日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
10 巻, 3 号
特集号「災害とリモートセンシング」
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
巻頭言
論文
  • 加藤 圭太, 山崎 文雄
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_1-3_11
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,陸域観測技術衛星「だいち」(Advanced Land Observing Satellite : ALOS)に搭載されたフェーズドアレイ方式Lバンド合成開口レーダ(PALSAR)によって,2008年岩手・宮城内陸地震の前後に得られたSAR 画像を用いて,浸水域の特性を把握しその自動抽出を試みた.浸水域(または逆に水域が干上がった領域)の抽出方法は,水域が他の土地被覆に比べて後方散乱強度が低いことと,土から水域(またはその逆)に変わると,後方散乱強度に大きな変化が生ずることを特徴と考え,2つの条件を満たす領域を変化域として抽出した.水域抽出の基準は後方散乱強度が一定値以下のピクセルであり,変化の判定は前後画像の強度差が一定値以上のピクセルである.抽出された結果に対して,ノイズ等による微小領域の除去するための空間フィルタを適用した.これらの手順で画像処理を行った結果,概ね良好な抽出精度を得ることができた.とくに荒砥沢ダム周辺では前後画像の変化が大きいため,適切な閾値を取れば75%以上の高い精度で抽出することができた.
  • 石出 貴大, 山崎 文雄
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_12-3_24
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
    災害直後の広域における早期被害把握の手段として, 2008年に発生した岩手・宮城内陸地震を例に,地震前後のALOS/AVNIR-2画像を用いて,画像解析による斜面崩壊の検出を行った.斜面崩壊を検出する方法として,NDVI (正規化植生指標)と教師付き分類の2つを試した.また誤検出の低減のために, DEM (数値標高モデル)を用いて斜面崩壊の特徴を調べ,平地部分における誤検出箇所の除去を行った.目視判読結果と画像解析結果を比較したところ,全体の斜面崩壊箇所数のうち,NDVIによる検出では約66.5%,教師付き分類による検出では約68.6%の崩壊箇所を検出することができた.目視判読結果から推定した面積が500m2以上の斜面崩壊は,いずれの方法においても90%程度検出することができ,斜面崩壊の分布は概ね捉えられたといえる.したがってALOS/AVNIR-2画像は,広域における地盤災害把握において有効な手段であることが示された.
  • 翠川 三郎, 三浦 弘之
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_25-3_32
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
    SAR(合成開口レーダー)画像は天候によらず、また昼夜を問わず画像が得られることから、即時的に被害状況を把握する手段として有望と考えられる。本研究では、2008年岩手・宮城内陸地震の直後に得られた高分解能SAR画像を用いて、そのテクスチャー解析から、斜面災害地域の抽出を試みた。異なるサイズのウインドウに対して画像強度の分散と歪度を計算した。その結果、100×100ピクセル強のウインドウサイズでの分散の値から斜面災害地域をより精度よく抽出することができることを確認した。
  • 鈴木 大輔, 丸山 喜久, 山崎 文雄
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_33-3_45
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
     本論は,リモートセンシング技術を防災分野に利用し,大地震発生後の早期被害把握を行なうことを目的としている.近年では,自然災害発生時の緊急撮影に従来からのアナログ航空カメラだけではなく,デジタル航空カメラが使用されている.デジタル航空画像は高い輝度分解能や近赤外波長帯を有するため,衛星画像やアナログ航空画像よりも詳細な被害把握が可能となる.これらのデジタル航空画像の利点を活かし,2007年新潟県中越沖地震で瓦礫と化した倒壊建物を画像解析によって自動的に抽出する方法を提案した.
  • 三浦 弘之, 翠川 三郎
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_46-3_57
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
    2008 年中国四川地震で甚大な被害を受けた地域のひとつである北川県南東部を対象として建物被害分布を把握するために,地震前後に撮影された人工衛星光学センサ画像を利用して,建物被害の目視判読を行った.地震前の画像から辺長さ10m 程度以上の建物の位置が特定できた.地震前後の画像の比較から,対象範囲全域で計約5,000 棟の建物の被害レベルを,倒壊,大破程度,中破程度ないしそれ以下の3 種類に判読した.各集落の被害率を算出したところ,中心部の曲山鎮では被害率80%以上となるなど,地震断層の上盤側に位置する集落の方が下盤側の集落に比べて被害率が高い傾向がみられた.
  • 五十嵐 政泰, 村尾 修
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_58-3_72
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
    本研究では,異なる時代ごとの都市の脆弱性(建物倒壊危険性と延焼火災危険性)を定量的に評価する重回帰モデルを構築し,古地図等を用いることにより東京の丸の内地区と銀座地区の脆弱性の変遷を明らかにした.また両地区における20世紀の復興の経過を脆弱性の変遷を通して理解することを試みた.そして紙媒体から得られたこれらの情報をGoogle Earthをプラットフォームとしたデジタル媒体に変換し,復興デジタルアーカイブズとして再構築した.
  • 松岡 昌志, 能島 暢呂
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_73-3_86
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
     国内外の巨大地震後の情報空白期における早期かつ確実なる被害情報の収集にALOS衛星のPALSAR画像を活用することを目的として,CバンドSARセンサに基づく既往の建物被害推定モデルをLバンドSARセンサであるPALSAR画像に適用できるよう,1995年兵庫県南部地震を観測したJERS-1衛星のSAR画像(Lバンド)から全壊率に関する尤度関数を再構築した。そして,震度情報の被害関数との統合処理により,SAR画像から建物全壊率分布を定量的に推定できることを示した。さらに,構築したモデルを2007年のペルー沖地震と2008年の中国四川地震を観測したPALSAR画像に適用し,現地調査や被害判読結果との比較から手法の妥当性を検証した。
  • -津波被害関数の構築に向けて-
    越村 俊一, 萱場 真太郎
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_87-3_101
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
    我が国の津波災害による家屋被害評価手法の高度化を目的として、1993年北海道南西沖地震津波の奥尻島青苗地区における航空写真の目視判読による家屋被害評価と津波氾濫解析とを統合して、新しい津波被害関数を構築した。津波被害関数は、家屋の大破・流失率と津波氾濫の流体力学的な諸量(最大浸水深、最大浸水高、最大流速、家屋単位幅あたりの最大抗力)との関連で表現し、想定される津波の諸量に対する家屋被害棟数を定量的に評価する新しい津波被害想定指標を構築することができた。
報告
ノート
  • 佐治 斉, 田村 裕之, 小林 真紀
    2010 年 10 巻 3 号 p. 3_119-3_122
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/10/18
    ジャーナル フリー
    大規模災害後の都市域における被災地周辺の広域情報を、空撮画像を用い自動解析する研究が数多くなされている。それらの中で、災害前後に撮影された画像の統合や、画像と地図の統合により被災地情報を取得するものがいくつか提案されているが、これを自動化するためには画像間の自動位置合わせ手法が必要となる。本研究では、都市域において災害前後に撮影された空撮画像の自動位置合わせ手法を新たに提案する。具体的には、災害前後の空撮画像内から被災前後で変化の少ない特徴点を自動抽出し、その特徴点の位置情報と幾何学変換を用いて自動位置合わせを行うものである。
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