日本呼吸器外科学会雑誌
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32 巻, 5 号
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巻頭言
原著
  • 上沼 康範, 棚橋 雅幸, 雪上 晴弘, 鈴木 恵理子, 吉井 直子, 北沢 伸祐, 丹羽 宏
    2018 年 32 巻 5 号 p. 556-563
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    背景:肺原発多形癌は予後不良な組織型である.その予後や予後因子について検討した.方法:2007年1月から2017年2月までに切除した原発性肺癌1697例のうち肺原発多形癌と診断された31例(1.8%)を後方視的に検討した.結果:肺原発多形癌31例の5年生存率は37.6%,無再発生存率は33.6%であった.同時期に切除した肺原発多形癌を除く非小細胞肺癌切除例と比較すると病理病期I期では5年生存率に有意差を認めなかったが,病理病期II期以上では予後不良な傾向があった.また,腫瘍径≧4 cm,SUV max≧15が生存率・無再発生存率,pStage≧II期,胸膜浸潤が生存率の予後不良因子と考えられ,術後補助化学療法の有無は予後に関与しなかった.結論:病理病期II期以上の肺原発多形癌は予後不良な傾向があった.現行の術後補助化学療法は予後改善には寄与せず,新たな治療戦略の検討が必要である.

症例
  • 小野寺 賢, 大浦 裕之, 石田 格, 半田 政志, 島岡 理
    2018 年 32 巻 5 号 p. 564-567
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    乳児の急性膿胸は比較的稀であるが,中でも内科的治療に抵抗性を示す乳児の膿胸に対して手術を施行したという報告は非常に少ない.今回我々は手術療法で根治し得た生後2ヵ月児の急性膿胸の1例を経験したので報告する.症例は生後2ヵ月の男児.38週6日に帝王切開で出生.出生時の異常所見なし.生後2ヵ月頃より咳嗽,鼻汁を主訴に近医で加療されるも改善せず,発熱,哺乳不良を呈したため当院小児科へ紹介.胸部CTで多量の右胸水貯留および右肺の虚脱,右肺下葉の空洞性病変を認め,肺膿瘍の穿破による膿胸が疑われた.人工呼吸管理の上,抗生剤投与および持続胸腔ドレナージを開始したが,十分な肺の拡張が得られず手術を施行した.胸腔内掻爬および洗浄,肺剥皮術を施行した上で,右肺下葉の空洞性病変を切除した.手術を契機に解熱および肺の十分な拡張が得られ,人工呼吸管理の離脱が可能となった.その後は順調に経過し術後第21病日に退院した.

  • 野亦 悠史, 伊藤 志門, 西村 正士, 福井 高幸
    2018 年 32 巻 5 号 p. 568-572
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は42歳男性,左重症肺炎に合併した右緊張性気胸を発症し,急性呼吸不全にて当院へ救急搬送された.ただちに右胸腔ドレナージを施行して右肺の拡張が得られ,一旦呼吸状態は改善した.しかしその約2時間後,再膨張性肺水腫を発症し,急速に呼吸不全が悪化,ショック状態となったため,Veno-venous extracorporeal membrane oxygenation(V-V ECMO)を導入した.

    ECMO導入後,全身状態は速やかに改善し,5日目に離脱することができた.また,ECMOに起因する合併症や後遺症は認めなかった.その後,手術と胸膜癒着術を施行し気胸は治癒,入院43日目に無事に退院した.

  • 三和 健, 藤原 和歌子, 城所 嘉輝, 荒木 邦夫, 谷口 雄司, 中村 廣繁
    2018 年 32 巻 5 号 p. 573-579
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は65歳男性.主訴は嗄声,左肩痛.左肺扁平上皮癌の診断で,前医より紹介となった.第一肋軟骨,縦隔,左腕頭静脈に浸潤する左肺尖部浸潤肺癌(cT4N0M0 IIIA)の診断で,術前化学療法と同時放射線治療(66 Gy)を施行してPRとなり,手術を施行した.肺門は放射線照射外のため,まず右側臥位で胸腔鏡下に胸壁浸潤部の肺切離と左上葉切除+ND2a-2を施行後,仰臥位でtransmanubrial approach(TMA)を施行した.組織肥厚は著明であったが,左腕頭動静脈を温存,第一肋軟骨,内胸動脈,縦隔脂肪,迷走神経,横隔神経を合併切除して腫瘍を切除した.手術時間はVATS 173分,TMA 168分,出血量70 ml,最終病理Ef3でypT0N0M0,合併症はなく術後7日目に退院した.難易度が高い術前治療後の肺尖部浸潤肺癌に対し,低侵襲アプローチ併用の拡大手術は,安全で有用な手技と考えられた.

  • 松本 耕太郎, 一宮 仁
    2018 年 32 巻 5 号 p. 580-586
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は51歳男性.1年前に咳嗽が持続するため近医を受診した.胸部X線写真で左中肺野に腫瘤影を指摘されたが放置していた.今回,健診で同部位に再び腫瘤影を指摘された.胸部CTで左肺舌区域S4に空洞を有する腫瘤影を認めた.腫瘤は葉間を越えて下葉S8に浸潤していた.CTガイド下肺生検ではリンパ球性間質性肺炎と診断されたが,18F-fluorodeoxyglucose-positron emission tomography(FDG-PET)で腫瘤と肺門リンパ節にFDGの異常集積を認め,原発性肺癌の可能性も考えられた.手術は左肺舌区域とS8部分合併切除を行った.病理検査では多数の虫卵を有する肉芽腫を認め,ウェステルマン肺吸虫症と診断された.ウェステルマン肺吸虫症は比較的稀な疾患であるが,肺腫瘤の鑑別疾患として念頭に置いておく必要がある.また特異な食歴の聴取を忘れずに行うことも重要である.

  • 根津 賢司, 三好 麻衣子, 北條 禎久, 延原 研二, 酒井 堅, 梶原 伸介
    2018 年 32 巻 5 号 p. 587-593
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は64歳女性.呼吸困難を主訴に近医を受診し,胸部異常陰影を指摘され当科紹介となった.3D-CT血管造影にて下行大動脈より起始した異常動脈が,壁の石灰化と血栓化を伴い約28 mm大に瘤化し左肺底区に流入し,肺野の血管拡張と透過性低下を認めた.肺動脈の底区への分枝は欠損し,下肺静脈と気管支の走行は正常で,左肺底動脈下行大動脈起始症と診断した.異常動脈瘤切離時の出血の危険回避のため,まず下行大動脈ステントグラフト内挿術を行い,二期的に左肺下葉切除+異常動脈切離を施行した.ステントグラフトは大動脈瘤に対する新しい治療法であるが,今回左肺底動脈下行大動脈起始症の異常動脈瘤に対し,ステントグラフトを用いて瘤への血流を遮断することで,安全に異常動脈の切離処理,肺切除が可能であり,非常に有用であった.本疾患に対するステントグラフト使用例の報告は本症例を含め2例のみであり,貴重な症例と考えられた.

  • 村上 千佳, 三村 剛史, 宮本 竜弥, 鍵本 篤志, 山下 芳典
    2018 年 32 巻 5 号 p. 594-599
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は18歳,女性.学校検診で右上肺野に20 mm大の類円形の陰影を指摘され,当院呼吸器内科を受診した.軽度の咳嗽以外の自覚症状なし.CTにて右肺上葉の肺門付近に最大径24 mmの境界明瞭な充実性結節を認めた.精査中にわずかな増大傾向を認め,低悪性度肺腫瘍の可能性が考えられたため,手術目的に当科紹介となり,完全胸腔鏡下右肺上葉切除を施行した.病理組織学的には,紡錘形細胞の増殖を認め,核分裂像は乏しく,免疫染色で上皮マーカーおよび筋上皮マーカーの多くが陽性になったことから,肺原発筋上皮腫と診断された.現在,無治療経過観察中であり,術後7ヵ月で再発は認めていない.

    肺原発筋上皮腫は非常にまれな腫瘍であり,これまでに10例の症例報告があるのみである.現状では完全切除が求められるが,診断や治療,予後については未だ検討の余地があり,今後のさらなる症例集積が待たれる.

  • 有本 斉仁, 関原 圭吾, 横手 芙美, 長阪 智, 喜納 五月
    2018 年 32 巻 5 号 p. 600-605
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    Streptococcus pyogenesは,劇症型溶連菌感染症が第5類感染に指定されており,致死的な感染を起こしうる細菌である.今回,Streptococcus pyogenesによる急性膿胸の2例を経験した.症例1:36歳,女性,既往なし.嘔吐,下痢が初発症状,菌血症に至った後に右急性膿胸,縦隔炎を来した.当院に搬送後,胸腔鏡下右膿胸腔洗浄掻爬術,縦隔ドレナージを施行,良好な経過を得た.症例2:32歳,女性,既往は子宮筋腫のみ.胃腸炎の経過中に菌血症,右急性膿胸を発症した.胸腔ドレーンが挿入されたが,全身状態が悪化し当院へ紹介,胸腔鏡下膿胸腔洗浄掻爬術を施行し,良好な経過を得た.Streptococcus pyogenesによる膿胸は死亡例も報告があり,重症化する危険性が高いが,早期の胸腔鏡手術が有効であった症例を2例経験したので文献的考察を加えて報告する.

  • 関原 圭吾, 横手 芙美, 有本 斉仁, 長阪 智, 喜納 五月
    2018 年 32 巻 5 号 p. 606-609
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    胸部外傷は重要臓器の損傷による死亡例も多いが,適切な治療により救命しうる症例もある.今回,肋骨骨折により横隔膜損傷を来し外傷性血胸となった1例を経験した.32歳,男性,てんかんの既往あり.てんかん発作で転倒後,胸痛を主訴に搬送された.右気胸と診断され胸腔ドレーンが挿入された.翌日,CTで右多発肋骨骨折,右血気胸,腹腔内血腫を認めた.血管造影で出血源を同定できず,呼吸器外科へコンサルトされ,緊急手術となった.骨折した第8肋骨が胸腔内へ変位し,壁側胸膜が損傷していた.骨折部位を切除し,血腫を除去すると骨折部位の直下で横隔膜が損傷しており,腹腔へ貫通していたため修復した.術後経過良好,第6病日に退院した.過去の報告でも軽微な横隔膜損傷は画像で指摘困難である.肋骨骨折による横隔膜損傷で血胸を来した報告もある.下位肋骨骨折では横隔膜損傷を疑い術中に十分確認することが重要である.

  • 玉川 達, 近藤 泰人, 小野 元嗣, 山﨑 宏継, 松井 啓夫, 佐藤 之俊
    2018 年 32 巻 5 号 p. 610-616
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は78歳,男性.3年前の健診で胸部異常影を指摘.前縦隔結節として経過観察されていたが増大.CT,MRIで前縦隔に39 mmの囊胞性病変を認め,胸腺囊胞を疑い診断治療目的で胸腔鏡下胸腺部分切除施行.病理では,薄い隔壁を有する多囊胞性病変で,囊胞を裏打ちする細胞はD2-40陽性であり,リンパ管腫と診断.術後経過は良好で,術後1年現在無再発で乳糜胸を含む合併症なく経過している.

  • 太田 紗千子, 五明田 匡, 玉里 滋幸, 吉村 誉史, 寺田 泰二
    2018 年 32 巻 5 号 p. 617-622
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    血栓性血小板減少性紫斑病(Thrombotic thrombocytopenic purpura以下,TTP)はADAMTS13活性が著減することで惹起される細小動脈における血小板血栓と溶血性貧血を特徴とする全身性の重篤な疾患であるが,呼吸器外科領域で術後TTPを発症することは非常に稀である.今回,気胸術後にTTPを発症し救命しえた1例を経験した.症例は62歳,男性.気胸に対し,胸腔鏡下に肺部分切除術を施行した.術翌日に血小板減少を認め,術後2日目に血小板は更に減少し,発熱も認めた.術後3日にDICと診断し加療を進めるも効果はなく,その後急激な貧血の進行と腎機能障害を認めた.術後5日目に,せん妄が出現したため経過よりTTPと診断し,血漿交換とステロイドパルスを開始したところ速やかな血小板数の回復,精神症状の改善を得た.血漿交換を5日間施行し,術後52日目に軽快退院した.

  • 喜田 裕介, 徳永 義昌, 岡本 卓
    2018 年 32 巻 5 号 p. 623-628
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    Ciliated muconodular papillary tumor(CMPT線毛性粘液結節性乳頭状腫瘍)は肺末梢に発生し,粘液産生を伴い線毛細胞と杯細胞が肺胞置換性に乳頭状増殖を示す稀な腫瘍である.良性悪性の特徴をもち,まだ位置づけが確立されていない.今回我々は,CMPTの1例を経験したので報告する.症例は67歳,女性.CT検診で左下葉に4 mm大の結節を指摘されるも炎症性変化と診断され経過観察となった.4年後,再度CTを撮影し7 mmと増大傾向を認め,診断と治療目的に手術の方針となった.胸腔鏡下に部分切除を行い,永久病理診断でCMPTと診断した.術後2年再発を認めていない.

  • 安達 剛弘, 佐野 功, 橋本 慎太郎, 土肥 良一郎, 谷口 英樹, 重松 和人
    2018 年 32 巻 5 号 p. 629-634
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は86歳男性.悪性リンパ腫再発にて治療後,右上葉のpart-solid noduleに対し胸腔鏡下肺部分切除を施行.8 mm大の腺癌であり,pStage IAで内科にて経過観察となった.術後2年して肺切除断端部近傍に腫瘤影を指摘され,フォローCTで増大傾向を認めた.腫瘤は5 cm大に増大し,下葉にも結節を認めた.局所再発が疑われたがSCCやCYFRAなどの腫瘍マーカーが上昇しており,原発性肺癌の可能性も考えられたため手術の方針とした.右上葉切除,下葉部分切除を行ったところ断端部腫瘤は扁平上皮癌,下葉腫瘤は小細胞癌であり,異時性三重肺癌の診断となった.三重肺癌はこれまでも報告されているが組織型が異なり,更に悪性リンパ腫治療後の二次癌による三重肺癌が示唆される様な症例は非常に稀である.

  • 目井 秀門, 宮原 聡, 今村 奈緒子, 山下 眞一, 白石 武史, 岩﨑 昭憲
    2018 年 32 巻 5 号 p. 635-640
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    2014年の胸部外科学会学術調査報告によると気管・気管支形成術のうち肺切除を伴わない気管支のみの切除再建術はわずか13例(2.0%)である.当施設ではこの希少な術式を5例に経験した.組織型は定型カルチノイド3例,脂肪腫1例,扁平上皮癌1例.腫瘍の局在は右中間気管支幹2例,左主気管支2例,左下葉支1例.平均手術時間は335±104分,平均出血量は301±372 mlであった.1例に一時的な呼吸不全,別の1例に吻合部狭窄を認めたが,バルーン拡張で改善した.全例が正常に社会復帰し局所・遠隔再発は認めていない.術前後に呼吸機能を測定し得た3症例では,呼吸機能改善が確認できた.気管支原発の良性,あるいは低悪性度悪性腫瘤において,肺機能温存を目的とした肺切除を伴わない気管支切除・再建術は,手術による根治性が担保できる範囲で有用な機能温存術式と考えられる.

  • 稲福 賢司, 伊藤 宏之, 鈴木 理樹, 横瀬 智之, 中山 治彦, 益田 宗孝
    2018 年 32 巻 5 号 p. 641-646
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は51歳男性.左肩の痛みを主訴に前医を受診し,左肺尖部胸壁浸潤肺癌(cT3N0M0-Stage IIB)と診断された.本人の希望で重粒子線治療(72 Gy/16 Fr)が選択された.原発巣は縮小し瘢痕化したが,照射1年2ヵ月後に左上縦隔リンパ節(#5)再発と診断された.化学療法施行目的で当院に転院したが,切除可能と判断し,照射1年4ヵ月後に左上葉切除術を施行した.肺尖部に限局した強固な癒着を認めたが,剥離可能であった.#5リンパ節は肺動脈に固着し,血管形成を併施した.病理組織学的に原発巣は瘢痕化しviableな腫瘍細胞は認めず(Ef.3),また周囲の肺組織に線維化等は認めなかった.#5リンパ節に扁平上皮癌の転移を認め,ypT0N2M0-Stage IIIAと考えた.重粒子線の優れた線量集中性が確認できた.しかし,標準治療が選択可能な場合には,重粒子治療の適応は十分慎重になるべきである.

  • 分島 良, 石橋 洋則, 高原 弘知, 高崎 千尋, 小林 正嗣, 大久保 憲一
    2018 年 32 巻 5 号 p. 647-653
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は55歳男性.左肩の疼痛を契機に発見された左肺尖部浸潤肺腺癌.胸部CTにて第1肋骨,第1胸椎体,鎖骨下動脈への浸潤を認めた.術前に化学療法としてweekly CBDCA(AUC2)+weekly PTX(40 mg/m2)5コースと放射線治療50 Gyを施行したところ,腫瘍の縮小を認め,手術治療を計画した.手術は鎖骨下動脈の血管処理を行う可能性のある症例でありTransmanubrial approach(TMA)を選択し,同視野のまま第1胸椎体を露出させ,整形外科医により椎体の切除と椎体の前方固定を行った.次に腹臥位にて椎弓切除,脊椎後方固定を行い,最後に右側臥位前側方開胸にて左上葉切除を行い完全切除し得た.椎体合併切除を必要とする肺尖部浸潤癌ではTMAを用いることで前方の血管剥離と椎体操作の視野展開に有用である.

  • 岩井 俊, 船崎 愛可, 本野 望, 関村 敦, 薄田 勝男, 浦本 秀隆
    2018 年 32 巻 5 号 p. 654-658
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は65歳,男性.他疾患経過観察中の胸腹部CTで前縦隔腫瘤を指摘され,当科紹介となった.胸部CTでは前縦隔に35 mm大の充実性病変を認め,心膜との境界が不明瞭であった.胸腺腫あるいは胸腺癌を疑い,手術の方針とした.右アプローチでの完全鏡視下に前縦隔腫瘍摘出および胸腺摘出と,心膜合併切除および心膜再建を行った.病理所見は小型から中型の大小不同の核をもつ腫瘍細胞が充実胞巣状に増殖し,腫瘍内は線維性隔壁と壊死巣と石灰化像の散在を認めた.神経系免疫染色(synaptophysin,chromogranin A)に陽性を示し,さらにCD56陽性を示し神経芽腫と診断された.成人発見での神経芽腫は極めて稀であり,確立された治療ガイドラインがない状況である.現在までの報告例と合わせて診断および治療に関して報告する.

  • 上垣内 篤, 坪川 典史, 向田 秀則, 金子 真弓, 松浦 博夫
    2018 年 32 巻 5 号 p. 659-666
    発行日: 2018/07/15
    公開日: 2018/07/15
    ジャーナル フリー

    症例は37歳女性.健康診断で胸部異常陰影を指摘され当院受診となった.胸部CT,MRIで前縦隔に卵殻様の辺縁石灰化と一部充実成分を伴う3.8×2.4 cmの囊胞性腫瘤を認めた.FDG-PETで腫瘤にSUVmax2.65の軽度集積を認めた.陳旧性炎症性変化や石灰化を伴う胸腺囊胞性病変が疑われ,診断・治療目的に胸腔鏡下縦隔腫瘍摘出術を施行した.前縦隔に境界明瞭な腫瘍を認め,周囲組織への浸潤はなく,腫瘍を摘出し,病理組織検査で胸腺原発の粘表皮癌と診断した(正岡分類I期).粘表皮癌は唾液腺,気管支に好発することが知られるが,胸腺原発例は極めて稀で,胸腺癌の4.6%と言われる.石灰化を伴う症例はさらに稀で,今回我々は腫瘍辺縁に卵殻様の石灰化を伴う胸腺原発粘表皮癌を経験したので報告する.

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