日本呼吸器外科学会雑誌
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32 巻 , 1 号
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巻頭言
原著
  • 笠井 由隆, 伊藤 公一, 桝屋 大輝, 高田 尚哉, 田中 悠也, 久米 佐知枝, 井上 明香, 門田 和也, 岡田 信彦, 松岡 弘典, ...
    2018 年 32 巻 1 号 p. 2-6
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    2010年1月から2016年12月までに当院で術前に肺悪性腫瘍を疑って外科切除を行い,術後に非結核性抗酸菌症と診断された12例について検討した.男性10例,女性2例,平均年齢は66歳であった.菌種はM. aviumが8例,M. intracellulareが3例,M. kansasiiが1例であった.腫瘤径の平均は30 mm(11~74 mm)であった.12例中7例はFDG-PETを行っており,SUVmaxの平均は6.98(3.18~13.40)であった.術式は肺葉切除4例,区域切除1例,部分切除7例であった.術後化学療法は5例に行われていた.術後再発は認めなかった.術前に孤立性非結核性抗酸菌症と悪性腫瘍を鑑別するのはFDG-PETを用いても困難である.また孤立性の場合,気管支鏡による菌検出率も低い.進行症例では術後の再排菌率も高いため,積極的に診断と治療を兼ねて手術を行うべきである.

  • 松本 大資, 広瀬 敏幸, 藤本 啓介, 中川 靖士, 住友 正幸
    2018 年 32 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    【目的】胸腔鏡下肺囊胞切除,胸膜縫合術の治療成績や安全性について検討した.

    【対象】2010年1月から2016年8月に当科で35歳以下の原発性自然気胸に対し胸腔鏡下肺囊胞切除,胸膜縫合術を施行した50例.

    【結果】年齢の中央値は19歳で男性41例,女性9例であった.処置したブラの個数の中央値は2個で,手術時間の中央値は113分であった.術後合併症は2例(4.0%)に認め,いずれも創感染であった.術後ドレーン留置期間の中央値は1日であった.術後再発を7例(14.0%)に認めたが,いずれも19歳以下の症例であり,20歳以上の症例での再発は認めなかった.

    【考察】本術式の治療成績や安全性は,従来の自動縫合器による切除と比較して遜色ない結果であった.局所制御は良好であり,19歳以下の症例に対しては臓側胸膜に対するカバーリング等により更に改善する余地があると思われる.

  • 宮原 栄治, 川﨑 由香里, 木村 厚雄, 奥道 恒夫
    2018 年 32 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    急性膿胸22症例を対象として胸腔鏡下膿胸腔掻爬術の術後在院期間に影響する因子を検討した.飲酒歴・術前合併症・術前ドレナージ留置の有無,膿胸腔排液の細菌培養陽性陰性,において有意差は認めなかった.また,年齢,BMI,喫煙指数,手術時間,術中出血量との間に有意な相関は認められなかった.術前および術後1週目のAlb2.5 g/dl未満の症例では以上の症例に比較し,術後在院期間が有意に延長していた.また,症状発現から手術,医療機関受診から当科紹介の各期間と術後在院期間との間には正の相関を認め,症状出現から手術までの期間が23日未満の症例は以上の症例に比較し,また医療機関受診から当科受診までの期間が15日未満の症例は以上の症例に比較し,術後在院期間が有意に短縮していた.膿胸診断時は,保存治療開始早期に(3日目を目処に)炎症反応の低下を認めなければ外科治療を考慮することが重要と考えられた.

症例
  • 立松 勉, 齋藤 雄史, 千馬 謙亮, 山川 洋右
    2018 年 32 巻 1 号 p. 18-23
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,男性.4年前に他院にて直腸癌に対し低位前方切除術を施行された.9ヵ月前の胸部CTで右肺結節を2ヵ所指摘され,臨床的に肺転移と診断された.化学療法を施行したが肺結節の増大を認め当科紹介受診,手術目的で入院となった.胸部CTで右上葉S3に1.8 cm,中葉S5に3.0 cmの結節影を認めた.術前の血液検査でAPTT軽度延長を認め血液凝固因子を測定したところ,第VIII凝固因子の低下を認め,第VIII凝固因子インヒビターは検出されず先天性血友病Aと診断した.術直前から第VIII因子製剤の投与を開始して手術を施行,術式は胸腔鏡下右肺中葉+右S3区域切除術を予定したが,易出血性を認め右S3区域切除から右S3部分切除に変更し安全に手術しえた.術後も第VIII因子製剤の投与とAPTTモニタリングによって問題となる術後出血なく安全に管理できた.APTTの軽度延長が臨床的に問題となることは少ないが血友病である可能性も念頭におく必要がある.

  • 上村 豪, 脇田 和博, 酒瀬川 浩一, 柳 正和, 佐藤 雅美
    2018 年 32 巻 1 号 p. 24-28
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    【背景】重篤な副作用もなく安全に使用できるユニタルクは胸膜癒着術で使用されている.【症例】79歳の女性で,4年前に胸水貯留を指摘され,胸水細胞診で肺腺癌の診断となった.胸水が増量したため胸腔穿刺後に,ユニタルクで胸膜癒着療法を施行した.その後化学療法を施行し播種病変の縮小及び胸水減少を認めたが,胸腔内及び胸壁にCTで石灰化を伴うFDG高集積の腫瘤を認め,胸腔穿刺による播種病変が胸壁外に出現したと考えられた.胸壁腫瘤が増大傾向となったため手術で摘出した.病理検査ではタルクによる異物肉芽腫と診断された.【結論】胸膜癒着を目指した薬剤の胸腔内投与にて異物肉芽腫を発症した場合,腫瘍性病変との鑑別が困難となる.タルクによる胸膜癒着術を行った後にFDG高集積の胸膜腫瘤が出現した場合には播種性病変か肉芽腫か,または両者であるか慎重に検討する必要があると考えられた.

  • 鈴木 仁之, 庄村 心, 真栄城 亮, 井上 健太郎, 島本 亮, 近藤 智昭
    2018 年 32 巻 1 号 p. 29-33
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    胸腔内結石症は稀な疾患で,さらに両側多発例はほとんど報告例がない.今回我々は肺癌手術時に複数の胸腔内結石が発見され,両側多発発生が疑われた症例を経験したので報告する.症例は73歳,男性.右肺癌手術時に右胸腔内に白色の浮遊結節を多数認めた.術前CTでは両側胸腔内に多数の石灰化結節を認めていたために,両側多発胸腔内結節と診断した.結石は特に核を持たず,硝子化した膠原線維が同心円状に増生した組織で形成されており,肺内およびリンパ節内にも同様の結節を多数認め,過去の報告の多くとは異なる形態を示していた.胸腔内結石の成因は諸説あるが,成因が異なる複数のタイプがあると思われた.

  • 徳永 義昌, 岡本 卓, 喜田 裕介
    2018 年 32 巻 1 号 p. 34-38
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は35歳男性.健康診断にて胸部異常影を指摘されるが,経過観察されていた.4年後の健康診断で異常影がわずかに増大したため,当科受診となった.胸部CTでは,右肺上葉に5 mmの境界明瞭な結節影を認めた.過誤腫等の良性腫瘍を疑い,確定診断・治療目的に鏡視下手術を施行した.右肺上葉部分切除術を施行したが,迅速組織診断では肺腫瘍としては珍しい粘液様腫瘍であり,良悪性の診断は困難であった.病理組織学的には,腫瘍細胞がシート状に配列しており,免疫組織学的にBrachyury陽性であったが核異型・分葉構造が見られず,骨外性の良性脊索腫と診断された.

    術後の再度の全身スクリーニングでも腫瘍性病変は認められず,肺原発良性脊索腫と診断された.本例は世界で5例目の肺原発良性脊索腫であり,非常に稀である.術後経過は良好で,術後6ヵ月現在再発を認めていない.

  • 橋本 章太郎, 西岡 祐希, 森本 真人, 良河 光一
    2018 年 32 巻 1 号 p. 39-45
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    58歳,男性.健診の胸部Xpにて左下肺野に結節影を指摘された.胸部CTにて左S8に20 mm大の充実性陰影を認めた.気管支鏡ではB8b入口部に表面平滑な腫瘤を視認でき,同部からの生検では唾液腺型の腫瘍と診断された.手術は胸腔鏡下左下葉切除術を行った.切除標本では,腫瘍径は27×18 mm,境界明瞭,白色充実性で気管支壁に浸潤し,一部は内腔へ突出していた.組織学的には,淡明な胞体をもつ異型細胞が,小管状構造,胞巣状構造を密に形成し,周囲圧排性に増殖していた.管腔内腔には好酸性の腺上皮も見られ,筋上皮・腺上皮の2相性の増殖が確認された.免疫染色では,多くの腺上皮でサイトケラチンAE1/AE3が陽性,多くの筋上皮でp63陽性,一部の筋上皮でSMAおよびS-100陽性であった.以上から上皮筋上皮癌と診断された.術後経過は良好で,術後第14病日に退院した.術後1年が経過したが再発は認めていない.

  • 山岡 賢俊, 菊池 慎二, 柳原 隆宏, 酒井 光昭, 後藤 行延, 佐藤 幸夫
    2018 年 32 巻 1 号 p. 46-51
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    有瘻性膿胸は難治性であり,治療が長期化することが多い.今回,開窓術後にEWSを責任気管支に充填することで陰圧閉鎖(VAC)療法を加えることが可能となり,良好な経過を得た症例を経験した.症例は62歳,男性.咳嗽,発熱を主訴に前医を受診した.右中葉肺膿瘍の診断で抗菌薬を投与されるも有瘻性膿胸となり,胸腔ドレーンからは白色膿性胸水の流出と大量の気漏が持続したため,当院へ転院した.一期的な根治術は困難と判断して開窓術を行い,全身状態は改善した.しかし気漏が遷延するため,EWSによる気管支充填術を施行したところ気漏が消失し,VAC療法を併用することが可能となった.VAC療法により,開窓腔の浄化と残存肺葉の拡張が得られ,術後180日目に開窓腔は保存的に閉鎖した.

  • 徳永 義昌, 岡本 卓, 喜田 裕介
    2018 年 32 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は18歳女性.健康診断で胸部異常影を指摘され,近医受診.精査加療目的に当科紹介となった.胸部CTでは,左肺下葉に27 mm大の境界明瞭な結節影を認めた.PETでは同結節に有意な集積を認め,悪性腫瘍の可能性を考慮し,確定診断・治療目的に手術を施行した.胸腔鏡下左肺下葉部分切除術を施行,迅速組織診断では悪性の孤立性線維性腫瘍が疑われたため,左肺下葉切除およびリンパ節郭清を行った.病理組織学的には,腫瘍は紡錘形で淡明な細胞質を有し,気管支内腔に充実性に増殖していた.免疫組織学的にcalponin,CD10陽性で,肺原発筋上皮癌と診断された.術後経過は良好で,術後4ヵ月現在再発を認めていない.

  • 尾田 一之, 早川 正宣
    2018 年 32 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は32歳,男性.無症状であったが検診の胸部レントゲンで左気胸が疑われ当院を紹介された.胸部CTでは左胸腔全体を占拠する巨大気腫性肺囊胞を認め,残存肺は圧排され完全な無気肺となっていた.この無気肺が再膨張し呼吸機能が改善するか,再膨張した肺実質に器質的な異常が無いかを術前に評価するとともに,再膨張性肺水腫などの周術期合併症に注意する必要があった.そこで7Frの細径バルーンチューブを使用して術前囊胞内吸引療法を実施した.残存肺が高度の無気肺となっている巨大気腫性肺囊胞に対しては術前囊胞内吸引療法を行うことで,残存肺の器質的及び機能的な術前評価を十分に行うことができ,手術を安全に行えると考える.

  • 大沢 宏至, 安藤 耕平
    2018 年 32 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,女性.9年前よりアテローム血栓性脳梗塞の診断で抗血小板薬の投与を受けていたが,3年前より脳梗塞を繰り返すようになった.1年前に解離性大静脈瘤を発症した際に,偶然,胸部CTで右肺下葉のS6に30 mm大の肺動静脈瘻が認められたことから奇異性脳梗塞と診断され,胸腔鏡下肺部分切除術を施行した.肺動静脈瘻は右―左シャントにより奇異性脳梗塞を起こすことがあるが,Rendu-Oslaer-Weber病を伴わない肺動静脈瘻による奇異性脳梗塞は稀とされている.治療としては,カテーテルによる塞栓術が第1選択とされるが,血管径が比較的太く,末梢性の病変であったため,低侵襲性,安全性,根治性の面から,胸腔鏡下肺部分切除術を選択した.本症例のような,末梢の肺動脈瘤型の肺動静脈瘻に対しては,胸腔鏡下肺部分切除術が有用であると考えられたため,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 伊藤 公一, 笠井 由隆, 桝屋 大輝, 久米 佐知枝, 井上 明香, 鈴木 雄二郎
    2018 年 32 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    Birt-Hogg-Dube症候群は皮膚病変,腎腫瘍,気胸を特徴とする常染色体優性遺伝の疾患である.症例は62歳女性.左気胸と診断され当院紹介となる.両側の気胸の既往があり,母方の叔母,叔父に気胸の家族歴があった.胸腔鏡下左肺囊胞切除を施行,病理組織所見では囊胞壁は極めて菲薄な胸膜壁と肺胞壁からなっており,肺胞壁側は小葉間間質から成っていた.囊胞壁に突出する血管を認め,Birt-Hogg-Dube症候群が疑われた.遺伝子検査を行ったところfolliculin(FLCN)遺伝子に変異を認め,Birt-Hogg-Dube症候群と診断した.Birt-Hogg-Dube症候群の肺囊胞は自然気胸と異なり,中葉,舌区,下葉に好発する等の画像的特徴もあり,多発肺囊胞を伴う非典型的な気胸を発症した場合,Birt-Hogg-Dube症候群を念頭に置き気胸再発の可能性を考慮した術式を選択すべきと考えられた.

  • 岩田 輝男, 門司 祥子, 小野 憲司, 花桐 武志, 田中 文啓
    2018 年 32 巻 1 号 p. 74-77
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は39歳,女性.左胸痛と労作時呼吸困難にて当院受診,左気胸の診断で手術施行.皮膚病変や腎腫瘍は認めず,気胸や腎腫瘍の家族歴もなかった.胸腔鏡下左肺囊胞切除術を行い,4ヵ所の肺部分切除で合計8個の肺囊胞を切除した.薄壁の多発肺囊胞が舌区や下葉に局在し非典型的な気胸であることからBirt-Hogg-Dube(BHD)症候群を疑い,ダイレクトシークエンスにて確定診断に至った症例を経験したので報告する.

  • 稲福 賢司, 西井 鉄平, 伊藤 宏之, 永島 琢也, 中山 治彦, 横瀬 智之
    2018 年 32 巻 1 号 p. 78-83
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は69歳,女性.左乳癌に対する乳房切除術の既往あり.乳癌術前より胸部CTで24 mmと8 mmの2つの前縦隔腫瘍を認めた.筋無力症状は認めず,抗アセチルコリンレセプター抗体は陰性であった.5年の経過で,ともに増大傾向を認めたため手術の方針とした.右側アプローチで胸腔鏡下胸腺部分切除術を施行した.縦隔右側に存在した腫瘍は53 mmのtype B1,正岡病期分類II期の胸腺腫,左側は20 mmのmicronodular thymoma with lymphoid stroma,正岡病期分類II期と診断した.これは組織型が異なるため,多中心性発生の同時多発胸腺腫と考えられた.同時多発胸腺腫は稀な疾患であり,その頻度は切除例の2.2%以下と報告されている.胸腺腫は多中心性発生もしくは胸腺内転移の可能性を有しているため,術前より副病変の存在に留意し画像診断を慎重に行い,切除範囲を決定すべきである.

  • 加藤 歩, 三崎 伯幸
    2018 年 32 巻 1 号 p. 84-87
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は74歳女性.右上葉肺腺癌pT1bN0M0,stage IAに対して胸腔鏡下右上葉切除,ND2a-1を施行,術後経過は特に問題なかった.術後2ヵ月の胸部レントゲン,胸部CTで右大量胸水貯留を認め,胸腔穿刺を行い,遅発性乳糜胸と診断した.入院の上,胸腔ドレナージを開始した.全身状態は安定していたために,絶食,オクトレオチドの投与を開始した.ドレナージ開始3日目より胸水は速やかに減少傾向を認めたため脂質制限食を開始した.脂質量の増量とオクトレオチドの減量を行い,11日目に胸水が問題ないことを確認しドレーンを抜管した.抜管後も胸水の再貯留は認めず,15日目で退院した.退院後1年経過しているが胸水貯留を認めていない.遅発性となった正確な原因は不明であるが,乳糜胸に対する保存的加療において,脂質制限食を行うことにより絶食と比べ患者への負担は少なく,全身状態を保てて治療を行うことができた.

  • 中村 晃史, 多久和 輝尚, 橋本 昌樹, 近藤 展行, 棚田 大輔, 長谷川 誠紀
    2018 年 32 巻 1 号 p. 88-93
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    メサドンは本邦で2013年に使用が開始されたオピオイド鎮痛薬であり,他のオピオイド鎮痛薬でコントロール不能な癌性疼痛例に使用される.症例は49歳男性.悪性胸膜中皮腫に対し胸膜肺全摘術を施行後,難治性の疼痛(胸部~背部,創部周囲)が出現し,オキシコドン80 mg/日まで増量するも効果が不十分であった.メサドンを導入し30 mg/日へ増量,鎮痛補助薬を併用する事で疼痛は著明に軽減した.開胸術後の疼痛の要因として侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が挙げられる.メサドンはμ受容体のみならず,NMDA受容体へ高い親和性を有し神経障害性疼痛に対しても有効である.術後疼痛に対しては現状では適応外使用であるが,開胸術後の難治性疼痛に対して有効な選択肢の一つとなる可能性があり,今後の前向き研究が待たれるところである.

  • 鍵本 篤志, 三村 剛史, 宮本 竜弥, 山下 芳典
    2018 年 32 巻 1 号 p. 94-98
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳女性.20年以上前から胸部レントゲンで左横隔膜挙上を指摘されていた.1年前から労作時呼吸苦を自覚,徐々に増悪するため当科紹介となった.胸部レントゲン・CTでは左横隔膜の挙上および腹腔内臓器の頭側への偏位を認めた.呼吸機能検査ではVC 1.58 L,%VC 66.7%と拘束性換気障害を認めた.全横隔膜弛緩症と診断し,有症状であったため手術を行った.3D内視鏡システムを用いた完全胸腔鏡下に,横隔膜を腹側に圧排しながら前内側から後外側に向けてU字縫合8針で横隔膜を縫縮した.術後,呼吸器症状は改善し,術後3ヵ月の呼吸機能検査においてもVC 2.30 L,%VC 97.5%まで改善した.

    近年,本疾患に対する標準術式と考えられつつある胸腔鏡下横隔膜縫縮術だが,本術式のような立体感覚が必要な縫合操作等の手術手技を伴う完全鏡視下手術には3D内視鏡システムの使用が極めて有用と考えられた.

  • 持永 浩史, 町野 隆介, 辻 博治, 田川 努
    2018 年 32 巻 1 号 p. 99-103
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    肺動脈走行異常に対する肺葉切除術は散見されるが,区域切除術を行った報告はみられない.症例は60歳男性.2ヵ月前に右肺腺癌に対して右下葉切除とS2区域切除を施行した.さらに左下葉S8肺癌,左上葉肺癌に対して左S8+9区域切除と左上葉部分切除術を行った.術前3D-CTにて左A8b+9b+10bが縦隔枝で上肺静脈と気管支の間からS8,S9に分布し,A8b+9bは下肺静脈の腹側,A10bは背側を走行していた.術中は葉間から全ての血管同定を行った.もう1本のA8bがA10bからも分岐し,術前3D-CTでは描出されていなかった.手術時間315分,出血量60 g.完全胸腔鏡下手術で安全に完遂できた.肺動脈走行異常がある場合,術前3D-CT,葉間からの分枝確認が重要である.

  • 岡田 悟, 常塚 啓彰, 古谷 竜男, 加藤 大志朗, 島田 順一, 井上 匡美
    2018 年 32 巻 1 号 p. 104-110
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は79歳,男性.BMI 17.4 kg/m2,Alb 3.1 g/dl,PNI 37.4と低栄養を認めた.肺扁平上皮癌,cT3N1M0 Stage IIIAに対し右肺下葉切除ND2a-2を施行した.術後11日目に気管支断端膜様部に5 mmの欠損孔を伴う気管支断端瘻・吸引性肺炎を発症し開窓術を施行した.低栄養・食思不振に対して経鼻チューブを用いた栄養療法を導入した.投与熱量は半減期の短いプレアルブミンを指標に調整し,最高で3,600 kcal/日の投与を行った.瘻孔周囲の肉芽形成が促進され膿胸腔は縮小した.開窓術73日後に胸郭成形+広背筋弁充填術を施行し87日後に退院となった.至適投与熱量は病態によって変動しうるため,適切な栄養状態のアセスメントと栄養療法の工夫が気管支断端瘻による有瘻性膿胸の治療に有効な可能性があると考えられた.

  • 城所 嘉輝, 藤原 和歌子, 窪内 康晃, 万木 洋平, 三和 健, 中村 廣繁
    2018 年 32 巻 1 号 p. 111-116
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    症例は38歳女性.発熱を主訴に近医を受診し,感染性肺囊胞と診断された.抗菌薬治療により軽快したが,短期間で感染を繰り返すため当科へ紹介となった.胸部CTでは右下葉に最大10 cmの多発する囊胞を認め,下肺静脈を取り囲んでいた.抗菌薬投与で感染を制御したのちに右下葉切除を施行した.経過良好であったが,術後2週間で遅発性肺瘻のため再入院となり,癒着療法により軽快した.病理組織診断にてCongenital cystic adenomatoid malformation(CCAM)と診断され,主病変と離れた箇所にも散在する小囊胞を認めた.成人CCAMの報告はまれで,囊胞が比較的広範囲に進展している可能性があり,切除に際して注意を要する.

  • 由良 冴希子, 竹中 一正, 三宅 正幸, 土屋 恭子
    2018 年 32 巻 1 号 p. 117-122
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    鏡視下生検施行後に無治療で自然消退した極めて稀な縦隔リンパ管腫の2例を経験した.症例1は68歳,男性.左上縦隔の総頚動脈および鎖骨下動脈を巻き込む分葉状腫瘤の診断を目的に胸腔鏡下腫瘍生検を施行した.術後8ヵ月目のCTで腫瘤はほぼ消失した.症例2は58歳,女性.右肺上葉から肺門・縦隔にかけて一塊となった病変に対して縦隔鏡下縦隔腫瘍生検を施行した.術後6ヵ月目のCTで肺野および肺門・縦隔の陰影はほぼ消失した.病理組織学的検査で2例ともに海綿状リンパ管腫と診断された.成人の縦隔に発生したリンパ管腫は,腫瘍の外科的摘出が治療の原則とされているが,症例によっては生検診断後の経過観察も一つの選択肢になると考えられた.

  • 篠原 周一, 鬼塚 貴光, 深津 藤子, 町田 和彦, 松尾 正樹, 菅谷 将一
    2018 年 32 巻 1 号 p. 123-128
    発行日: 2018/01/15
    公開日: 2018/01/15
    ジャーナル フリー

    皮膚所見は腫瘍随伴症候群のひとつとして重要であるが,しばしばその背景に存在する悪性腫瘍が見落とされ,対症療法のみで経過をみられることがある.今回,肺癌完全切除により3年以上続いていた角化性皮膚炎が治癒したBazex症候群の1例を経験したので報告する.症例は77歳男性,3年前から顔面,手指,頸項部に角化性紅斑を認め,経時的に増悪し近医皮膚科で対症療法をされていた.検診のレントゲンで胸部異常陰影を指摘され,生検にて非小細胞肺癌と診断され,右上葉切除を施行した.術後4日目から著明な皮膚所見の改善を認め,外用薬が不要となり,術後2ヵ月で消失した.現在術後4ヵ月再発なく皮膚症状も再燃なく経過している.

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