日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
最新号
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巻頭言
原著
  • 大塚 綱志, 中村 好宏, 武田 亜矢, 梅原 正, 鈴木 聡一, 徳永 拓也, 上村 豪, 永田 俊行, 青木 雅也, 横枕 直哉, 狩集 ...
    2018 年 32 巻 6 号 p. 668-673
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    有瘻性膿胸や感染コントロール不良な無瘻性膿胸では開窓術が行われることが多い.開窓は精神的な負担や美容上の問題があり,早期の創閉鎖が望まれる.最近,有瘻性膿胸に対する気管支充填物(Endobronchial Watanabe Spigot:EWS)や無瘻性膿胸に対する持続陰圧吸引療法(NPWT)の有用性が報告されている.そこで膿胸の開窓症例に対するEWS・NPWTおよびその併用療法の有用性を検討した.2009年1月から2015年12月までに当科で開窓術を施行した膿胸症例26例を対象とし,無瘻性群8例と有瘻性群18例に分けて後ろ向きに検討した.無瘻性群は8例中6例で膿胸腔閉鎖を施行し得た.有瘻性群18例中6例で開窓術後に瘻孔が自然閉鎖し,創閉鎖した.残り12例のうち5例に対してEWS留置を行い,全症例で無瘻化または気漏減少を得た.その後全例にNPWTを施行し,4例で創閉鎖を行えた.

  • 野々村 遼, 井上 征雄, 山吉 隆友, 伊藤 重彦
    2018 年 32 巻 6 号 p. 674-679
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    今回我々は侵襲的治療介入や血気胸発症のrisk因子について検討した.対象は過去13年間に胸部外傷に対して当科で入院加療した189例(平均AIS:3.1).主要評価項目を胸腔ドレナージの有無,副次評価項目を外傷性血気胸の合併とした.胸腔ドレナージのrisk因子として骨折転位で有意差を認めた.外傷性血気胸のrisk因子は2本以上の肋骨骨折と骨折転位であった.AISスコアの低い胸部外傷(本研究では平均3.1)であっても外科的介入を必要とする可能性があり,胸部外傷の診療に当たる際に注意が必要である.

  • 師田 瑞樹, 河野 匡, 藤森 賢, 木村 尚子, 鈴木 聡一郎, 川島 光明, 菊永 晋一郎, 吉村 竜一
    2018 年 32 巻 6 号 p. 680-685
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    【背景】呼吸器外科において肺塞栓のリスクとなる術前の深部静脈血栓症(Deep vein thrombosis:DVT)の有無の評価は重要である.しかし呼吸器外科分野においてD-dimer値を用いたDVTスクリーニング法の検討は少ない.今回術前D-dimer値を用いたDVTの評価とそれに対する周術期管理について検討した.【対象と方法】対象は2013年5月~2015年12月に施行した手術1178例(胸腔鏡手術1153例,開胸手術25例)とし,術前D-dimer値が1.1 μg/ml以上の症例に対して全例下肢静脈エコーを施行した.【結果】260例(22.6%)でD-dimerが異常値を示し,そのうち51例(19.6%,全症例の4%)で術前にDVTを認めた.D-dimer≧1.1でDVT(+)とDVT(-)のD-dimer平均値の比較では3.93 μg/ml(95% CI:2.65-5.19)vs. 2.79 μg/ml(95% CI:2.39-3.19)と有意差を認めた.DVT(+)症例で周術期にヘパリン化施行したのは19例,弾性ストッキング着用のみは23例,残り9例は通常管理であった.術後に肺塞栓を合併した症例は1例も認めなかった.【結論】術後肺塞栓症の予防には潜在的なDVT検出が重要であり,スクリーニングとして術前D-dimer測定は有用と考える.

症例
  • 平野 豊, 鷲尾 一浩
    2018 年 32 巻 6 号 p. 686-690
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は67歳,女性.胸部CTにて右肺中葉の13 mm大の結節影と左肺下葉S8の10 mm大のすりガラス影を指摘され当科紹介となった.いずれも肺癌が強く疑われたため,まず右中葉の病変に対し右中葉切除を施行した.術中上肺静脈のうちV1+2+3が奇静脈根部へ還流する部分肺静脈還流異常(PAPVC)を認めたが,術後心不全等合併症はみられなかった.術後の造影CTでは右V1+2+3以外には還流異常を認めず,肺体血流比(Qp/Qs)=0.7であった.初回手術から8ヵ月後に左肺の病変に対して左S8区域切除を施行した.術中及び術後の循環・呼吸状態に問題なく経過良好であった.病理組織診断ではいずれも腺癌であった.PAPVCは自覚症状を持たず,肺癌手術中偶然発見される場合が多い.PAPVCを合併した肺切除例では術後に重篤な右心不全を来す可能性があるため,本疾患を念頭に置いて術前画像診断・手術を行うことが重要である.

  • 本多 陽平, 奥村 典仁, 松岡 智章, 山梨 惠次, 高橋 鮎子, 中島 尊
    2018 年 32 巻 6 号 p. 691-696
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    肺癌に対する化学療法は,感染症の合併により継続困難や致命的となることがある.われわれは,肺癌化学療法中に肺膿瘍を合併し,抗菌薬投与では改善せず,手術により感染制御できた一例を経験した.症例は64歳男性.右上葉原発のIV期非小細胞肺癌に対して化学療法中に閉塞性肺炎を発症.抗菌薬加療では改善せず肺膿瘍に進展し,膿瘍は徐々に腫大.胸腔内穿破による膿胸への移行が懸念されたため,感染制御目的に手術施行.開胸時,右上葉は胸腔内の1/2を占めるまで腫大していた.腫瘍の下葉浸潤と主気管支周囲に広汎に転移リンパ節を認め,右肺全摘を要した.術後感染徴候は改善し,術後12日目に自宅退院.術後46日目に化学放射線療法を開始.術後15ヵ月現在,外来経過観察中.今回の手術は症状緩和治療(palliative therapy)としての外科治療として位置づけられるが,感染制御のみならず,根治的化学放射線療法を可能にし,術後無増悪生存が得られている点からは広義のサルベージ手術に相当する手術であったと思われる.

  • 村上 裕亮, 小山 孝彦, 加藤 良一
    2018 年 32 巻 6 号 p. 697-702
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    患者は48歳,男性.胸部異常陰影を指摘され受診した.CEAが軽度高値で,胸部CT検査では右肺上葉に最大径50 mmの腫瘤を認め,同部位にFDG-PET検査でFDGの異常集積がみられた.CTガイド下生検では悪性所見を認めなかったが,肺癌を否定出来なかったため,手術を施行した.切除標本の抗酸菌塗抹検査ではGaffky5号で,DNA-DNA hybridization法(DDH法)により原因菌をMycobacterium xenopiと同定した.術後は化学療法1年間を追加し,術後2年3ヵ月の現在まで無再発で経過している.

  • 坂本 晋一, 松本 大昌, 日野 弘之, 先山 正二
    2018 年 32 巻 6 号 p. 703-708
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    Refeeding syndrome(以下RFS)は慢性栄養失調の患者に対して,急激な栄養投与を行うことにより体液量と電解質に異常を引き起こす病態と定義され,致死的な合併症に発展する.不整脈を契機にRFSの診断に至った続発性自然気胸の一例を報告する.症例は75歳,男性.発熱,呼吸困難を主訴に前医を受診し続発性自然気胸と診断された.胸膜癒着療法を施行するも改善せず,当科紹介となり胸腔鏡下肺囊胞結紮術を施行した.術後第2病日に心室頻拍が発生し,検査を施行したところ低リン血症を認めた.低栄養であったことからRFSと診断し,直ちにリンを補正しながら摂取エネルギー量を少量から漸増し,全身状態は改善した.RFSは稀な疾患ではないが認知度は必ずしも高くない.高齢化が進む近年ではRFSのリスクを満たす状態で治療を開始する症例も少なくなく本疾患を念頭に置いて術後治療を行う必要がある.

  • 清水 秀浩, 田中 伸岳, 河野 朋哉, 宮原 亮
    2018 年 32 巻 6 号 p. 709-712
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    肺捻転症は肺切除後や外傷の合併症として報告されていて,非常に稀でかつ重篤な疾患である.今回,我々は特に誘因なく末梢側で発症した肺捻転症を経験したため報告する.

    症例は,22歳男性で突然の胸痛症状のため,翌日,医療機関に受診され,胸部CTでは左下葉末梢が中心に向かって反時計回りに捻転している所見を認め,気管支鏡検査では左下葉気管支B8bの閉塞所見を認めた.よって肺捻転症と疑い緊急手術を施行した.術中所見では,下葉末梢側が360度時計回りに捻転し,虚血性変化を伴っていたため,捻転を解除した後,胸腔鏡下左下葉部分切除を施行した.術後合併症である肺軸捻転に対していくつか報告があるが今回,我々は特発的に発症し肺軸でなく末梢側で捻転していた極めて稀な特発性肺捻転の症例を経験したので文献的考察を含め報告する.

  • 安達 剛弘, 佐野 功, 橋本 慎太郎, 土肥 良一郎, 谷口 英樹, 重松 和人
    2018 年 32 巻 6 号 p. 713-718
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は53歳女性.子宮筋腫に対して広汎子宮摘出術の既往あり.無治療経過観察としていたが,検診胸部X線で異常を認めCTにて後縦隔腫瘍を指摘された.子宮筋腫に対する術前CTでも後方視的に確認でき,その当時と比較し増大傾向を示すことから手術目的に当科紹介となった.CT,MRIから神経原性腫瘍や気管支原性囊胞を疑い胸腔鏡下腫瘍摘出術を施行.しかし術後病理では免疫染色の結果,ER,PgR陽性を示しており後縦隔ミュラー管囊胞と診断された.現在術後6ヵ月再発,合併症なく生存中である.

  • 寺田 志洋, 井坂 光宏, 保浦 慶之, 児嶋 秀晃, 髙橋 祥司, 大出 泰久
    2018 年 32 巻 6 号 p. 719-724
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    背景.神経鞘腫はSchwann細胞に由来する良性腫瘍であり,気管支・肺発生は稀とされている.

    症例.36歳,女性.健診の胸部単純写真で異常陰影を指摘され,胸部CTで右B9/10分岐部に辺縁明瞭な結節を認めた.PET-CTではSUV max 1.83の集積を認めた.気管支鏡検査では確定診断に至らず,悪性が否定できないために手術の方針となった.右底区域切除術を行い,術中迅速診断で神経鞘腫を疑い悪性所見はなかったために追加切除は行わずに終了した.病理所見では抗S100蛋白抗原陽性の紡錘形細胞の増殖を認め,肺内神経鞘腫と診断された.

    結語.区域気管支間から発生した肺内神経鞘腫に対し診断治療目的に底区域切除術を行った一例を経験した.同疾患は術前診断が困難であり,術前PET-CT所見を中心とした文献的考察を加えて報告した.

  • 大貫 雄一郎, 宮内 善広, 原 英則, 國光 多望, 松岡 弘泰, 松原 寛知
    2018 年 32 巻 6 号 p. 725-730
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    気管支鏡による肺腫瘍生検後の肺膿瘍併発は稀な合併症であるが,治療に難渋する場合がある.今回我々は気管支鏡検査を契機に肺膿瘍を併発した肺悪性腫瘍手術症例3例を経験したので報告する.男性2例,女性1例で平均年齢は70.7歳.腫瘍は原発性肺癌2例,転移性肺腫瘍1例で,組織型は全例が腺癌であった.腫瘍の局在は右上葉1例,左上葉2例で,検査前のCTで腫瘍径は全例が30 mm以上であった.検査から発熱等の症状出現までは平均5日で,手術は肺膿瘍の診断後平均12日目に施行されたが,1例は抗菌薬が奏功したため待機的手術を行った.術式は葉切除が2例,肺全摘が1例であった.肺悪性腫瘍に続発する肺膿瘍の多くは,保存的治療に抵抗性で手術を必要とする.炎症が拡大すれば,手術は次第に腫瘍の根治性よりも感染制御に重点を置くこととなり合併症のリスクも高まるため,適切な手術のタイミングを逸さないことが重要と考えられた.

  • 宮田 剛彰, 比嘉 花絵, 元春 洋輔, 吉松 隆, 山下 直樹, 小山 倫浩
    2018 年 32 巻 6 号 p. 731-735
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    肺動脈の分岐にはバリエーションがあり,安全な肺切除においては,術前CTでの血管走行の把握が有用である.今回,我々は,右主肺動脈本幹背側より右肺下葉に直接流入する縦隔型A7+8+9の肺動脈の破格を伴った右下葉切除を経験したので報告する.症例は64歳,男性.胃癌術後の経過観察のCTで,右肺下葉S6に増大する肺結節を認めた.手術はS6部分切除し,迅速病理検査で原発性肺腺癌が否定できず,右下葉切除(ND1b)を施行した.縦隔型A7+8+9は上肺静脈と下肺静脈の間を通り,中間気管支幹の縦隔側を走行して右肺下葉に流入していた.縦隔型右下葉枝は本例を含め,本邦6例の報告に留まる稀な肺動脈の破格であり,術前CTでの血管走行の確認により破格に対する手術手順を安全に行うことができた.

  • 平原 正隆, 井手 昇太郎, 井上 啓爾
    2018 年 32 巻 6 号 p. 736-741
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は75歳男性.左胸痛,咳嗽を主訴に近医を受診し,胸部X線で異常を指摘されたため当院を紹介受診.胸部CT,MRIにて左胸腔内に15 cm大の境界明瞭,辺縁平滑で吸収域の異なる大小さまざまな腫瘤が集簇したような巨大腫瘍を認めた.画像上脂肪肉腫を疑い外来で精査を行われていたが2週間で腫瘍の急速な増大と胸水の出現を認め,呼吸不全をきたしたため緊急入院となり手術を施行した.手術に先んじ大腿動静脈の確保を行い前側方切開にて開胸,腫瘍を切除した.腫瘍の大きさは最大径19 cm,重量は1780 gで病理診断は高分化型脂肪肉腫であった.脂肪肉腫は緩徐に増大することが多く,今回急速に増大した縦隔原発高分化型脂肪肉腫の1例を経験したので報告する.

  • 大鹿 芳郎, 中山 健史, 亀田 光二, 小原 聖勇, 猛尾 弘照, 松熊 晋
    2018 年 32 巻 6 号 p. 742-747
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は52歳男性.2年前の検診にて縦隔から右方に突出する陰影を指摘されていた.今回の検診にて同陰影の増大が認められたため,精査加療目的に当院へ紹介となった.精査の後,胸腺腫あるいは胸腺癌を疑い手術を施行した.手術は胸腺胸腺腫瘍摘出,心膜合併切除,右肺S8部分切除術を行なった.組織学的には,扁平上皮癌,類基底癌ないしB3型胸腺腫を主体とし,粘表皮癌あるいは腺系分化を伴い,神経内分泌細胞分化を示す成分をも混じており,混合型胸腺癌に相当する像と考えた.腫瘍細胞は心膜へ浸潤しており(pT3,正岡分類III期),術後放射線照射を追加した.術後1年半で左肺S5,S6に転移と考えられる病変を認め,定位放射線治療を施行したところ消失し,術後2年半の現在無再発生存中である.本症例のように多彩な組織所見が混在した胸腺癌の報告は極めて珍しく,胸腺腫瘍細胞の多分化能が示唆される貴重な症例と考えられた.

  • 窪内 康晃, 目次 裕之, 荒木 邦夫
    2018 年 32 巻 6 号 p. 748-752
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    肺犬糸状虫はDirofilaria immitisが蚊を中間宿主としてイヌからヒトへと感染し引き起こされる疾患であるが,肺癌との合併は非常に稀である.症例は70歳男性.検診の胸部X線で右下肺野に結節陰影を指摘された.胸部CTで,異常指摘部位に一致する右S8に境界明瞭な結節陰影を認めた.さらに右S6にspiculaを伴う結節陰影を認めた.S6腫瘍は右下葉肺癌,S8腫瘍は良性腫瘍を疑い,手術の方針とした.S6腫瘍に対して術中針生検を行い,腺癌の診断が得られたため,胸腔鏡下右下葉切除+ND2a-1を実施した.病理検査ではS6腫瘍はadenocarcinoma, pT1bN0M0 IA2であった.一方,S8腫瘍は虫体の断面が確認され,肺犬糸状虫と診断された.これまでに肺癌と肺犬糸状虫の合併した症例報告は2例のみ,さらに肺犬糸状虫を契機に肺癌が発見された報告はこれまでに無く,非常に稀な症例であった.

  • 河村 知幸, 小林 尚寛, 菅井 和人, 菊池 慎二, 後藤 行延, 佐藤 幸夫
    2018 年 32 巻 6 号 p. 753-757
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は43歳,女性.2年前に右卵巣顆粒膜細胞腫に対して右付属器摘除術が行われた.その経過観察中に胸部CTで第4胸椎左前方に増大傾向を示す21×14×26 mm大の内部均一で境界明瞭な腫瘍を認めた.MRIではT1で低信号,T2で高信号を示し囊胞性腫瘍を疑う所見であった.診断治療目的に胸腔鏡下後縦隔腫瘍摘除術を施行した.腫瘍は薄い被膜を有し,内部は液体成分の囊胞性腫瘍であった.周囲組織との癒着や神経との連続性は認めなかった.病理結果において,腫瘍の被膜は単層または複層の線毛円柱上皮で一部内腔へ乳頭状に突出していた.免疫染色ではEstrogen Receptor(+),Progesterone Receptor(+)でありMüller管囊胞と診断した.後縦隔Müller管囊胞は閉経や肥満,婦人科疾患の手術との関連性が指摘されており,本症例は卵巣腫瘍の術後に増大傾向を示した.

  • 木越 宏紀, 前原 孝光, 山本 健嗣, 三ツ堀 隼弘, 益田 宗孝
    2018 年 32 巻 6 号 p. 758-763
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    高IgE症候群による縦隔膿瘍が心囊内へ波及した症例を経験した.症例は23歳,女性.小児期に高IgE症候群と診断された.他院で縦隔膿瘍に対して抗菌薬治療をされていたが自己の判断で通院を中断していたところ,突然の胸痛を自覚して当院へ救急搬送となった.胸部造影CTで縦隔膿瘍,心囊液貯留を認め入院となった.心囊ドレナージを行い,心囊液からMethicillin-sensitive Staphylococcus aureus(MSSA)を検出した.心囊ドレナージと抗菌薬加療により炎症所見は改善したが縦隔膿瘍は残存したため右胸腔アプローチで胸腔鏡下縦隔膿瘍掻爬,ドレナージ術を行った.術中に採取した膿瘍液の培養検査からは心囊液同様のMSSAを検出した.抗菌薬治療を継続して術後9日目に自宅退院となった.

    高IgE症候群による縦隔膿瘍の感染コントロールのためには外科的ドレナージを考慮する必要がある.

  • 川本 常喬, 穴山 貴嗣, 宮崎 涼平, 廣橋 健太郎, 岡田 浩晋, 渡橋 和政
    2018 年 32 巻 6 号 p. 764-770
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    右上葉切除後遠隔期に生じた右下葉肺腫瘍に対する根治術式として肺葉切除が必要な場合には右中葉を温存すべきか右残肺全摘を施行すべきかの議論がある.当科で右中葉を温存した1例について文献考察と共に検討した.症例は74歳男性.18歳時に肺結核に対して右上葉切除歴があり,62歳時に慢性膨張性血腫に対して右下葉切除術を施行し,術後経過は良好であった.下葉切除後10年目頃から右中葉に肺炎を反復し,有瘻性膿胸を来たしたため開窓術を施行して感染を制御した.術後,日常生活動作は自立したが,時に右中葉の肺炎再燃を来たしている.過去の報告では残肺全摘と比較して右中葉を温存する方が患者の負担が少ないとされるが,本報告のように残存する右中葉の肺炎が問題となる場合がある.中葉温存症例では,術後早期のみならず遠隔期にも合併症が生じうることを念頭に置いて,長期間の経過観察を行うことが望ましい.

  • 上田 仁, 北原 大和
    2018 年 32 巻 6 号 p. 771-776
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    低肺機能患者に対する手術に際してその手術適応の決定は難しい.今回大量喀血のために低肺機能ながら肺葉切除を行った1例を経験したので報告する.症例は62歳男性.31歳で肺結核.51歳で気管支喘息を発症し在宅酸素療法を導入された.60歳で肺炎を生じた時右肺S9の結節があり肺扁平上皮癌と診断した.低肺機能であることより定位放射線照射をされたが,61歳の時に腫瘍の再増大があり化学療法を施行した.4コース目施行中腫瘍より出血し大量喀血した.ユニベント気管内チューブで気管内挿管後右中間気管支幹をバルーンでブロックし人工呼吸管理とした.出血源は腫瘍に侵された肺動脈と診断した.その後2回大量喀血があり,救命目的で右肺下葉切除術を施行した.術後は徐々に回復し術後11週目で在宅酸素療法ながら退院となった.現在術後9年目で外来通院中である.低肺機能であっても大量喀血時には手術療法を一考する価値があると思われる.

  • 有本 斉仁, 関原 圭吾, 横手 芙美, 長阪 智, 喜納 五月
    2018 年 32 巻 6 号 p. 777-780
    発行日: 2018/09/15
    公開日: 2018/09/15
    ジャーナル フリー

    症例は71歳男性.前医で右気胸に対して胸腔ドレナージが施行されていた.気漏が停止したと判断され,ドレーンが抜去された.しかし,ドレーン抜去後に気胸が再燃,皮下気腫も出現したため,再度,前胸部より28 Frトロッカーカテーテルを留置された.直後より著明に皮下気腫が増悪し,呼吸苦が出現した.CTでドレーンが右上葉内へ刺入されており,当院へ搬送された.来院後より呼吸不全であり,緊急手術となった.術中高度な気腫性変化を認め,肺門部へ向かって10 cmにわたりドレーンが刺さっていたため,肺の温存は不可能と判断し,右上葉切除となった.術後肺炎を起こしたが,保存的に加療,第32病日に在宅酸素を導入し,自宅退院となった.胸腔ドレーン挿入による医原性気胸は多くの場合,末梢の肺実質の損傷のみで保存的に加療することが可能であるが,肺葉切除を要する症例は稀であるため,文献的考察を交えて報告する.

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