日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
17 巻, 4 号
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論文
  • 畠山 智貴, 王 欣, 大野 晋, 源栄 正人
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_1-4_12
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,宮城県内に建つRC造,S造低層建物2棟を対象に長期連続観測を実施した.長期連続微動観測の分析の結果,特にRC造建物で,気温の増加に伴い固有振動数が高くなる傾向にあることがわかった.地震観測記録からは,2棟の建物の固有振動数が振動振幅に依存して変化する傾向にあることがわかった.さらに,振幅レベルによらず固有振動数は,気温の影響を少なからずうけており,温度依存の影響を除去することで固有振動数の振幅依存性が明確になることも分かった.

  • 久保 久彦, 鈴木 亘, 㓛刀 卓, 青井 真
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_13-4_29
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    2015年小笠原諸島西方沖の地震をはじめとする小笠原諸島周辺の深発地震による地震動の特性把握および予測を目的として,本研究では強震動指標の空間的な分布やその距離減衰の様相を調べた上で,深発地震による地震動の距離減衰式を構築した.深発地震による地震動の距離減衰は地域毎に様相が異なっており,東日本前弧,東日本背弧,西日本および伊豆半島から伊豆・小笠原諸島にかけた地域の順で各地域への波線経路上での内部減衰と散乱減衰の双方またはいずれかが弱いと考えられる.これを踏まえて本研究では各地域で異なる非幾何減衰係数を持つ距離減衰式を提案している.また深発地震時の地盤増幅を評価した上で,過去の地震を対象とした地震動予測を試みた.

  • 森尾 敏, 加登 文学, 藤井 照久
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_30-4_49
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    2008年岩手・宮城内陸地震におけるKiK-net一関西,及び,2011年東北地方太平洋沖地震におけるK-NET築館での大加速度記録に関して,地盤の弾塑性論的考察を加えた.一関西ではMax=3866galの上下非対称型の上下方向大加速度記録が観測された.この現象は,水平動と上下動の同時入力による地盤の弾塑性応答解析によって旨く説明できた.すなわち,上向き加速度と水平動が同時に入力される場合,応力点は破壊線に沿って上昇し,更に大きな上向き加速度が発生する.一方,下向き加速度と水平動が同時入力される場合は,応力点は破壊線に沿って降下し,低拘束圧下での強い塑性応答が発生する.築館での大加速度記録については,多くの研究者が地震計基礎のロッキング振動による部分的な浮き上がりを指摘している.本論文では地盤のダイレイタンシーによって水平動の2倍の振動数の上下動が発生すること,この上下動は正のダイレイタンシー特性を有する材料では水平動の±のピーク時に上向き,負のダイレイタンシー特性を有する材料では下向き上下動であることを示した.また,築館での大加速度記録には負のダイレイタンシーによって発生した下向き上下動が含まれている可能性があることを述べた.

  • 中小路 隼人, 三浦 奈々子, 山口 貴史, 曽根 彰
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_50-4_61
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    地震時には停電が発生することも多く,地震時における継続的なエネルギ供給は重要な課題である.本研究ではエネルギ回生を利用した発電機能を用いて,振動制御や非常灯の点灯などのための電源としての機能を免震装置に付加することを目標とする.まず力行時と回生時のモータの回転数-起電力特性を模型実験の結果を用いてモデル化した.次に対応すべき地震動として長周期地震動を含めるために,設計用模擬長周期地震動を地震動データをもとに,また設計用短周期地震動を平成12年建設省告示1461号に基づいて作成した.そして,発電機能に主眼を置いた免震装置の設計変数を遺伝的アルゴリズムにより決定した.本論では数値解析により,提案するエネルギ回生アクティブ免震装置が,長周期地震動と短周期地震動の両方に対し所望の応答低減性能および地震発生時のバッテリ状態を地震動終了時に維持する回生性能を示すことを確認した.

  • 若松 加寿江, 先名 重樹, 小澤 京子
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_81-4_100
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    本論文は,2016年4月14日の熊本地震の前震と4月16日の本震による液状化発生地点の分布と被害状況を示すと共に,液状化の発生と地震マグニチュード,地震動強さ,微地形区分,土地条件との関係について検討している.液状化の発生は,熊本県下の18市町村に及び,熊本平野と阿蘇カルデラ内の低地に集中していた.本震の震央から最も遠い液状化地点の震央距離42.6kmであり,過去の地震における液状化と比較して小さめの震央距離だった.250mメッシュ単位の推定震度分布との関係を調べた結果,前震・本震共に液状化が発生したメッシュの99.9%以上が推定震度5強以上の地域であった.液状化発生地点の微地形区分は,熊本平野では後背湿地・自然堤防などの河川の氾濫原のほか干拓地で多かった.阿蘇地域では,後背湿地と阿蘇火山山麓に広がる扇状地で多かった.液状化発生が集中した地域における土地条件を調べた結果,河川の氾濫,地形改変履歴,埋土・盛土とその材料,砂利採掘履歴,地下水条件が液状化の発生に大きく影響していたと推察された.

報告
  • —断層極近傍と益城町宮園周辺の比較検討—
    友澤 裕介, 元木 健太郎, 加藤 研一, 引田 智樹, 石木 健士朗
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_62-4_80
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    平成28年 (2016年) 熊本地震における断層極近傍の被害と地震動強さを調べることを目的として,墓石転倒率調査と木造家屋の被害調査を2016年4月27日から4月29日の期間に実施した.墓石転倒率は,地表地震断層周辺と益城町役場付近 (震度7を観測した益城町宮園) で大きな違いは見られず,転倒率が高い墓地では100%となっていた.木造家屋の全壊率は,益城町役場付近が高く,最大で全壊率61%となっていた.一方,地表地震断層周辺の木造家屋の全壊率は益城町役場付近よりも相対的に低く,0~33%であった.

  • 小林 源裕, 儘田 豊, 呉 長江
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_101-4_139
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    2016年熊本地震の最大前震 (気象庁マグニチュード (Mj) 6.5) により1Gを超える大加速度を記録した基盤強震観測網 (KiK-net) 益城観測点における強震動の要因解明に資するため,鉛直アレー観測記録を用いた地盤同定解析及び一次元波動伝播解析に基づき強震記録を詳細に分析した.あわせて,強震記録のはぎ取り解析に基づき最大前震の地震基盤相当 (S波速度2700m/s) における基盤地震動を推定し,地震動レベル (基盤地震動加速度) を評価した.それらの結果,地震動はおよそ2~3Hzより高周波数側で増幅が顕著であり,強震動の要因の一つとしておよそ深度250m付近の地震基盤相当層より浅い地盤の顕著なサイト特性の影響があることを示した.一方,地震の短周期レベルは内陸地殻内地震の平均的な値であること,推定された基盤スペクトルは地震のω-2則に基づく震源特性及び伝播特性を考慮した地震基盤における理論基盤スペクトルからおおむね説明できることから,最大前震は地震規模と地震動レベルの関係において特異な地震ではないことを示した.なお,基盤スペクトルはおよそ0.4~4Hz付近において理論基盤スペクトルよりやや大きい傾向を呈しており,KiK-net益城観測点において断層の破壊伝播に伴うディレクティビティの影響が強震動に現れている可能性がある.したがって,最大前震によるKiK-net益城観測点の地表面における大加速度振幅は,顕著なサイト特性の影響に加えて断層の破壊伝播に伴うディレクティビティの影響により引き起こされたと判断できる.

  • — 人間とICTの相互作用による安全避難の共創 —
    上田 遼
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_140-4_169
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    2011年の東日本大震災では,津波による甚大な人的被害が生じた.その要因として,心理的バイアス等の影響により,多くの人が揺れを感じてからも自発的には避難を開始せず,他者の動きに追従することなどにより避難遅れが生じたこと,および安全と考えられていた避難場所にも一部に津波が襲来し避難したにも関わらず被災したことなどが挙げられる.そのような教訓を踏まえながら,ICT(情報通信技術)が進歩する中で,その在り方に関する試験的研究が社会的に有用と考える.本研究は,人間や端末の相互作用を考慮できるマルチ・エージェントモデルを用いて,東日本大震災の避難を分析するとともに,対策のための新たなICTの在り方を検討,提案することを目的とする.追従等の行動特性をモデル化し,震災のシミュレーションと複数の対策スタディを行った.その結果,住民の一部に安全な避難先情報を端末によって与え,その端末から避難経路を投影し,端末所有者,追従者も含めて人流を創発し,安全への道筋を共創することが,追従という人間の本能的行動とICT端末の双方の特性を活かし合う一つの有効な対策案と考える.

  • 大堀 道広, 浅香 雄太, 東 宏樹, 安達 繁樹, 伊藤 雅基, 岩波 良典, 上野 太士, 浦谷 優樹, 大石 佑輔, 大場 政章, 岡 ...
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_170-4_181
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    福井県勝山市の勝山盆地は,九頭竜川に沿って河岸段丘が非常に発達している地域である.この地域は既往の地盤資料が少なく,微動観測事例も知られていないことを踏まえ,著者らは2016年9月30日~10月2日に合同微動観測会を行い,地盤震動特性の把握を行った.観測点数は,4台の3成分地震計を用いた極小アレイ観測が25点,1台の3成分地震計を用いた単点観測が67点,計92点である.本稿では,観測の概要を報告するとともに,H/Vスペクトル比に基づき得られたピーク周波数およびピーク振幅の空間分布を報告する.今回の高密度の微動観測は,勝山盆地における既往の地盤情報として活用されているJ-SHISを補完する有用な資料になったと考えられる.

ノート
  • 秦 吉弥, 池田 隆明, 小長井 一男
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_182-4_187
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
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    本稿では,2016年熊本地震により地下水を汲み上げる井戸の建屋が大きく傾く深刻な被害が発生した秋田・沼山津水源井を対象に,地盤震動特性を考慮して前震・本震時に作用した地震動を評価した結果について報告する.具体的には,臨時余震観測の高密度実施に基づいて評価したサイト特性と野津による特性化震源モデルの組合せを用いて,前震・本震時に当該水源井に作用した地震動を推定した.その際,当該水源井周辺のK-NET熊本で観測された前震・本震記録を再現することで,地震動推定手法の適用性の確認を行った.

  • 秦 吉弥, 丸山 喜久, 池田 隆明
    2017 年 17 巻 4 号 p. 4_188-4_193
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/08/31
    ジャーナル フリー

    熊本洋学校教師館ジェーンズ邸は県指定の重要文化財であり,2016年熊本地震の強震動の作用によって倒壊した.本研究では,倒壊地点における地震動を明らかにすることを目的とし,倒壊地点等において余震観測を実施した.得られた記録を分析したところ,倒壊地点に作用した地震動は,近傍のガバナ内に西部ガス (株) が設置している観測点 (水前寺ガバナ) で得られた前震・本震記録と同等程度であることが明らかとなった.さらに,サイト増幅特性置換手法に基づき倒壊地点における前震時・本震時の地震動を推定し,その際,水前寺ガバナでの観測記録を用いて地震動推定手法の適用性を検証した.

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