日本糖尿病教育・看護学会誌
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24 巻, 2 号
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原著
  • 雨宮 歩, 中村 伸枝, 中島 由紀子, 仲井 あや, 下屋 聡平
    2020 年 24 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/01/26
    ジャーナル フリー

    持続皮下インスリン注入療法(CSII)は小児においてもその有効性が認められ,導入する者が増えてきているが,小児のCSIIトラブルの実態は明らかになっていない.そこで,CSII実施中の小児の皮膚症状を観察し皮膚トラブルの実態を明らかにすることを目的とした.ケア方法や症状について,本人及び保護者より聴取し,穿刺部周囲の角質水分量と,サーモグラフィで皮膚温度,エコーで表皮から皮下組織までの厚さを計測した.所属施設の倫理審査委員会の承認を得て実施した.CSII実施中の小児8名を対象に10-11月(平均気温14.4℃,平均湿度74.5%であった時期)に調査を行った.テープかぶれやかゆみが多く観察され,かぶれがある群では角質水分量が有意に低いことが明らかになった(p=0.002).また,高温多湿の時期には硬結や発赤,膿みがあったことが聴取から明らかになった.以上のことより,季節により皮膚トラブルの種類が異なり,ケア方法も変える必要がある可能性が示唆された.

  • -成人学習にもとづいて-
    中原 美穂, 正木 治恵, 河井 伸子
    2020 年 24 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/01/26
    ジャーナル フリー

    【目的】2型糖尿病と診断され教育入院を受けた患者の教育入院の体験の意味づけを,成人学習の視点から明らかにする.

    【方法】診断後6か月以内の2型糖尿病患者4名に,教育入院中の参加観察と退院後に半構造化インタビューを実施し,分析は質的統合法(KJ法)を用いた.

    【結果】対象の教育入院の体験の意味づけは3つの大タイトルと6つのタイトルで示された.

    【知識・技術の獲得と自分の身体の新たな理解】はタイトル《教育入院体験の体感を通じて身体を理解し今後の生活をイメージする》を含んだ.

    【批判的な振り返りと新たな生活のための探求】はタイトル《教育入院をきっかけに過去の出来事を想起し,得た知識と自分の傾向や状況と照らし合わせて解釈して今後について考える》を含んだ.

    【試しながら能力や自信を構築する修正した準拠枠のもとでの生活】はタイトル《退院後の生活は教育入院生活と同じようにしてもうまくいかないため自分でバランスを見ながら工夫するしかない》を含んだ.

    【考察及び結論】診断後まもない2型糖尿病患者の教育入院の体験の意味づけは,糖尿病患者としての新たな準拠枠が形作られ,それをもとに生活するという学習プロセスを表した.

実践報告
  • ~外来での高齢2型糖尿病患者の肺炎発見から生活に合わせたインスリン治療まで~
    廣瀬 久美
    2020 年 24 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/01/26
    ジャーナル フリー

    我が国では,高度実践看護師である診療看護師(以下.NPと略す)の裁量権の拡大が期待されている.本研究は,日本の急性期病院に在籍するNPの実践(一事例)を通し,その役割について明らかにすることを目的とした.

    対象は,80歳代の独居の女性,2型糖尿病にてインスリン強化療法中の患者であった.NPは外来で発熱があったことから感染症を疑い,医師に先行し初療を開始した.その結果,肺炎を発見し,抗生剤の開始と病状説明を行い入院とした.入院後,誤嚥性肺炎と考え,早期に嚥下機能評価を実施した.2型糖尿病に対しては,入院前の血糖値から頻回な低血糖があったことを推測し,インスリン内分泌能を評価後,インスリン自己注射の単位と回数を減じた.その後,肺炎は軽快し,嚥下機能は正常であり,血糖値も安定し,第8病日目に退院した.NPは,病態と生活を包括的にとらえる視点を有することで患者を早期退院に導く一助としての役割を果たしていた.

資料
  • ―A県の糖尿病専門医が診療する診療所の看護師への調査―
    松本 智美, 古賀 明美
    2020 年 24 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/01/26
    ジャーナル フリー

    【目的】診療所の看護師が行う糖尿病腎症重症化予防のための療養支援状況を明らかにすることである.【方法】糖尿病専門医が診療する診療所の看護師を対象に,自記式質問紙調査票を配布し,回収は郵送法とした.【結果】研究対象者91名中77名を分析対象とした.

    糖尿病腎症重症化予防のための療養支援をしている者は54.5%で,『身体的・心理的・社会的理解への関わり』『薬物治療時の支援』は,実施割合が高かった.『食事療法時の支援』『運動療法時の支援』では,8割以上の看護師が聴く姿勢を示すなど食や運動習慣を把握するために欠かせない看護技術を用いて実践していた.一方で,患者自身の生活に合わせた具体的な支援や副作用を回避するための具体的支援,患者がセルフモニタリングできるよう支援する内容について実施率が低かった.【考察】診療所の看護師が行う糖尿病腎症重症化予防のための療養支援内容は,同じ患者に継続して関わることのできるメリットを活かし,糖尿病腎症重症化予防のエビデンスとなる血糖や血圧管理に関連する具体的な療養支援内容について実施率を高める工夫が必要である.

総説
  • ―哲学的基盤と研究デザイン・研究方法・結果の記述が調和し一貫性のある文献をもとに
    細野 知子, 栩川 綾子
    2020 年 24 巻 2 号 p. 135-144
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    【目的】糖尿病看護ではその人の経験をありのままに記述する現象学的研究が蓄積されている.本論文の目的は哲学的基盤と研究デザイン・研究方法・結果の記述に一貫性がみられた現象学的研究論文の検討を通じて,その背景とともに記述された糖尿病者における病い経験の成り立ちを明示することである.

    【研究方法】電子データベースにおいて「糖尿病」and「現象学」で検索し,除外基準によって選定した論文の質をStandards for Reporting Qualitative Research(SRQR)で評価した.それらの論文から現象学的研究の哲学的基盤と研究方法の過程が調和し一貫性がある論文を選定し,その一貫性により明らかになったことを分析した.

    【結果】対象の3論文では,糖尿病である身体の自覚,身体と意識が織りなすコントロールに関する経験が共通して記述されていた.

    【考察】糖尿病である身体の自覚から時間性の変化が起こり,その人に見える状況や身体への気づかいが生まれて意識的な意思決定や自己管理につながっていた.哲学的基盤と研究の過程が調和し一貫性のある現象学的研究であるがゆえに,身体のふとした気づきが始点となる病い経験の成り立ちが記述され,その人が経験している身体を理解する重要性が示唆された.

委員会報告
  • 日本糖尿病教育・看護学会 政策委員会(2018年9月~2020年9月), 餘目 千史, 飯田 直子, 金子 佳世, 黒田 久美子, 高橋 良 ...
    2020 年 24 巻 2 号 p. 145-151
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    目的は,遠隔モニタリングを用いた看護支援と「糖尿病透析予防指導管理料(以下,糖防管と略す)」の算定に関する実態をWEB調査により明らかにすることである.

    対象者は日本糖尿病教育・看護学会の学会員および非学会員のうち医療機関に所属している者とし145名(回収率7.5%)の回答を得た.

    遠隔モニタリングによる支援実施者は4名(2.8%),支援患者は「インスリン療法中の患者」3名,「精神疾患合併の患者」2名,「糖防管算定者」1名であった.

    糖防管を算定している施設は117名(80.7%),医療施設区分別では200床以上98名(87.5%),200床未満15名(65.2%),診療所4名(40%)であった.前年度比の件数は「あまり増加していない」「変わらない」を合わせると56.4%,「減少している」7.7%であった.その主な要因は「医師の指示がない」「マンパワー不足」「三職種が同日に実施できない」であった.

    遠隔モニタリングの必要な患者層への示唆が得られ,実施体制の整備の検討が必要である.診療所の糖防管算定が困難である現状や件数が増加しない現状が明らかとなった.

実践報告
  • ―糖尿病療養指導カードシステムを活用して―
    佐竹 明美, 森 静, 本多 由布子
    2020 年 24 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,日本糖尿病療養指導士(以下,CDEJと略す)資格を持たない看護師の日本糖尿病協会作成の糖尿病療養指導カードシステム(以下,カードシステムと略す)導入による気持ちの変化を明らかにすることである.自記式無記名式質問紙調査を実施し24名のCDEJ資格をもたない看護師の記述を内容分析した.導入前の気持ちは【療養指導はCDEJに任せればよい】【療養指導が提供されているか心配である】【療養指導の仕方がわからない】【糖尿病患者には関われない】【糖尿病患者に対応できるか不安である】の5カテゴリーであり,導入後の気持ちは【糖尿病教育内容が患者にとって良いものと思える】【療養指導ができるようになったと感じる】【糖尿病患者に興味を持つ】【療養指導を提供できているか不安である】の4カテゴリーであった.

    カードシステム導入はCDEJ資格を持たない看護師の療養指導の成功体験となり,糖尿病患者に興味を持つ気持ちへの変化となった.療養指導に対する不安に対して,療養指導時間の確保,糖尿病に関する知識向上の支援,CDEJ資格を持つ看護師による支援体制構築の必要性が示唆された.

原著
  • 山本 裕子, 光木 幸子, 田中 登美, 南村 二美代, 横田 香世, 肥後 直子, 門田 典子, 藤田 かおり
    2020 年 24 巻 2 号 p. 161-170
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    【目的】糖尿病看護の専門性の高い看護師による糖尿病とがんを併せ持つ患者へのセルフマネジメント支援の実際と経験している困難について明らかにすることである.

    【方法】フォーカスグループインタビューを4回,計16名を対象に実施し,質的帰納的に分析した.

    【結果】セルフマネジメント支援の実際は,がん治療の内容や時期をふまえながら専門性を活かして血糖コントロールを軸とした看護が展開されていた.一方,患者の療養内容が複雑であり,がんと糖尿病の両領域からの専門的な知識を要する看護支援が必要なこと,がんと糖尿病の領域間の情報共有や理解不足,患者と関わる時期や場の問題,悪性疾患であることに起因する患者との関わりや血糖コントロールのあり方に対する戸惑いなどから困難を経験していた.

    【結論】糖尿病とがんを併せ持つ患者のセルフマネジメント支援において,知識と意識の向上,連携の促進がその困難に対応する上で必要である

資料
  • 西尾 育子, 中條 雅美
    2020 年 24 巻 2 号 p. 171-179
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    本研究は,1型糖尿病患者のスキーマを明らかにする目的で,外来通院中の1型糖尿病患者1名に半構成的面接を行った.分析は,サブカテゴリは質的帰納的分析法で行ったが,カテゴリは「不合理な信念測定尺度短縮版(日本語版International Belief Test)」の因子を参考にした.その結果,1型糖尿病患者のスキーマは,【問題回避】【無力感】【倫理的非難】の3つで構成されていた.1型糖尿病は,食事と血糖値に合わせたインスリン投与と血糖値のコントロールが求められるが,命に直結するインスリン治療に伴う社会生活の制限や心理的拘束感によりスキーマが形成されていた.本事例は否定的なスキーマが形成されていたことから,肯定的なスキーマが形成されるように働きかける援助が重要である.スキーマに関する言動が聴かれるときは寄り添う姿勢で傾聴に努め,肯定的な言動が認められたときは言葉で評価し関心を寄せていることを示すなど,安心感を得られる援助が必要である.

原著
  • 長棟 瑞代, 稲垣 美智子, 多崎 恵子, 堀口 智美, 浅田 優也, 北川 麻衣
    2020 年 24 巻 2 号 p. 181-190
    発行日: 2020/09/30
    公開日: 2021/03/19
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,2型糖尿病患者の“わかっているけれど,できない”という現象の構造を描くことである.分析対象者11名を,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した.構造は,【空腹に敏感になった身体に苛まれる】を起点とし,【生活を通して考え,療養経験を培ってきたと思う】【普通の身体でなくなったと感じる】《意志の弱さを常に感じる》を辿り,分岐点となる【食事療法が“できていない”と“できない”でわからなくなる】を経て【自分なりの我慢で“できない”ことに対処する】に至るプロセスとして描くことができた.以上より,“できない”という言葉に対する身体感覚に焦点を当てることが重要であると示唆された.身体感覚に確信を持てないでいる為,行動として“できていない”と,身体として“できない”を分けて捉える必要があると考えられた.

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