日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
17 巻, 5 号
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論文
  • 田中 信也, 引間 和人, 久田 嘉章
    2017 年 17 巻 5 号 p. 5_1-5_20
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    既往の震源インバージョン結果を収集し,収集した震源インバージョン結果と強震動レシピに基づく震源断層モデルを対象に,理論的手法(波数積分法)を用いて地震動評価を行い,すべり速度時間関数が観測記録の再現性に与える影響を評価した.断層最短距離が2km程度以内の震源近傍の観測点において,強震動レシピに基づく震源モデルを用いると,地震発生層以浅のすべりを考慮しない場合には観測記録を過小評価し,考慮する場合には過大評価する.これは,震源インバージョン結果では,地震発生層以浅におけるすべり速度時間関数が時間ウィンドウの後半ですべり速度が最大値に達する幅広の関数となっており,強震動レシピとの乖離が大きいことが原因である.そこで,震源インバージョン結果から,地震発生層以浅に適用可能なすべり速度時間関数を設定し,観測記録を精度良く再現できることを示した.

  • 能島 暢呂, 久世 益充
    2017 年 17 巻 5 号 p. 5_21-5_37
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    地震動の経時特性を表す特徴量として,正規化加速度累積パワー曲線 (Husid plot) に基づく98次元の特徴ベクトルが能島ら(2017)により提案されている.本研究ではこの98次元の特徴ベクトルにKL (Karhunen-Loéve) 展開を適用し,経時特性のモード分解とモード合成による近似方法を提案するものである.特徴ベクトルの分散共分散行列の固有値解析により固有値と固有ベクトルを求める.その直交行列を用いて特徴ベクトルを主成分に変換するとともに,主要モードからなる部分空間における逆変換により特徴ベクトルを近似し,情報損失の少ない次元縮約を図るものである.再合成された包絡形状の適合性の検証にはカーネル密度推定を用いる.2011年東北地方太平洋沖地震の691観測記録を対象とした適用例を示した.KL展開による正規直交基底を用いれば,3~6次元程度の部分空間で経時特性を概ね表現可能であることが明らかとなった.ただし振幅特性の変動が複雑な波形に対しては,より高次の情報を要する場合もあることもわかった.

  • 山田 真澄
    2017 年 17 巻 5 号 p. 5_38-5_47
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    本研究では,2016年熊本地震における益城町の秋津川沿いの倒壊建物の分布を調査した.熊本地震では,Mj6.5の前震とMj7.3の本震が28時間差で発生しており,空中写真を利用して被害の分離を試みた.前震による被害の空間分布は,本震による被害の空間分布と類似しており,倒壊建物の多い地域と少ない地域ははっきりと分かれていて,島のように被害の集中している地域が分布している.益城町中心部に現れた地表断層は,本震の前には確認されていないので,地表断層によってこのような被害のパターンを生成したとは考えにくい.地形分類図との対比から,最も被害の大きかった地域は低位段丘面とよい相関を示していた.また被害集中地域は古くからの集落の場所によく対応しており,明治時代の地形図ではすでに集落が形成されていた.震災の島の生成要因は,表層地盤構造の違いと建物の建築年代の複合であると考えられる.

  • 井上 和樹, リュウ ウェン, 山崎 文雄
    2017 年 17 巻 5 号 p. 5_48-5_59
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震(Mw9.0)の発生後,津波が繰り返し来襲したことにより多数の橋梁が甚大な被害を受けた.これによって道路網が寸断され,現地調査による早期の被害状況把握が困難となった.このような際,衛星画像は広範囲にわたる被害状況を現地に赴くことなく把握できる点から有用である.とくに合成開口レーダ(SAR)画像は雲や火煙の影響を受けず,昼夜撮影可能であるため緊急対応に適している.本研究では,津波により広範囲が被災した宮城県の沿岸部を対象地域として,発災前後の高分解能SAR画像を用いて,特定の橋梁領域に対して2時期の相関係数に閾値を設定し,被害有無の判別を試みた.その結果を被害報告書における橋梁の被災状況と比較して,本手法の精度と有用性を検討した.

  • 秋山 伸一, 橋本 紀彦, 藤原 広行
    2017 年 17 巻 5 号 p. 5_60-5_77
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    断層運動に伴う地殻変動を境界要素法により計算する解析法を開発した.境界要素には三角形の線形要素を用いるので断層形状や断層面のすべり分布が不規則でも連続的なモデル化が可能である.ただし,通常の境界要素法では積分点と観測点の間の距離が短いとGreen関数の特異性が現れ,計算精度が著しく低下するが,本解析法ではHayami and Brebbia (1988)によるPART法を用いてこの特異性を除去することで,精度の高い地殻変動量が求められる.相模トラフで将来発生が予想される最大クラスの地震を対象に,本解析法とOkada (1985)の解から得られる地殻変動量を初期水位とした津波シミュレーションを行った.その結果,本解析法では,Okadaの解に見られる震源断層の不連続なモデル化による影響が現れることなく地殻変動量を求めることができるので,安定した津波シミュレーションが行える.

  • 三浦 弘之, 松尾 敦子, 神野 達夫, 重藤 迪子, 阿比留 哲生
    2017 年 17 巻 5 号 p. 5_78-5_95
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    平野内における地震基盤までの地盤構造を推定することを目的として,地震観測記録から得られる地盤増幅特性とレシーバーファンクションおよび微動アレイ観測で得られるレイリー波位相速度データの同時逆解析により,地震基盤から地表までのS波速度構造モデルを推定する手法を提案し,山口県防府市内の複数の地点での観測データに適用した.地盤増幅特性はスペクトルインバージョンないし硬質地盤でのスペクトルに対する各地点でのスペクトル比を用いて算出した.3つの指標を用いた同時逆解析では全ての指標を説明できるモデルが推定できたのに対して,位相速度を用いない逆解析では観測された位相速度を説明できない場合があり,信頼性の高いモデルを得るには本手法が有効であることを示した.また,平野内における観測データによる同時逆解析から,各地点でのS波速度構造モデルを推定したところ,顕著な不整形性がみられ,平野内の地盤は盆地形状となっている可能性が高いことを示した.

  • 成島 慶, 永野 正行, 鈴木 賢人, 上林 宏敏, 田沼 毅彦, 小田 聡
    2017 年 17 巻 5 号 p. 5_96-5_108
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    国内に建つRC系超高層集合住宅のデータベースを構築し,その傾向を分析した.加えて,2011年東北地方太平洋沖地震時における超高層集合住宅の応答を良好に再現可能な等価一質点系汎用モデルを設定し,構築したデータベースに基づく大地震時における国内超高層集合住宅の広域的な地震応答解析を行った.これより得られる建物の最大平均層間変形角(PIDA)と入力波の擬似速度応答スペクトルの関係を検討し,回帰分析による近似式を提示した.南海トラフ沿いの巨大地震を想定した設計用長周期地震動に対して区域内に位置する建物のPIDAの空間分布を推定するとともに,近似式の妥当性について検証した.

  • ―国内で発生した地殻内地震の観測記録に基づく検討―
    鶴来 雅人, 田中 礼司, 香川 敬生, 入倉 孝次郎
    2017 年 17 巻 5 号 p. 5_109-5_132
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー

    強震動予測の高周波数帯域における精度向上を図るには,この帯域における地震動特性を明らかにする必要がある.著者らはこれまで1995年兵庫県南部地震や2005年福岡県西方沖地震などを対象に,高周波数帯域におけるスペクトル低減特性を検討してきた.本論文ではこれに引き続き,近年国内で発生した 6 個の地殻内大地震(2003年宮城県北部地震,2008年岩手・宮城内陸地震,2011年福島県浜通りの地震,2011年静岡県東部の地震,2016年熊本地震最大前震,同本震)とそれらの余震を中心とした中小地震を対象に,高周波数帯域におけるスペクトル低減特性を検討した.その結果,大地震の高域遮断フィルターを規定する周波数(高域遮断周波数 fmax)は7Hz~10Hzと評価された.一方,スペクトル低減特性の地域性を示唆する結果も得られた.さらに,スペクトル低減特性の地震規模依存性やこれが強震動予測に与える影響について検討を行なった.

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