沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
28 巻, 1 号
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論文
  • 篠原 正治
    2015 年 28 巻 1 号 p. 21-33
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:阪神港は、平成23年4月に京浜港とともに国際戦略港湾に位置づけられ、新たな施策をいくつか展開している。その一つの施策として、空コンテナの一時保管機能を有するインランドコンテナデポ(ICD)の設置による、コンテナ輸送トラックの運送効率の改善を目指している。本研究では、まず「平成20年全国輸出入コンテナ貨物流動調査」を用いて、特に滋賀県の貨物を中心として、仕出地・仕入地及び利用港湾の流動実態を分析した。次に、ICDの需要予測を行ったうえで、その設置・運営に係る収支分析を行った。その結果、滋賀県東南部におけるICDの成立可能性を確認するとともに、実証実験として滋賀県野洲市に設置したICDの取扱実績の現状分析を行い、今後の課題を検討した。

  • Awwaluddin, 婁 小波, 陳 放
    2015 年 28 巻 1 号 p. 35-47
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:サシは、「共有」を前提とした地域資源を管理するローカルルールで、インドネシアのマルク地方では自然資源の伝統的な社会制度として機能してきた。「海洋サシ」は、インドネシアにおいてコミュニティーレベルのゾーニングを有する特異な沿岸域の水産資源管理システムであり、他の地域の伝統的な管理システムに比べ、管理対象資源の状況は良好で安定している。しかし、「海洋サシ」の持続性と機能性はインドネシア政府の政策によってさまざまな影響を受けてきた。社会システムのドラスティックな変化を受けて、サシ制度は大きな変化を余儀なくさせられているが、「海洋サシ」を始めその実態は必ずしも明らかにされてはいない。そこで、本稿では、中央マルク地方の中央集権時代から地方分権時代に変化する過程のサシの実態を把握するとともに、社会体制の変化が「海洋サシ」の制度構造に与える影響を明らかにした。その結果、村行政における政策の中央集権体制への変化は、「海洋サシ」の減少を引き起こすだけではなく、その仕組みも弱めることとなった。しかしながら、レビューによれば地方分権時代に変化する過程で海洋サシの復元を予想したものがあり、本稿の結果はそれを裏付けるものであった。

  • 塩入 同
    2015 年 28 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:戦後わが国では,経済成長を背景に臨海工業地帯の整備が国策として強力に推進されてきた。また,国が主導する縦割り管理が行われ,海岸は埋立てや護岸整備などにより人工化し,地域資源としての活用が難しい状況にあった。しかし,2000 年の地方分権以降,首長の権限が拡大され,地元自治体が主体となって沿岸域を総合的に利用・保全するための条件が整いつつある。このことから,沿岸市町村の規模や財政の実態を把握することは,沿岸域の総合的管理を推進する上で非常に重要といえるが,沿岸市町村を把握した統計は存在しない。そこで本研究では,基礎データとなる沿岸市町村をGIS を用いて推定した。また,総務省が公表する全市町村の財政データを基に沿岸市町村の財政データを抽出し,重要港湾や工場などの沿岸施設からの固定資産税収入が,使い道を限定されない一般財源の主な収入源となっていることを明らかにした。そして,今後沿岸施設を持たない市町村が地域独自の取組みとして沿岸域総合管理に着手し,継続していく上で,地方税の拡充による財源措置が重要であること指摘した。

  • 菅原 遼, 市川 尚紀, 畔柳 昭雄
    2015 年 28 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本研究では、河川敷地占用の規制緩和措置に基づく「水辺の社会実験」の取り組みに着目し、都心部の河川で実施されている取り組みに見られる事業スキームの把握及び事例間の比較検討による事業評価を行った。その結果、各事例では、河川区域の占用形態及び取り組みに係る組織・団体に応じて事業スキームを構築することで、新規事業者参入における公平性の確保を図っていることを捉えた。また、多様な組織・団体が係わる都心部の取り組みにおいては、協議会や民間事業者が占用主体になることで、占用許可に至るまでの手続きを簡略化し、円滑な事業展開を図っていることを明らかにした。

展望
  • 小野 憲司, 辰巳 順, 中尾 健良, 嶋倉 康夫
    2015 年 28 巻 1 号 p. 71-82
    発行日: 2015/06/30
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:2011年3月11日に発生した東日本大震災時には,北海道をはじめとする各地から自衛隊,警察,消防等の捜索・救助部隊が長距離フェリーを活用して被災地に展開した。また,今後の発生が危惧されている南海トラフの巨大地震や首都直下地震の被災現場においても被災者の迅速な救援・保護を可能とするためには,海上からの人員,資器材,物資の輸送が不可欠であると考えられる。

    本研究は,災害現場での効率的な大量輸送手段としてのフェリーの利便性に注目して,長距離フェリーを活用した緊急支援物資等の海上輸送の可能性と課題について,フェリー運航シミュレーションによる検討の結果を報告するものである。

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