胸腔鏡手術が行われることが多くなってきている.症例は50代女性,後縦隔腫瘍を第11,12胸椎レベル右傍脊椎領域に認めた.横隔膜による術野の展開不良が予測されたため,食道領域で近年増加している腹臥位炭酸ガス送気下胸腔鏡手術を用い手術を施行した.腹臥位炭酸ガス送気下では重力と炭酸ガスの送気圧による肺の虚脱に加え,横隔膜も尾側に圧排され,良好な術野を確保することができた.後縦隔腫瘍に対する腹臥位炭酸ガス送気胸腔鏡手術は良好な術野を得ることができる術式と考えられた.

  • 鈴木 洋平, 齋藤 芳太郎, 小高 英達, 黒川 博一, 榎本 克彦, 河合 秀樹
    2017 年 31 巻 7 号 p. 901-904
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は77歳女性.多発すりガラス陰影(ground glass nodule:GGN)で定期通院中に,CT検査にて左S3のGGNが増大傾向にあり内部に高吸収域も出現した.早期肺癌を疑い胸腔鏡下左肺部分切除を行ったところ,術後病理検査でGGNはperibronchiolar metaplasia(PBM)の診断であり,同一標本内に上皮内肺腺癌(adenocarcinoma in situ:AIS)を認めた.顕微鏡画像上,PBMと診断された白色結節とAISは連続しておらず,PBMに早期肺腺癌が併存しているものと考えられた.PBMとAISが併存していた例は報告が見当たらず,まれな一例であったと考えられる.

  • 長野 裕充, 須田 隆, 金田 真吏, 栃井 大輔, 栃井 祥子, 星川 康
    2017 年 31 巻 7 号 p. 905-910
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は55歳女性.胸部CT上,心膜と肺動脈幹左側に接する径11.2×9.3 cmの前縦隔腫瘍を認め,胸部造影MRI上,腫瘍の心膜と肺動脈幹への浸潤が疑われた.CTガイド下針生検により胸腺腫WHO分類type ABと診断.完全切除は困難と判断し,腫瘍縮小効果を期待してステロイドパルス療法を施行したところ,腫瘍は径8.5×6.2 cmまで縮小,肺動脈幹との境界が明瞭となり左胸水は消失した.ステロイドパルス療法開始28日後に胸骨正中切開による胸腺胸腺腫摘出術を施行した.術中,腫瘍の左肺上葉と心膜への癒着を認めたが,左肺および心膜合併切除により完全切除が可能であった.術前ステロイドパルス療法により著明な腫瘍縮小効果を認め,完全切除可能と判断するに至った胸腺腫の1例を経験した.抗悪性腫瘍薬よりも副作用の少ないステロイドパルス療法は,局所進行胸腺腫において,完全切除の可否判断のための有用なツールとなり得る.

  • 佐々木 高信, 稲福 斉, 照屋 孝夫, 國吉 幸男
    2017 年 31 巻 7 号 p. 911-915
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    抗凝固療法中にもかかわらず,左下葉切除後に肺静脈断端から左房内に無症候性に広範な血栓を形成した症例を報告する.患者は67歳,女性.弁膜症術後にてwarfarin内服あり.子宮頸癌と肺癌の重複癌にて当院へ紹介された.進行度を考慮し,肺癌手術を先行した.胸腔鏡補助下左下葉切除(ND2a-2)を施行(pT1bN2M0),術後特に合併症を認めず退院となった.子宮頸癌治療開始前の胸腹部造影CTにて左下肺静脈断端から左房内に広範な血栓を認めた(塞栓症状は伴わず).直ちにheparinの持続静注を開始し,以降徐々に血栓の溶解をみた.左上葉切除後の上肺静脈断端の血栓形成については広く知られるところであるが,下葉切除後の広範な血栓形成は国内・国外問わず報告は少ない.非常に稀と考え,報告する.

  • 山道 尭, 堀尾 裕俊, 浅川 文香, 奥井 将之, 原田 匡彦
    2017 年 31 巻 7 号 p. 916-920
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    Gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)の横隔膜転移は稀であり,手術症例はさらに稀であるため検討が十分にされているとは言い難い.今回,原発巣切除後の十二指腸原発GIST横隔膜転移に対する手術症例を経験した.

    64歳女性.左腹部の違和感,腹痛を主訴に前医を受診し,腹腔内に巨大腫瘤を指摘された.開腹生検にてgastrointestinal stromal tumor(GIST)と診断,イマチニブおよびスニチニブの投与により腫瘍縮小を認め,腫瘍とともに膵体尾部・脾・左副腎・小腸・横行結腸合併切除が行われた.術後3年目の画像所見にて肺転移もしくは横隔膜転移が疑われた.原発性肺癌も否定できず,増大傾向であり診断目的に胸腔鏡下右横隔膜部分切除術を施行され,永久組織診断にてGISTの横隔膜転移が示唆された.原発巣切除より5年0ヵ月,初回転移巣出現より18ヵ月無再発生存中で,比較的良好な生命予後が得られている.

    GIST横隔膜転移に対しての治療法は,再発病変ととらえられ第一選択は分子標的治療による治療とされている.今回,単発横隔膜転移により発症したGISTに対して手術加療を行った症例を経験したため報告する.

  • 加藤 弘明, 田畑 佑希子, 阿部 大, 成田 吉明
    2017 年 31 巻 7 号 p. 921-926
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    悪性縦隔胚細胞腫瘍の増大により高度な呼吸困難を呈した1例を経験した.19歳男性で,呼吸困難を訴えて受診し,胸部CTで気管,気管支の高度狭窄を来す130×95 mm大充実性の前縦隔腫瘍を認め,α-fetoprotein(AFP)が2643 ng/mlと高値であったことから悪性胚細胞腫瘍と診断した.緊急でBEP療法(ブレオマシン,エトポシド,シスプラチン)を開始し症状の改善が得られ,4コース施行後に腫瘍は縮小し,AFPも正常化したため手術を施行した.腫瘍の浸潤のため広範囲の右心房および上大静脈合併切除,人工血管による血行再建を行った.術中に一時的な洞室接合部調律がみられたためペーシングリードの留置を行った.経過は順調で術後22日目で復学が可能であった.現在4年が経過し再発なく生存中である.

  • 闞 秋明, 田川 公平, 石田 輝明, 西村 光世, 青山 克彦
    2017 年 31 巻 7 号 p. 927-932
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は47歳女性.胸痛を主訴に近医を受診し,縦隔腫瘤を指摘され,当科紹介となった.胸部CT検査では,前縦隔に52×48 mm大の内部不均一な腫瘤を認め,心囊・右肺に接し,少量の胸水を伴っていた.FDG-PET検査では同腫瘤にSUVmax 5.34の集積を認め,胸腺癌の疑いで拡大胸腺摘出術を施行した.病理組織検査では胸腺原発の大細胞神経内分泌癌,正岡病期分類I期と診断した.術後70ヵ月現在無再発生存中である.

  • 橋本 章太郎, 金 泰雄, 森本 真人, 良河 光一
    2017 年 31 巻 7 号 p. 933-937
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は73歳女性.66歳時に狭心症疑いにて当院循環器内科で冠動脈造影を施行.その際に冠動脈気管支動脈吻合症を指摘された.72歳時の胸部CTで右上葉S2に7 mm大の部分充実結節を指摘され,経時的に増大するため診断と治療を兼ねて手術を施行する方針となった.冠動脈造影およびCT angiographyでは,右冠動脈と気管支動脈系との吻合を確認した.手術は鏡視下に開始し,腫瘍を部分切除し術中迅速組織診にて腺癌を確認したため右S2区域切除の方針とした.肺門部周囲には異常に発達した気管支動脈網を認め,これら異常血管からの出血コントロールに難渋したため開胸に移行して最終的に右上葉切除を施行した.気管支動脈を処理することで冠動脈への血流の影響が懸念されたが,術中・術後を通して心筋虚血を疑う心電図変化は認めなかった.周術期管理の反省点および文献的考察を加えて報告する.

  • 井上 尚, 大泉 弘幸, 加藤 博久, 鈴木 潤, 渡會 光, 貞弘 光章
    2017 年 31 巻 7 号 p. 938-943
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    78歳男性.2ヵ月前に発熱,汎血球減少を認め急性骨髄性白血病の診断となる.化学療法を開始したが発熱性好中球減少症および右肺浸潤影が出現した.メロペネム,ミカファンギン無効で,肺ムコール症を考えアムホテリシンBを開始したが陰影残存し内科的治療で治癒困難と考え手術を施行した.病変は葉間を中心にS2,S6,S8に存在し,S4にも粒状影を認め,白血病に伴う汎血球減少を認めた.術前CTで3D構築し,綿密な計画の上で手術(右S2+S6+S8a複合区域切除+S4部分切除術)を施行した.術後第5病日に胸腔ドレーンを抜去,第17病日に退院した.術後6ヵ月白血病を再発し化学療法を再開したが術後11ヵ月原疾患死亡した.術後経過で肺ムコール症は再発を認めず.肺感染症手術では術後死腔を可及的に少なくすることが必要だが,本症例のように術前の綿密なシミュレーションのもと,適切な切除範囲を設定することで手術施行できると考えられた.

  • 中村 彰太, 川口 晃司, 福井 高幸, 羽切 周平, 尾関 直樹, 横井 香平
    2017 年 31 巻 7 号 p. 944-949
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は40歳・男性.急性白血病の再発に対して化学療法および臍帯血移植が施行され,再度完全寛解が得られた.その1ヵ月後に真菌感染によると思われる浸潤影が出現したため抗真菌剤での治療が行われたが,病巣は膿瘍を形成するに至った.その後肺膿瘍は胸壁に進展し肋骨破壊による激しい疼痛を伴うまでになり,当科に紹介された.当初感染制御と除痛目的に肺葉切除術と胸壁合併切除を予定したが,手術の困難さや術後膿胸発生の危険も高いと判断し,まず膿瘍腔開放,胸壁合併切除および開窓術を施行した.感染と疼痛のコントロールの後も数ヵ所の細気管支瘻が認められたため,EWSにより責任気管支を塞栓した後に有茎大胸筋皮弁充填による閉窓術を施行した.肺膿瘍の胸壁進展とそれに伴う病的肋骨骨折による激しい疼痛を来した症例に対し,二期的に外科的治療を行うことで肺膿瘍を治癒せしめた症例を経験したので報告した.

  • 坂井 貴志, 池田 晋悟, 吉村 邦彦, 森 正也, 星野 竜広, 横田 俊也
    2017 年 31 巻 7 号 p. 950-956
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    症例:特に既往のない49歳女性.3週間続く乾性咳嗽を主訴に他院を受診,胸部単純写真で右肺炎と診断され抗菌薬加療も,症状は改善せず喀血を生じたため当院入院となった.入院後も喀血が続き造影CTを施行,右中下葉の肺炎と肺膿瘍,肺動脈瘤と診断された.責任血管と考えられたA8bに対してTAEを施行し一時的に喀血は消失したが,TAE後5日目に大量喀血を来たした.気管支動脈造影では病変は造影されず,造影CTで瘤の増大を認めたため,準緊急で右中下葉切除,気管支断端肋間筋被覆,肺動脈形成術を施行.術後は順調に経過し術後11日目に退院となった.病理所見で器質化肺炎,仮性肺動脈瘤と診断された.

    結語:末梢性肺動脈瘤において,喀血により全身状態が不安定な症例,再増大や再喀血を来たした症例,TAE施行も有効でない可能性がある症例に対しては,手術を考慮する必要がある.

  • 光星 翔太, 井坂 珠子, 前田 英之, 吉川 拓磨, 長嶋 洋治, 神崎 正人
    2017 年 31 巻 7 号 p. 957-962
    発行日: 2017/11/15
    公開日: 2017/11/15
    ジャーナル フリー

    【症例】42歳,女性.左乳腺腫瘍精査中に縦隔腫瘍を認め,当科に紹介受診した.CTで左鎖骨上窩から上縦隔にかけ内部不均一な48×45 mmの腫瘤を認めた.左総頸動脈,左鎖骨下動脈は腫瘤の内部を走行し腫瘤尾側は大動脈弓下まで及んでいたが,いずれの脈管にも浸潤を認めなかった.PET-CTで同部位にSUV max 8.52のFDG集積を認めた.悪性腫瘍を念頭に置き,上縦隔腫瘍に対し経胸骨柄アプローチ変法による腫瘍切除術を施行した.腫瘍は周囲臓器に浸潤はなく摘出し得た.病理所見で傍神経節腫の診断であった.【考察】縦隔発生の傍神経節腫は約2%程度とされている.上縦隔に発生した傍神経節腫は非常に稀で診断が困難であった.【結語】経胸骨柄アプローチ変法で切除し得た上縦隔傍神経節腫の1例を経験した.

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