日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
22 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
論文
  • 石井 透, 小穴 温子
    2022 年 22 巻 2 号 p. 2_1-2_16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

    新たな観点からの地震動評価による新たな知見の獲得を目指し,過去に得られた地震動観測記録を学習用データとする機械学習により,地震観測点毎に固有な地震動評価モデルの作成を試みた.従来の距離減衰式等では扱われなかった震央方位や地震動の応答継続時間も検討対象とした.全体として観測値は良く評価・モデル化され,評価値の大半は観測値の倍~半分の範囲に収まり,評価値/観測値の比の平均はほぼ1,その常用対数標準偏差は地震動の振幅では0.2強,応答継続時間では0.1強となった.応答継続時間への震央方位の影響度は大きく,従来の予測式の各パラメータの影響度と同等以上になる場合もあった.

  • 長嶋 史明, 川瀬 博
    2022 年 22 巻 2 号 p. 2_17-2_36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

    強震時の非線形挙動は強震動予測に対し大きな影響を及ぼすが,これを理論的な地盤応答解析で表現しようとした場合,限られた情報の中で適切な土の動的非線形特性を選択し地盤構造に割り当てなければならないのが現状である.それに対し,地震動の拡散波動場理論に基づき,単一地震でも同理論が成立すること,および上下動増幅特性が強震時にも弾性挙動を示すことを仮定できれば,強震時の水平上下両方向の地震基盤入射スペクトルや非線形水平増幅特性を経験的に求めることができる.この拡散波動場理論に基づく手法の妥当性を検討するため,日本国内のいくつかの観測点で弱震動や強震動に対し提案手法を適用し地震基盤スペクトルや水平増幅特性を推定した.得られた結果を地盤の動的変形特性を用いた既往手法である等価線形解析による結果と比較し,提案手法の適用性を示すとともに,その適用限界についても検討を行った.S波直達部を含む地震波形では拡散波動場状態に達していないと考えられる場合もあったが,S波後半からの地震記録を用いることで水平上下スペクトル比や地表地中スペクトル比の特に高振動数域でS波直達部を含む記録と同程度の非線形性を示しつつ拡散波動場状態が成立する可能性があることが分かった.提案手法により求めた地震基盤スペクトルは等価線形解析結果とよく対応するものが得られ,また地表記録の位相と組み合わせた入射波を作成し等価線形解析により地表地震動を推定したところ観測記録とよく一致するものが得られた.

報告
  • 隈元 崇, 奥村 晃史, 佃 栄吉, 堤 英明, 堤 浩之, 遠田 晋次, 徳山 英一, 大西 耕造, 西坂 直樹, 大野 裕記, 酒井 俊 ...
    2022 年 22 巻 2 号 p. 2_37-2_60
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震や2016年熊本地震等の発生により,地震ハザード評価の高度化への関心が一段と高まっている.大きな地震が発生する度に新たな知見が判明する中,評価に必要なパラメータの不確かさの項目と範囲を検討し,その影響度を確率論的地震ハザード解析によって事前に捉えておくことが重要である.伊方SSHACプロジェクトは,国内で初めてSSHACレベル3ガイドラインを適用して確率論的地震ハザード解析を実施した試みである.本稿では,長大断層である中央構造線断層帯や南海トラフで発生する海溝型巨大地震を含めた多様な震源を対象に構築した震源特性モデルを概説する.また,得られた知見やノウハウが後続の検討にも有用との観点から,SSHACレベル3ガイドラインの有効性や不確かさの範囲と地震ハザードへの影響度について考察を加えて報告する.

  • 藤原 広行, 蛯沢 勝三, 香川 敬生, 司 宏俊, 古村 孝志, 三宅 弘恵, 森川 信之, 塩田 哲生, 小川 裕, 松﨑 伸一, 宮腰 ...
    2022 年 22 巻 2 号 p. 2_61-2_87
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

    諸外国では,原子力施設等のリスクの定量化に資する確率論的地震ハザード解析を行うに際して,手順としてSSHAC(Senior Seismic Hazard Analysis Committee)レベル3ガイドラインが適用されている.伊方SSHACプロジェクトは,伊方発電所3号機を対象に,我が国で初の試みとしてSSHACレベル3ガイドラインを適用した確率論的地震ハザード解析を行ったものである.伊方サイトでの地震動の認識論的不確実性に関し,近傍に長大活断層が分布する地震環境や極めて堅硬な地盤条件等を踏まえ,地震動予測式と地震動シミュレーションの両手法を相補的に導入し,震源近傍の地震動のばらつき等も考慮した先駆的なロジックツリーモデルを構築した上で,確率論的地震ハザード解析を行った.本研究の成果は,不確かさを的確かつ客観的に評価する観点から,後続の確率論的地震ハザード解析への展開が期待される.

  • 大谷 竜, 入江 さやか, 中鉢 奈津子, 福島 洋, 横田 崇, 堀 高峰, 橋本 徹夫, 林 能成, 隈本 邦彦, 岩田 孝仁, 谷原 ...
    2022 年 22 巻 2 号 p. 2_88-2_108
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/31
    ジャーナル フリー

    南海トラフ地震は,東日本大震災を大きく上回る被害が想定され,国として防災対策が急がれている巨大地震である. 2017年に気象庁は, 南海トラフ地震発生の可能性が相対的に高まっていると判断した場合,「南海トラフ地震に関連する情報(臨時)(以下,臨時情報)」を発表することとした.しかしこれは「不確実な予測情報」であり,情報が発表されたからといって,必ずしも巨大地震が発生するとは限らない.このような曖昧な情報の持つ意味が十分に理解されないまま社会に伝わると,大きな社会的混乱が引き起こされる可能性がある.特に国民の主要な情報源の一つである放送や新聞などのメディアがこの情報をどのように報道するかによって,社会にさまざまな影響が出ると考えられる.本研究では,南海トラフ地震の震源域の西半分で巨大地震が発生する,いわゆる「西半割れ」を受けて,気象庁が臨時情報を発表するシナリオを作成した.このシナリオを材料として,地域メディアの関係者と地震の専門家によるワークショップを実施し,臨時情報を報道する上で検討が必要な論点を掘り起こすことを試みた.使用したシナリオは,一般に公開されている資料を使って作成された簡易なもので,ワークショップも短時間のものであったにも関わらず,シナリオで示した状況下で「もし仮にこのような報道をしたら,どのようなことが起きうるか」という問いかけを参加者の間で繰り返す過程の中から,検討すべきいくつかの論点を見つけ出すことができた.

feedback
Top