沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
25 巻, 3 号
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論文
  • 小原 恒平, 廣松 智樹
    2012 年 25 巻 3 号 p. 17-28
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:港湾内に立地する企業の多くは堤外地に位置し,発生頻度の高い津波でも浸水する可能性のある施設も多いため,津波による浸水を前提に,人命を守ることに加え,産業・物流施設の早期復旧,事業継続対策が必要と考えられる.本研究では,東北地方太平洋沿岸の港湾内立地企業に対するヒアリング調査を通じて,港湾の津波被害が港湾内立地企業の事業継続へ及ぼす影響及び行政に期待されている津波対策を明らかにした.その結果,防波堤の損壊が復旧における最も大きな課題となっており,防波堤の早期復旧及び防波堤の強化が求められていることがわかった.また,港湾内立地企業の事業継続の観点から,港湾の津波防護目標や防波堤の要求性能など港湾における津波対策について考察した.

  • 鈴木 武, 佐々木 友子
    2012 年 25 巻 3 号 p. 29-39
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:長距離貨物輸送が消費するエネルギーと排出するCO2を削減していくためには,船舶輸送の効率向上と利用拡大が重要である.その検討に必要な基礎情報を得るため,日本国内の長距離航路でフェリー,RORO貨物船およびコンテナ船を運航する船会社に対し,運航する船舶の形状,積載能力,運動能力,航路の運航状況についての質問票調査を行った.質問票調査によって得られたデータをもとに,調査の対象とした国内長距離航路を運航するフェリー,RORO貨物船およびコンテナ船についての各種指標を整理するとともに,燃料消費関数を推定した.

  • 多部田 茂, 中村 義治, 須藤 隆行, 丸山 拓也, 関根 幹男, 入江 政安, 関 いずみ, 古川 恵太
    2012 年 25 巻 3 号 p. 41-52
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:伊勢湾の小型底びき網漁業について、主にマアナゴを対象にその操業実態の調査を行うとともに、漁業者や漁協の水揚げ伝票等のデータを用いて漁獲量や価格に関する情報を収集・分析した。その結果、底びき網漁業の操業形態は各拠点港毎に特徴をもっていることや、夏季の伊勢湾の貧酸素水塊が漁場選択に大きな影響を与えていることなどがわかった。また、出荷や流通形態を反映して価格変動の特徴も各地域で異なっている。さらに、海域の資源量の空間分布および操業にかかる経費・収益性によって操業形態が変化することをモデル化し、水域環境的側面ならびに漁業経済的側面が地域の漁業行動に及ぼす影響を定量的に評価するための操業シミュレータを構築した。

  • 江田 雄樹, 桑原 祐史, 佐藤 大作, 藤田 昌史, 横木 裕宗
    2012 年 25 巻 3 号 p. 53-64
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

     要旨:南太平洋島嶼国には多くの環礁州島が存在する.環礁州島は,古い時代に成長したサンゴの化石の上に,主として有孔虫の外殻および破砕されたサンゴレキが堆積し生成した島である.このため,水や豊かな耕地等,生活源となる資源が乏しいことに加え,樹木,骨材(レキや砂)および水等,建設資材も乏しい.気候変動に伴い海面が上昇することにより,環礁州島では海岸侵食が顕著になることが懸念されているが,島が有する建設資材が少ないという点からも,海岸植生を応用した適応策が重要と考えられる.つまり,侵食の危険性が高い地域から優先的に対策を施すことにより,人的,資源的等,限られた島の資源をより有効に扱った対策になると言える.本研究では,調査規模を削減する点も考慮に入れ,衛星画像等上空から島を俯瞰したデータと現地調査写真を組み合わせ,沿岸域を構成する植生・被覆・地形の特徴と海岸侵食との関係から侵食のレベルを推定する評価式を導くことを試みた.検討の結果,マジュロ環礁ローラ地区に対する対策優先地区を提案した.加えて,州島形成メカニズムが大きく異なる地域での適用には課題が残る点を示した.

報告
  • 城戸 誠司, 高原 裕一, 浅見 能章, 松本 弘, 栗原 史良, 稲田 勉
    2012 年 25 巻 3 号 p. 65-74
    発行日: 2012/12/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:沖合海域を最大限活用し、積極的な水産資源の回復・増大を図るため、我が国排他的経済水域を対象に国自らが漁場整備を実施する「直轄漁場整備事業」が創設され、長崎県の沖合の日本国排他的経済水域に、石材(1t内外/個程度の割石)16,900m3を投入し、湧昇マウンド礁を造成する工事が水産庁より発注された。

    その工事海域は、石材の積み出し港から約40㎞離れ、しかも、水深は約150mと大水深であり、気象海象も厳しい環境である。そのような環境の中においても、バージを目標位置に短時間で誘導・保持しながら、所定の位置に石材を投入することができた。また、投入位置とバージの入船方向をシミュレーションにより決定し、その結果を使って施工することにより、想定通りの円錐状の山を築くことができた。これらの技術は、今後、湧昇マウンド礁を完成形として仕上げてゆく際に有効であると考えている。

    本報告はその概要を紹介したものである。

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