日本呼吸器外科学会雑誌
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7 巻, 4 号
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  • 東山 聖彦, 土井 修, 児玉 憲, 横内 秀起
    1993 年 7 巻 4 号 p. 416-422
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸腔内進展を呈した良性腫瘍に対し, 胸腔鏡下にて腫瘍摘出術を行い, 良好な成績を得たので報告した.症例は胸壁腫瘍2例 (神経鞘腫1例, 脂肪腫1例), 肺胸膜腫瘍1例 (限局性中皮腫), 後縦隔腫瘍1例 (Dumbbell 型神経鞘腫) の4例である.分離肺換気による全身麻酔下, 胸腔鏡を挿入し, 小開胸創より鉗子を挿入して胸壁および胸膜腫瘍を切除した.腫瘍は小開胸創より取り出した.Dumbbell 型後縦隔腫瘍に対しては, 椎弓切除にて椎間孔進入部の腫瘍を脊髄根から切離した後, 同様に胸腔鏡下に胸腔より摘出した.本術式は, 創が小さいため手術侵襲が小さく, 胸壁機能が温存される利点があり, 創痛も軽く, 美容上も優れていた.胸腔鏡下腫瘍摘出術は, 胸壁・胸膜・縦隔の良性腫瘍で, 胸腔内に進展するタイプが最も良い適応であり, 今後, 積極的に導入されるべき術式と考えられた.
  • 前田 元, 中野 昇
    1993 年 7 巻 4 号 p. 423-428
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    開胸術後の上肢の運動機能障害について検討した.対象患者は39例で, I群は肺癌25例, II群は膿胸10例, III群はその他4例で, I, II群が後側方開胸, III群が腋窩開胸である.平均年齢は, それぞれ65.7歳, 64.1歳, 52.8歳であった.上肢運動に関する日常生活動作10項目について, 患側の有意の運動制限を認めたのは, 髪の毛をとかす, 頭上の棚の物にとどく, シャツを着て脱ぐの3項目で, I, II群間で差はなく, III群には制限例はなかった.関節可動域6方向の測定で, 患側の有意の低下がみられたのは, 伸展, 外転外旋の3方向で, 特にII群における外転運動が患側 : 健側で115.2±28.5° : 154.5±21.1° (P<0.01) と, 著明に低下していた.後側方開胸術後の上肢の運動機能障害の要因として, 手術術式の影響と, 患者側の因子の両者が考えられた.
  • 土橋 一仁, 中橋 恒, 吉松 隆, 堀内 芳夫, 白日 高歩
    1993 年 7 巻 4 号 p. 429-435
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1981年より89年末までに当施設で手術を施行した一側胸腔の15%以.上を占める気腫性肺嚢胞症18例を対象として, その手術適応について検討した.年齢は31~61歳, 平均46歳で全例男性であった.一側胸腔の1/3以上を占める巨大肺嚢胞症は12例であった.息切れ・感染性嚢胞等の有症状9例, 対側気胸1例, 無症状8例であった.術式は17例に嚢胞切除・肺縫縮術, 1例に肺葉切除術を施行した.全例大きな術後合併症なく経過した.息切れを主訴とした4例中2例に症状の改善をみ, 悪化した症例は見られなかった.観察可能であった息切れ症状のない8例では術後遠隔期の呼吸機能に有意の低下は認めなかった.以上より息切れ症例, 感染・気胸等合併症例に対してだけでなく巨大嚢胞や, 巨大嚢胞でなくても進行性の嚢胞であれば呼吸不全を予防する目的で手術適応があり, 息切れのない時期なら術前の肺機能が比較的良好なため術後呼吸不全も防げると考えた.
  • 宮澤 秀樹, 荒井 他嘉司, 稲垣 敬三, 森田 敬知, 矢野 真
    1993 年 7 巻 4 号 p. 436-441
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    過去10年間の外科療法症例23例を対象に, 術前化学療法期間, 術式および予後について検討し, その手術適応時期を考察した.菌型はI群の1例以外は全て多剤耐牲のIII群であった.術前に排菌のあった症例は20例で, 3例は切除標本から診断された.20例の術前化学療法期間は3ヵ月~12年6ヵ月で平均29ヵ月, 中央値16ヵ月であった.一葉切除術群 (n=14) の化療期間は平均17ヵ月 (中央値9ヵ月), 隣接葉の合併切除を行った群 (n=4) は平均22ヵ月 (中央値20ヵ月), 胸膜肺全摘術を含めた肺摘除群 (n=4) は平均47ヵ月 (中央値40ヵ月) であった.合併症は4例に発症し1例を呼吸不全で失ったが, 4例とも長期に化学療法が施行されていた.このように多剤耐性菌症例は化学療法による効果が得難く, 病巣が広範囲に進展し肺の荒廃を来す前の適切な時期に手術適応を決定するべきと考えられた.
  • 八板 英道, 石田 照佳, 杉町 圭蔵
    1993 年 7 巻 4 号 p. 442-447
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    自然気胸症例に対し, 胸腔鏡下に内視鏡用自動縫合器であるENDOGIA 30 (United States Surgical社アメリカ) を用いたブレブ切除術を施行して良好な結果を得た.対象は17歳から44歳までの男女7例で, 術後癖痛軽微のため鎮痛剤は不要で術後1日目にドレーン抜去可能, 術後4日目に退院となった.切除したブレブは直径0.5cmから5conまでで, 癒着高度の症例もあったが, 出血量も少なく, 本法は自然気胸に対する安全で確実な術式の一つであると考えられた.
  • 宇山 正, 先山 正二, 谷田 信行, 住友 正幸, 仁木 俊助, 福本 泰三, 門田 康正
    1993 年 7 巻 4 号 p. 448-455
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    正常肺の胸膜下にはMHCクラスII抗原陽性の樹状細胞 (DC) が分布しておりDCをターゲットとして, 胸膜にも拒絶反応が強くおこりうると考えられる.胸膜における拒絶反応様式をラット肺移植モデルで検討した.
    レシピエコトのクラスII抗原に対するモノクローナル抗体による免疫組織学的検討では, latentphaseにすでに胸膜下にレシピエント細胞の浸潤が認められ, 細胞浸潤は拒絶反応の進行とともに強くなる.
    Vascular phaseでは浸潤細胞は単核球, マクロファージが主体であるが, alveolar phaseには線維芽細胞の出現が観察され, 線維化が始まりdestructive phaseには線維化はさらに高度となる.
    不適当な免疫抑制や繰り返す拒絶反応により胸膜線維化の原因となり移植肺のコンプライアンスの低下を引き起こす可能性がある.
  • 特に人工気管壁における血管網の重要性について
    富山 泉
    1993 年 7 巻 4 号 p. 456-463
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    細胞親和性に優れた超極細ポリエステル繊維人工血管 (SSグラフト) を補強し, 家兎気管に適した人工気管を作製した.内腔に挿入したロッドとともに家兎背部皮下に移植, 3週目 (A群, n=3) と6~9週目 (B群, n=8) に摘出後, 頸部気管へ置換した.A群では皮下移植による肉芽組織の形成は不十分なうえ血管網の発達も不良で, 全例置換3~4週後に局所感染と狭窄にて屠殺するに至った.一方B群では, 血管網の豊富な肉芽組織が形成され, 8羽中4羽が4週以上生存, そのうち4週および12週後に屠殺した2羽では, 人工気管は肉芽狭窄や感染をおこすことなく全長にわたり線毛円柱上皮で被覆され, 他の2羽は12週, 25週目で生存中である.置換2週目に下痢で死亡した2羽においても既に人工気管のほぼ全長にわたり上皮化を認めた.以上より, 良好な置換成績を得るにはSSグラフト壁に予め血管網の発達した肉芽組織を形成させておくことが有用と考えられた.
  • 黄 政龍, 北野 司久, 神頭 徹, 長澤 みゆき
    1993 年 7 巻 4 号 p. 464-471
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    従来より肺摘除術後特有の合併症として, 術後胸腔内出血及び縦隔変位が問題とされてきた.我々はこれら合併症を防止するために, 胸腔バルーンの留置を臨床的に試みた.症例は11例であり, 基礎疾患は肺癌8例と膿胸3例である.術式は肺摘除術9例, 胸膜肺摘除術1例で, 他の1例は部分膿胸での大網被覆術に使用した.術中に胸腔バルーンを留置し, 空気を450~600ml注入した.9例では胸腔ドレーンを別に留置し (1型), 2例では胸腔ドレーンと一体化した改良型 (II型) を使用した.更に8例で胸腔バルーン抜去後にSF6胸腔内注入も併用した.その結果, 術後2日間における排液量に減少がみられた.術後2日目の測定では胸腔バルーン留置による呼吸循環動態への悪影響はなく, 胸腔バルーン留置による合併症もなかった.胸腔バルーンの留置は肺摘除術の術後において安全かつ簡便な方法であり, 遷延する術後胸腔内出血と縦隔変位を同時に防止できる有用な方法と思う.
  • 浦上 年彦, 小林 徹, 松井 寛
    1993 年 7 巻 4 号 p. 472-476
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    保存的療法にて改善しなかった自然気胸患者29例に対し, 胸腔鏡を応用した手術を試みた.end-clipによるクリッピングを6例に, endo-loOpによる縫縮を1例に, endo-GIAによる部分切除を16例に行った.またブラの境界不明瞭, またはairleakの部位がはっきりしなかった6例に対しては3cmのミニ開胸を併用した。endo-clipによるクリッピングは狭基性ブラに有効であったが, 広基性ブラでは脱落傾向を認めた.一方, endo-GIAはいずれのブラにも有効で確実性があった.しかし, endo-loopは単独では脱落し易く特に広基性ブラには不向きと思われた.胸腔鏡手術の最大の利点は, 手術侵襲軽減および術後落痛の明らかな減少である.胸腔鏡とミニ開胸を併用することによりそれぞれの手術適応の拡大がはかれ, 自然気胸手術のかなりの部分をカバーできると思われた.
  • 斎藤 勤, 沖津 宏
    1993 年 7 巻 4 号 p. 477-482
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺癌術後の頸部リンパ節転移に対し, 6回の頸部リンパ節摘除と左右の腋窩郭清を行い, 初回術後86ヵ月と長期生存中の症例を経験した.症例は初回手術時54歳, 男性.肺癌のため左肺摘除術を施行した.初回手術14ヵ月後に左鎖骨上窩リンパ節転移を認めリンパ節摘除術を施行した.以降, 同頸部リンパ節転移再発にて4回のリンパ節摘除術を施行した.初回手術42ヵ月後の再発時には腫瘍の残存も考えられ左頸部に放射線療法を追加したが, その後も同頸部には再発がみられ, さらには同側腋窩, 右頸部および同腋窩にもリンパ節転移がみられ可及的に摘除した.左頸部には腫瘍の残存があったが初回手術77ヵ月後まで遠隔転移を認めず, performance statusは良好で頸部リンパ節転移例にも積極的外科治療が有用であった症例と考える.
  • 門倉 光隆, 野中 誠, 山本 滋, 成沢 隆, 小林 聡, 谷尾 昇, 高場 利博
    1993 年 7 巻 4 号 p. 483-488
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    夜間臥床時の呼吸困難を主訴に来院し, 診断の機会を得た心膜嚢胞の1例を経験した.症例は57歳, 男性.約1ヵ月前から出現した夜間臥床時の喘息様呼吸困難の訴えで撮影した胸部X線像で, 上縦隔の腫瘤陰影ならびに気管狭窄所見を認めた.CTscanやMRIで右上縦隔気管傍に, 気管を左方へ強く圧排する嚢胞性腫瘤を認め, また右総頸動脈や腕頭動脈, 上大静脈もそれぞれ圧排偏位を認めた.手術は腫瘍が大動脈弓直上で各分枝や上大静脈を大きく圧排することから, 胸骨正中切開でアプローチし, 右半側襟状切開を加えた.腫瘍は上縁が甲状腺下極, 右縁は右総頸動脈および腕頭動脈下縁は大動脈弓部, そして左縁は気管右側壁に囲まれた長径7cmの嚢胞性腫瘍であった.術後病理組織学的に心膜嚢胞と診断した.摘出後気管狭窄部は速やかにほぼ原形に復帰し, また1秒率は術前28%から術後は87%へ著明に改善した.
  • 山下 良平, 森田 克哉, 小杉 光世, 小林 長, 安念 有声, 渡辺 洋宇
    1993 年 7 巻 4 号 p. 489-495
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    6歳8ヵ月の男児で, 左肺上葉の感染性嚢胞性病変に対して手術を施行し, 病理組織学的検索よりCongenital cystic adenomatoid malformation (CCAM) と診断された症例を経験した.患児は肺炎症状にて近医より紹介され入院となった.入院時の胸部X線写真およびCT上, 左肺の肺尖後区域に鏡面形成を伴った多房性の嚢胞性病変を認めた.この?胞性病変は, 生後8ヵ月時の胸部X線写真で既に指摘することができ, 先天性に存在したものと考えられた.以上より先天性肺嚢胞に感染を併発したものと診断し, 今後も感染を繰り返す可能性があると考え, 病変の存在した左肺S1+2の区域切除術を行った.病理組織学的に病変部は大小多数の嚢胞が密に配列して腺腫様構造を示し, 嚢胞内面は一層または重層の気管支上皮で被われていた.CCAMはそのほとんどが新生児期に急激な呼吸不全症状を呈して発症し, 本症例のような学童期以降の年長児での報告は極めてまれである.
  • 豊田 太, 太田 伸二郎, 稲葉 浩久, 影山 善彦, 長島 康之
    1993 年 7 巻 4 号 p. 496-500
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は62歳の男性で, 感冒様症状にて近医を受診した際に, 胸部異常陰影を指摘され, 当院に紹介された.精査の結果, 左B1+2原発の低分化腺癌 (cT3N1M0 stageIIIA) と診断した.肺動脈造影の静脈相では上肺静脈は描出されなかった.左肺全摘術を施行した.上肺静脈は視触診にて浸潤なしと判断したが, 念のため心嚢内で処理した.術後, 麻酔よりの覚醒は良好で, 気管内チューブ抜管後ICUへ入室した.約2時間後, 左下肢に冷感が著明となり, 急性浅大腿動脈塞栓症として手術をしたところ, 腫瘍塊による塞栓症であった.腫瘍塞栓は肺癌の希な合併症であるが, 死亡率が高く重篤となりえる.肺癌の肺静脈本幹への浸潤はその確定が困難である.報告された27例と自験例の検討により, 比較的大型の低分化癌で, 肺門に連続している場合には, 肺静脈までの浸潤の可能性を考慮すべきであると思われた.
  • 脇田 昇, 志田 力
    1993 年 7 巻 4 号 p. 501-507
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    両側多発性肺炎症性偽腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は49歳, 男性で健康診断にて胸部異常陰影を指摘された.胸部陰影は両側に計7ヵ所認め, 転移性肺腫瘍を疑ったが, 原発巣は不明であり, 左側肺の病巣 (8ヵ所) を摘除した.病理組織像は, 膿瘍中心と炎症性細胞 (リンパ球, 形質細胞, マクロファージ) の浸潤像が主体であった.対側の陰影は術後3ヵ月後に消失していた.炎症性偽腫瘍は多くは孤立性に発生して, 摘出を受けるためその予後は不明であるが, 本症例の経過より自然寛解の可能性が示唆された.
  • 大久保 哲之, 岡安 健至, 長谷川 直人, 田辺 達三, 野島 孝之, 鈴木 雅行
    1993 年 7 巻 4 号 p. 508-516
    発行日: 1993/05/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    きわめてまれな肋骨原発ユーイング肉腫の1例を経験したので報告する.症例は23歳の女性で右側胸部痛を主訴とし胸部X線上異常陰影を指摘された.胸腔内へ突出する胸壁腫瘤を認め, 針生検でユーイング肉腫の診断を得た.RosenT-11化学療法を1クール施行後切除を行った.手術は第6肋骨から第9肋骨の部分切除および肺, 横隔膜の一部合併切除を行なった.病理組織学的には腫瘍細胞の約90%が壊死に陥っていた.術後に放射線療法と化学療法を追加した.術後1年を経過した現在, 再発や転移の兆候はなく患者は社会復帰している.
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