日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
16 巻, 8 号
特集号「第14回日本地震工学シンポジウム」その4
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
巻頭言
論文
  • 後藤 賢人, 永野 正行, 吉村 智昭, 久田 嘉章, 河路 薫, 川辺 秀憲, 早川 崇, 田原 道崇, Seckin Ozgur Cit ...
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_2-8_12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    関東平野を対象とした既往の数値解析手法のベンチマークテストでは、差分格子の間隔により後続表面波がチームにより異なるという問題点が指摘された。2013年度のベンチマークテストは2004年紀伊半島南東沖地震前震を用いて行われ、複数のモデルについて計算結果の比較検討を行った。差分格子を統一した均質・2層地盤モデルを用いたケースでは各チーム間で高い整合性が得られたが、モデル境界面からの反射波の処理の違いによる結果の差異が見られ、Q値の設定の違いが反射波に影響を与え、その設定方法に注意する必要があるという新たな課題が明らかになった。差分格子を統一せず、23層地盤モデルを用いたケースでは、差分格子の違いにより地盤構造の差異が生まれ、震源から遠方になるほど計算結果に影響を与えることが示唆された。
  • 永井 裕之, 浦野 和彦, 足立 有史
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_13-8_31
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    東日本大震災宅地の液状化被害を受けて、既存宅地を対象とした道路・宅地一体型液状化対策が検討されている。本研究では、対策工法の適用性を評価するため、3次元FEM解析(LIQCA3D11)を実施した。解析では、1街区全体を対象とした全体系モデルと、そのうちの4宅地のみを対象とした部分モデルの2種類を用いた、対策工法としては、単独で適応が可能な主工法「地下水低下工法」、「格子状地中壁工法」と、補助的な効果を期待した副工法の組合せについて検討を行った。全体系モデルの解析により、主工法である格子状地中壁工法の対策効果が限定的であることを確認し、部分モデルの解析結果により、宅地直下を含む街区全面を対策範囲とすることが最も効果的であることを確認した。
  • 川又 優, 関口 徹, 中井 正一
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_32-8_41
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では千葉県内の自然斜面及び、切土施工によって表面の軟弱な地盤を切り取った切土斜面を対象とし、それぞれの震動特性の評価を行った。斜面の法肩部と台地上の平坦な部分に地震計を設置し地震観測を行ったところ、自然斜面法肩部で地震動が大きく増幅していることが確認できた。そこで、地盤調査の結果に基づき地盤構造をモデル化し、2次元FEMを用いた動的解析による伝達関数の計算を行った。その結果、1次元解析では再現できない自然斜面法肩部での増幅特性を2次元解析で再現でき、斜面形状だけでなく台地端部表層の軟弱層が地震動を大きく増幅させることを確かめた。
  • 内田 治, 上林 宏敏, 釜江 克宏
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_42-8_61
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    浜岡原子力発電所敷地における3次元高密度アレイ観測網の強震記録から、硬質地盤の地震動空間変動(コヒーレンスと地点間のフーリエ振幅比のばらつき)について、S波部を対象に周波数、観測点間の距離に加え、観測点の各深度レベルや水平と鉛直成分の違いに着目した評価を行った。さらに、評価した地震動空間変動特性を用い、回帰分析に基づく統計的なモデルを導出した。コヒーレンスは周波数と距離の増加に伴い低下し、その低下度合いは水平成分より鉛直成分の方が、また深度レベルにおいて浅い方が大きい結果となった。また、観測記録から求めたコヒーレンスには特定の周波数において急激な落ち込みが存在し、それが敷地地盤への入射波に対する伝達関数の極小値に対応することを示した。一方、フーリエ振幅比のばらつきは周波数と距離の増加と共に5Hz程度以下では増加し、それ以上の周波数では一定となる傾向が見られた。
  • 西村 利光, 西村 知浩, 宮腰 研, 堀家 正則
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_62-8_74
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    従来の距離減衰式で用いられている地盤増幅率を表す地盤増幅項は、表層地盤のS波速度(AVS30)や地盤種等で表されている。ただし、この地盤増幅率には地震規模によって大きなばらつきがあることが指摘されている。この問題を解決する為に、基盤強震観測網(KiK-net)を用いて、新たな地盤増幅項として、基盤岩に対する地表の地盤増幅比(最大加速度、最大速度)の回帰式の作成を試みた。地盤増幅比に対する地盤パラメータ(地盤の層数、各層の平均S波速度、層厚)の影響を検討するとともに、震源に関するパラメータ(地震規模)について、その影響を検討した。その結果、地盤増幅比は地盤パラメータだけではなく、地震規模の影響を大きく受けていることが確認できた。地震規模および地盤パラメータを導入した結果、地盤増幅比のばらつきを評価できる高精度な地盤増幅比の回帰式の作成が可能となった。
  • 山本 健史, 保井 美敏, 永野 正行, 肥田 剛典, 田沼 毅彦
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_75-8_81
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    地震時の超高層建物の挙動・応力状態を把握するため、シミュレーション解析により地震時応答の再現を試みた。対象とするのは、関東地方に立地するRC造超高層集合住宅で、15年にわたり地震震観測を行い、記録を蓄積している。2011年には東北地方太平洋沖地震の記録が得られており、本研究ではこの記録を再現することにより、シミュレーション解析モデルの妥当性を検証する。ここでは、建物および杭を1本棒の質点系モデルで表現した、いわゆるPenzienモデルを用いて応答解析を行うことにより地盤と建物の動的相互作用を考慮した検討を実施した。
  • 田村 修次, 林 和宏, 時松 孝次
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_82-8_87
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    本研究では、直接基礎建物の遠心載荷実験で、極大地震動における直接基礎建物の沈下・傾斜および極限支持力について検討した。振動実験で極大地震動を入力したところ上部構造物の加速度が頭打ちになった。これは、基礎端部直下の地盤が極限支持力に達し、転倒モーメントが極限に達したためである。水平載荷試験における転倒モーメントの極限値は振動実験とほぼ同じであった。振動実験終了後の基礎の傾斜や静的載荷実験終了の基礎の沈下は小さく、直接基礎建物は転倒しなかった。常時の極限支持力の安全率が十分に大きいケースでは、大地震で基礎部端部の地盤が局所的に極限支持力に達しても、直接基礎建物が転倒するリスクは少ないと考えられる。
  • 庄司 学, 鴫原 良典, 大伴 行平
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_88-8_109
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    砕波段波及びドライベッド上の遡上波を模擬した水理実験に基づき、津波作用の指標である水位、水面上昇速度、津波流速及び波速の4つのパラメータの観点から橋桁に作用する津波波力を評価した。これらのパラメータの無次元量を変数として、橋桁の受圧面で津波波力を水平方向及び鉛直方向に、平均的に受けた場合の津波波圧の特徴を明らかにした上で、それらのモデルを提案した。
  • 濱 健太郎, 向井 洋一
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_110-8_122
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    伝統的木造建築物の構造特性を評価する際は、建物の微振動計測データから振動特性を直接推定する手法が有効である。本研究では、解体修理中の重要文化財長福寺本堂に対して常時微動計測と加振実験を行い、固有振動数、振動モード形状、減衰定数等の振動特性を推定、解体過程における構造要素の構成の変化に伴う振動特性の変動を観測した。また、微振動計測から求めた実測値を再現するよう立体フレームモデルを構築し、柱梁接合部や小屋組の寄与する水平構面剛性を対象にパラメータスタディを実施、固有値解析により求めた振動特性と実測値との整合性を検証した。
  • 荒木 康弘, 稲山 正弘, 五十田 博, 腰原 幹雄, 宮田 雄二郎, 中島 史郎, 山口 修由
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_123-8_134
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    中層木造建築物の普及促進を目的として、引きボルト式接合を用いた集成材フレームによる3階建準耐火構造の試設計を行い、必要とされる耐火性能及び構造性能を満足する部材・接合部の仕様の検討を行った。特に構造性能に関しては、保有水平耐力の算定には崩壊機構を適切に推定する必要があるが、引きボルト式接合を用いた集成材フレーム接合部の靭性保証設計については、これまで十分な研究がなされていない。本研究では、引きボルト式接合部の靭性保証設計の考え方を検討し、5%歪時のボルト引張応力度の5%上限値を用いて接合部を設計する方法を提案した。また、提案する方法の妥当性を実験的に確認した。
  • 藤生 慎, 高田 和幸, 中山 晶一朗, 髙山 純一
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_135-8_144
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    東北地方太平洋沖地震後に発生した津波避難では生存者の半数以上が車で避難し、その3分の1が渋滞に巻き込まれていたと報告されており、過度に自動車に頼った避難の危険性を示している。そこで本研究では、津波避難時に、自動車の発生量を抑制するための施策と、発生した交通流の円滑化を図るための施策を提示し、交通流マイクロ・シミュレーションを用いて、それらの施策の評価を試みた。その結果、避難時に発生する自動車数を少なく抑えることが安全な避難につながることが確認された。
  • 鍬田 泰子, 佐藤 圭介, 加藤 蒼二
    2016 年 16 巻 8 号 p. 8_145-8_155
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/07/25
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震及び同年4月11日に発生した誘発地震により福島県いわき市では二度の断水が発生した。一ヵ月の短期間にメカニズムの異なる地震が発生することは稀である。本研究では、これらの地震で断水が発生したいわき市に着目し、水道管路の地震被害分析に基づいて管路脆弱性を明らかにすることを試みた。管種、口径、微地形分類による被害発生の要因を分析した結果、地震に限らず口径は既往の管路被害特性と類似していたが、塩化ビニル管は被害が少なくなる結果が示された。また、地震動評価によって、微地形の係数を考慮しない方がよい場合もあることが示された。
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