日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
15 巻, 5 号
特集号「津波等の突発大災害からの避難の課題と対策」
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
論文
  • 大原 美保
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_2-5_16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    東日本大震災後以降、多くの自治体が「災害・避難情報伝達手段の多層化」に取り組みつつある。災害・避難情報伝達手段には、受信者の状況に関わらず情報を伝達可能であるPUSH型の手段と、受信者側で何らかのアクションを行わないと情報を閲覧できないPULL型の手段があり、両者の効果的な活用が必要である。本研究では、首都圏の自治体へのアンケート調査を行い、自治体におけるPUSH型及びPULL型の災害・避難情報伝達に関する現状と今後の課題に関する分析を行う。前半ではまず、自治体での各種伝達手段の利用状況を概観する。後半では、近年普及が目覚ましい携帯電話を用いた情報伝達に着目し、PUSH型の手段である緊急速報メール(エリアメール)と、PULL型の手段である住民登録型のメールサービスを比較した上で、利用状況・発信内容の違いや今後の課題を明らかにする。
  • 伊藤 恵理, 川瀬 博, 松島 信一, 畑山 満則
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_17-5_30
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    地震とそれに伴う津波の被害軽減のための重要な対策の一つとして、地震直後の状況のシミュレーションを行い、その影響を分析し対策立案に活用することが挙げられる。本研究においては、建物被害の津波避難への影響を明らかにするため、強震動の応答解析に基づいて建物被害を予測した上で津波避難シミュレーションを行った。結果として、研究対象地域における現状での避難対策は地区住民全員が無事に避難するには不十分であること、耐震化率を100%まで向上させれば、最大で地区の3.7%の住民をさらに助けることができ、地区の90%の住民が避難完了するまでに要する時間もおよそ1分短縮できることが分かった。このことから、家屋の耐震化は、避難場所の配置と数、収容人数とあわせて考慮していく必要があるという結論が得られた。
  • ―山田町・旧石巻市域での比較分析―
    市古 太郎
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_31-5_40
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    本研究は内閣府中央防災会議津波避難WGが基本方針として示した「迅速かつ主体的な避難」に着目し「主体的な」避難行動の多寡が,各地域における「自然環境」ならびに「地域社会」との相互作用として規定される面もあると考え,東日本大震災津波避難合同調査団<山田町・石巻市>のデータを用いてこれを検証したものである. 結論として宮城県旧石巻市域と比べて岩手県山田町において「主体的な避難行動」に統計的有意差があったことを確認した.その集団的差違は,なりわい(漁師)と海との関係性,自然地形を体感する避難訓練といった「自然環境との相互作用」ならびに地域組織を主体とする津波ハザードマップ活用の取り組みといった「地域社会とそこで暮らす個人の相互作用」として考察できる見方を示した.
  • 小山 真紀, 湯浅 亮, 奥村 与志弘, 土肥 裕史, 清野 純史
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_41-5_59
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    本研究では津波避難シミュレーションのモデル構築及び実際の地域への適用を行う。現在までに数多くの避難シミュレーションモデルが提案されてきたが、要援護活動を再現したものはあまり例がなかった。本研究においては、DEMを用いることで要素間に作用する力を評価することが可能かつ、要援護活動・自動車避難といった現実に則した行動の再現が可能な新規モデルを構築した。構築したモデルの妥当性の検討を行うと共に、モデル地域におけるケーススタディを行う事で、現時点における当該地域の避難計画の問題点を明らかにした。
  • ―東京都足立区千住周辺地区での事例―
    大原 美保, 藤生 慎, 山下 倫央, 高田 和幸
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_60-5_75
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    近年、大規模駅の周辺では都市再生安全確保計画の作成が進んでおり、災害時に駅周辺で起こりうる諸問題の把握やソフト・ハード両面での対策実施がますます重要となっている。本研究ではまず、首都圏における主要な駅周辺地区を対象として、地震・水害・複合災害の危険度や滞留人口の特性を概観した。次に、地震・水害・複合災害のリスクを有するターミナル駅の一つであるJR北千住駅周辺の東京都足立区千住地区に焦点をあて、災害時に想定される群集の分類を行うとともに、これらの発生規模に関する時間帯別の推計を行い、避難所等の収容可能人口との比較を行った。最後に、駅周辺における災害時の課題と必要な対策に関する具体的な指摘を行った。
報告
  • 村上 ひとみ, 中須 正, 島村 誠, 後藤 洋三, 小川 雄二郎
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_76-5_96
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    本研究では、海外における災害避難関係資料・文献を収集するとともに、その内容を分析し、概要を明らかにする。また、特徴的な研究については、レビューを行う。以上から災害からの避難について海外ではどのような研究がされているかを俯瞰する。また研究にとどまらず政策としての避難対応マニュアルや調査するうえで不可欠となるデータベース等、基礎的な情報についても併せて概説する。
  • 後藤 洋三, 池田 浩敬, 市古 太郎, 小川 雄二郎, 北浦 勝, 佐藤 誠一, 鈴木 光, 田中 努, 仲村 成貴, 三上 卓, 村上 ...
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_97-5_117
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    東日本大震災の津波避難の実態を分析するため、研究者、技術者の有志が任意参加の連携組織「東日本大震災津波避難合同調査団」を結成し、重複調査を避け調査モラルを向上させるべく連絡を取り合って調査を実施した。本報告はこの調査団発足の経緯を述べたうえで調査団の中核として活動した山田町・石巻市担当チームの調査方法とその実施状況、ならびに住民の避難に関わる背景的事象の調査結果を述べる。収集した被災者の避難データの特性については別途に取り纏め報告する。山田町・石巻市担当チームの調査に対する被災住民の苦情は聞かれず、むしろ信頼関係のもとで避難の実態解明に役立つ情報を多数得ることが出来た。著者等は山田町・石巻市担当チームの調査データとその調査経験が活用されることを期待して本報告を取りまとめている。
  • 後藤 洋三, 池田 浩敬, 市古 太郎, 小川 雄二郎, 北浦 勝, 佐藤 誠一, 鈴木 光, 田中 努, 仲村 成貴, 三上 卓, 村上 ...
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_118-5_143
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    本報告の前報に当たる調査概要では東日本大震災津波避難合同調査団の結成の経緯と中核となって活動した山田町・石巻市担当チームの調査状況ならびに避難行動の背景に関わる事象の調査結果を報告した。この報告では調査された避難行動データの特性を政府機関による類似の調査結果と比較しながら分析した結果を述べる。分析の結果、避難行動の定性的理解を覆す程ではないが調査方法の違いやサンプルの偏りにより結果に差が出る項目があること、調査データの有効利用のためには個人情報保護を前提にサンプルごとの年齢、性別、地域などを併せて公表すべきであることが分かった。前報の調査概要と併せて本報が山田町・石巻市担当チームの調査データの適切な利用に役立つことを期待している。
  • 堀 宗朗, 末松 孝司, 荒木 秀朗, 奥村 与志弘, 土肥 裕史
    2015 年 15 巻 5 号 p. 5_144-5_157
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/10/21
    ジャーナル フリー
    近年、津波避難シミュレーションが避難計画の検討に活用される機会が増えてきたが、現状ではシミュレーションの結果の精度・信頼度には常に疑問が残されている。避難シミュレーションの品質保証のため、本研究は、避難シミュレーションの品質に関する基本的な考え方を示し、それに基づいた品質保証の具体的な方法を提案する。これは、数値シミュレーションでは標準である、検証と妥当性確認という二段階の手順をとる方法である。実際に4種類の避難シミュレーションに対して、提案方法を適用し、品質保証の検証を試みた。この結果、提案方法が齟齬・支障なく適用できることが確認された。
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