日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
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18 巻, 2 号
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論文
  • 佐々木 亮, 今田 拓実, 野田 佳佑, 山岸 邦彰
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_1-2_14
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    積載物の滑動により構造物や積載物の地震応答が低減する効果(以下,Slide効果と呼ぶ)は,一般的な構造設計では考慮されていないが,その考慮は合理的な設計に資する可能性がある.本研究では,1層鋼製弾塑性フレームを用いて様々なパラメータに対する振動実験を行い,塑性化を許容したフレームに対するSlide効果を定量的に把握した.また,フレームの変形に伴う振動エネルギー,錘の滑動により生じる滑動エネルギーおよび入力エネルギーをそれぞれ実験結果より算出した.その結果,錘が滑動することによりフレームの振動エネルギーに加えて,入力エネルギーが低減することを把握した.本振動システムのエネルギー収支を把握するために,Slide効果を取り入れた解析モデルの構築とその解析を実施して,実験では得られない減衰エネルギーの推定と,錘の摩擦エネルギーおよびフレームの履歴エネルギーの推定を行った.実験と同一のパラメータに対する地震応答解析を実施した結果,錘の摩擦エネルギーは入力地震動の特性の影響を受けるものの,入力エネルギーに対する錘の摩擦エネルギーの比率は,入力地震動の最大速度が0.3~0.5m/sの範囲において,概ね一定であることを把握した.

  • 引田 智樹, 纐纈 一起, 三宅 弘恵
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_15-2_34
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    観測地震動振幅の偶然的不確実性によるばらつきの特徴を把握することを目的として,地震規模,震源位置が同じ2地震による同一観測点の記録ペアの加速度応答スペクトル振幅(h=5%)の自然対数のばらつきを分析した.全記録ペアから評価した偶然的不確実性によるばらつきの標準偏差σは地震タイプ,周期によって変動があるものの0.3~0.45程度の範囲であった.σは周期0.2秒前後で緩やかなピークを示す傾向があり,そのピーク周期は地震規模が大きいほど長周期側に変化する傾向が認められた.また,遠方の記録ペアから評価したσは相対的に小さい値を示すことがわかった.このようなばらつきの特徴には,地震の断層破壊様式の違いが影響を及ぼしている可能性が考えられる.なお,地殻内地震と海溝型地震によるσを比較すると地殻内地震の方が大きい値であった.これは,地殻内地震の方が,震源距離が小さい記録ペアを多く含むためと考えられる.σの地震規模依存性,震源距離依存性には地震タイプによる明瞭な違いは認められなかった.

  • 河西 洋亮, 小檜山 雅之
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_35-2_50
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    建物倒壊による道路閉塞は,地域住民の避難,消防機関による消火・救援活動等を阻害し,延焼による被害を拡大する要因ともなる.本論では消火確率・非延焼棟数比・避難達成率の3つの指標で,地域の防災力を評価する方法を提案する.指標の評価においては建物倒壊率,出火確率などをもとにモンテカルロ法を用いて行う.格子状道路と放射環状道路の2つの仮想地区に対し提案指標を評価した結果,提案指標が街路網の特徴を反映し地域の防災力を表現できることと地域の特徴を考慮して耐震補強計画の優先度を比較分析できることを確認した.

  • 吉田 昌平, 香川 敬生, 野口 竜也
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_51-2_61
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    2016年10月21日に鳥取県中部で地震(MJMA6.6)が発生し,(国研)防災科学技術研所のK-NETおよびKiK-net,鳥取大学臨時観測点,自治体震度観測点など,震源断層近傍で余震を含む多数の強震観測記録が得られている.本稿では,得られた強震観測記録から経験的グリーン関数法を用いたフォワードモデリングにより,当該地震の特性化震源モデルの構築を試みた.その結果,震源断層面に2つの強震動生成域(SMGA)を配置することで,観測された強震動波形および周期特性を概ね再現できることがわかった.また,得られた地震モーメントとSMGA総面積の関係は,既往のスケーリング則と対応することを確認した.

  • 先名 重樹, 松岡 昌志, 若松 加寿江, 翠川 三郎
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_82-2_94
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震では,東北地方から関東地方にかけての極めて広い範囲で液状化が発生した.特に関東地方の被害範囲・規模は非常に大きなものであった.被害が大きくなった理由については,継続時間の長さが被害規模を大きくしたことが推測される.本研究では,東北地方太平洋沖地震および近年の液状化が発生した地震において液状化発生率には地域性がみられること,および,液状化発生率には計測震度のみならず,継続時間の影響もみられることを示した.そして,地震動強さの指標としてリアルタイム震度と継続時間から計算されるΔIsを導入し,ΔIsから液状化発生率を推定する簡便法を提案した.

  • 能島 暢呂, 久世 益充, LE QUANG DUC
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_95-2_114
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    震源断層を特定した地震動予測地図(シナリオ地震動予測地図)の作成にあたっては,震源断層モデルのパラメータの設定に伴う不確定性をカバーするために複数ケースが設定される場合が多い.本研究では,シナリオ地震動予測地図の地震動分布の空間分布および空間相関の特性を明らかにすることを目的として,その効率的な評価手法を提案する.具体的には,全ケースの地震動分布データに特異値分解を適用して地震動分布をモード分解し,左特異ベクトルによってばらつきのモード形状を示す.さらに,被害想定やリスク評価の高度化を目的として,元データの空間相関を満足する地震動分布のシミュレーション手法を提案する.具体的には,各ケースの地震動分布を特徴づける係数ベクトルを効率的なモンテカルロ法を用いて付与し,モード合成により地震動分布をシミュレーションする.石狩低地東縁断層帯主部の地震による計測震度分布を対象としたモード分解とシミュレーションおよび被害予測のケーススタディを示す.

  • 永田 茂, 池田 芳樹, 日下 彰宏, 鳥澤 一晃, 中嶋 洋介
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_115-2_129
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    震災BCPの策定支援などを目的に,建物基本情報から構造耐力を推定し,1自由度系にモデル化した建物の限界耐力計算によって建築構造・非構造部材・建築設備の被害予測を行う簡易動的耐震評価方法を提案して,その被害予測精度を検証した.近年,2011年の東日本大震災に関する各種報告書の発刊や建物の地震観測記録の公開によって,施設情報,地震観測記録,被害情報などを複合して利用できる環境が整ってきたことから,28棟の建物を対象として簡易動的耐震評価方法による被害予測精度の検証を行った.この結果,提案した簡易動的耐震評価方法は応答をやや大きめに評価する場合があるものの,被害判定ではほぼ妥当な結果が得られており,複数の既往建物の耐震性調査や地震対策の計画段階などにおけるスクリーニング評価としては有効な方法となることが確認できた.

  • 池田 孝, 加藤 研一, 石田 寛
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_130-2_146
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    線形時の応答スペクトルの地盤増幅率に非線形性の影響を反映させる手法を提示し,地震観測記録に基づいて,弱震時から強震時に増幅率を変換するモデルの関数(モデル関数)を作成した.関数形は,線形時に対する「1次ピークの長周期化」と「増幅率の低減」に分離して考え,各々を有効ひずみの関数とした.まず,2層地盤に模擬地震動(告示波)を入力した地盤応答解析を行い,その結果に基づいてモデル関数を作成した.モデル関数による増幅率と時刻歴逐次非線形波形から直接算定した増幅率の比はほぼ1で安定し,関数形の妥当性が確認された.次に,表層地盤がほぼ2層のK-NET豊里を対象地点,KiK-net東和を岩盤地点とし,それらの観測記録から算定される増幅率に基づいてモデル関数を作成した.本研究のモデル関数を既往研究と比較した結果,1次ピーク周期より短周期側における増幅率の低減は互いに対応した.長周期側は,既往研究で表現されていない1次ピークの長周期化と,それに伴う増幅率の増大が本研究では明瞭に表現されており,設定したモデル関数の有用性が確認された.

  • 村瀬 詩織, 大村 早紀, 杉野 未奈, 林 康裕
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_147-2_165
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,2016年熊本地震における地震動特性と木造住宅の倒壊被害の実態を明らかにするとともに,地震動特性が倒壊被害とどのように関わったかについて考察した.まず,益城町,西原村,阿蘇市の3地域を対象に,観測地震動の分析を行い,熊本地震本震の地震動は約1秒と約3秒の2つのパルス周期をもつことを明らかとした.次に,各地域の木造住宅の倒壊建物分布を示し,熊本地震における倒壊被害の実態を明らかとした.さらに,各地域において倒壊率から最大地動速度PGVを推定し,倒壊被害が甚大であった益城町では推定PGVが150cm/sを超える地域が存在することを明らかとした.最後に,2階建て木造住宅を想定した解析モデルを用いた地震応答解析を行った.その結果,建物の最大応答変形には本震の約1秒のパルス周期が大きく寄与したこと,および,PGVが150cm/sを大きく超えていたと考えれば,木造住宅の倒壊被害を定性的に説明できることを示した.

  • 内田 治, 新井 啓祐, 上林 宏敏, 釜江 克宏
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_166-2_183
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    建物基礎近傍地盤を対象に,不均質な物性値分布モデルによる非線形地震応答が地震動空間変動特性及び基礎地盤の安定性(最小すべり安全率)に及ぼす影響について,数値実験に基づいて評価した.できる限り現実に近い地盤を作成するため,層構造や鉛直方向のS波速度のばらつきがボーリング等によって調査されている京都大学原子炉実験所の研究用原子炉(KUR)建屋及びその周辺地盤の地盤情報を用いた.地震動空間変動について,不均質地盤モデルの非線形解析は,線形解析に比べて,同一水平レベルの受信点間のコヒーレンスが低下し,フーリエ振幅の変動が増加する結果となった.基礎地盤の最小すべり安全率の評価(非線形解析)について,不均質地盤モデルは,均質地盤モデルに比べて,安全率が増加する結果となった.前者では強震時における不均質地盤は初期物性値(特にせん断剛性)からの地盤要素毎の変動がより大きくなること,後者は最大せん断応力面の要素毎のばらつきが大きくなることが主な要因と考えられた.

  • Masanori HORIKE, Koji HADA
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_184-2_202
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    We present an inference method for Green's functions for multistory torsionally coupled shear buildings, and demonstrate that it is a practical tool by an application to an existing building. We first show that horizontal vibrations of an individual floor are specified as a three-input-three-output linear system, introducing Green's functions in it. Then, we develop the inference method for discrete Green's functions by the Wiener filter. Applying the inference method to an 8-story torsionally coupled shear building, we obtain reliable Green's functions, correcting waveform deformation of Green's functions associated with the torsion. We also show that the effect of wind on Green's functions is negligibly small.

報告
  • 中西 真子, 久田 嘉章, 山下 哲郎, 笠井 和彦
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_62-2_81
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    近年,超高層建築などの重要建築物には,発生確率の高いL1,L2地震動に対しては,それぞれ機能継続性と修復性を可能とする従来より高い耐震性能に加え,海溝型超巨大地震や活断層など数千年に1度程度の極めて低い確率であるL3地震動(極大地震動)に対しても倒壊しない,など余裕度を見込んだ検討が求められている.最近では長周期・長時間地震動に対する制振ダンパーによる補強事例が増えているが,首都直下地震や活断層帯の地震等による震源近傍強震動までも有効性を検証した事例は無い.そこで本研究では,工学院大学新宿校舎(1989年施工,28階建てS造)をケーススタディとし,長周期・長時間地震動や活断層近傍強震動など極大地震動を考慮した様々なタイプとレベルを持つ地震動に対し,ダンパー補強による耐震性能の評価を行った.ダンパーの配置法として,3次元立体フレームモデルにプッシュオーバー解析を行い,その変形量を参考にする簡便的な方法を用い,ダンパー総数44本という比較的少ない本数で様々な地震動に対し,断層のごく近傍の長周期パルスが卓越する特殊な地震動を除き十分な補強効果が得られることを確認した.

  • Yadab P. DHAKAL, Wataru SUZUKI, Takashi KUNUGI, Shin AOI
    2018 年 18 巻 2 号 p. 2_203-2_216
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/05/31
    ジャーナル フリー

    In our previous study1), we constructed ground motion prediction equations (GMPEs) for absolute velocity response spectra from the viewpoint of earthquake early warning of long-period ground motion intensities. In the present study, we evaluated the performance of the GMPEs for seven recent earthquakes having Mw ≥ 6.5 that occurred after the construction of the GMPEs. We found that the GMPEs generally performed well for the events. Finally, we explain a methodology for the revision of site factors in the GMPEs, and discuss some implications for future study.

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