日本呼吸器外科学会雑誌
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36 巻, 7 号
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巻頭言
原著
  • 吉安 展将, 佐藤 雅昭, 中島 大輔, 富岡 泰章, 渡辺 有為, 白石 武史, 舟木 壮一郎, 前田 寿美子, 朝重 耕一, 中島 崇裕 ...
    2022 年 36 巻 7 号 p. 722-734
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    【背景】2021年1月現在,本邦の肺移植手術において一酸化窒素(Nitric Oxide,NO)吸入療法は保険外診療である.本研究では肺移植時のNO吸入療法の使用状況とその安全性に関する実態調査を行った.

    【方法】2015年1月1日から2019年12月31日の間,本邦で行った肺移植手術症例,肺移植実施全9施設を対象にNO吸入療法の治療期間や副作用について調査した.

    【結果】対象期間に357例の肺移植が行われ,NO吸入療法は349例(98%)で施行された.NO初回投与濃度は中央値10 ppm,最大投与濃度は中央値20 ppmであった.術中から継続された症例が313例(90%)あり,中央値4日間使用されていた.酸素化や肺動脈圧の有意な改善効果を認めた.メトヘモグロビン血症等の副作用は15例(4%)で認められ,18歳未満の小児症例で有意に発症した.

    【結論】本邦の肺移植手術ではほぼ全例でNO吸入療法がなされ,一定の効果が示された.従って,肺移植時のNO吸入療法に対して,公的医療保険の適用が推奨される.

  • 常塚 啓彰, 本田 和暉, 谷口 雄基, 戸田 省吾
    2022 年 36 巻 7 号 p. 735-740
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    肺動脈血栓は深部静脈血栓症に伴う肺血栓塞栓症が広く知られているが,肺切除後には切離した肺動脈断端に血栓を認めることがある.しかし肺動脈断端血栓に関する報告は少なく不明な点が多く,本研究では肺切除後の肺動脈断端の血栓形成に関するリスク因子の検討を行った.2019年12月から2021年12月までに区域切除を含む解剖学的肺切除を実施し術後急性期に造影CTを撮影した連続58例を対象に後方視的に解析を行った.肺動脈血栓は10例(17%)に確認され,そのうち肺動脈断端血栓が9例で深部静脈血栓に伴う多発肺血栓塞栓症は1例であった.切離された肺動脈は122本で断端血栓を確認した9本の肺動脈の全てが自動縫合器によって切離され断端が有意に長い結果であった.本研究では術後急性期に肺動脈断端の血栓形成が確認され,肺動脈の断端距離が血栓のリスク因子になる可能性が示唆された.

  • 藤田 康博, 岡 壮一, 大﨑 敏弘
    2022 年 36 巻 7 号 p. 741-746
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    左室駆出率(left ventricular ejection fraction:LVEF)は最も一般的な左室収縮機能の指標である.2020~2021年の肺癌手術中LVEF 40%未満であった7例の周術期成績につき検討した.男性6例,女性1例,平均年齢75.7歳.1例のみ術前に軽度の心不全症状(NYHA II度)を認め,平均LVEFは31.7%(24.6~38.4%)で30%未満は2例(24.6%,25.2%)であった.LVEF低下の原因(重複あり)は,虚血性心臓病5例,心房細動4例,拡張型心筋症2例,心室頻拍1例,大動脈弁狭窄症1例であった.組織型は腺癌4例,扁平上皮癌3例,病期は0期1例,IA期3例,IIB期1例,IIIB期1例,IVA期1例,術式は肺葉切除3例,区域切除2例,楔状切除2例であった.術後合併症は1例(術前NYHA I度,LVEF 24.6%)に認め術後に心不全が増悪したが,NPPV(non invasive positive pressure ventilation)と利尿剤で改善した.全例が術後7~10日目に退院となった.術前に心不全症状が良好にコントロールできていればLVEF低下例でも周術期管理を慎重に行うことで安全に肺癌手術が可能であった.

症例
  • 賀来 良輔, 渡邊 敦子, 益本 貴人, 白鳥 琢也, 大塩 恭彦, 花岡 淳
    2022 年 36 巻 7 号 p. 747-753
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    炎症性筋線維芽細胞腫瘍(Inflammatory myofibroblastic tumor;IMT)は炎症細胞の浸潤を伴う筋線維芽紡錘細胞の増殖から成り,時にALK陽性となる稀な低悪性度腫瘍である.当院での肺原発IMTに対する2切除術を報告する.症例1:60代女性.右大腿脂肪肉腫の術後経過観察目的の胸部CTで左肺上葉に結節を指摘され,転移性肺腫瘍を疑い左肺部分切除術を施行した.腫瘍の免疫染色では特徴的な結果は得られなかったが,腫瘍は炎症細胞浸潤を伴う紡錘形細胞から成り,他疾患の除外および形態像からIMTと診断した.症例2:20代女性.健診の胸部X線写真で異常陰影を指摘.胸部CTで右肺中葉に肺動静脈を一部圧排する腫瘤を認め,胸腔鏡下生検を先行した.腫瘍は炎症細胞浸潤と紡錘形細胞の増殖を認め,ALK陽性だった.形態学的診断および除外診断によりIMTと診断し,右中下葉切除術を施行した.

  • 山本 沙希, 森田 理一郎, 水谷 栄基, 児玉 真, 阿部 佳子, 矢澤 卓也
    2022 年 36 巻 7 号 p. 754-759
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)はLangerhans細胞の浸潤,増生を主体とする稀な肉芽腫性疾患であり,成人では肺病変が多いが,全身発症も認める.今回,大腸癌術後に出現した肺結節がLCHであった症例を経験したので報告する.60歳代,男性.喫煙歴 20本/日×46年.5年前に大腸癌に対し大腸切除術を施行し,1年前より胸部CTで肺に多発結節を認め,肺転移疑いで胸腔鏡下肺生検を施行した.組織学的には,間質の線維化を背景に炎症細胞の集簇を認め,免疫染色ではCD1a陽性であり,LCHと診断した.その後皮膚生検でもLCHの所見を認めた.外来受診を自己中断するまで2年間は結節に変化なかった.LCHは画像上様々な所見を認め,画像所見での鑑別は困難であり,確定診断には胸腔鏡下生検が有用と考えられた.

  • 金野 智明, 二川 俊郎, 鈴木 健司
    2022 年 36 巻 7 号 p. 760-765
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は38歳女性,特記すべき既往はなし.月経翌日に胸部違和感があり,前医で左気胸を指摘され当院へ紹介となった.外来の通院加療で改善せず,入院で胸腔ドレナージを施行したが,肺瘻が持続するため胸腔鏡手術の方針とした.胸腔内所見は術前CTで確認された左S5の単発ブラ病変からの肺瘻が確認され,それ以外は横隔膜も含めて異常所見は認めず,ブラのみを部分切除した.病理では検体中央部の臓側胸膜肥厚部に短紡錘形~類円形小型細胞を認め,各種免疫染色(CD10,ER,PgR)がそれぞれ陽性所見を示し月経随伴性気胸と診断した.術後にホルモン療法を追加し,術後8ヵ月現在再発はなし.左側発症の月経随伴性気胸を病理学的に証明できる例は少なく,今回は鏡視下に肺瘻を伴う単発病変部位が特定され,病理学的な診断と治療ができたので報告する.

  • 梅田 将志, 三竿 貴彦, 妹尾 知哉, 鹿谷 芳伸, 青江 基
    2022 年 36 巻 7 号 p. 766-772
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    胸腺発生の神経内分泌癌は,胸腺癌の一亜型として分類され,前縦隔腫瘍の2~4%を占める.その中でも低分化で稀な大細胞神経内分泌癌は他の胸腺腫瘍と比較して予後不良と報告されている.今回我々は,胸腺原発大細胞神経内分泌癌に対して外科的切除を施行した一例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

    症例は72歳,男性.検診の胸部X線写真で異常陰影を指摘され近医を受診した.胸部造影CT検査で右前縦隔に不均一に造影される長径46 mm大の不整形腫瘤を認め,画像的に心膜浸潤が疑われた.精査加療目的に当科紹介となり,PET-CT検査で同部位にFDG高集積を認めた.正岡病期分類III期の胸腺癌疑いと診断し,胸骨正中切開で胸腺全摘術を施行した.病理組織検査では,大細胞神経内分泌癌,正岡病期分類II期と診断された.術後は補助化学療法としてCDDP+VP-16を4コース施行し,現在まで18ヵ月間無再発生存中である.

  • 内山 粹葉, 鈴木 恵理子, 吉井 直子, 渡邊 拓弥, 棚橋 雅幸
    2022 年 36 巻 7 号 p. 773-778
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は72歳男性.2012年に多発肺癌に対し右肺上葉切除および右肺S9+10区域切除術を施行した.その後,遅発性肺瘻による胸腔内感染を繰り返した.2019年に有瘻性膿胸を発症したため開窓術を行い4ヵ月後に閉鎖した.2021年に血痰が出現し,有瘻性膿胸再燃と診断,再度開窓術を行った.開窓術後に右胸腔内に増大する腫瘤が出現し,肋骨融解像もみられたことから膿胸関連悪性腫瘍を疑った.開窓部から繰り返し生検を施行し,血管肉腫の診断を得た.血管肉腫は診断に難渋することが多いが,慢性膿胸治療後の胸腔に腫瘤が出現した場合は,悪性腫瘍を疑い精査することが重要と考えられた.また,生検の際には十分な組織量の採取が肝要と考えられた.

  • 神津 吉基, 舘 良輔, 松永 健志, 橋爪 茜, 泉 浩, 鈴木 健司
    2022 年 36 巻 7 号 p. 779-784
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    今回我々は,異時性に血胸と喀血を来した肺原発炎症性筋線維芽細胞腫の1例を経験したので報告する.症例は26歳男性.2年前に右血胸の既往があった.今回,繰り返す喀血を主訴に当院を受診された.胸部造影CTでは右肺中葉に肺内出血を伴う不整形結節を認めた.臨床経過および画像所見から,同結節が異時性に血胸と喀血を来したと判断し,右肺中葉切除を施行した.切除検体の最終病理結果は炎症性筋線維芽細胞腫であった.肺切除後39ヵ月現在,再発を認めていない.

  • 岩﨑 雅, 濱田 哲, 松元 亮二, 井伊 庸弘
    2022 年 36 巻 7 号 p. 785-790
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は慢性心房細動と特発性間質性肺炎,慢性閉塞性肺疾患の既往を有し,プレドニゾロン及びアピキサバン内服中の81歳,男性.胸部CTで左下葉に1.7 cmの結節を認め,CTガイド下生検を施行した.アピキサバンは検査の24時間前に中止し,18ゲージの生検針にて1回穿刺した.穿刺時に気胸が発生し,12 Frアスピレーションチューブを挿入して検査を中止した.3時間後にショックバイタルになり,胸部単純X線及びCTで左大量血胸が確認され,緊急で胸腔鏡下血腫除去術及び止血術を行った.約600 mLの血液を除去し,左下葉穿刺部から非拍動性出血が認められ,焼灼凝固にて止血した.周術期合併症なく術後9日目に退院した.血胸はCTガイド下生検後の非常に稀な合併症であり,肋間動静脈や内胸動静脈に起因することが多いが,本症例のように肺実質から出血することがあるため.CT下生検後は血胸の発生も念頭におく必要がある.

  • 松岡 篤志, 鳥越 英次郎, 永喜多 敬奈, 神農 陽子, 平見 有二
    2022 年 36 巻 7 号 p. 791-798
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    肺類基底細胞型扁平上皮癌(basaloid squamous cell carcinoma;BSC)は肺癌取扱い規約第8版で扁平上皮癌の亜型に分類された比較的稀な組織型であり,不明な点も多い.手術でBSCと診断された3例を経験したので報告する.症例1は66歳,男性.左肺S9に腫瘤を指摘され経気管支生検で限局型小細胞肺癌と診断された.左肺下葉切除を行った結果,BSCと診断された.術後6ヵ月で再発を認めたが化学療法が奏功している.症例2は72歳,男性.左肺S3に結節を指摘され経気管支生検で非小細胞肺癌と診断された.左肺上葉切除を行った結果,BSCと診断され,無再発生存中である.症例3は69歳,男性.間質性肺炎加療中の定期検査で左肺S6に結節を指摘された.CTガイド下生検で肺扁平上皮癌と診断され,左肺S6区域切除を行った結果,BSCと診断された.術後は間質性肺炎の急性増悪のため永眠された.

  • 沖 智成, 山下 貴司, 望月 孝裕
    2022 年 36 巻 7 号 p. 799-804
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は58歳の男性で,Stage IA2の肺扁平上皮癌に対して左肺上葉切除を施行した.術後は順調に経過して退院となったが,術後41日目より右心不全症状が出現し,術後48日目に心タンポナーデの診断で緊急入院となった.心囊ドレナージで1400 mLの血性排液を認めたが,持続性の出血は見られず3日後にドレーンを抜去した.心大血管に異常はみられず,術中所見より心膜反転部を自動縫合器で噛み込んだことによる肺静脈断端からの心囊内出血と診断した.肺葉切除後の心タンポナーデは極めて稀であり,本機序が原因で術後1ヵ月以上経ってから発症した報告はない.心囊内操作を行っていない場合も発症する可能性があり,致死的となりうる重要な合併症であるため報告する.

  • 舘 秀和, 吉村 誉史
    2022 年 36 巻 7 号 p. 805-808
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は50代,女性.咳嗽を主訴に近医を受診し胸部異常陰影を指摘され当院紹介受診.胸部CTで左胸腔を占拠する15 cmの腫瘤を認めた.腫瘤に対してCT下生検施行後,胸腺癌,肺癌などを疑い左側方開胸で手術を施行した.腫瘍は周囲臓器との癒着や浸潤を認めず,術中所見から胸腺原発と判断し,胸腺左葉と右葉の一部とともに腫瘍は完全摘出した.病理組織診断は胸腺腫,WHO分類type B3,正岡分類I期で,術後24ヵ月経過しているが再発は認めていない.巨大胸腺腫は報告が少なく,側方開胸で切除した1例を経験したので報告する.

  • 岩井 英頌, 小野 貴史
    2022 年 36 巻 7 号 p. 809-814
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は41歳,男性.左胸部痛を主訴に近医を受診し,MRIで左第4肋骨にT1低信号,T2高信号を示す結節像を指摘され当科へ紹介となった.CTで同部位に内部低吸収と骨破壊像を認め,PET-CTでは異常集積を認めたため肋骨原発の悪性腫瘍を疑い,診断と治療目的に肋骨切除と胸壁再建術を施行した.病理診断ではLangerhans細胞組織球症の最終診断であった.肋骨のみに発症したLangerhans細胞組織球症は稀であり,病変の再発をきたした報告もあるため慎重な経過観察が必要と考える.

  • 佐藤 修二, 稲垣 卓也, 岡本 友好, 大塚 崇
    2022 年 36 巻 7 号 p. 815-820
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は82歳男性.75歳時に前立腺癌に対して根治的前立腺全摘術を施行された.術前の血清PSA値は6.71 ng/mLと高値であったが,術後は0.1 ng/mL以下を維持していた.しかし術後4年8ヵ月目に0.27 ng/mLと上昇しPSA再発と診断された.術後5年9ヵ月目には胸部CT検査で右肺下葉に10 mm大の結節が認められ,術後7年2ヵ月目には14 mm大に増大したため手術適応とした.前立腺癌肺転移を疑ったが原発性肺癌の可能性も考慮して胸腔鏡下右下葉切除,リンパ節郭清術を施行した.病理組織所見は腺癌の形態を示し,免疫組織化学染色でPSA陽性が認められたため前立腺癌肺転移と診断された.

    前立腺癌の孤立性肺転移は稀であるが,血清PSA値のモニタリングはその発見に有用であり,根治的前立腺全摘術後に出現した肺結節に対してはPSA 0.2 ng/mL以上をPSA再発として,肺転移を疑うことが重要である.

  • 後藤 まどか, 高田 莉央, 市川 靖久, 坪内 秀樹, 川角 佑太, 森 正一
    2022 年 36 巻 7 号 p. 821-826
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    症例は75歳男性.X-7年,健診胸部異常影にて前医を受診し,胸部CTで左胸腔にextrapleural sign陽性の最大径2.0 cmの結節を認めた.X年の再診時には2.9 cmに増大を認め,FDG PET-CTでは結節に一致しFDG集積を認めた.孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor:SFT)などを疑い,胸腔鏡下に手術を施行した.結節は左肺下葉より有茎性に隆起し,周囲組織との癒着を認めず左肺下葉部分切除により病変を摘出した.病理組織学的に異型度の低い領域に加え,高度の核分裂像を呈する異型の強い領域を認める臓側胸膜発生の脱分化型SFTと診断した.脱分化型SFTは従来のSFTに比べ高率に再発・転移を認め予後不良で慎重な経過観察が必要である.非常に稀な脱分化型SFTの1切除例を経験したため報告する.

  • 杉浦 裕典, 安藤 紘史郎, 福山 馨, 北原 直人, 門田 嘉久
    2022 年 36 巻 7 号 p. 827-832
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    孤立性線維性腫瘍は稀に低血糖を生じる.今回腫瘍発見後,胃癌の周術期に遅発性に低血糖を生じた症例を経験したので報告する.80歳男性.近医での胸部X線で左下肺野異常陰影を指摘され,気管支鏡下生検で孤立性線維性腫瘍と診断された.術前精査で進行胃癌が発見されたため先行して胃全摘術を施行された.胃癌術前より低血糖を認めていたが無症候性であった.術後にも低血糖を認めたが食事療法で対応されていた.退院後に意識障害で救急搬送,著明な低血糖を認めた.孤立性線維性胸膜腫瘍による腫瘍随伴症状としての低血糖と考え腫瘍切除術を施行したところ低血糖は改善した.術前の血清中に大分子量インスリン様成長因子II(Insulin-like growth factor II:IGF-II)の存在が示され,腫瘍随伴症状としての低血糖と診断した.孤立性線維性胸膜腫瘍による低血糖は経過中に増悪することがあり注意を要する.

  • 奥谷 大介, 片岡 正文
    2022 年 36 巻 7 号 p. 833-837
    発行日: 2022/11/15
    公開日: 2022/11/15
    ジャーナル フリー

    75歳,男性.間質性肺炎の既往あり.会合に出席後SARS-CoV-2陽性と判明したが無症状であった.発症7日目に呼吸困難を自覚した.CTでは,肺癌が疑われる4.1 cmの腫瘍が右下葉に認められた.また両側肺野にびまん性スリガラス陰影や左右底区に優位な網状影が認められた.COVID-19の重症度は中等症IIと評価され入院加療した.入院17日目に退院となった.

    経過観察のため発症7週後に施行した胸部CTではスリガラス陰影の改善が確認され,全身検索ではリンパ節転移や遠隔転移などを疑う所見はなかった.発症13週後に右下葉切除術が施行された.術後7日目,在宅酸素療法を導入して退院となった.術後4ヵ月経過した頃より在宅酸素療法が不要となった.手術1年後の呼吸機能では1秒量は術前と同じレベルであった.CTでも間質性肺炎の増悪は認めず,無再発生存中である.

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