日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
16 巻, 9 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • 森田 高市, 鹿嶋 俊英
    2016 年 16 巻 9 号 p. 9_1-9_12
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/29
    ジャーナル フリー

    竣工直後より継続的に地震観測を行っている8階建てSRC造の建築物を対象にして、地震観測データを用いた減衰定数の同定を行う。その際、建築物の減衰定数への相互作用の影響に着目して、相互作用の影響を考慮した減衰定数の評価を行い、それらの経年・振幅の依存性と2011年地震前後の変化について分析を行う。さらに、上部構造の減衰係数とロッキングの減衰係数への分離を行い、それぞれの経年・振幅への依存性と2011年地震前後の傾向を把握し、考察する。

  • 森 勇太, 川瀬 博, 松島 信一, 長嶋 史明
    2016 年 16 巻 9 号 p. 9_13-9_32
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/29
    ジャーナル フリー

    単点微動のみを用いた地盤構造同定手法の確立に向けた検討の第一歩として、K-NETおよびKiK-netのうち100地点で地震動と微動の水平上下スペクトル比(それぞれEHVRとMHVRと略す)の比較を行った。その結果、EHVRとMHVRには類似性があるものの、異なる特徴をもつことが分かった。各地点でEHVRとMHVRの比(EMRと略す)を計算して比較したところ、EMRに統計的な差異がみられた。このEMRを微動の1次ピーク振動数で分けたカテゴリごとに平均化し、MHVRに平均EMRをかけて得られるみかけのEHVRを我々は擬似EHVRと定義した。EHVR、MHVR、擬似EHVRを比較すると、EHVRとの相関は擬似EHVRの方がMHVRより高い結果となった。これらEHVR、MHVR、擬似EHVRを用いて地盤構造の同定を行い、得られた地盤モデルを比較すると、擬似EHVRを用いて同定した地盤モデルの方が、MHVRを用いて同定した地盤モデルよりも、よりEHVRを用いて同定した地盤モデルに近いという結果が得られた。

  • 天池 文男, 小林 喜久二
    2016 年 16 巻 9 号 p. 9_33-9_45
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/29
    ジャーナル フリー

    従来のスペクトルインバージョン解析法より精度の高い、見かけ入射角を考慮した解析法を提案した。水平成層構造に基づく理論波形と新潟県南部地域の内陸地殻内地震を対象としたデータの解析から、伝播経路特性が見かけ入射角依存性を持つこと、本手法を用いると全体的に従来法より地震動予測精度が向上すること、従来法で表現できなかった震源近傍で振幅が従来の式より大きくなる現象を本手法で説明できること、従来法と本手法で推定された震源特性・サイト特性にはほとんど差がないことを示した。したがって、従来の伝播経路特性を見かけ入射角を考慮した本特性に置き換えることにより、従来法より高精度の強震動予測ができると考えられる。

  • 高橋 広人, 福和 伸夫, 岸浦 正樹
    2016 年 16 巻 9 号 p. 9_46-9_66
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/29
    ジャーナル フリー

    強震動予測及び液状化評価を目的とした表層地盤のモデル化手法を提示し、名古屋市域を対象に適用した。適用したモデルの妥当性を示すとともに、1944年昭和東南海地震による旧名古屋市の住家被害と地盤条件、震動特性との関係について考察した。表層地盤モデルは38600本のボーリング資料に基づいて9層の地層年代に区分し、地層年代別にN値と土質を標高1m刻みで水平方向に50m×50mメッシュ単位で補間し、これらを累積することで構築した。微動計測に基づくH/Vスペクトルのスペクトル形状や地震応答解析による地震動の増幅に基づいて表層地盤モデルの妥当性を確認した。1944年昭和東南海地震を想定した強震動予測及び液状化評価結果は、連区(学区)別の住家被害と対応がよく、地盤モデルに基づいて被害要因を解釈できる可能性について示した。

  • 他谷 周一, 翠川 三郎
    2016 年 16 巻 9 号 p. 9_67-9_85
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/29
    ジャーナル フリー

    1995年兵庫県南部地震などの過去の4地震時の鉄道の運休事例を整理し、地震による運休期間と、被害程度や被害構造種別等の各種要因との関係について検討した。その結果、被害程度・被害構造種別・地震のタイプ・震度階によって、運休期間が異なることを示すとともに、これをもとに、地震による鉄道の運休期間を路線・区間ごとに推計するためのモデルを作成した。さらに、本モデルと地震被害関数を組み合わせ、地震による鉄道の運休期間推計手順を提案した。この手順による推計例として、都心南部直下を震源とする地震を想定し、首都圏の一部路線の運休期間を推計した。その結果、各路線の構造形態が異なるために、被害状況や運休期間が異なる状況が推定されることを示した。

報告
  • 大角 恒雄, 藤原 広行, 渡邉 学, ラジェッシュ・バハドール・タパ , 冨井 直弥, 藤谷 秀雄
    2016 年 16 巻 9 号 p. 9_86-9_99
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,災害発生時の被害推定システムの一部である衛星画像による広域被害推定手法の検証のための被害者数分布と地震動分布の把握を第一の目的とした。その結果,距離減衰式へは適用できない被害分布と要因が得られた。次に衛星情報に対するグラウンド・トゥルース取得のための特定の区域における詳細被害調査を実施し,被害を受けた旧市街サクー (Sankhu) とコカナ (Khokana) の建物被害と建物種別の全棟調査を実施し,既存の被害曲線との比較を実施した。同時に,ネパールの伝統的建物の耐震に関する事項等の調査を実施し,伝統的建物の耐震性の優位性を把握した。

  • 金子 美香, 熊谷 仁志, 岡田 敬一
    2016 年 16 巻 9 号 p. 9_100-9_117
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/29
    ジャーナル フリー

    2015年1月に、東京都江東区の清水建設技術研究所内に、三次元大型振動台と三次元大振幅振動台の2基の振動台を有する研究施設「先端地震防災研究棟」が完成した。大型振動台 (愛称:E-Beetle) は、テーブル面:7m×7m、最大搭載重量:70ton、最大変位:水平±80cm/上下±40cm、最大速度:水平±200cm/s/上下±100cm/s、最大加速度:水平2,700cm/s2/上下2,200cm/s2 (35ton搭載時) である。周辺実験施設への振動伝搬を低減するために、建物基礎内に空気ばねと粘性ダンパーで支持された振動台基礎 (アイソレーションマス) を設けた。大振幅振動台 (愛称:E-Spider) は、テーブル面:4m×4m、最大搭載重量:3ton、最大変位:水平±150cm/上下+90cm、—70cm、最大速度:水平±200cm/s/上下±100cm/s、最大加速度:水平1,000cm/s2/上下900cm/s2 (3ton搭載時) である。振動台上に地震体験用キャビンを設置することにより、揺れと同期した室内映像を見ながらの地震体験も可能である。2つの振動台の計測システムでは、ひずみや電圧センサーの他にカメラ映像やモーションキャプチャーの同期収録ができるようにした。

  • 清田 隆, 呉 杰祐, 宮本 裕俊, 李 嶸泰
    2016 年 16 巻 9 号 p. 9_118-9_132
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/08/29
    ジャーナル フリー

    2016年2月6日未明、台湾の高雄市美濃区を震央として発生した地震 (Mw6.4) は、台湾南部の西岸地域に多くの被害をもたらした。震央の北西に位置する台南市では顕著な被害が生じ、特に115人の犠牲者を出した同市永康区の高層ビルの崩壊は、多くのメディアによって報道された。一方、人命への直接的な被害は報告されていないが、液状化や斜面被害などの地盤災害も多数生じた。液状化や斜面災害による被害の程度は限定的であったが、被害箇所の多くは沼地や水田を埋め立てた箇所に分布していた。本報告では、地震発生から約一か月後の2016年3月2日~3日にかけて実施された地震被害調査のうち、台南市で確認された地盤災害を中心に概説する。

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