沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
22 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
論文
  • 原田 幸子, 浪川 珠乃, 新保 輝幸, 木下 明, 婁 小波
    2009 年22 巻2 号 p. 13-26
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本稿では,多面的利用が進む沿岸域における利用管理ルールの一環を構成する利用主体間の利用調整ルールづくりの実態と意義について検討することを課題としている。具体的には沖縄県恩納村を事例として取り上げている。恩納村では海洋リゾート地としての発展を背景に,沿岸海域の多面的な利用が進展し,さまざまなコンフリクトが生まれた。それを解消するために利害関係者より構成される海面利用調整協議会が組織されて,地域振興のルール,事業連携のルール,海の「自由」利用ルールなどの利用調整ルールが作られて,地域内利益循環システムが形成された。それによって,資源の性格変化と利用のグローバル化が進みつつある沿岸域の利用管理関係を,新たな「タイトなローコルコモンズ」として再構築され,それが地域振興に大きく寄与していることが分かった。

  • 藤枝 繁
    2009 年22 巻2 号 p. 27-36
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:ディスポーザブルライターを指標とした海岸漂着散乱ごみの流出地推定法を用いて,配布地と漂着地の関係から瀬戸内海における海洋ごみの流れと流出起源について検討した。11府県264調査対象海岸のうち249海岸から5,474本のライターを採集した。タンク表面に印刷されている文字情報から流出地情報が得られたのは342本(6.2%)であり,そのうち瀬戸内海を起源とするライターは302本であった。各府県からの総流出量を1として,府県別に自府県から自府県への流入値(自県値),他府県からの流入値および他府県への流出値を求めた。流出入傾向を比較した結果,流入傾向(流入値>自県値)は兵庫県,山口県,流出傾向(流出値>自県値)は,大阪府(京都府,奈良県を含む),岡山県,広島県,福岡県,大分県で見られ,香川県は流出入の両傾向を示した。瀬戸内海海岸に漂着するライターの流出地は,沿岸部都市ばかりではなく,瀬戸内海に流入する河川沿いの中流部都市も含まれていた。また外海からの漂流物は,瀬戸内海入口の海峡部とそれに接続する内部の海域にまで流入してくることがわかった。

  • 湊 太郎, 山﨑 正一, 佐藤 義夫, 福江 正治
    2009 年22 巻2 号 p. 37-47
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本研究では,水酸化鉄による被膜で覆われた鉄鋼スラグについて,実海域において実験を行い,それらの結果を基にしてリン吸着能力に及ぼす要因について検討した。その結果,鉄被膜で覆われた水砕スラグを用いることによって,閉鎖性海域の海水から効率良くリンを回収できることがわかった。長期にわたる実験期間を通じて,約46μg/gのリンが海水から回収された。このリン除去量は,鉄被膜と接する海水のリン濃度とpHに依存した。すなわち,リン濃度が0.01 mg/ℓ以上,pH<8.0のときリン除去量は大きな値を示した。しかしながら,リン濃度が0.01 mg/ℓ以下,pH>8.0のときリン除去量はほぼ0μg/gとなった。

  • 小荒井 衛, 佐藤 浩
    2009 年22 巻2 号 p. 49-61
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:日本は地震活動や火山活動が活発で災害ポテンシャルの高い国土であるが,特に沿岸域は軟弱な地盤であるために,地震等による地盤災害の影響を受けやすい。本論文では,公開されている地理空間情報(特に地形分類情報)を活用して,地域の災害脆弱性を評価する手法について検討した。遠州灘を例として東南海地震(1944年)を対象に,土地条件図の地形分類データと住家全壊率等被害線図とを組み合わせて地理情報システム(GIS)による解析を行った。その結果,段丘や扇状地では建物被害が比較的軽微で,谷底平野・氾濫原,海岸平野・三角州,自然堤防等で建物被害が大きいという結果になった。自然堤防で住家全壊率が高い,谷底平野・氾濫平野の方が海岸平野・三角州よりも有意に住家全壊率が高いなど,地形分類だけでは説明出来ない被害状況があったため,ボーリングデータから対象地域の浅層地質を明らかにして被害状況とのオーバレイ解析を行ったところ,軟弱地盤(15m以浅のN値10以下の泥層)が厚く堆積しているところでの被害が大きくなることが分かり,地形分類を単純にハザードリスクに読み替えるだけでなく,表層地質の影響や地形発達過程を考慮する必要があることが分かった。

  • 岡山 正人
    2009 年22 巻2 号 p. 63-76
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:我が国は大小さまざまな島が存在するが,こうした島々をはじめ地方の多くの地域では過疎化,高齢化が進み,特に高齢者のモビリティの確保が大きな問題となっている。しかし,こうした地域では住民の交通特性を分析するための基礎的なデータがほとんど存在しないため,その特性などはまったく把握されておらず,モビリティの確保のための計画案の策定などに支障を来している。

    そこで本研究では,過疎化,高齢化が著しい瀬戸内海に浮かぶ大崎上島の住民を対象に,都市部などで一般に行われているパーソントリップ調査を実施することにより,島民の交通行動の特性について分析した。その結果,島民の交通行動に関する基礎的な知見として,トリップ数やトリップ目的,利用交通手段などの実態を明らかにするとともに,特に高齢者の交通行動の特性について考察した。

  • 明田 定満, 末永 慶寛, 松島 学, 居駒 知樹
    2009 年22 巻2 号 p. 77-88
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:我が国におけるFRP漁船の廃船処理に関する研究開発は,1980年代から行われてきたが,経済的かつ実用的な方法は未だ得られていない。その理由として,FRPは優れた材料特性を持つが故に,廃船処理が非常に困難であることが上げられている。そのため,FRP漁船の廃船処理の最も一般的な方法は,解体破砕後,焼却した上で埋立処分する方法である。しかし,我が国の沿岸域に埋立適地が少なくなりつつある現状を鑑みると,FRP漁船の経済的かつ実用的な廃船処理法の確立は,喫緊の社会的な要請となっている。FRP漁船の廃船処理施設の建設計画を立案する場合,FRP漁船の廃船出現隻数を適切に予測することが重要であり,その際に検討すべき指標はFRP漁船の寿命と耐用年数である。本論ではFRP漁船の寿命と耐用年数を定義し,漁船統計と漁船保険統計に基づき,FRP漁船の寿命と耐用年数を推定した結果,寿命は62年以上,耐用年数は約24年と見積もられた。

報告
  • 稲田 勉, 岡 貞行, 中村 隆, 柳瀬 知之, 竹内 克昌, 吉田 涼
    2009 年22 巻2 号 p. 89-99
    発行日: 2009/09/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:水産庁は,日本海西部の排他的経済水域において,ズワイガニ及びアカガレイの保護育成礁を整備する直轄漁場整備事業をスタートさせた。底びき網漁船から保護区域内の対象生物を保護する観点から,保護育成礁を構成している魚礁ブロックの設置間隔を一定間隔以下に抑えるため,その据付位置精度を±30m以内とすることが求められた。この課題を解決するため,リアルタイムに魚礁ブロックの位置を検出しながら,所定の位置に誘導し,高精度に据え付けるシステムを開発し,但馬沖において実証した。当該システムは,起重機船クレーンの頂部と船体に取り付けたGPSの位置情報と,船体側部並びに吊下げワイヤー先端部の魚礁吊枠に取り付けたトランスポンダー送受信器からの位置情報及び深度情報に基づいて,モニター画面でリアルタイムに魚礁ブロックの位置,深度及び沈設速度を確認しながら,所定の位置まで誘導するものである。結果,全ての魚礁ブロックにおいて出来形管理値(今回使用した機器による計測値)で±30m以内を確保することができた。

    本稿は,魚礁ブロック検出・誘導システムの概要と検証事例について報告するものである。

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