比嘉康雄(1938-2000)は、戦後の沖縄を代表する写真家の一人である。警察官から転身して写真家となり、戦争と日本復帰により変容する沖縄社会を生きる人々の姿をカメラとペンで記録した。1974年に宮古島で祖神祭に立ち会って以降は、祭祀の世界を精力的に取材し、膨大な写真と取材の記録を遺した。2018年より、筆者らは資料調査に着手した。対象は、写真や取材ノート、音声テープなど写真活動のなかで生み出されたすべての記録類である。本稿では、調査の実践的取り組みを示したうえで、比嘉康雄の写真活動の検証と、作家本人による記録作成・写真整理方法を分析する。さらに利活用に向けた権利処理の課題を指摘し、公開の在り方について考察する。
ゲーム研究における小学館の学年別学習雑誌(学年誌)が有する役割を分析するという目的のもと、本稿では、雑誌の編集方針と編集者のインタビューが掲載されている書籍やwebページ、ビデオゲームの記事を分析した。ゲームが雑誌に掲載される前に、学年誌の「学習」の性質が変容し、学年誌が娯楽記事編集ノウハウの蓄積と、小学生という読者に特化した雑誌編集体制の構築の場となったことを確認した。学年誌は、電子ゲームとビデオゲームをゲーム専門誌の創刊以前より掲載していたことが明らかとなり、ゲーム研究における学年誌の意義と役割は、現時点では、子ども、大人(家庭・学校)、産業とビジネスの3つの側面があると考えられる。
米国アーキビスト協会(SAA)の2020年次大会は、シカゴでの開催が予定されていたところ、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大の影響により、同年7月下旬~8月中旬の期間を中心に、各分科会等を含めて完全オンライン形態で開催された。本稿では筆者が参加できた限りにおいて、メインの会議および各分科会等で取り上げられた事例や課題につき、報告する。特に、(1)アート領域におけるアーカイブズ、(2)ボーン・デジタル情報保存、(3)Black Lives Matter(BLM)運動を受けての取り組み、に力点を置く。加えて、オンライン会議のあり方や、COVID-19の影響下における関連国際会議の動向などについても、私見を述べる。
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