開胸術後の上肢の運動機能障害について検討した.対象患者は39例で, I群は肺癌25例, II群は膿胸10例, III群はその他4例で, I, II群が後側方開胸, III群が腋窩開胸である.平均年齢は, それぞれ65.7歳, 64.1歳, 52.8歳であった.上肢運動に関する日常生活動作10項目について, 患側の有意の運動制限を認めたのは, 髪の毛をとかす, 頭上の棚の物にとどく, シャツを着て脱ぐの3項目で, I, II群間で差はなく, III群には制限例はなかった.関節可動域6方向の測定で, 患側の有意の低下がみられたのは, 伸展, 外転外旋の3方向で, 特にII群における外転運動が患側 : 健側で115.2±28.5° : 154.5±21.1° (P<0.01) と, 著明に低下していた.後側方開胸術後の上肢の運動機能障害の要因として, 手術術式の影響と, 患者側の因子の両者が考えられた.
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