日本糖尿病教育・看護学会誌
Online ISSN : 2432-3713
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22 巻, 2 号
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原著
  • 溝上 貴世美, 當目 雅代
    2018 年 22 巻 2 号 p. 77-85
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    本研究は,ジェネラリスト看護師の糖尿病療養指導スキル尺度(NDESS)を開発し,信頼性と妥当性を検討することを目的とする.

    NDESSの質問項目は,看護師への質的研究と糖尿病看護に関する文献レビューにより抽出した.そして,内容妥当性が確認された43項目で構成されるNDESS試作版を用いて,質問紙調査を実施した.

    解析対象者は383名であった.探索的因子分析と確認的因子分析の結果,『セルフケア指導スキル』,『血糖コントロール指導スキル』,『患者看護師関係調整スキル』の3因子25項目が抽出された.尺度全体のCronbach's α係数は,0.961で内的一貫性が確認された.

    NDESSは信頼性と妥当性が確認され,糖尿病を専門としない看護師への糖尿病ケア研修の教育評価の指標として活用できると考える.

総説
  • 田中 るみ, 藤田 君支, 前野 里子
    2018 年 22 巻 2 号 p. 86-98
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2018/12/28
    ジャーナル フリー

    糖尿病患者の日常生活における中強度以上の身体活動量への介入研究の動向について把握し,我が国での適応可能性について検討する.

    糖尿病患者の身体活動量を促進させる介入研究で,中強度以上の身体活動量を評価指標としている文献を対象とした.検索範囲は2016年以前に出版されたものとし,国内文献は医中誌web版(ver.5)とCiNiiを,国外文献はCINAHLとMEDLINEを用いて検索した.

    対象文献の26編のうち25編(96.2%)が国外文献だった.介入は主に対面式の個別指導,電話,集団指導,webを組み合わせており,身体活動の振り返りや身体活動を阻害する要因などについて指導していた.個別指導を行ったものや,加速度計やwebを取り入れた介入,社会的認知理論を用いた調査において中強度以上の身体活動量が増加する傾向にあった.

    日本では専門家による頻回な個別指導を継続することは難しく,webなどを取り入れて効率的に指導を行う必要があると考えられた.

研究報告
  • 栩川 綾子
    2018 年 22 巻 2 号 p. 99-107
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2019/03/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,看護師の糖尿病患者へのかかわりについて記述された先行研究から,<かかわり>の概念を明らかにし,それが患者にとっていかなる意味を持つ経験となっていたのか,その内実を明らかにすることを目的とした.

    データは,「糖尿病&かかわり」をキーワードに検索し,Walker・Avantの方法を参考に概念分析をおこなった.34文献から,「看護師は,糖尿病に罹患したことによるありのままの患者の思いを表現できる関係と場を整え,患者の示す思いを受け止めていく.また,固有の糖尿病療養に向けて患者の力を高めることができるように支援し,そのやり取りにおいて生じてくる看護師の思いを患者に示していく応答の過程」と概念の定義をした.

    <かかわり>は,患者が療養の力を持てるような支援をすること,また患者の苦しみなどの表現に看護師の行為が対となって応答することである.患者は,自分に自信を持ち,患者と共にある看護師の存在を自覚する経験をしていた.

原著
  • 石﨑 香織, 青木 萩子
    2018 年 22 巻 2 号 p. 108-118
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2019/03/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,認知機能低下により療養行動が不安定になった高齢糖尿病患者への外来における看護実践プロセスを明らかにすることを目的とし,外来看護師6名の語りを,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.

    実践は,【認知機能低下の確信プロセス】に始まり,【認知機能低下を来した患者の現状把握】から【支援体制の必要性の認識】に至り【患者の療養行動安定を促進する支援】,【家族の支援役割獲得を促進する支援】に繋がる.その後,患者と家族両者にとっての最善の状態を模索し,同時の【安定の評価】をした後,【認知機能低下の進行の予測とケアの見通し】を持ちケアを継続するプロセスが見出された.実践には常に【ケアの根底にある一貫した方針】が流れていた.【自己の感情の調整】や【安定の意味への問い】に象徴されるように,患者や家族への配慮が迷いとなり,実践に慎重さをもたらしているという特徴が見出された.

研究報告
  • 米田 昭子, 林 直子
    2018 年 22 巻 2 号 p. 119-128
    発行日: 2018/09/20
    公開日: 2019/03/01
    ジャーナル フリー

    糖尿病の治療継続の意味を明らかにすることを目的に,高血糖指摘後から受診までの期間や2型糖尿病診断後の通院の間隔が1年以上経過した経験を持つ人を対象にフォーカスグループインタビューを行い,Thematic content analysisの手法で分析した.その結果,6つの主要カテゴリーが抽出された.定期的な受診をしている時期にも,そうでない時期にも【常に在る糖尿病の解釈】があり,それは,【長い経過の中での身体感覚としての高血糖状態の体験】【糖尿病の“正しい”自己管理への期待に応えようとする取り組み】【人々との関係の維持】と影響し合い,【治療継続の支え】という意識のされ方に影響を及ぼし,【新たな意志の育み】をもたらしていた.診断や高血糖指摘後に一定の期間受診をしていない経験を有する人々は,複雑さを伴う糖尿病の療養において,自分なりの解釈をし続け,人との関係性の中で自己管理を全うしようとするがゆえに,患者自身が自分を追い込む道筋を作り自己管理をいったん“棚上げ”する状況がもたらされると推測された.看護において,受診をしていない時期も含めて患者の経験に関心を持ち,必要に応じて糖尿病の解釈を手伝うこと,患者が,その時々の状況に応じた糖尿病との付き合い方を検討できるように助けること,患者の自己管理の期待に応えようとする度合いを緩める働きかけをケアの枠組みに組み込むことの重要性が示唆された.

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