沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
33 巻, 4 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • 千足 耕一, 蓬郷 尚代
    2021 年 33 巻 4 号 p. 51-59
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本研究では、帆掛けサバニの現代的な意義について事例的に考察することを目的として、サバニ帆漕レースの参加経験者を対象に、サバニ帆漕レースや帆掛けサバニへの取り組みが参加者自身やチーム・地域社会に与えた影響について尋ねるweb調査を実施した。得られたテクストデータについて、在住地域(レースが実施される座間味島、沖縄県内、沖縄県外)により分類し、SCATを用いて質的に分析した。全ての地域に共通して、【人との繋がりの拡大】、【レースへの挑戦がもたらす心理的効果】、【継続による波及効果】が記述された。座間味島では、【島での熱心な取り組み】と【座間味島の中学生への影響】が特筆できる。沖縄県内在住者では、【レース開催による認知度の高まり】、【レース運営者への感謝】、【日常行動への繋がり】に加え、【他地域への波及効果】や【レース以外の活用の可能性】が記述された。沖縄県外在住者においては、【沖縄についての理解の拡大】や、サバニの【伝統を継承したい】といった【個人の思いへの影響】、【サバニに取り組めることへの感謝】が表現され、サバニへの取り組みが【人生に豊かさをもたらす】と記述された。 以上のように示された分析結果から、伝統的海洋文化財である帆掛けサバニの現代的な意義を認めることが出来る。

  • 鈴木 直樹, 松本 梨里
    2021 年 33 巻 4 号 p. 61-69
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本論文では,東京湾の三番瀬干潟に生息するホンビノスガイMercenaria mercenariaの成長式を推定した。東京湾三番瀬で2015年9月から2017年12月までの毎月末に漁獲されたホンビノスガイの殻長,殻高および殻幅を測定した。年齢査定には,貝殻表面で観察された段差状輪紋の数を計数した。縁辺成長率を段差状輪紋の数と輪紋ごとの殻長方向の長さから算出し,輪紋が形成された月を明らかにするために用いた。殻長組成の経月変化から成長の傾向を把握することはできなかった。縁辺成長率の経月変化から,1月前後に輪紋が形成されることが示された。このことから,段差状輪紋の数は年齢を表していると判断された。殻長と年齢の関係を,von Bertalanffyの成長曲線で近似した。極限殻長,成長係数および殻長が0 mmとなる年齢は,それぞれ86.1 mm,0.175/年および-0.497と推定された。

  • 日高 健, 田原 暖, 上原 拓郎
    2021 年 33 巻 4 号 p. 71-81
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:本稿は,兵庫県明石市沿岸におけるタコ釣りのルール化の取り組みを事例として,多様な関係者による沿岸域利用におけるルールの形成要因と要因間の因果関係を明らかにすることを目的とする。沿岸域管理の概念としての里海づくりは里海マネジメントの範疇であり,環境保全や資源管理のルール作りを重要な内容とする。明石市沿岸では,共同漁業権の対象種であるマダコを対象として,漁業者と遊漁者による漁場と資源の利用ルールが形成された。そこで,KJ法によりタコ釣りルール化に関わる要因を抽出し,要因間の因果関係図を作成したところ,マダコ資源管理,マダコ資源量への社会的関心,海上衝突事故の三つのフィードバック・ループ群が検出され,ループを形成する主要要因ならびにループのつなぎ役としての海上保安部の協力と一般市民の関心が重要であることが示された。また,ルールを形成するのは直接・間接の関係者であるが,ルールを有効なものにするには三次・四次関係者の協力が必要であることが示唆された。

報告
  • 行平 真也
    2021 年 33 巻 4 号 p. 83-90
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:山口県と大分県は徳山港(山口県周南市)と竹田津港(大分県国東市)を結ぶフェリー航路で結ばれており,本航路は中国地方と九州地方を結ぶ唯一の航路である。本研究では,本航路の利用実態を把握するために,トラックなどの物流業者を除いた一般の利用者を対象に2017年9月5日から同年10月4日までの30日間にかけて質問紙調査を実施した。その結果,617件の有効回答を得た。フェリーの利用目的では「観光・レジャー」が最も多く,次いで「帰省・知人訪問」,「出張・ビジネス」と続いた。調査回答者の出発地と目的地を整理した結果,特に山口県,広島県から大分県に移動する利用者が多かった。

ノート
  • 米山 正樹, 小坂 好己, 三上 信雄
    2021 年 33 巻 4 号 p. 91-95
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:東日本大震災被災地域の水産加工業については,工業統計の製造品出荷額ベースでみると震災前のレベルまで回復し,復興が進みつつあることがわかる。しかし,経営の視点からみると,事業者からは販路喪失,原料高,人材不足などの課題に苦しむ声が多く,完全に軌道に乗ったとまでは言えない状況下にある。そこで,本稿では工業統計をもとに,労働生産性と付加価値労働生産性という2つの経営指標を用いて,全国と被災3県のデータを震災前後で比較し,水産食料品製造業の産業細分類ごとの特徴を分析することにより,復興過程の実状を把握した。

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