沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
20 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 湊 太郎, 山﨑 正一, 佐藤 義夫, 福江 正治
    2008 年 20 巻 4 号 p. 11-21
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本研究では,水酸化鉄による被膜で覆われた鉄鋼スラグについて実験を行い,それらの結果を基にしてリン吸着能力に対するpH と海水の影響を検討した。その結果,鉄被膜で覆われた水砕スラグのリン吸着能力が,それと接する水溶液のpH によって最も強く影響されることがわかった。また,鉄被膜で覆われた水砕スラグのリン除去率は,水溶液のpH によらず,時間の経過に伴い最小値に達するまで減少し,その後は最小値を長期にわたって維持することが判明した。さらに,海水を通水した場合には,蒸留水を通水した場合に比べて,リン吸着能力が低下することが確認された。その原因としては,吸着部位における陰イオンの競合よりも,フミン酸のような有機物質の影響が示唆された。このほか,自然環境に影響を与えずリン吸着に適したpH の値を維持する方法として,水溶液を曝気する方法が適用できることがわかった。

  • 川西 利昌, 榎本 郷, 加藤 学
    2008 年 20 巻 4 号 p. 23-30
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:海浜は遮蔽物が少ないため,人間は夏季の紫外線に強く被曝し,皮膚を害することがしばしばある。海浜で紫外放射を防ぐには,帽子,長袖長ズボン,UVカット化粧品といった個人的な防御手段のほか,ビーチパラソルや海の家などがある。その他,自然的な日除けとして海岸林がある。海岸林は本来,防風,防潮,飛砂防備,などのため植林されたものであるが,永く休憩や日除けとしても利用されてきた。本研究は,海岸林を紫外線防御の立場から検証したものである。静岡県西伊豆戸田海岸,東京都葛西臨海公園の海岸林下で高度・方位別の放射分光輝度を測定し,測定結果を用いて皮膚の紅斑作用紫外放射量を計算した。計算結果からUVINDEXや樹冠部の紅斑紫外放射輝度比を明らかにした。

  • 多部田 茂, 田辺 直, 河島 洋平, 木下 嗣基
    2008 年 20 巻 4 号 p. 31-38
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:陸域から海域への物質供給経路は従来河川を中心に考えられていたが,海底から湧出する地下水経由のものも無視できない場合があることがわかってきた。湧出地下水の沿岸海域環境への影響を評価するためには,湧出水量やそれに含まれる物質の濃度すなわち海域への物質フラックスの把握と,その供給された物質がどのように沿岸域中を輸送され生態系に対する影響を与えているかを評価することが重要である。本研究では,数値シミュレーションと非定常ボックスモデルにより海域の海水交換量を算出することによって,海域の物質収支から地下水湧出量の推定を試みた。また,水理実験と非静水圧モデルによる数値シミュレーションによって,湧出水の初期の挙動特性を海域の水平流速と湧出流速の比を用いて整理した。

  • 浪川 珠乃, 原田 幸子, 婁 小波
    2008 年 20 巻 4 号 p. 39-52
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:統合的な沿岸域管理の必要性が認識され,海域の一元管理体制が動き出す中,沿岸域の管理のあり方や日常的な管理主体のあり方を模索する重要性が高まってきている。本論では,漁業の衰退,レジャー利用の増大という都市近郊沿岸が直面する社会経済条件の下で,沿岸域管理の利用調整的側面において漁業者が果たしうる役割について,神奈川県平塚市を事例に考察した。平塚の漁業者の特性を分析することにより,多様な利用者をつなぐコミュニケーション能力,共通の目的・価値を構築する能力,貢献意欲の3つが沿岸域管理主体の適性要件として抽出できた。また,沿岸域管理の利用調整的側面で漁業者が沿岸域の日常的管理主体として機能するためには,沿岸域利用に対する社会的要請を反映した管理主体としての新たな正当性の確保,漁業者集団を維持する努力が必要であることが導かれた。

  • 李 銀姫, 婁 小波
    2008 年 20 巻 4 号 p. 53-64
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本論では,2002 年に施行された「海域使用管理法」にもとづく中国沿岸域管理の実態と課題を,青島市のケーススタディを通じて明らかにした。山東省青島市は「海域使用管理法」が実施されて以来,中国が最初に認定した四つの沿岸域管理モデル地区の一つであり,沿岸域管理に関しては全国に先駆けてすでに90 年代初頭から取り組みはじめた先駆的な地域である。青島市沿岸域管理の実施状況への検証を通じて,今日の中国における沿岸域管理は,効率化のために国有を前提とした海域使用権の創設,海域使用権の有料化,海域使用権取得におけるセリ・入札方式の導入などといった市場メカニズムを中心とする管理メカニズムに基づいて行われていることが明らかとなり,海域使用主体の資格問題,補償金算定問題,漁業・漁民保護問題,海洋環境保護などの点で多くの課題が残されていることが判った。

報告
  • 大島 巌, 村上 和男, 善見 政和, 宮島 正悟, 長谷川 雅弘, 柴垣 太郎
    2008 年 20 巻 4 号 p. 65-74
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本研究では,日米の大型水理実験施設における環境教育に関する取り組みについて調査し,環境教育を進める上での大型水理実験施設の活用の可能性及び課題について検討した。その結果,大型水理実験施設は,市民・NPOとの協力,環境教育プログラムや既存の展示物・模型等の活用によって,多くの人々に環境教育の場を提供できる可能性を有していると考えられた。

  • 川西 利昌
    2008 年 20 巻 4 号 p. 75-81
    発行日: 2008/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:乳幼児は身体の成長によって最も重要な時期であり,その皮膚への過度な紫外線被曝は蓄積され生涯にわたり健康に影響を与える怖れがある。紫外線の害は世界に知られつつあるが,乳幼児は自らの意思で行動場所,時間,着衣,着帽,化粧品などの被曝防御をすることは出来ない。したがって親が乳幼児の被曝に対する責任を負う。とくに海水浴のように紫外線を防ぐ施設や樹木が少なく,かつ水着のように薄着で長時間滞在する場合,親が乳幼児の紫外線被曝に対して細かな配慮が必要である。本研究は千葉県稲毛海岸において65人の乳幼児の海水浴での紫外線被曝と防御対策に対して,行動調査とアンケート調査を実施したものである。調査の結果,紫外線が最も強い時間帯に滞在者が多いこと,肌の露出の多い服装であること,曇天日の防御が手薄であることがわかった。

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