コミュニケーション能力の低下が社会全体の課題になっている。しかし、私たち教員は、学校教育の中でコミュニケーションスキルの指導を十分行うことができているだろうか。たしかに、「話すこと・聞くこと」の授業実践は以前に比べるとかなり具体的にはなってきているが、ディベートやパネルディスカッションなど一過性の活動ばかりが目立っているように感じられる。集団指導を優先してきた日本の学校教育において、個々のコミュニケーション能力を育成するプログラムが構築されていないことは、大きな課題であるように思う。コミュニケーション能力は、一朝一夕に身に付くものではないことから考えると、短時間でも継続可能なスキルトレーニングが必要であると考えた。
ここで紹介する「コミュニケーション活動」は、中学校国語科の授業で3年間継続して行った個々のコミュニケーション能力の育成をめざした実践である。この活動によって、平成24年度から中学校で全面実施される新学習指導要領のキーワードになっている「言語活動の充実」の基盤をつくり、言語能力そのものを育成することにもつなげていきたいと考えた。
なお、この実践は、前任校である静岡大学教育学部附属島田中学校において、平成20年度~平成22年度まで、「音声コミュニケーション能力を高める授業づくり」を研究主題として掲げ、取り組んだものである。本研究を進めるにあっては、『人の考えを引き出すコーチング術』(平凡社新書 2008年)の著者 原口佳典氏に研究協力をいただき、温かい人間関係を築くコミュニケーションのモデルとして、コーチングの考え方を参考にした。
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