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犬伏 徹志
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_23-2_31
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
10層RC造基礎免震建物の擁壁衝突時に生じる免震部材の引張面圧および引張変形量を評価した.検討では上町断層帯地震動を入力し,免震部材の引張剛性は2段階で変化する非線形特性とした.その結果,引張面圧は約1.9 N/mm2,最大引張変形量は約17 mmとなった.低剛性ばねを付加するタイプの引張面圧低減機構を用いた場合,引張面圧は2/3程度に低減でき,浮き上がり量は約22 mmとなった.鋼材の曲げ降伏を利用した機構を用いた場合には引張面圧1.0 N/mm2以内に制御でき,浮き上がり量は他の機構よりも小さくなった.この機構は擁壁衝突時における免震部材の損傷制御にも有効と考えられる.
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梅村 亮, 金澤 健司, 平木 隆文
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_32-2_41
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
破断後積層ゴムの残余性能を確認するため,直径1600 mmの実大鉛プラグ入り積層ゴム試験体を破断させた後に,再び設計面圧でせん断試験を実施した.その結果,破断後の残余性能について以下の結論を得た.破断の形式に関わらずせん断ひずみが少なくとも±100%程度の領域までは,健全時と破断後における復元力の履歴ループはほぼ一致する.せん断ひずみ200%までは,両者の力学挙動がおおよそ一致する.それ以上の領域では,滑動の開始とともに水平荷重が低下するものの,鉛直方向への急激な沈み込みは発生しない.これらの結果は,積層ゴムが破断しても水平耐荷力および鉛直支持力を有することを示す.
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山本 雅史
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_42-2_49
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
免制振デバイスの性能評価のための加力試験において正弦波をそのまま入力すると加力開始と終了時に衝撃や加振の遅れが生じ,望ましい試験結果が得られない場合がある.このため,加速度を緩和させる入力波形(テーパー部)を付加することが多いが,テーパー部により累積変位量が増加する.試験体への影響と,試験機の累積変位量制約の面からテーパー部による累積変位増分を可能な限り小さくするべくその合理的な設定方法を提案した.本手法は等加速度で加振を行うもので変位および速度は連続する.本手法によれば従来のCOS2乗型フィルタを用いる手法と比較して,同じ最大加速度の制限下で累積変位増分を28%程度に低減できることを示した.
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鍋島 国彦, 小池 孝明, 中村 尚弘
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_50-2_60
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
制振建物において,設計モデルで想定された制振性能と実現性能との間には少なからず乖離がある.今後の地震に対してより高精度な応答推定・安全性検討を行うためには,この乖離を低減することが望ましい.本論文では,オイルダンパー付き実大5層鉄骨建物の振動台実験を対象として振動モデル同定を実施し,その応答推定精度について検討を行った.ダンパー特性の同定値は加振レベル毎で差異があり,制振部材の特性評価という点では言及し難い側面が残るものの,床応答レベルでの応答推定という観点ではその適用可能性が示唆された.また,初期モデル(同定前)との応答推定精度の差異が最大層間変形で顕著に認められ,提案した同定方法によって応答推定精度の向上が確認された.
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片山 拓朗
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_61-2_73
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
本論文では,鉛直免震用ばねとして内側円筒,中間円筒及び外側円筒からなる円筒ばねを提案する.内側円筒と外側円筒は鋼製であり,互いの両端部で摺動嵌合して円筒状の可変容積空間を形成する.中間円筒は主にゴム製であり,円筒状の可変容積空間に隙間無く格納される.円筒ばねの基本構成,円筒ばねの軸ひずみ特性式,ゴム材料の圧縮体積試験,鉛直反力15 MN型円筒ばねの試設計及び鉛直反力150 kN型円筒ばね・試験体の圧縮試験が記述される.軸ひずみ特性式に基づく試験体の反力―たわみ曲線は圧縮試験で得られた反力―たわみ履歴曲線に良く対応した.
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小槻 祥江, 村瀬 充, 濱 智貴, 山本 将大, 竹ノ内 浩祐, 安達 大悟
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_74-2_85
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
近年,設計で考慮すべき地震動レベルは増大し,巨大地震が超高層建物や免震建物に与える影響が懸念されている.特に2016年の熊本地震のような長周期パルス的な地震動は,免震建物に免震層のクリアランスを超える過大変形を生じさせるおそれがあり,ダンパー(減衰量)の増加のみでは変形を十分に抑えることが困難である.このような免震層の過大変形を免震層に設けたストッパーで抑止し,ストッパーに生じる衝撃力を緩和する緩衝材を備えた過大変形抑制機構を開発した.本論文では,衝突緩衝材の要素試験による特性確認,衝突緩衝材とストッパーを組み合わせた過大変形抑制機構の加力試験,および時刻歴応答解析による効果検証について示す.
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仲村 崇仁, 加藤 貴司, 金子 修平, 邢 超, 菊地 優
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_86-2_96
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
減衰性を有する免震部材は,長周期地震動により繰返し変形を強いられると,減衰性能が低下する.これにより免震建物では,上部構造の応答変位が増大する.2017年以降は長周期地震動を考慮した免震設計が行われているが,設計想定を超える巨大地震に対して,上部構造の擁壁衝突や,免震部材の損傷が懸念される.巨大地震に対応するため,免震部材の減衰を増すことは有効な方法であるが,過度な減衰は上部構造の加速度増加を招き,免震性能が低下する.このような問題に対応するため,巨大地震時のみに作用し,上部構造の過大変位を制動する,フェイルセーフ制動装置を開発した.また,その効果を地震応答解析により確認した.
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中野 尊治, 柏 尚稔, 宮本 裕司
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_97-2_108
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
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著者らは,建物の地震応答低減を目的として,変位制御材により基礎側面を支持し,永久磁石により基礎底面を絶縁した磁気浮上基礎を提案している.本論では,金属部材の磁化と渦電流を利用して,基礎の浮上力と減衰性能の向上を図った.すなわち,鋼板の磁化による基礎の浮上力の増大を静的載荷実験から確認し,銅板の渦電流による制動力がマクスウェル型の粘弾性モデルに近似され得ることを電磁気解析より示した.さらに,これらを考慮した磁気浮上建物模型の地震応答を,振動台実験と構造解析より検討した.
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飛田 潤, 薄坂 嶺, 角 空音
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_109-2_118
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
常設の振動実験・観測機材による振動実験及び地震・微動観測を継続的に実施し,免震建物・免震装置の長期稼働後や被災後の性能評価を目的とする.対象とする免震建物はジャッキによる初期変位140mmの自由振動実験,構造物をマスとして加振する強制振動実験の設備があり,加速度,相対変位,オイルダンパー減衰力,擁壁土圧など多様な計測を行っている.本論では,振動実験と地震観測・常時微動計測による建物と免震装置の特性評価と,竣工から9年間の実験概要,得られた特性の傾向から長期モニタリングの可能性を検討した.
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井澤 保一, 小林 正人
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_119-2_129
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
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免震構造は上部構造の応答がある限界に達すると損傷が急激に進展する冗長性の低さが指摘されており,近年の地震動レベルの増大を背景に余裕度評価と余裕度確保の重要性が高まっている.そこで本報では,多数の実地震動記録と漸増動的地震応答解析を用いて免震構造の余裕度を確率論的に評価する.また,筆者らが提案している,免震構造の上部構造における冗長性の乏しさを表すDs値と塑性率の関係式を用いて,免震構造の余裕度に対する簡易評価を行い,確率論的評価と比較する.さらに,耐震構造との比較に基づき,免震構造における余裕度評価の新たな考え方を提示するとともに,余裕度確保を指向した設計法を提案する.
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杉本 浩一, 濱 智貴, 吉田 直人, 荒水 照夫
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_130-2_142
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
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電気制御を用いて免震層特性を暴風時と地震時で完全に独立させ,高摩擦板を用いることで大地震後のメンテナンスを不要とする耐風ロック機構を開発した.本耐風ロック機構のシステム構成を説明し,制動材として用いる高摩擦材の要素試験と実大の制動力確認試験により,所定の性能を有することが確認できた.さらに複数台の油圧ジャッキを用いた作動試験を実施することで,1つのポンプに複数台のジャッキが接続されていても,昇圧時間と降圧時間に差はなく同時に作動するため,耐風ロック機構として問題なく作動することを確認できた.
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富澤 徹弥, 小川 航矢, 北原 眞生, 山田 学, 佐藤 栄児, 福井 弘久
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_143-2_154
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
近年の相次ぐ巨大地震の発生とその被害の経験から,より高度な安全性を実現するため,レジリエントな都市の実現構想研究が進められている.水平免震は高性能な免震が可能な浮揚方式の開発が進められる一方で,鉛直免震は改良が必要となっている.これまでの鉛直免震システムの開発では性能試験は多く報告されているものの,その要求性能を定量的に示した研究は少ない.本研究では観測鉛直動の特性に基づき,浮揚免震システムの地震時応答を解析的に分析し,鉛直免震の要求性能を明らかにするとともに,重量偏心と塔状比が地震時応答に及ぼす影響を定量的に示し,応答増加が軽微である閾値を提案している.また,水平長周期化により,ロッキング応答が小さくなる傾向も明らかにしている.
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渡井 一樹, 二木 秀也, 本田 栞, 西村 章, 佐藤 吉之, 山本 雅史, 高山 峯夫
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_155-2_165
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
近年観測される地震動は,加速度振幅が大きいだけでなく長周期成分や指向性パルスと呼ばれる特徴的な揺れを含むものも多い.免震建物は様々な地震動に対して高い耐震性能を有するが,パルス性地震動に対しては応答が大きくなる可能性がある.パルス性地震動は1方向に大きな変形を生じさせることが特徴であり,免震建物の応答卓越方向を把握することは,設計上重要である.本論文では,パルス性地震動の応答卓越方向に対して緩衝材を設置した場合の応答低減効果を検討する.また,複数のパルス性地震動に対して有効な緩衝材の設計諸元を得るために,複数の観測波に対する包括的な応答評価方法を提案する.
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杉山 遥祐, 橋本 真奈, 藤谷 秀雄, 向井 洋一
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_166-2_179
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
免震建築物の上部構造の床応答加速度を増幅させずに免震層の応答変位の低減を図ることを目的に,セミアクティブ制御を適用することは有効であると期待される.しかし,制御アルゴリズム毎の応答低減効果を減衰定数等の物理量で表現するという研究事例はセミアクティブ制御では希少である.そこで本研究では,MRダンパーを用いたセミアクティブ免震構造のリアルタイムハイブリッド実験を行い,ARXモデル推定に基づく減衰定数により応答低減効果を評価する.実験結果から,セミアクティブ制御は多くの地震動において応答低減効果が高いことを確認し,ARXモデル推定に基づく減衰定数により,制御アルゴリズムによる制御効果の違いを評価した.
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東城 峻樹, 宮津 裕次, 富田 愛, 青木 崇
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_180-2_193
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
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戸建て住宅における耐震性能の向上手段の一つとして,比較的低コストで導入可能な免震技術である滑り基礎構造が注目されている.滑り基礎構造の耐震安全性評価においては,滑り面の摩擦係数を適切に設計する必要がある.摩擦係数は,建物のロッキングに伴う面圧の増減,あるいは滑り速度の変動に応じた依存性を有することが指摘されているが,これらが建物応答に及ぼす影響については不明瞭である.本研究では,既往の滑り基礎構造を適用した実大2層木造建物の振動台実験を対象に,各依存性の有無をパラメータとしたシミュレーション解析を行うことで,各パラメータが滑り基礎構造物の応答に及ぼす影響について考察する.
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山田 学, 佐藤 栄児, 福井 弘久, 富澤 徹弥, 矢部 隆太郎, 原 碧波, 田川 泰敬
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_194-2_207
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
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近年日本では強い揺れを伴う地震が頻発し,南海トラフ地震や直下型地震の発生が予測されている.従来の免震装置は建物の被害軽減に絶大な効果を示すが,震度6強以上の強い揺れを伴う地震において,上部構造の応答加速度を震度換算した場合,震度4以下にすることは困難である.これは殆どの免震装置が水平方向の揺れの低減を目的に作られているのに対して,震度が鉛直方向を含めた3次元の加速度で評価されることにも起因する.一方,都市ガスやエレベータなどのインフラが,緊急停止や地震後点検が必要となる条件の閾値は,震度5弱以上とされているケースが多い.そこで強い揺れを伴う地震について,免震装置上の上部構造の応答加速度を震度換算し,これを震度4以下にできる3次元免震装置の開発を目標とした.免震装置の構想は,流体浮揚式水平免震とパラレルリンク式鉛直免震を組み合わせたもので,パッシブ式での実現を目指す.本報告では,パラレルリンク式鉛直免震の小型モックアップを製作し,その特性の把握と,鉛直方向加速度を1/3以下にすることを目標に,ランダム波と地震波による加振実験を行った.この結果,鉛直免震は摩擦型の挙動を示し,共振は発生せず,加速度を1/4以下にできることを確認した.今後,流体浮揚式水平免震装置と組み合わせることで,強い揺れを伴う地震を震度4以下に低減できる見通しを得た.
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吉田 直人, 冨吉 雄太, 牛坂 伸也, 佐藤 宏, 今井 克彦, 福喜多 輝
2025 年 25 巻 2 号 p.
2_208-2_220
発行日: 2025年
公開日: 2025/01/31
ジャーナル
フリー
超高層建物やアスペクト比の高い中高層建物を対象とした制振架構の一つとして,BMD (Building Mass Damper) 制振架構が提案されている.BMD制振架構は,建物の比較的上部に他層に比べて剛性の小さい連結部を設け,連結部よりも上部の構造をTMD (Tuned Mass Damper) として設計することで,上層階と下層階を同調させ,地震に対する建物応答の低減を図る構造である.本研究では,超高層建物を模擬した6層のせん断模型を用いて,定点理論に基づく最適同調として設計したBMD制振架構の応答低減効果や振動性状を振動台実験および数値解析により検証する.
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