我国は世界有数の地震災害国であり古来幾多の地震災害に悩まされてきた。しかし災害防止を目指して立ち上がる事ができたのは、明治24 (1891) 年濃尾地震以降である。その後地震災害防止への調査研究の進展は目覚しかったが、1923 年には関東大地震による破滅的大災害を蒙る事となった。良く苦境を克服し構造物の耐震安全性の学問技術も大進展を遂げたが1995 年兵庫県南部地震で再び大災害を蒙り深甚な反省を強いられる事となった。それ迄の日本の地震災害対策は人工構造物耐震強化が主眼であったが、大災害を発生させるものは人工構造物以外の災害が主因であり、人間災害、社会災害、都市災害、に重点が移つってしまっているのに気付かなかったからである。新時代の地震災害対策策定には、人工構造物以外の災害防止に重点が置かれなくてはならない。茲に云う人工構造物以外の地震災害とは、1.人命損失の元凶である木造密集地域存在に基づく災害、2.地震火災災害、3.津波災害、4.危機管理体制不在による災害、以上の4項目である。上記災害防止に成功すれば、地震災害は殆ど全く防止されることとなる。4項目の災害防止が長年月に亘り放置されて来た理由はただ一つ地震が超低頻度発生現象である、この一点に尽きている。ところが極最近日本で或る特定地域に限るとは云へ数十年以内にその場所で地震が発生するとの研究成果が権威ある筋を通して発表されるように成ってきた。之が真実であるならば、災害対策を実施すべき目標が確立された事になる。この機会をしっかりと捕らえて災害防止対策事業が大躍進を遂げるよう期待したい。
抄録全体を表示