沿岸域学会誌
Online ISSN : 2436-9837
Print ISSN : 1349-6123
34 巻, 4 号
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論文
  • 高橋 周
    2022 年 34 巻 4 号 p. 71-80
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨: 1927年に、「日本新八景」の選定というイベントが新聞社主催で行われた。選ばれた観光地を後援の鉄道省が紹介するもので、多くの観光地は得票数を争った。本稿は千葉県南部にある鏡ケ浦沿岸の地域で起きた、投票運動を通じた観光地としての意識の高まりと、時を同じくして設立された捕鯨会社との対立と調整を検討する。鏡ケ浦地域は東京近郊の避暑地として知られていたが、1923年の関東大震災により大きな打撃を受けていた。その4年後の投票運動は、海水浴場としてアピールする場であった。地域の人々は大量の投票を行った。その結果、鏡ケ浦は「八景」には漏れたものの、「百景」の1つとなった。投票を通じて向上した知名度を活かすために、地域は海水浴客のための道路や橋を整備した。その一方で、同時期に新しい捕鯨会社が設立され、海での鯨の解体を予定していた。これは海を鯨の血で赤く染めるもので、観光客からの評価を下げることが懸念された。そのため、陸上での解体と、鯨の血の海への流出防止が要望され、捕鯨会社は当初の予定を変更し、陸上での解体を行うこととなった。1927年の鏡ケ浦では、観光による利益のために、捕鯨業は事業の変更を求められたのであった。

  • 中原 尚知, 岩田 繁英, 婁 小波
    2022 年 34 巻 4 号 p. 81-
    発行日: 2022/03/31
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    要旨:沿岸域においては,社会的ニーズに応えるための新たな海洋開発が推進されており,沿岸域生態系の価値の評価が重要な課題となっている。これまで,沿岸域を対象とした生態系価値の経済評価はいくつか試みられてきたが,その精緻化や価値評価に影響を及ぼす要因の検討が課題として残されている。そこで,本研究では沖縄県伊是名島の沿岸域生態系を対象に,選択型コンジョイント分析を用いて,認知度が価値評価に及ぼす影響を分析した。その結果,認知度によってMWTP(限界支払意志額)が異なることが確認された。 また,認知度によって評価結果の統計的な信頼性にも変化が生じていることから,認知度を加味した推定をおこなうことで一定程度の改善を図ることができることが確認された。これらの結果から,認知度を考慮したMWTP の導出によって,評価の精度を高められる可能性が示唆された。

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