日本呼吸器外科学会雑誌
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7 巻, 1 号
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  • 中尾 丞, 平田 恵三, 遠近 裕宣, 石井 俊世
    1993 年 7 巻 1 号 p. 2-9
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺一葉切除手術侵襲の影響による免疫担当細胞の量的, 質的, 機能的変動をみた.リンパ球数は術後12時間に最も減少し7日目には術前値に回復した.リンパ球サブセットでは12時間後CD4+の比率の減少がみられた.またCD4+2H4+ (suppressor inducer T cell), CD4+2H4- (helper T cell), CD4+4B4+ (helper inducer T cell) の比率の減少も認められた.これらのサブセットの減少は2日目には術前の比率に戻った.PHA幼若化率, NK活性は12時間後に低下し, 7日目の測定で術前値に回復した.しかしNK活性は14日目, 21日目に再び低下を示した.手術による免疫能の低下は, 侵襲に対し生体のホメオスターシスを保つための一連の生体の反応と考えられるが, 担癌体にとっては癌の進行, 転移の促進など不利な作用につながるので, 余分な免疫抑制を招かないように配慮された術中, 術後の処置, 管理が要求される.
  • カルボプラチンと蒸留水との比較
    内田 達男, 中川路 桂
    1993 年 7 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺癌手術時の胸腔内抗癌剤投与の意義を検討し, 蒸留水による胸腔内洗浄と有効性につき比較した.方法は8例の肺癌症例にカルボプラチン450mgを術中胸腔内に投与し体内動態を調べた.結果は投与2時間後, 4時間後の血中全プラチナ濃度は平均4.5ug/mlと2.0ug/mlであった.縦隔リンパ節内プラチナ量は1.0ug/g (wet) であった.これらの濃度の有効性を評価するために, 肺癌培養細胞7種類に対しin vitro感受性試験を行ったところ, カルボプラチンの全種類に対するIC50は50ug/mlであった.一方肺癌切除腫瘍組織と培養細胞各5種類のうち9種類は, 5分間蒸留水に浸すことで50%以上の抑制が可能であった.また蒸留水による5分間の胸腔内洗浄では, 術後合併症の増加や電解質への影響はみられなかった.以上より術中のカルボプラチン450mgの胸腔内投与は5分間の蒸留水による胸腔内洗浄で代用可能と思われた.
  • 加藤 真司, 永田 昌久, 塩井 健介, 上床 邦彦, 別府 和重, 加藤 量平, 土岡 弘通
    1993 年 7 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    過去6年間に当教室において経験した胸部外科領域での有茎筋肉弁の使用例10例を対象として, 筋肉弁の有用性を検討した.男性7例, 女性3例で平均年齢は55.3歳 (42~64歳) であった.筋肉弁の使用目的別では, 胸壁再建4例, 感染腔充填6例であった.再建例は, すべて肋骨切除 (1~4本) を行い, うち2例にMarlex meshを併用した.充填は, すべて感染腔の閉鎖が目的であり, うち2例は気管支瘻を併発しており有茎大網を併用した.疾患別では, 慢性膿胸2例, 胸壁腫瘍2例, 胸壁流注膿瘍2例, 術後縦隔炎1例, 肺摘除術後肋骨軟骨炎1例, 乳癌局所再発1例, 胸囲結核1例で, 使用した筋肉は広背筋3例, 大胸筋3例, 肩甲下筋2例, 前鋸筋2例, 腹直筋2例であった.全例, 手術創の一次治癒が得られ, 術後合併症はみられなかった.有茎筋肉弁は, 広範囲の胸壁再建および感染腔充填に対し, 第一に選択される材料と考えられた.
  • 小檜山 律, 田中 真人, 三苫 有介, 宮元 秀昭, 羽田 圓城
    1993 年 7 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    52歳女性が喀血の精査を主訴に来院.左上葉に厚壁空洞があり喀痰よりアスペルギールスを検出, 肺アスペルギールス症 (肺内型) と診断, 術前術後に抗真菌剤投与を併用しつつ左上葉切除術を行い治癒した.当院では, 本例を含め過去3年間に11例の肺アスペルギールス症の手術を経験した.肺内型7例のうち5例は, アスペルギールスを遺残させることなく完全切除ができ治癒した.残りの2例はアスペルギールス肺炎をコントロールしえずに肺外型に移行した.肺外 (膿胸) 型4例のうち2例は除菌に成功し根治術を施行し治癒したが, 他の2例および肺内型から移行した2例は除菌できず死亡した.肺内型の治療は菌の遺残の有無に留意し, 手術を第1選択とすべきであり, 肺外型は除菌が困難なので, その手術適応および術式の選択は慎重にすべきである.
  • 原 聡, 廣畑 健, 田中 順也, 山田 博生, 吉田 年宏, 安富 正幸
    1993 年 7 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    多発性気腫性肺嚢胞を合併したvon Recklinghausen病に異時性に肺癌が発生した症例を経験したので報告する.症例は39歳の男性で, 皮膚にはcafe au lait斑を認めた.37歳時に気腫性嚢胞のため縫縮術をうけ, その2年後に縫縮部位に腫瘍陰影を認め, 精査の結果, 原発性肺癌と診断された.von Recklinghausen病という基礎疾患に肺嚢胞を合併し, その後に肺癌が発生した可能性がある.若干の文献的考察を加えたが, 気腫性嚢胞を併存するvon Recklinghausen病では, 肺癌を念頭において注意深く観察する必要がある.
  • 高原 秀典, 藤野 昇三, 鈴村 雄二, 山下 直己, 朝倉 庄志, 加藤 弘文, 森 渥視
    1993 年 7 巻 1 号 p. 38-44
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺内に47年間残存した銃弾に近接して発生した肺癌の一症例を経験したので報告する.症例は67歳男性で血痰を主訴に近医を受診した.第2次世界大戦中の1943年に右胸部に被弾した既往歴を持っており, 銃弾は鎖骨下部に命中し, 胸腔内に残留していた.胸部写真で右肺野に径1cmの異物陰影とこれを中心とした腫瘤陰影を認めた.気管支鏡検査の結果, 扁平上皮癌と診断され, 治療目的にて当科紹介となった.術前照射, 気管支動脈内制癌剤注入の後に手術を施行したが, 摘出標本で同一肺葉内に異物 (銃弾), 肺結核病巣, 肺癌がそれぞれ近接して証明された.術前治療により, 肺癌病巣を中心に強い修飾が加わっており, 正確な検索は困難であったが, 本肺癌の発生には, 銃弾の存在とその周辺における瘢痕が大ぎく関与しているものと考えられた.
  • 中山 光男, 佐藤 孝次, 鳥潟 親雄
    1993 年 7 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺炎を契機として発見された先天性気管支閉鎖症の1例を報告する.症例は26歳の男性で, 咳嗽, 発熱, 右胸痛を主訴として近医を受診した.投薬を受けて症状は一時軽快したが, 再び右胸痛が出現したため当院に入院した.胸部X線写真では右上肺野に浸潤影がみられ, 胸部CTでは右S2を中心とした浸潤影と, 浸潤影内に大小多数の嚢胞と拡張した気管支を認めた.気管支鏡および気管支造影では, 右B2に相当する気管支が認められず, 閉塞性肺炎を併発した先天性気管支閉鎖症と診断した.抗生物質を投与したが浸潤影は消失せず, 右上葉切除を施行した.切除標本では, 右S2の肺部門に粘液が充満し拡張した気管支を認め, 末梢肺は閉塞性肺炎を伴う肺気腫像を呈していた.拡張した気管支の中枢側は盲端に終っていた.
  • 田中 紀章, 仁科 拓也, 小林 元壮
    1993 年 7 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    気管支断端瘻は, 人工呼吸管理下に発生するとその対応は難渋を極める.73歳男性, 右下葉腺癌に対して中下葉切除を施行したが術後肺炎を合併し人工呼吸管理を要するに至った.術後22日目, 断端気管支瘻, 膿胸が発生, 胸腔ドレナージ, 大網被覆術を施行した.しかしPEEPによる陽圧呼吸により破覆も破綻し, やむなくバルーンカテーテルを経気管支的に通し, 1.5mlの空気で充満して断端を閉鎖した.3ヵ月後バルーンを解除, 胸腔ドレーンからの空気漏れのないことを確認, カテーテルを抜去した.その後胸部X線上変化なく, 気管支瘻, 膿胸の治癒と認めた.
  • 泉 浩, 高橋 渉, 山田 康治, 堤 正夫, 石川 創二, 須田 耕一
    1993 年 7 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は, 57歳男性.主訴は咳及び血痰, 胸部X線上右下肺野内側に無気肺様の陰影を指摘された.既往歴として8年前 (49歳時) 腎癌にて左腎摘出術を受けていた.気管支鏡検査では右下葉枝に内腔を閉塞する腫瘍があり, これを生検したが毛細血管の多いtumorが認められたのでangiomatous tumorが疑われたが確定診断には至らなかった.手術は右下葉切除を施行.切除標本では, 原発部位は右下葉sub-superiorの気管支で肺内の腫瘍の大きさは約1.5cm程度でこれより下葉気管支内腔にポリープ状に進展していた.病理組織所見でポリープ状の突出部は扁平上皮に覆われその下層にclear cell car-cinomaの病巣があった.術後補助療法としてINF-α (Interferon) を使用した.
  • 吉澤 潔, 福本 泰三, 森田 純二, 三浦 一真, 環 正文, 石倉 久嗣
    1993 年 7 巻 1 号 p. 62-69
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は42歳の男性で, 右肺尖部の気腫性嚢胞を指摘され, 経過観察中, 嚢胞壁の肥厚と腫瘤形成を認めた.経皮生検にて肺癌と診断されたため, 右肺上葉切除術を行った.HE染色の光顕検索では大細胞癌と診断されたが, 免疫組織化学的検索にて神経内分泌腫瘍の性格があきらかとなり, 電顕観察にて多数のdense-core granulesを認めた.最終的にlarge cell neuroendocrine carcinoma of the lungと診断された.神経内分泌顆粒を有する肺癌は, かつては小細胞癌とカルチノイドに限定されるかの如く考えられていたが, 1980年代初頭より扁平上皮癌や大細胞癌の中にもわずかではあるが見出されるようになった.組織分類の再考が提唱されているが, 未だコンセンサスは得られていない.若干の文献的考察と共に報告する.
  • 中山 光男, 佐藤 孝次, 鳥潟 親雄
    1993 年 7 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    頸縦隔型脂肪肉腫の1例を経験したので報告する.症例は43歳の男性で, 頸部の腫脹, 嚥下困難を主訴として当院耳鼻咽喉科を受診し, 頸部から後縦隔にかけての腫瘍を疑われて外科に入院した.触診上, 頸部に大きな腫瘤を触知し, 頸胸部X線写真および頸胸部CTでは頸部から後縦隔にかけ椎体の前面から側面に接して左右に広がる腫瘤影を認めた.下咽頭, 喉頭, 食道, 気管は前方に偏位していた.腫瘤の内部は不均一で, CT値-44HUの低濃度の背景のなかに高濃度の索状構造が数多くみられた.以上の所見から, 頸縦隔型脂肪肉腫を疑い手術を施行した.腫瘍は被膜に包まれ, 周囲への浸潤傾向に乏しく, 頸部U字切開および胸骨正中切開で摘出し得た.組織学的には分化型脂肪肉腫であった.術後補助療法は行わず, 1年9ヵ月経過した現在, 再発の徴候なく健在である.
  • 笠島 学, 杉山 茂樹, 松井 一裕, 山本 恵一, 龍村 俊樹, 池谷 朋彦, 美濃 一博
    1993 年 7 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    原発巣が不明である巨細胞癌の縦隔リンパ節転移を摘出後3年11ヵ月経過した現在, 担癌の兆候なく生存中である41歳男性症例を経験した.リンパ節転移で発見される原発不明癌は大部分が頸部リンパ節転移であり, 縦隔リンパ節だけに転移する例は稀である.原発不明癌の予後は極めて悪く, このような長期生存中の例は非常に珍しい.本症例では, 縦隔腫瘍の組織像はリンパ節構造の大部分を破壊して増殖する巨細胞癌であった.胸腺癌は否定され, 免疫組織化学的に悪性リンパ腫である可能性も否定された.以上の結果から, 原発巣はまだ同定されていないが, 本症の縦隔腫瘍は肺癌 (T0N2M0) からの転移である可能性が最も考えられた.
  • 湯浅 幸吉, 清水 健, 松原 純一, 豊田 恒良, 土島 秀次, 岩波 洋, 白川 尚哉
    1993 年 7 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    我々は漏斗胸矯正手術として Scheer法に基づいた腹直筋有茎性胸骨飜転術を行ってきた.現在までに25例を経験し, そのうちの5例に術後早期の飜転P lastron再陥凹を認めた.この原因として Plastronの肋骨部固定に問題があると考え, 飜転 Plastronの固定法に工夫を加えた.
    方法は (1) plastronの変形肋骨切除時に第5または6肋骨を15mm程他の肋骨より長めに残して切除する. (2) Plastronを飜転し胸骨同士を重層して固定する. (3) 肋骨同士を固定する時に, 長めに残した第5または6肋骨は重層固定し, 他の肋骨は適度な緊張で端々固定する.以上のように plastronを固定した.
    本術式を5例に行い, 術後47~3ヵ月経過するも再陥凹は認めていない.胸骨と肋骨の重層固定部の皮膚表面上への突出は特に気になるものではなく, 同部の疼痛等も認めなかった.以上のように満足する結果を得た.
  • 谷村 繁雄, 友安 浩, 伴場 次郎, 正木 幹雄, 松下 央
    1993 年 7 巻 1 号 p. 88-94
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は38歳, 男性.人間ドックで右下葉 (S9b) の3.3cm大の円形陰影を指摘され入院した.胸部CT, 気管支鏡など精査を施行したが確診がつかず, 手術 (腫瘍摘出術) を実施した.病理組織学的には, 腫瘍細胞は多角形または紡錐形, その胞体は細顆粒状あるいはスリガラス状で胞巣状に密に増生していた.胞体内にはグリメリウス染色陽性の顆粒が存在し, 免疫組織化学染色では NSE (-), S-100蛋白 (+), Cytokeratin (-) の所見を示した.以上より肺原発のパラガングリオーマと診断した.本症はきわめて稀な腫瘍で現在まで25例の症例報告をみる.本例を加えた26例に関して臨床的特徴を分析し, 文献的考察を加え報告する.
  • 本邦報告14例の検討
    三浦 一真, 森田 純二, 吉澤 潔, 福本 泰三, 環 正文, 石倉 久嗣
    1993 年 7 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1993/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺の benign clear cell tumorの1例を報告した.患者は26歳男性で, 胸部X線写真上の腫瘤陰影を指摘された.左肺良性腫瘍の診断のもと手術を施行し, 術後の病理検索にて benign clear cell tumorと診断された.本邦報告例は14例で, 平均年齢は40.9歳, 男性8例, 女性6例であった.部位は左肺10例, 右肺4例で左肺に多い傾向であった.確定診断はほとんど切除後に得られていた.手術は肺葉切除7例, 部分切除以下7例であった.組織発生は不明で, 術後の転移症例もあることより長期にわたる経過観察が重要である.
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