日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
13 巻, 4 号
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論文
  • 岩城 麻子, 藤原 広行
    2013 年 13 巻 4 号 p. 4_1-4_18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/27
    ジャーナル フリー
    広帯域地震動計算のために実用的に広く用いられるハイブリッド合成法においては、低周波数側と高周波数側の地震動がそれぞれ差分法等による決定論的地震動計算手法と統計的グリーン関数法に代表される半経験的・統計的手法によって別々に計算される。このとき低周波数側と高周波数側でそれぞれ全く独立のデータと手法を用いて合成されることになるため、時刻歴波形の経時特性まで含めて両者の整合性を保つことは困難である。本稿では、周波数帯間の地震動特性の関係に着目し、低周波数地震動が持つ情報を利用して高周波数地震動を合成する手法を提案し、関東地域において適用性を検討した。観測地震記録に基づいて各評価地点における加速度エンベロープの経時特性の周波数帯域間の関係性を抽出し、その特徴を関係式として整理した。求められた経時特性を基となる低周波数地震動に掛け合わせ、適当な位相情報を与えることにより高周波数地震動の合成が可能であることを示した。
  • 田村 誠, 田林 雄, Frank Hiroshi Ling , 安島 清武, 三村 信男, 安原 一哉
    2013 年 13 巻 4 号 p. 4_19-4_37
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/27
    ジャーナル フリー
     本稿は、2011 年3 月11 日の東北地方太平洋沖地震での茨城県への津波に関して、地理情報、アンケート・ヒアリング調査を組み合わせて避難行動の実態を検証した。茨城県アンケートで津波を想起した人は14%であり、多くの人々は避難開始が遅れがちな用事後避難をしていた。そこで、避難警報の認知、津波浸水想定区域やハザードマップの認知、浸水想定区域からの距離などが人々の避難開始時間に与えた影響を検証した。その結果、避難開始時間は、避難場所を知っていると早い、ハザードマップと浸水想定区域の両方を見たことがあるとやや早い、浸水想定区域内にいた人は早い、ということなどが明らかになった。一方で用事後避難は、避難準備、戸締まり、家族の安否確認などが主な理由であり、個人の認識や家庭状況が避難開始時間を大きく左右した。将来起こりうる被害を軽減するためには、今回の反省を踏まえて、避難行動や地域防災計画を再検討することが求められる。
  • 池田 芳樹, 久田 嘉章
    2013 年 13 巻 4 号 p. 4_38-4_54
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/27
    ジャーナル フリー
    本論文は、建物モデルを事前にもたずに、限られた階の振動計測から全階の応答を予測する等価線形的手法を提案している。提案手法は、計測点で同定された刺激関数を利用して振動モード形を正弦関数に近似した後に、モード応答の重ね合わせによって応答を時刻歴波形として推定する。東京・新宿にある29階の超高層建物で記録された東北地方太平洋沖地震の加速度を用いて、手法の妥当性を検討している。ARXモデルによって得た3次モードまでの同定結果を用いて、最大加速度と最大変位の高さ方向の分布を推測した。実建物で問題となる同定モード次数と計測点の位置の影響も調べた。
報告
  • 赤澤 隆士, 荒木 正之, 鷹野 澄, 澤田 純男, 林 康裕, 堀家 正則
    2013 年 13 巻 4 号 p. 4_55-4_67
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/27
    ジャーナル フリー
    我々は、関震協観測網が抱えてきた従来の強震観測システムの課題を解決するために、連続観測および観測データのリアルタイム伝送に対応し、長時間分の連続データの保存を可能とする、24bit A/Dコンバータを搭載した8チャンネル仕様のデータロガーKS-002Dを開発した。このデータロガーは、同様の機能を有する他のデータロガーと比較すると、安価となっている。そして、2009年3月から2011年8月にかけて関震協観測点に新データロガーを順次設置し、近畿地方においてリアルタイム連続強震観測網を構築した。新しい強震観測システムでは、従来のトリガ方式による観測体制を維持しつつリアルタイム連続観測を実現している。新データロガーで得られる観測記録の精度は、幾つかの地震記録と常時微動記録を、従来のデータロガーや微動を測定できる地震計で得られた同時記録と比較することで検証した。その結果、地震記録は、従来のデータロガーで得られた記録と同等かそれ以上の精度を有することが確認された。一方、常時微動記録は、良質な岩盤上観測点では高周波数域で精度がやや低いものの、それを除けば、微動を測定できる地震計で得られた記録と良い対応を示した。以上の検証により、新しい強震観測システムで得られる観測記録は、強震から微動に至るまで広帯域で高い精度を有することが明らかとなった。
  • 菅原 正晴, 植竹 富一
    2013 年 13 巻 4 号 p. 4_68-4_84
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/27
    ジャーナル フリー
    震源が近接した複数の地震に対して、同じ観測点で得られた記録のフーリエスペクトル比を計算することにより、伝播特性と地盤特性の影響を取り除いた震源特性の違いを抽出した。その上で、これらの地震に対する理論スペクトル比を、記録から得られたフーリエスペクトルの比と対比することにより応力降下量の比を算定し、地震動の最大加速度のばらつきに及ぼす応力降下量の影響の分析を行った。応力降下量の比の算定結果を最大加速度の距離減衰式に考慮することにより、ばらつき低減に有効であることを示した。
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