日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
17 巻, 1 号
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論文
  • 佐藤 吉之, 翠川 三郎
    2017 年 17 巻 1 号 p. 1_1-1_15
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    地球内部の媒質の不均質性は散乱効果として観測地震動に影響を与えており, 数値シミュレーションでの散乱効果の評価精度を向上させるためには, 適切な不均質パラメータの設定が必要となる.本研究では内陸地震を想定して工学的に重要となる近距離における地震波の散乱効果の評価を目的とし, それに対して適切な不均質パラメータについての検討を行った.不均質モデルとしてはランダムな速度不均質を仮定して, 不均質の強さ(ε)と相関距離(a)をKiK-netの地中観測記録から推定した.その際に, まず地表・地中間の伝達関数の逆解析により地盤モデルの最適化を行い, 同定地盤モデルに基づいて堆積層の影響を取り除いた地震基盤波を推定した.次に震源距離約10kmから60kmの近距離の記録を対象として, 推定基盤波の包絡形に散乱理論に基づいた包絡形を適合させる最小二乗法によりε2/aの値を推定した.その結果, 震源距離が約20km以下の記録に既往研究の結果と比較して大きなε2/aを示す傾向が確認された.ただし包絡形の理論式は散乱の飽和条件から規定される距離以上で適用可能となるため, 近距離でのε2/aは理論式の適用範囲外での推定値となっている可能性がある.そこで近距離での散乱効果の確認のために3次元ランダム不均質媒質を用いた差分法での数値シミュレーションを実施した.観測波と同様に計算波に対して適合するε2/aの推定を行ったところ, 近距離記録のε2/aは見かけ上解析モデルの設定値より大きな値を示すことが確認され, 観測記録からの結果と類似する距離依存性が見られた.観測記録からの結果と数値解析における3種の不均質モデルによる結果とを比較したところa=4km, ε=0.05のモデルが観測記録の包絡形の全体的な性状を説明できることを確認した.

  • 日下 彰宏, 中村 洋光, 藤原 広行, 岡野 創
    2017 年 17 巻 1 号 p. 1_16-1_29
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    大地震の被害をリアルタイムに推定し, 状況を把握するためのシステム開発が進められている.このシステムでは, 発災直後に強震観測記録から各地の地震動分布を推定し, 被害関数を用いて建物被害棟数を推定する.しかし, 被害関数は過去の地震被害の統計モデルであり, 個々の地震被害を精度よく推定できるとは限らない.本報では, ベイズ更新を応用して, 先行的に得られた一部地域の被害棟数情報を反映して, 被害関数のパラメタを更新することで精度の向上を図る手法を提案した.

  • 中島 由貴, 中村 孝明
    2017 年 17 巻 1 号 p. 1_30-1_42
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    発災急性期の救命治療を目的としたDMATは, その活動が期待される時間帯は発災から3日程度までとされる.このため, 被災現場に可及的速やかに到着しなければならないが, 移動手段としての空路/陸路は同時被災している可能性が高い.また.指揮命令や情報収集等の要員や資機材の参集遅延もある.本論は, 空路/陸路の同時被災や要員参集の遅延等を考慮したDMATの実効性を評価するモデルを提案する.某県の医療ブロックを事例に, 提案手法の適用性の検討とともに, 耐震対策による死亡者数の減少を定量的に示す.

  • 若松 加寿江, 先名 重樹, 小澤 京子
    2017 年 17 巻 1 号 p. 1_43-1_62
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    本論文は, 2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による液状化発生地点の分布の特徴を俯瞰すると共に, 液状化の発生と地震動強さ, 微地形区分, 土地条件の関係について検討している.液状化の発生は, 東北・関東地方の1都12県193市区町村に及んだ.液状化の広がりを250mメッシュ単位でカウントすると合計で8680メッシュとなった.東北地方より関東地方の方が圧倒的に多く約12倍である.液状化発生地点は, 東京湾岸地域や利根川, 阿武隈川, 鳴瀬川などの規模が大きい河川の沿岸地域に集中していた.本震の震央から最も遠い液状化地点は, 神奈川県平塚市で震央距離約440kmである.地震動強さとの関係を調べた結果, 液状化メッシュの約95%が推定震度5強以上, 98%が140cm/s2以上, 99%が15cm/s以上の地域であった.震度5強以上の地域における微地形区分ごとの液状化発生率は, 埋立地, 砂丘, 旧河道・旧池沼, 砂州・砂礫州, 干拓地の順に高かった.東北地方と関東地方で液状化の発生率等に大きな差異が生じた理由を探るために, 液状化発生地点において「宅地の液状化可能性判定に係る技術指針」に示された二次判定手法により液状化被害の可能性の判定を行った.その結果, 関東地方の方が東北地方に比べて液状化被害を受けやすい地盤が多いことが分かった.

  • 李 泰榮, 田口 仁, 臼田 裕一郎, 長坂 俊成, 坪川 博彰
    2017 年 17 巻 1 号 p. 1_63-1_76
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/02/27
    ジャーナル フリー

    地域社会の多様性を考慮しつつ災害時の適切な対応のためには, 地域固有の災害リスク情報をもとに, 平時から様々な地域関係者の災害リスクコミュニケーションが実現できる防災活動を展開していく必要がある.そこで, 本研究では, 地域コミュニティの防災活動を支援する災害リスクコミュニケーション手法を構造化し, 小学校区を対象にした地震防災取り組みへの適用を通じて, 災害に対する地域社会の対応力向上への有効性を検証した.その結果, 様々な地域関係者の災害リスクコミュニケーションにより, 地域固有の災害リスクが評価でき, 地域実態を踏まえたリスクの顕在化が可能となり, 地域社会に蓄積されている多様な社会資源を活用した実効性のある防災体制の再編が確認できた.

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