日本糖尿病教育・看護学会誌
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24 巻, 1 号
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原著
  • 堀口 智美, 稲垣 美智子, 多崎 恵子, 浅田 優也, 太田 沙季子
    2020 年 24 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,2型糖尿病患者が家族サポートを肯定的に受け取り(感取),応答する(対応)力である家族サポート感取・対応力(ARRF)とHbA1c(NGSP)および関連要因との関係を,性別ごとに明らかにすることである.重度の合併症がなく,家族と同居している成人2型糖尿病患者を対象に,日本人2型糖尿病患者の家族サポート感取・対応力尺度,HbA1c,関連要因を調査項目とした自記式質問紙にて調査し,63名の有効回答を得た.

    結果,ARRFとHbA1cとの関係において,男性ではARRFとHbA1cに有意な負の相関(rs=-.431)があり,女性では有意な正の相関(rs= .598)があった.また,ARRFと関連要因との関係では,男性においてARRFが有意に低かったのは,自覚症状がない,生活への支障がない,合併症がないと自覚している,大血管障害がない,親と同居している,就労しているという項目であった.女性においてARRFが有意に高かったのはBMI基準範囲内,インスリンなどの注射薬の使用があるという項目であった.

    以上より,ARRFにおいて,性別により異なる支援方法が必要であることが示唆された.

実践報告
  • 碇 由美, 古賀 明美, 熊谷 有記
    2020 年 24 巻 1 号 p. 9-16
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,外来通院中の糖尿病患者におけるインスリン自己注射手技の実際と対象者の属性,インスリン自己注射に関する知識との関係を明らかにすることである.85名を対象に独自に作成したインスリン自己注射手技チェック表を用いた手技の観察と,インスリン自己注射手技および保存方法に関する知識などについての対面式の質問紙調査を行った.65歳以上の対象者22名に対しては改訂長谷川式簡易知能評価スケールを用いて認知機能の評価を追加して行った.

    インスリン自己注射手技に誤りがある対象者は全体の約8割で,皮下注射時の針の留置秒数実測値が短い人ほど誤った手技の項目数が多かった.また改訂長谷川式簡易知能評価スケールの点数が低いほど誤った手技の項目数が有意に多かった.以上より,針の留置時間を確認し高齢者における認知機能を評価することで,正しい手技の維持につながることが示唆された.

原著
  • 中尾 友美, 武石 千鶴子, 清水 安子
    2020 年 24 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/29
    ジャーナル フリー

    【目的】就労している2型糖尿病患者に実施した,生活時間のマネジメントに関する個別面接の効果を検証する.

    【方法】層別無作為化比較試験であり,生活時間のマネジメントの“仕事の調整”“時間のコントロール”“価値観に合った目標設定と行動”“生活リズムの調整”の4側面から個別面接を実施した.なお介入効果は,HbA1c,BMI,生活時間のマネジメント,セルフケア能力,睡眠,ストレスを確認した.

    【結果】介入群14名,対照群15名を分析し,HbA1c,生活時間のマネジメント,セルフケア能力が,ベースラインと介入後の差で,介入群が有意に改善していたが,BMI,睡眠,ストレスは,差はなかった.

    【結論】セルフケア能力や,HbA1cの改善がみられたことから,就労している2型糖尿病患者にとって生活時間のマネジメントの視点からの介入は有効であると考えられ,臨床での活用を目指し実行可能性を高めるための検討が今後必要である.

資料
  • ―利用者の行動変容に着目して―
    永澤 成人
    2020 年 24 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/04/29
    ジャーナル フリー

    厚生労働省の定める「検体測定室」は,健診受診率が低値である現状に対して期待の高さが窺えるが,生活習慣の改善や今後の検体測定室利用等の行動変容は利用者の判断に任せられており,糖尿病の予防につながるのかどうか明らかではない.本研究は,今後の検体測定室の活用方法への示唆を得ることを目指し,検体測定室の利用者の意識を明らかにすることを目的とした.

    A企業の検体測定室利用者を対象に,生活習慣改善に関する行動変容ステージ等の質問紙調査を行い,97名の回答を得た.質問紙の単純集計および各項目の関連を分析した結果,検査前後の行動変容ステージの変化等において有意な関連が認められた.統計分析にはJMPver11を用い,有意水準はすべて5%とした.

    検体測定室の利用前後で,生活習慣を「改善するつもりはない」と回答した者が減少した.検体測定室を利用することでその後の行動変容の促しやそれに伴う行動の評価として検体測定室を活用できるのではないかと考える.

委員会報告
第24回日本糖尿病教育・看護学会学術集会報告
資料
  • カーン 洋子, 青木 きよ子, 高谷 真由美
    2020 年 24 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    【目的】急性期病床に勤務する看護師の糖尿病患者に対する看護実践能力として考えられる糖尿病自己管理支援と関連要因を明らかにし,急性期病床における糖尿病患者の看護に携わる看護師の実践能力を強化する方策の示唆を得る.【方法】急性期病床で糖尿病患者の看護を実践する看護師642名への質問紙調査.155名の有効回答について一元配置分散分析,t検定を行った後,重回帰分析した.【結果】糖尿病自己管理支援下位尺度平均値は「医療専門職と協働する役割」「患者に看護援助を提供する役割」「自己啓発・自己研鑽に努める役割」の順で高く「糖尿病看護有資格者」「病棟で実施する糖尿病研修」「糖尿病標準看護計画」が影響していた.【考察】質の高い糖尿病看護のため糖尿病看護有資格者は重要な要因であり,標準看護計画の整備,糖尿病研修受講者を増加させるなど職場環境の醸成が重要である.

短報
  • 鈴木 愛絵, 八重垣 里菜, 細名 水生, 上杉 裕子
    2020 年 24 巻 1 号 p. 83-85
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    近年新興国では糖尿病患者数が増加しており,それらの国からの我が国への在留外国人数も増加している.そこで本研究では外国人糖尿病患者に対する療養指導において看護師が感じた不安を明らかにすることを目的とし,在留外国人の多い東京都と愛知県の糖尿病看護認定看護師への自記式質問紙調査を実施した.調査に回答を得られた36人(女性33人(91.7%),40~49歳14人(38.9%),50~59歳と30~39歳がそれぞれ11人(30.6%))を分析対象とした.外国人糖尿病患者に対して対象者が感じた不安は,「自分の指導・説明が伝わっているか」25人(86.2%),「食事療法を指示通りにできるのか」10人(34.5%),「インスリンの自己注射を指示通りにできるのか」9人(31.0%)であった.これらのことから,言語的な障壁から看護師―患者間でコミュニケーションの障害が生じ,患者が治療のために自己管理できるのか不安に感じていることが明らかとなり,多言語対応のためのシステムの整備が求められることが示唆された.

原著
  • 増田 誠一郎, 籏持 知恵子, 藪下 八重
    2020 年 24 巻 1 号 p. 87-94
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    本研究は,前期高齢2型糖尿病患者における血糖コントロールに関連する要因を明らかにすることを目的とし,外来通院中の患者117名を対象に,自記式質問紙調査及び診療録調査を実施した.血糖コントロールに関連すると考えられる要因を説明変数,血糖コントロールの不良の有無を目的変数として,多変量ロジスティック回帰分析を行った.調査実施施設の倫理委員会の承認を得て行った.

    その結果,対象者の平均年齢は69.7±3.1歳,インスリン治療者は46.2%であった.HbA1c(NGSP)値8.0%以上の血糖不良群は26.5%であった.多変量ロジスティック回帰分析の結果,血糖コントロール不良に関連する要因は,「インスリン治療をしている」OR 7.06,「適切な睡眠時間でないこと」OR 5.46,「肥満」OR 4.57,「負担感が大きい」OR 3.64であった.前期高齢者の良好な血糖コントロールには,インスリン管理状況や基本的生活習慣,及び治療負担感への支援が重要である.

  • 柏崎 純子
    2020 年 24 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 2020/03/31
    公開日: 2020/10/20
    ジャーナル フリー

    急性期病棟における看護師の糖尿病ケアに対する認識と実施状況を明らかにすることを目的とした.糖尿病患者が入院する急性期病棟の看護師に無記名の質問紙調査を実施し,89部を分析した.急性期病棟における看護師は,糖尿病患者と関わることに対して,「時間がかかる」79.7%,「難しい」78.6%,「苦手である」56.8%とネガティブな思いをもち,「楽しい」,「やりがいがある」,「苛立つ」とはあまり思っていなかった.また,低血糖に関連する情報提供の実施状況は46.1~51.7%であり,「患者の食事療法の摂取カロリーと塩分の量を伝える」など生活の中で実施する療養行動に関する情報提供の実施状況が低かった.糖尿病ケアの実施状況を高めるためには,患者の行動だけでなく患者の考え方や態度の変容にも視点を向けられるような支援や,退院後の患者の生活状況を病棟看護師に伝達できるシステム,糖尿病ケア以外のケアを実施しながらの糖尿病に関する情報提供が必要である.

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