日本沿岸域学会論文集
Online ISSN : 2758-3686
最新号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
論文
  • 原 喜則, 小島 治幸, 入江 功, 山城 賢
    2004 年 16 巻 1 号 p. 1-13
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    本文は,沿岸域の自然環境が生物や水質,底質などの生物・化学的環境要素と海域の開口度や潮汐などの物理的環境要素に支配されているとし,これらの要素を総合的に取り入れた評価手法を提案する.そのためには,自然環境を構成する環境要素の重要度を決定する必要があり,有明海と博多湾の沿岸域を対象としたアンケート調査を九州一円の大学の教員や学生,研究者などに対して実施したまた,九州沿岸の主要な海域で環境要素の現地調査を行った.これらの結果より,物理的および生物・化学的環境度を求め,それらの座標系で海域の環境を評価し,調査海域の環境特性を明らかにした.また,アンケート調査の回答者属性による環境意識の違いを考察した.

  • 森本 剣太郎, 入江 功
    2004 年 16 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    今後の大規模な海上空港や港湾の開発において整備方針を定めるためには,周辺の環境や利用に,十分調和した諸施設を整備する必要がある.そのためには,住民の意見を可能な限り広くくみ取ることが必要であるが,それらの諸施設が完成した未来の写真でもない限り,住民は実感を持って評価することができないであろう.本研究においては,まず,九州の127 海岸を対象に環境利用に関する現地踏査を実施し,さらに,そのとき得られた海岸の写真画像をホームページに掲載して画像上での環境評価を行ったその結果,現地調査と写真画像の評価結果を比較し一致度を確認したまた,波の屈折や回折を考慮した数値解析により得られた波形をCG画像に取り込みリアルな海岸光景を作成し, CG画像が持つ可能性について考察した.

  • 澤樹 征司, 畔柳 昭雄
    2004 年 16 巻 1 号 p. 27-38
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    近年、自然資源の持続可能な管理の手法としてコモンズが脚光を浴びている。本研究は小笠原諸島南島において取り組まれている自然資源の持続可能な管理のためのルールに着目し、コモンズ論の視点からその項目、運用面等の分析を試みた。そして、自然資源の持続可能な管理に必要なJレール項目が策定され得るためには、またルールが継続的に運用され、自律的な管理がなされるためにはどのような要因が必要であるのかを明らかにしようと試みた。

    その結果、現在のコモンズのあり方は単純な集団構造ではなく、行政等との連携のうえに成り立つ管理体制が必要となり、その姿はエコシステムマネジメントの概念に非常に近いものであることが明らかとなった。また、Jレール遵守のために観光客という「よそ者」の視点が有効に機能していること、新たな自然とのかかわり方を再構築し、社会経済システムの変革をなし得た観光業者らは、監視や罰則等に縛られることなく、自律的なルール運用をなし得ることが明らかとなった。

  • 柴垣 太郎, 畔柳 昭雄
    2004 年 16 巻 1 号 p. 39-48
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    本研究は、里海の概念に基づく地域として干潟を取り上げ、人と干潟とのかかわり方を通して沿岸域の自然環境のあり方について考究した。調査方法は、まず、インタビュー調査を実施し、人々が干潟に対して抱いている認識及び認識に至る過程と原因を把握した。次に、人と干渇とのかかわりを成す生業に着目し、HEP(Habitat Evaluation Procedure、ハビタット評価手続き)を用い、生業の変化に伴う干潟生態系の生物生息地としての価値の変化量を把握した。その結果を以下に示す。

    ①住民及び市民の干潟に対する認識は、地域のために干潟を活用するという点では同じであったが、住民は経済的価値を干潟に見出していた。一方、市民は環境情報的価値を見出していた。

    ②海苔養殖支柱柵の減少は、底面摩擦速度の増加を誘引し、アサリの生息環境が悪化する。そのため海苔養殖支柱柵の減少に伴い、干潟の生息地としての価値は減少傾向にある。

  • 李 銀姫, 婁 小波
    2004 年 16 巻 1 号 p. 49-59
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    本論では2001 年10 月に公布し、翌年1月1日に実施した「中華人民共和国海域使用管理法」を中心に、中国における海域利用管理制度の特徴と意義、ならびにその課題について考察することを目的としている。海域使用ニーズの増大と産業部門間調整の必要性ならびに海洋環境保護の必要に迫られて作られた当管理法は8章54条から構成される。本管理法ははじめて海面の国有化を宣言し、国有化による政府の一元的管理のもとで、ゾーニング制度の導入、海域使用権制度の導入、海域の有償使用、海域使用権取得におけるセリ・入札売買制度の確立などを柱とした制度的特徴を有している。それは紛れもなく政府の効率的な管理と市場メカニズムの導入をめざしたものである。しかし、この管理法では法執行の効率性と公平性の視点から、管理主体の非効率性や使用権取得の不公平性、さらには環境保護に関する不十分な制度的規制といったような課題もみられ、その改善が必要である。

  • 土井 義夫, 黒川 久幸, 鶴田 三郎, 風間 富ー
    2004 年 16 巻 1 号 p. 61-72
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    港湾物流分野においては「コスト面を含めて国際的に遜色のない水準のサービスの実現」を図り、日本の港湾の国際競争力を回復するため、スーパー中枢港湾構想といったハード面の対策や、規制緩和推進、諸手続きの電子情報化策といったソフト面での対策が講じられるなど大きな変革が行われている。そこで、本研究においては、港湾運送事業者が現状をどのように捉え、将来に向けた対策を考えているのかの意識の分析を通じて港湾物流の将来に向けた政策実現のためにどういった方策を採るべきかに役立てることが目的である。全国の港湾運送事業者約1000 社に対してアンケートを実施した結果、問題においては「仕事量の減少」、「ダンピング要求」を重視し、対策としては「自社が得意とする事業分野における差別化」、「規制緩和への対応」を重視していることがわかった。また港湾の規模で事業者を分類した場合、五大港の事業者が問題として「ダンピング要求」をより重要視するなど五大港と地方港の事業者の間で意識の差があることが明らかとなった。

  • 古島 靖夫, 菅野 進
    2004 年 16 巻 1 号 p. 73-80
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    サンゴ礁海域における海水交換の評価を行うために,石西礁湖を対象にボックスモデルを構築した。現場観測から得られたデータを用いて輸送係数を算出し,ボックスモデルのサンゴ礁海域への応用性について検討した。その結果,ボックスモデルから算出された輸送係数と現場観測から得られた輸送係数との間にオーダーとして比較的良好な整合性が見られモデルのサンゴ礁海域への適用性が示唆できた。また。得られた輸送係数から,石西礁湖における海水交換の時間は約11 日前後であることが見積られた。

  • 湊 太郎, 山﨑 正一, 福江 正治, 佐藤 義夫
    2004 年 16 巻 1 号 p. 81-92
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    閉鎖性海域の汚染とそれに伴う生態系の変化は,国際的にも重要な環境問題として取り上げられている。また,赤潮や青潮の発生によって漁業被害が起こるなど、市民生活に密接な問題でもある。このような閉鎖性海域を正常な状態に回復させるためには,水質および底質浄化を行う必要がある。

    本研究では,海水の水質浄化技術として,開発した浄化船が適用できるかどうか,実海域で実験を行いその浄化能力について検討した。その結果,浄化船に導入された海水は, SS が80%以上、CODが18 %程度除去されて海に戻されるということが明らかとなった。また,浄化した海水の溶存酸素量は,浄化前の海水に比べて1.0ppm以上高い値が維持される。これらの能力から,海水浄化船を対象とする海域で稼働させることにより,その貧酸素状態を改善し透明度を向上させることが可能であるということがわかったっさらに,海水浄化船のシステムが,赤潮プランクトンの除去などに十分対応できるものであるということがわかった。

報告
  • 菅 雅幸, 中澤 公伯, 宮崎 隆昌
    2004 年 16 巻 1 号 p. 93-104
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    大都市圏の市街地に取り残された漁港をその立地上の変遷過程によりタイプ分けし、Type 別に海岸線からの距離による土地利用の構成の変遷を奥行6km 前後の沿岸域の土地利用との対比により分析を行い、漁港周辺域とその他の地域の相違の把握を行った。

    その結果、取り上げた漁港のほとんどで漁港周辺域は工業用地の占有率が低く、住宅用地の占有率が高く、漁港の周辺は内陸部と類似した特異な土地利用の構成を成していることが示された。全Type の漁港の周辺域での現象であることから、漁港の存在とその影響がこの様な結果を示した一要因であり、歴史的な市街地形成や漁港・漁村の存在自体が重要なファクターであると考察した。

  • 高樋 克也, 横内 憲久, 岡田 智秀
    2004 年 16 巻 1 号 p. 105-113
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    海洋は、生物資源や鉱物資源等、膨大な資源を包蔵するとともに広大な空間を有しており、それらを活かすための手段が検討されている。また、わが国は四方を海に囲まれ、古くから水産業や海運業が盛んであり、海からさまざまな恩恵を受け海洋国とも称されてきた。しかし、わが国の国民の海に対する関心は低いといわれている。

    その要因のひとつとして、継続して興味・関心を持たせられる学校教育の中の海に関する教育が十分になされていないためと考える。そこで、感受性の高い義務教育時における海の教育の現状を、教科書を通して把握し、今後の海の教育の望ましい方向性を探る。

  • 加藤 英夫, 渡邊 和重
    2004 年 16 巻 1 号 p. 115-124
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    関門航路のような狭隣航路の浚渫工事は急潮流,大型船舶輻枝,硬い岩盤といった数々の困難な制約を受けることが多い.そのため従来のグラプ浚渫船等による浚渫工事では,激しい潮流による制約や船舶の航行を確保する必要から浚渫時間がわずかしか取れず,施工に長期間を要する.そこで船舶航行の制約とならない水中ロボット方式の岩盤浚渫工法の研究開発に着手した.研究開発の内容はエ法の検討,移動体の方式,浚渫方法等多岐にわたるが,ここでは作業中の浚渫ロボットの強潮流下における安定性という点から,潮流が浚渫ロボットに与える流体力を模型実験等により調査し,浚渫ロボットの潮流中における安定性を検言寸した結果について述べる.

  • 加藤 英夫, 渡邊 和重
    2004 年 16 巻 1 号 p. 125-138
    発行日: 2004年
    公開日: 2023/04/17
    ジャーナル フリー

    関門航路のような狭溢航路の浚渫工事は急潮流,大型船舶輻軟,硬い岩盤といった数々の困難な制約を受けることが多い.そのため従来のグラプ浚渫船等による浚渫工事では,激しい潮流による制約や船舶の航行を確保する必要から浚渫時間がわずかしか取れず,施工に長期間を要する.そこで船舶航行の制約とならない水中ロボット方式の岩盤浚渫工法の研究開発に着手した.筆者らは以前,浚渫ロボットの強潮流下における安定性という点から,潮流が浚渫ロボットに与える流体力を模型実験等により調査した.本報告ではこれに続き,浚渫ロボットの通航船舶の影孵下における安定性という点から,船舶の通過時における浚渫ロボットの挙動,船舶自身の沈下等を模型実験,数値シミュレーションにより研究した結果について述べる.

feedback
Top