日本呼吸器外科学会雑誌
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9 巻, 1 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 大久保 哲之, 大坂 喜彦, 成田 吉明, 岩井 和浩, 西部 俊哉, 道家 充, 高橋 利幸, 奥芝 俊一, 加藤 紘之, 岡安 健至, ...
    1995 年 9 巻 1 号 p. 2-8
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    1966年から1992年までの間に当科で100例の転移性肺腫瘍に対し外科治療を行なった.内訳は男性58例, 女性42例, 癌腫74例, 肉腫26例で, 年齢は6ヵ月から77歳 (平均年齢47.2歳), 癌腫52.5歳, 肉腫31.9歳であった.原発腫瘍別では, 腎癌16例, 骨肉腫 (12例, 大腸癌10例, 絨毛癌9例, 軟部組織肉腫8例, 乳癌7例, 睾丸腫瘍7例, 肺癌7例, 骨肉腫以外の骨原発肉腫6例, 喉頭癌3例, その他15例であった.腫瘍倍加日数 (Tumotr DoublingTime;T.D.T.) は平均75.4日, 無病期間 (Disease Free Interval;D.F.I) は平均22.5月であった.転移個数は平均3.7個, 癌腫2.8個, 肉腫6.2個であった.術式は小範囲切除 (核出, 部分切除, 区域切除) を原則とし, 片側50例, 両側24例の74例に施行した.肺葉切除は26例に施行した.累積5年生存率は36.8%であった.原発腫瘍の種類が予後に最も影響を与えていた.また, 肺転移再発に対する再切除は14例であった.
  • 米田 敏, 草野 卓雄, 白日 高歩, 菊池 昌弘
    1995 年 9 巻 1 号 p. 9-18
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    癌抑制遺伝子であるp53は, 多くの癌において異常を来しており, 肺癌においても例外ではない.今回我々は, 手術的に切除された原発性非小細胞肺癌181例において, 免疫組織学的に異常p53蛋白の発現を調べ, 臨床病理学的因子と比較検討を行った.また, 細胞増殖能を示すDNAポリメラーゼδの補助蛋白であるProliferating Cel lNuclear Antigen (PCNA) の免疫組織学的染色による発現とも比較検討した.年齢, 性, 喫煙歴, 腫瘍発生部位では特に有意差は認められなかったが, 組織型における発現率は腺癌44/97 (45%), 扁平上皮癌35/54 (65%), 腺扁平上皮癌12/22 (55%), そして, 大細胞癌6/8 (75%) で, 特に腺癌に比し, 扁平上皮癌に有意に発現が認められた (p=0.034).また, TNM因子, stage および組織分化度との相関は, 有意差はないものの進行例によく発現をみる傾向があり, また, 扁平上皮癌においては低分化型に良く発現をみた.PCNA発現との関係では, p53異常発現の高いものほどPCNA発現も高くなり (p<0.007), 増殖能とも関連のあることが示唆された.予後においては, p53染色陽性例は陰性例に比し, 有意に予後不良で (p<0.04), 陽性率が増加するに従ってより予後不良であった.以上より, p53の異常は, 肺癌の増殖, 進展に重要な役割を担っており, 予後を規定する因子の一つであることが示唆された.
  • 森山 厚
    1995 年 9 巻 1 号 p. 19-28
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺摘除術後気管支断端の治癒における粘膜接着の必要性と自動縫合器の有用性について雑犬を用い検討した.気管支断端を結節縫合にて閉鎖したA群, 粘膜接着を確実にする日的でA群にマヅトレス縫合を追加したB群, 自動縫合器にて閉鎖したC群に分け, 肉眼的所見, 組織学的所見, 耐圧性, hydroxyproline (hyp) 量から断端の治癒過程を評価した.C群は炎症反応が最も少なく線維組織の生成が早く, 耐圧性, hyp量でも優れていた.A群はC群より炎症反応が強度であったが, 線維組織耐圧性, hyp量ではC群と著差はなかった.B群は全ての点で劣っていた.全群で粘膜面の癒合は不良であり, 粘膜同士が相対する部分では粘膜上皮の嚢状遺残や洞状の間隙を認めた.以上より自動縫合器による断端閉鎖は手縫い縫合と著差はないことが示された.また粘膜接着の効果はみられず, 断端治癒上問題であり気管支瘻発生の危険性を示唆していると考えられた.
  • p53 蛋白発現と DNA ploidy pattern の解折について
    米田 敏, 鐘 翠平, 吉武 裕明, 安藤 公英, 岩崎 昭憲, 草野 卓雄, 白日 高歩, 菊池 昌弘
    1995 年 9 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    当科で経験した胸腺癌7例について, 臨床病理学的検討を加え, さらにこれらのパラフィン包埋切片を用いて, flowcytometry (FCR) にごよる, Ploidy patternを解析した.また, 癌抑制遺伝子P53蛋白の発現について, 免疫組織染色を行なって検討した.年齢は, 47~71歳 (平均年齢56.3歳), 男性3例, 女性4例, 組織型は扁平上皮癌5例, 大細胞癌1例, 小細胞癌1例で, 病期はII期1例, III期3例, IVa期, IVb期がそれぞれ1例であった.胸腺癌の平均生在期間を当科で経験した浸潤型胸腺腫10例と比較すると前者は27.2ヵ月, 後者は75.2ヵ月で, 有意に前者が予後不良であった (p=0.016). Ploidy pattern, p53蛋白発現は, diploidy が2例, p53陰性が2例, aneuploidyが5例, p53陽性が5例であった.胸腺癌は高増殖能で進行例が多く, その進展, 増殖には p53 遺伝子の不活化が関与している可能性が示唆された.
  • 則行 敏生, 吉岡 伸吉郎, 西亀 正之, 宮田 義浩, 土肥 雪彦
    1995 年 9 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    異所性胸腺嚢腫内に存在した胸腺腫の手術症例を経験した.症例は33歳の男性ー職場の検診で, 胸部X線上の異常陰影を指摘された.縦隔腫瘍と診断し手術を行い, 異所性胸腺嚢腫とリンパ球優位の胸腺腫の合併と診断された.また, 嚢胞内容液の腫瘍マーカーは, CA19-9 300U/ml以上, CEA 9.6ng/ml, CA 125 11000U/ml, NSE 31.1ng/ml, AMYLASE 186IU/lと高値を示した.胸腺嚢腫と胸腺腫の合併は希であり.文献的考察を加え報告する.
  • 太田 安彦, 佐藤 日出夫, 佐々木 恵子
    1995 年 9 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    左側胸腔内に発生した Askin 腫瘍を経験した。血性胸水にて発症し, 胸水細胞診および胸膜生検は陰性であったが, 胸水中のNSEは高値であった.胸水にて発症後, 約4ヵ月後に巨大腫瘍を形成した.腫瘍の摘出を試みたが, 生検に留まった。強力な化学療法と放射線治療にも抵抗性で, 肺転移を来し, 全経過約16ヵ月にて癌死した.若年者にNSE高値の血性胸水を認めた場合, 本疾患を念頭におき, 積極的な開胸生検を行うことが胸水発症例を診断する上で肝要と思われた.
  • 栗原 英明, 秋葉 直志, 塩谷 尚志, 三浦 金次, 桜井 健司
    1995 年 9 巻 1 号 p. 48-52
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    稀にみる胸腺腫を併存する胸線嚢腫の1例を経験した.症例は, 24歳の男子学生で, 自覚症状はなく健康診断で胸部異常陰影を指摘された.胸部X線写真および胸部CTで胸腺嚢腫を疑った.1991年3月18日胸骨正中切開で, 嚢腫摘出術を施行した.組織学的検査で, 浸潤性胸腺腫を併存した胸腺嚢腫と診断した.画像診断の進歩により胸腺嚢腫の術前診断は比較的容易となったが, 本症例のごとく悪性腫瘍併存例が存在するため, 確定診断と治療のために胸腺嚢腫, 特に実質性病変を併う症例においては, 外科的摘出術の適応があると考える.
  • 朝倉 庄志, 加藤 弘文, 藤野 昇三, 小西 孝明, 浅田 佳邦, 手塚 則明, 一瀬 真澄, 森 渥視, 生内 一夫
    1995 年 9 巻 1 号 p. 53-57
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    肺瘻周囲の胸膜に子宮内膜間質様組織を認めた月経随伴性気胸の1例を経験した.症例は31歳の女性で, 月経時期に一致して右気胸を繰り返し発症していた.排卵抑制剤投与中は気胸の発症を認めなかったが, 投与中止後, 月経時期に一致して右気胸が再発した.開胸術時に, 右肺中葉に1mm大の肺瘻を認め, 肺部分切除術を行った.術後の病理組織検査で同肺瘻周囲の胸膜に子宮内膜間質様組織が認められ, 胸膜への子宮内膜組織の播腫が気胸の原因であると考えられた.肺胸膜に子宮内膜組織を認めた月経随伴性気胸の報告例は4例と非常に少数であり, 術中に肺瘻が確認された症例はそのうちの1例のみである.我々の症例は月経随伴性気胸の原因としての子宮内膜症胸腔内播腫説を裏付ける貴重な1例であり, 胸膜への小播腫巣を証明するためには気胸発症後できるだけ短い期間で胸腔鏡ないし開胸術を行う必要があると考えられた.
  • 宇高 徹総, 青江 基, 岡部 和倫, 赤坂 尚三, 三竿 貴彦, 高木 章司, 岡谷 泰治, 永廣 格, 山中 正康, 森山 重治, 安藤 ...
    1995 年 9 巻 1 号 p. 58-63
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸腺腫を内部に合併し, さらに内容液のCA19-9およびアミラービが高値であった胸腺嚢腫の1例を経験したので報告する.
    症例は23歳の女性で, 検診で胸部X線写真異常陰影を指滴され, 胸部CT, MRIで前縦隔に, 内部に充実性腫瘤を有する嚢胞を認めた。嚢胞内容液を起音波ガイド下に穿刺吸引し, そのCA19-9およびアミラーゼを測定した結果, 高値を示した.縦隔奇形腫の疑いで, 胸骨正中切開にて腫瘍を胸腺とともに摘出した.摘出した腫瘍は, 多房性の嚢胞が大部分を占め, 内部に充実性病変を認めた.病理組織学的に, リンパ球優位型胸腺腫を内部に合併した胸腺嚢腫と診断された.胸腺腫を合併した胸腺嚢腫は稀で, 本例は本邦6例目の報告例である.
  • 特に画像的特徴について
    下川 敏弘, 金子 聡, 中橋 恒, 安元 公正
    1995 年 9 巻 1 号 p. 64-73
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    胸部X線写真上特異な像を呈した2例を含む3例の肺原発悪性リンパ腫を経験した.症例1は74歳女性, 発熱と咳嗽を主訴として受診し, 両側上肺野の多発性腫瘤陰影を指摘された.開胸肺生検で大細胞型と診断され, THP-COPとTHP-MVPによる全身化学療法を施行した.症例2は76歳男性, 無症状で胸部X線写真にて発見され, air bronchogramを伴う左下葉の虚脱を示していた.下葉切除がなされ, びまん性小細胞型, MALT lymphomaであった.化学療法は行わなかった.症例3は69歳女性, 検診の胸部X線写真で異常を指摘され, 右中下葉のairbronchogramを伴う虚脱と左下葉の虚脱と浸潤影を示していた.開胸肺生検で, びまん性小細胞型, MALT lymphomaと診断され, 症例1と同様の化学療法を施行中である.3例とも免疫染色にて, B cell typeと診断された, 胸部X線写真上, 症例2と3は肺葉の虚脱とair bronchogram を伴う一見 “いわゆる無気肺” を思わせる均質性陰影を呈し, 画像上の特徴的所見と思われる.
  • 橋詰 寿律, 菊地 敬一, 氏家 敏巳, 阿部 良行, 大田 英一郎
    1995 年 9 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は41歳の男性で, 咳嗽を主訴に来院した.胸部X線写真で右肺門部に腫瘤状陰影を有し, 気管支鏡検査で右B3にポリポイド病変が認められ, 同部の生検により腺癌と診断された.肺腺癌の術前診断で右肺上葉切除およびリンパ節郭清術を行った.切除標本では腫瘍は6×50×45mm大で黄白色を呈し, 周囲との境界は明瞭で, 割面には出血壊死巣を認めた.組織学的には胎児肺に似た上皮性成分と間葉系成分よりなる腫瘍細胞を認め肺芽腫と診断した.リンパ節転移はみられなかった.術後1年2ヵ月の現在再発の徴候はなく健在である.
  • 太田 伸一郎, 大井 諭, 稲葉 浩久, 大出 泰久, 長島 康之, 本多 淳郎, 中島 信明, 鈴木 春見
    1995 年 9 巻 1 号 p. 80-86
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は49歳女性.胸痛を主訴とし近医より胸部異常陰影を指摘され入院.血清NSE値は17ng/mlと高値を示した.画像診断上, 前胸壁に浸潤する左S3の腫瘤状陰影とともにN3領域に及ぶ広範な縦隔リンパ節の腫大を認め, 左胸腔には胸水が貯留していた.ガリウムシンチグラムでは, 腫瘤に一致した部位と縦隔に高度な集積を認めた.左B3cは表面顆粒状の腫瘍で閉塞しており, 生検により大細胞癌と診断した.なお, 胸水細胞診は陰性であった。cT3N3M0, Stage IIIBと判断し, CDDP, VDS による化学療法と原発巣ならびに両側縦隔に対する放射線照射を同時併用で開始した.骨髄抑制のために化学療法は1クールで中止としたが, 放射線照射は69Gyまで行った。治療により, 腫瘤影の著しい縮小とともにNSE値は正常化しガリウムの異常集積も消失した.良好な補助瘻法の下で局所制御を高めることを目的として, 正中アプローチにてR3bの郭清と左上葉切除を行った.摘出標本の病理組織学的検討では, 腫瘍・リンパ節内には悪性細胞は全く存在せず線維化を伴った瘢痕組織のみであった (ypT0N0M0, Ef. 3).
  • 森浦 滋明, 池田 修平, 木村 充志
    1995 年 9 巻 1 号 p. 87-90
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    患者は56歳の男性で, 右肺癌再発のため completion pneumonectomy を施行し, 順調な経過で退院したが, 4ヵ月後に気管支瘻をきたし入院した.胸腔ドレナージ後, 右胃大網動静脈を血管茎とする漿膜筋層胃弁を用いて瘻孔を閉鎖した.胃弁とともに挙上した大網は閉鎖部の被覆と, 右胸腔約1/3の充填に用いた.胸腔ドレンは第6病日に抜去し, 術後経過は極めて良好であった.この術式は大網のみによる気管支瘻閉鎖術に比べ, より気密性に優れた瘻孔閉鎖が可能であると考える.患者は術後8ヵ月現在再発なく健在である.
  • 和泉 裕一, 羽賀 将衛, 久保田 宏, 伊藤 清高, 大竹 節之
    1995 年 9 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    喀血をきたした気管支動脈-肺動脈瘻の1症例を経験した.症例は52歳男性で, 2度の喀血を主訴に来院した.胸部単純写真およびCT検査で左上葉に出血巣と嚢胞を認めた.喀痰培養ならびに細胞診検査は陰性で, 気管支鏡および気管支造影検査においても異常所見を認めなかった.気管支動脈造影検査で左上葉の気管支動脈一肺動脈瘻が確認され, ほかに喀血の原因となる疾患が存在しないことから, 気管支動脈-肺動脈瘻の破綻が喀血の原因として考えられた.嚢胞を含めた左上葉部分切除を施行し, 以後喀血の再発を認めていない.気管支動脈一肺動脈瘻は喀血をきたす疾患のひとつとして念頭におくべきと考えられる.
  • 神崎 正人, 大貫 恭正, 村杉 雅秀, 福田 博子, 舘林 孝幸, 湯浅 章平, 笹野 進, 兼安 秀人, 横山 正義, 新田 澄郎
    1995 年 9 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は39歳女性.仰臥位呼吸困難を呈し, 胸部X-P上右上縦隔に半月状に突出する異常陰影を認め, CT上気管の圧排像を認めた.F-V曲線では胸郭内気道閉塞パターンを示した.胸腔鏡下生検で脂肪肉腫と診断し開胸摘出した.術後胸郭内気道狭窄は寛解し, 11ヵ月経過し, 再発の微候を認めていない.気道狭窄を伴う縦隔脂肪肉腫の1手術治験例を文献的考察を加え報告した.
  • 金田 好和, 西 健太郎, 杉 和郎, 江里 健輔
    1995 年 9 巻 1 号 p. 101-107
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は38歳の男性.主訴は胸部X線写真上の異常陰影.胸部CTおよび胸部MRI検査にて右S2aとS2bの肺動静脈瘻と診断し痩摘除術を施行した.S2bの瘻は容易に摘除されたがS2aの瘻摘除の際, 瘻破裂をきたした.肺動静脈瘻の摘除においては不慮の出血に対する十分な注意が必要である.
  • 矢満田 健, 小林 理, 青木 孝學, 金子 和彦, 宮澤 正久, 吉田 和夫, 羽生田 正行
    1995 年 9 巻 1 号 p. 108-114
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は34歳, 男性.検診の胸部X線写真上右上縦隔の異常陰影を指摘され, 縦隔腫瘍の疑いで当院に紹介された.胸部X線では右上肺野縦隔側に境界鮮明な腫瘤影を認め, 胸部CT, MRI検査にて, 上方は甲状腺右側から, 右腕頭静脈と鎖骨下動脈の間より下方は上大静脈の裏側の上縦隔に達する嚢胞性腫瘤と診断された.頸部からの穿刺による内容液検査ではアミラーゼは221U/lと軽度の上昇を示したのに対し, サイログロブリンは120.4mg/mlと著明に高値であった.本症例は右悪性甲状腺腫を合併していたため, 一期的に手術を施行した.胸骨縦切開および頸部襟状切開にてアブローチし, 嚢腫摘出, 甲状腺右葉切除および頸部郭清を施行した.組織学的に嚢腫は鯉嚢胞と診断された.また嚢胞壁内に異所性甲状腺組織が存在した.
    これらの所見より本症例は頸部より上縦隔に進展増大した鰐嚢胞と診断された.また組織学的所見より, 本嚢胞の成因および増大に甲状腺上皮が関与していることが推測された.
  • 黄 政龍, 北野 司久, 神頭 徹, 長澤 みゆき, 鈴村 雄治
    1995 年 9 巻 1 号 p. 115-119
    発行日: 1995/01/15
    公開日: 2009/11/10
    ジャーナル フリー
    症例は62歳・男性で, 胸部X線上異常影のため来院した.明らかな自他覚症状はなかったが, 胸部単純写真では上縦隔の左右両方向への拡大がみられた.胸部CT及び胸部MRIでは上縦隔に気管後方から両側に跨り, 気管及び食道を圧排している大きさ10×8×4cmの腫瘤を認めた.この腫瘤は充実性部分を持たない嚢胞性腫瘤と術前診断した.全身麻酔下・仰臥位で胸骨上窩横切開を行い, 気管左側より嚢腫壁を露出した.更にファイバースコープを用いて嚢腫内腔の観察を行い, この腫瘍が薄壁単胞性で, 充実性部分を持たないことを確認した.嚢腫内容液を吸引した後, Doxycyclineによる嚢腫内腔に対する癒着術を行った.部分的に切除した嚢腫壁の病理組織検査により心膜嚢腫と診断した.術後経過は順調で, 術後1年の現在再発を認めない.
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