要旨:本研究では、帆掛けサバニの現代的な意義について事例的に考察することを目的として、サバニ帆漕レースの参加経験者を対象に、サバニ帆漕レースや帆掛けサバニへの取り組みが参加者自身やチーム・地域社会に与えた影響について尋ねるweb調査を実施した。得られたテクストデータについて、在住地域(レースが実施される座間味島、沖縄県内、沖縄県外)により分類し、SCATを用いて質的に分析した。全ての地域に共通して、【人との繋がりの拡大】、【レースへの挑戦がもたらす心理的効果】、【継続による波及効果】が記述された。座間味島では、【島での熱心な取り組み】と【座間味島の中学生への影響】が特筆できる。沖縄県内在住者では、【レース開催による認知度の高まり】、【レース運営者への感謝】、【日常行動への繋がり】に加え、【他地域への波及効果】や【レース以外の活用の可能性】が記述された。沖縄県外在住者においては、【沖縄についての理解の拡大】や、サバニの【伝統を継承したい】といった【個人の思いへの影響】、【サバニに取り組めることへの感謝】が表現され、サバニへの取り組みが【人生に豊かさをもたらす】と記述された。 以上のように示された分析結果から、伝統的海洋文化財である帆掛けサバニの現代的な意義を認めることが出来る。
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