日本呼吸器外科学会雑誌
Online ISSN : 1881-4158
Print ISSN : 0919-0945
ISSN-L : 0919-0945
6 巻, 6 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
  • 野木村 宏
    1992 年 6 巻 6 号 p. 628-633
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    術後の横隔膜機能と経横隔膜中心静脈圧の関連性について, 動物実験にて検討した.
    雑種成犬を用い全麻・自発呼吸下に上腹部正中切開で開腹した.全麻・自発呼吸 (室内気) 下における手術前後の食道内圧 (Pes), 胃内圧 (Pga), 上大静脈圧 (PSVC), 下大静脈圧 (PIVC) を測定し, 各圧の呼吸による変化 (ΔP) から経横隔膜消化管圧の変化ΔPdi (=ΔPga-ΔPes) と経横隔膜中心静脈圧の変化ΔP'di (=ΔPIVC-ΔPsvc) およびΔPga/ΔPdiとΔPIVC/ΔP'diを求め比較した.
    ΔPdi, ΔP'di共有意に低下し (p<0.01, p<0.05), 各々の変化率は, -37.25±20.17%と一23.25±10.30%で有意な相関を示した (r=0.85, p<0.01).ΔPga/ΔPdi, ΔPIVC/ΔP'diは共に有意な変化は無かった.
    経横隔膜中心静脈圧を術後横隔膜機能の連続モニターの指標として臨床応用する可能性が示された.
  • 加勢田 静, 西村 嘉裕, 酒井 忠昭, 池田 高明
    1992 年 6 巻 6 号 p. 634-640
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    29例の転移性肺腫瘍に対し, 両側開胸による転移巣の切除を行った.初期の11例では, 異時的に後側方開胸を行ったが, 呼吸不全に陥ったり, 在院期間が長くなる症例が多かった.また, 35ヵ月以内に全例死亡し, 治療成績も不良であった.そこで, 後期の18例では, 両側同時開胸を行った.うち7例では, 葉切除を行ったが, 切除範囲が大きかったにもかかわらず, 術後, 重篤な呼吸器合併症は起こらなかった.また, 18例中10例が, 5~73ヵ月生存中であり, 一側のみ開胸した転移性肺腫瘍症例の成績と比べ, 遜色がなかった.18例のアプローチは, 胸骨正中切開が1例で, 残りの17例は後側方開胸を行った.胸骨正中切開は, 手術時間や呼吸機能の面では利点があるが, 背側の病変の処理が困難で, 転移巣が遺残する危険性がある.一方, 両側後側方開胸は, 術後の癖痛や, 呼吸機能障害の問題があるが, 硬膜外麻酔で十分な除痛を図ることにより, これらの難点を克服することができた.
  • 五十部 潤
    1992 年 6 巻 6 号 p. 641-646
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    少流量の体外循環で二酸化炭素を効率良く除去するため, 透析器を用い二酸化炭素を重炭酸イオンとして除去する装置を試作した.二酸化炭素除去に対する本法の効果を検討するため, 気道内持続的陽圧 (CPAP) をかけた呼吸停止犬を実験モデルとして検討した.
    雑種成犬を麻酔後, 気管内挿管し100%酸素吸入, 10cm水柱のCPAPをかけ筋弛緩剤にて呼吸停止させ, 15分後に体外循環を開始した.体外循環は上大静脈より脱血し股静脈より還血する静脈一静脈バイパスで行った.脱血された静脈血は透析器にて二酸化炭素を, 主として重炭酸イオンの形で除去した.体外循環の血流量は15ml/kg/分とした.今回の実験では体外循環中の動脈血酸素分圧は350 mmHg以上, 二酸化炭素分圧は90mmHg以下を保っており, 血液100mlあたり30ml以上の二酸化炭素を除去することができた.体外循環中に気道より排出される二酸化炭素の量はごくわずかであり, ほとんどの二酸化炭素はECCO2Rにより除去された考えられた.
  • 柳川 昌弘, 坪田 紀明, 八田 健, 吉村 雅裕, 室谷 陽裕
    1992 年 6 巻 6 号 p. 647-654
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    広背筋温存開胸法を原発性肺癌手術症例に実施しその有用性について検討した.対象は1988年9月から1989年7月までの原発性肺癌手術症例53例で, 無選択的に広背筋を温存し開胸を行った31例 (温存群) と広背筋を切断し標準開胸を行った22例 (切断群) に分け, 両群の比較検討を行った.開胸創は2つの開胸器により上縦隔のリンパ節郭清に十分な大きさとなった.肺機能は術後において両群間に差は認められず, 本法の利点は術後鎮痛剤の使用量の軽減に留まった.温存群では皮下ドレーン抜去後に浸出液の再貯留 (seroma) が4例 (12.9%) に生じたがいずれも間欠的穿刺吸引で治癒した.本開胸法は術後疹痛の軽減, 切開創の外観などに有利であるが原発性肺癌手術の標準開胸法の1つになり得るという積極的な緒論には到らなかった.
  • 芦野 有吾, 谷田 達男, 小野 貞文, 佐久間 勉, 藤村 重文, 小池 加保児
    1992 年 6 巻 6 号 p. 655-660
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺切除術後肺機能の予測に際し, 術前の肺機能障害が如何なる影響を与えるか検討した.肺葉切除術を施行した肺癌症例の内, 腫瘍の直径5cm以下の症例を対象とし, 術前の肺機能から, 拘束性障害を合併した群 (拘束群;13例) と正常な肺機能を有する群 (対照群;41例) に分け比較検討した.術前に, 肺機能, (FVC, FEV1.0, THLC, FRC, RV, DLco), 及び肺血流分画を測定し, 肺血流分画と切除予定区域数より術後の肺機能予測値を求めた.この予測値と術後の肺機能実測値間の相関, 及び一次回帰直線を求め, 以下の成績を得た.予測値と術後測値の相関は両群で有意に高く, 2群間の相関に差は認められなかった.一次回帰直線の係数は, FVC, FEV1.0, TLCにて拘束群で対照群より高値で, FRC, RV, DLcoでは低値であり, 2群の回帰直線に平行性は認められなかった.術前肺機能障害の有無は術後肺機能値に影響を及ぼすと考えられた.
  • 乾 健二, 村山 隆紀, 寺田 泰二, 松井 輝雄, 久米川 雅之, 玉井 直, 瀬尾 憲正, 新宮 興
    1992 年 6 巻 6 号 p. 661-667
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    昭和63年1月~12月までの1年間に救急部・集中治療部に入室した乳幼児62例中10例 (16.1%) に気管支ファイバースコープを施行した.年齢は1ヵ月から8歳, 平均1歳11ヵ月で, 原疾患は先天性上気道異常が3例, 気管支異物2例, 肺炎1例, また術後の無気肺や気道出血の合併が4例であった.診断面では上気道異常の確認, 気管支異物の発見, 手術適応の決定や手術結果の確認, 無気肺の原因や気道出血部位の推定にきわめて有用であった.治療面では Bronchial Toilet 7例と経鼻挿管のガイド4例が多く, 特殊例として先天性気管狭窄例で気道確保のため PTCA用カテーテルを用いた狭窄部拡張術を行った.酸素投与, 気管内挿管, ECGモニター, パルスオキシメーターのもとで気管支ファイバースコープは安全に行われた.今後, 機器の発達とともに呼吸器外科領域での乳幼児に対する気管支ファイバースコープの機会が増加すると予測されるので我々の経験を報告した.
  • 術後長期観察の重要性について
    清水 信義, 丸山 修一郎, 佐野 由文, 牧原 重喜, 松谷 隆啓, 山下 素弘, 古城 資久, 伊達 洋至, 原 享子, 安藤 陽夫, ...
    1992 年 6 巻 6 号 p. 668-675
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸腺腫104例の外科治療成績を報告した.症例は男性49例, 女性55例で1期が40例, II期が13例, III期が28例, IV期が23例であり上皮細胞型が26例, リンパ球型が30例, 混合型が48例であった.上皮細胞型は進行例が多くあったが, 切除出来たものでは他の組織型と予後に差はなかった.1期の予後は良好であったが, III期IV期の進行例でも5年以上の生存例が38%であった.しかし術後5年を経ても再発するものがあり, 胸腺腫では術後10年以上の長期の観察が必要であった.IVB期の予後は不良であった.
  • 中山 治彦, 加瀬 昌弘, 向井 克彦, 山形 達史, 飯島 京太, 富山 泉, 諸星 隆夫, 松本 昭彦
    1992 年 6 巻 6 号 p. 676-682
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    有瘻性MRSA膿胸の症例に対し, 二期的手術を行い良好な結果が得られたので報告した.症例は56歳, 男性.MRSA肺炎の診断にて内科で加療中, 肺化膿症・膿胸へ移行し, 当科受診.閉鎖性ドレナージにて喀痰量・菌量の減少をみたが, air leakが続くため, 有瘻性膿胸の診断で2ヵ月後に開窓術を施行.膿胸腔の浄化を徹底して計り, 開窓術より6ヵ月後に有茎大網弁を充填した.有茎大網弁は胸部外科領域全般にわたって, 合併症の予防・術後感染症の治療に用いられ有用であるとされている.しかし, 不成功に終わった症例の報告もあり, 難治性かつ重篤化しやすいMRSA膿胸に対しては感染巣の浄化が重要である事を強調した.
  • 術前診断 (画像所見) を中心に
    平井 利和, 小玉 仁, 鯉渕 幸生, 遠藤 敬一, 森下 靖雄
    1992 年 6 巻 6 号 p. 683-690
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    検診により初めて胸部異常陰影を指摘され, 精査の結果画像上腫瘤陰影を示し, 肺癌との鑑別が問題となり, 外科的切除により確診した肺犬糸状虫症の3切除例を経験し報告した.
    胸部X線写真を検討すると, 1) 単純像では辺縁比較的不鮮明な淡い腫瘤陰影である, 2) 断層像では辺縁明瞭な類円形のX線密度の高い均等な陰影である, 3) CT像では胸膜直下の楕円形の陰影で区域あるいは亜区域の肺動脈が真直ぐに腫瘤に向かっている, 楕円の長軸は肺動脈の走向と一致したいわゆるparallel signを示す, などの特徴が認められた.しかし肺癌との鑑別には絶対的な特徴とは言えない.
    免疫血清学的診断の確立が望まれる一方, 胸部腫瘤陰影の診断には, 本症を念頭におくことが重要と考える.
  • 片岡 和彦, 西山 祥行, 最勝寺 哲志, 西村 光世, 高橋 健郎
    1992 年 6 巻 6 号 p. 691-698
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    Pryce I 型肺分画症の1例を報告する.症例は31歳男性で, 検診で胸部異常陰影を指摘された.CTにて異常血管を示唆する所見を認め, 肺動脈造影にて左肺底区の肺動脈を欠如し, 大動脈造影にて胸部大動脈より左肺底区を灌流する異常動脈を認めたため, PryceI型肺分画症と診断した.開胸すると異常動脈は径18mmと太く, 蛇行しながら左肺底区を灌流しており, これを処理した後, 左下葉切除を施行し, 経過良好であった.病理学的には, 異常動脈のアテローム変性と, 肺底区末梢の肺動脈に再疎通を伴った閉塞病巣を認めた.
    Pryce I 型肺分画症は比較的まれで, 本邦報告例は19例であった.若年者, 男性に多く, 異常動脈は15例が胸部大動脈に起始し, ほとんどが1本で, 根部の太さは自験例の18mmが最大であった.灌流部位は全例下葉で, 左が13例と多く, 治療は異常血管の切断と, その灌流領域を含んだ肺切除がなされていた.
  • 小西 孝明, 畠中 陸郎, 松原 義人, 小鯖 覚, 船津 武志, 池田 貞雄
    1992 年 6 巻 6 号 p. 699-705
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は53歳の男性.1967年, 33歳時に左上肺野に異常陰影を指摘され, 1968年に左肺上葉切除術を受け, 細気管支肺胞型腺癌と診断された.18年後の1986年には左下葉に非定型抗酸菌症を併発し, 内科的治療では軽快せず荒蕪肺に陥り, 肺全摘術を受けた.その後経過観察中であったが初回肺癌手術から20年目の1988年10月に胸部X線で右下肺野に円形陰影が発見された.確定診断は得られなかったが, 肺癌を疑い1989年1月右開胸術を行った.その結果, 細気管支肺胞型腺癌と診断し, 肺機能温存を考慮し右S10区域切除術を行った.術後肺水腫をきたし, 一時補助呼吸を要した.第2癌術後3年の現在再発はみられていない.
    今後さらに異時性肺多発癌が増加してくると思われるが, 肺全摘術後の低肺機能であっても, 術前後の慎重な管理により縮小手術が可能であり, 予後の改善が期待できると考える.
  • 大崎 敏弘, 岡本 隆史, 濱田 正勝, 波戸岡 俊三, 花桐 武志, 岡林 寛, 光冨 徹哉, 白日 高歩
    1992 年 6 巻 6 号 p. 706-711
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    後縦隔から後腹膜にかけて発生した巨大リンパ管腫の1例を経験した.症例は31歳女性で多発性筋炎の治療中に胸部異常陰影を指摘された.次第に腫瘤陰影の増大と前胸部圧迫感, 仰臥位時呼吸困難が出現し右開胸で手術を行なった.腫瘍は後縦隔から後腹膜および対側後縦隔に広範に進展し易出血性であった。食道は完全に取り囲まれていた.長期ステロイド使用症例であり, 腫瘍のひろがりから全摘は不可能と判断し部分切除を行なった.病理診断は海綿状リンパ管腫であった.術直後より症状はなくなり術後5ヵ月現在腫瘍の増大傾向はない.縦隔リンパ管腫は比較的まれな疾患で本邦では自験例を含めて66例の報告がある.
  • 太田 伸一郎, 長島 康之, 稲葉 浩久, 豊田 太, 影山 善彦, 中島 信明, 鈴木 春見
    1992 年 6 巻 6 号 p. 712-718
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    化学療法を先行させて治療を行った浸潤型胸腺腫3例を報告した.症例1 : 31歳, 女性.多角形胸腺腫疑い.CDDP・CPA・VCRによる化学療法と放射線照射の併用療法で著効を得た.症例2 : 64歳, 男性.混合形胸腺腫CDDP・VP-16による化学療法で奏効し, 放射線照射30Gyを行った後, 心膜・左腕頭静脈・左肺の一部を合併切除し腫瘍を摘出.摘出病理標本では広い範囲に線維化がみられ, 術前治療の効果が認められた.術後, 浸潤部周囲へ30Gyの照射を追加した.症例3 : 65歳, 男性.紡錘形胸腺腫.CDDP・VP-16による化学療法を行うも不変で, 左右腕頭静脈・上大静脈・心膜・右肺一部を合併切除し腫瘍を摘出.人工血管による血行再建を行った.摘出病理標本では一部に線維化を認めるのみであった.術後に浸潤部周囲へ40Gyの放射線照射を行った.
    浸潤型胸腺腫に対し, 化学療法を治療の第一選択として試みてみる価値はあると思われた.
  • 川村 光夫, 坂田 勇司
    1992 年 6 巻 6 号 p. 719-723
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 19歳男性で胸痛, 呼吸困難を主訴として救急車にて来院した.著明な呼吸困難を呈し, 胸部X線写真にて, 両側虚脱III度の自然気胸と診断された.直ちに, 両側胸腔のドレナージ施行し, 呼吸困難は改善, そのまま入院となった.入院後も両側胸腔ドレーンからのair-leakが続き, 両側同時発症であることから, 両側腋窩開胸にて一期的にブラを切除した.左右の肺尖部に, それぞれ50×35mm, 45×35mm大のブラが認められ, これを切除した.術後は, 特に問題なく第12病日に退院した.
    両側同時気胸において, 診断の遅れは, 致命的になることから, 迅速な診断も処置が必要であり, 両側一期的ブラ切除術の適応である.
  • 武田 恒弘, 山口 豊, 柴 光年, 籾木 茂, 関根 康雄, 光永 伸一郎, 安川 朋久, 鈴木 洋人, 青柳 壽幸, 尾辻 瑞人, 吉田 ...
    1992 年 6 巻 6 号 p. 724-730
    発行日: 1992/09/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は55歳, 男性.1990年7月, 右下葉の扁平上皮癌で右下葉切除術を施行, 術後病期はpT1N0M0Stage Iであった.約1年半後血痰が出現し, 気管支鏡検査にて, 右上葉支入口部から気管下部にかけて腫瘍性病変認め, 生検にて扁平上皮癌と診断され, 1991年3月手術を施行した.まず, 正中切開にて心嚢を開けて右肺動脈起始部を処理し, 続いて左側臥位とし, 気管は気管分岐部より3軟骨輪口側で, 左主気管支は分岐部の高さで切除し, 気管・左主管支を端端吻合する右completion sleeve pneumonectomyを行った.吻合部は胸腺の脂肪組織で被覆した.術後は特に合併症もなく, 第50病日に退院した.稀なcompletion sleeve pneurnonectomyの1例につき報告し, 致命的となる可能性もある肺動脈からの出血を回避するために, 正中アプローチによる肺動脈主幹の確保が有用であることを述べた.
feedback
Top