日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
25 巻, 12 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
  • 佐藤 智美, 岡崎 敦
    2025 年25 巻12 号 p. 12_1-12_20
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
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    伏在横ずれ断層である1948年福井地震 (MJ 7.1) と,長さ28 kmの地表地震断層が生じた逆断層である1945年三河地震 (MJ 6.8) の気象庁の震度をターゲットに,経験的グリーン関数法で短周期レベルを推定した.強震動予測レシピに基づき,強震動生成域の面積を求め,短周期レベルを壇ら (2001) の式の1倍から0.1倍刻みで設定し,強震動生成域の位置を変化させてグリッドサーチを行った.その結果,福井地震は短周期レベルが壇ら (2001) の0.7~0.8倍,三河地震は0.5~0.6倍と推定された.

  • 塩田 哲生, 木戸 智之, 飯田 朋美, 元木 健太郎, 加藤 研一, 藤原 広行
    2025 年25 巻12 号 p. 12_21-12_39
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
    ジャーナル フリー

    耐震設計で考慮される地震の震源は近年多様かつ大規模となりつつあり,今後の耐震設計に向けては,大規模地震かつ震源近傍の強震動予測の精度向上が重要な課題となっている.本検討では,2023年トルコ・シリア地震(Mw 7.8)を対象に,拡散波動場理論に基づき震源近傍観測地点のVs = 2100 m/s相当の基盤地震動を推定した.推定した基盤地震動のPGA及びPGVはほぼMorikawa and Fujiwara (2013)による地震動予測式のばらつきの範囲内であり,地表記録と比べて地震動レベルが低減している.推定した基盤地震動については複数の検証から,短周期地震動の特異な大振幅が確認された一部地点を除き概ね妥当な結果が得られていると考えられる.推定した基盤地震動と地震動予測式の各周期の距離減衰特性はばらつきの範囲で概ね良い対応を示しており,地震動予測式によって大規模地震かつ震源近傍の地震動を一定の精度で評価ができる可能性が示された.

  • 森脇 美沙, 津野 靖士, 是永 将宏
    2025 年25 巻12 号 p. 12_40-12_59
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
    ジャーナル フリー

    近年の海底地震観測網の整備に伴い,鉄道の早期地震警報における海底地震計データの活用が検討されている.既存のP波警報手法は陸上地表の地震計で有効性が確認されてきたものであり,海底地震計に適用するためには陸上とは異なる観測環境である海底地盤の増幅特性や,海水が海底での観測地震動に及ぼす影響を把握することが重要である.陸上地中に対する海底の地震動のスペクトル比を用いた検討により,海底表層でP波のみが海水中へ透過する結果として,P波のスペクトル比に数分の1程度の明瞭なトラフが出現し,その周波数は海底地震計の設置水深に応じて4分の1波長則に従い変化することを明らかにした.また,海底地震計データの時刻歴波形に基づいて,海底地盤上で観測されるP波初動の振幅は海底地中からの上昇波振幅の2倍以下となることや,P波の海面反射波が海底での観測P波の位相に与える影響が海底地震計の設置水深によって異なることを実証した.これらは既存警報手法を海底地震計へ適用する際に警報精度を低下させる要因となる.今後,本論文の成果であるP波の海水伝播を考慮することにより,海底での観測P波を利用した早期地震警報の実現が可能となる.

  • 東 宏樹, 藤原 広行
    2025 年25 巻12 号 p. 12_60-12_75
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
    ジャーナル フリー

    地震発生時の現場映像を活用した被害の迅速な把握は,防災工学上の喫緊の課題である.とくに,人的確認による被害分類には時間と労力がかかることから,映像を用いた自動的な異常検知手法の確立が求められている.本研究では,異常が含まれる画像フレームかどうかを判別する機械学習モデルを応用し,その中身である異常種別を抽出することが可能かを検証した.判別する異常種別に特化した弱識別器と呼ばれる2クラス判別器を6種組み合わせたアンサンブルモデルを構築し,4つのアンサンブル手法を比較しながら最終精度の改善を試みた.データは地震映像切り出し画像と正解ラベルに加え動画IDのOne-hot入力の有無 2ケースにて実験した.結果,One-hot入力ありで弱識別器を単純並列させたモデルのハミング損失が0.0015となり,その他の3つのアンサンブル手法と比較して高い識別性能を示した.また,データ分割方法別の信頼性検証を行い,汎化における限界を明らかにした.

  • 久保 久彦, 山谷 里奈
    2025 年25 巻12 号 p. 12_76-12_91
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
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    令和6年能登半島地震では,震源域近傍の石川県能登地方だけでなく,北陸地域の広域において顕著な長周期地震動が観測された.この長周期地震動の詳細を明らかにするために,本研究では防災科学技術研究所の強震観測網K-NET・KiK-netで観測された強震記録を解析した.その結果,震源域近傍の石川県能登地方に位置する多くの観測点で周期1–3秒にピークを持つ擬似速度応答スペクトルが観測されていた一方で,新潟県の越後平野および富山県の富山平野に位置する観測点では周期4秒以上において震源域近傍の記録に匹敵する値の擬似速度応答スペクトルが観測されていたことが分かった.さらに越後平野で観測された周期8秒にピークを持つ顕著な長周期地震動は,震源域近傍または伝播過程で生成・増幅されたレイリー波が,越後平野の厚い堆積層によってさらに増幅されたものであることが示唆された.また富山平野で観測された顕著な長周期地震動は,異なる方向・タイミングで到来した複数の表面波が富山平野によって増幅・長時間化されたことが主たる要因だと考えられる.

  • 笠松 健太郎, 野澤 貴, 引田 智樹, 友澤 裕介, 渡辺 哲史
    2025 年25 巻12 号 p. 12_92-12_107
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
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    鉛直アレー地震観測点では,従来の一次元解析では再現できない地表/地中の観測伝達関数が得られる場合がある.本検討では,周辺の地盤構造が複雑なKiK-net釜石について観測伝達関数を対象とした逆解析に基づいて二次元地盤モデルを評価した.PS検層と観測点周辺で実施した微動アレー探査の結果を拘束条件とすることで安定した解が得られること,従来の一次元解析と比べて観測伝達関数の再現性は向上することを示した.一次元解析の適用が難しい地震観測点では,周辺の不整形性を考慮することで,観測記録を良く再現する地盤モデルを評価できる.

  • 道上 雅史, 新谷 篤彦
    2025 年25 巻12 号 p. 12_108-12_120
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
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    刺激係数を拡張する形で定義した,対象構造物の特定位置の応答に着目した揺れやすさの指標である,部分モード寄与率を導入した.この部分モード寄与率による評価を,複数の振動伝達経路を有する構造物に適用し,外力や減衰の情報が不十分な状態で固有値解析の結果のみから主要振動モードを選定する手法を示した.また,特定部位の主要振動モードの部分モード寄与率の最小化を目的とする構造最適化事例を示し,部分モード寄与率を用いることの有用性を示した.

報告
  • 長 郁夫, 先名 重樹, 野々垣 進
    2025 年25 巻12 号 p. 12_121-12_140
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/11/28
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    埼玉県南東部(辺長約35 kmの矩形に含まれる領域)で得られている常時微動のグリッド観測データ(平均約1 km間隔.853地点分)を用いて微動のHorizontal-to-Vertical(H/V)スペクトルを同定した.得られたスペクトルから0.5–20 Hzの範囲でピーク周波数を読み取り,その空間分布(ピーク周波数マップ)を得た.その際,読み取りの検討範囲に複数の局所的なピークが認められる場合はピークと対になるトラフとの振幅差を評価し,その情報を加味したピーク選択の閾値と重み付け基準により単一のピークを選択した.こうして得られたピーク周波数マップを多数のボーリングデータ(~7338本)を用いて構築済みの3次元地質構造モデル(都市域の地質地盤図)と比較した.その結果,荒川低地や中川低地で沖積層の厚い(>20 m)領域ではピーク周波数が平均1.3 Hzであるのに対し,沖積層の非分布域では平均4.7 Hzと高い値となる等,地形・地質の分布と調和的な結果が得られた.H/Vスペクトルのピーク周波数は,地形や3次元地質地盤構造から得られる地盤の良否の判断や地震ハザードに関する定性的な予想を定量化する指標と考えることができる.ここで得られたピーク周波数マップは拡大縮小や地質分布との詳細な比較ができるように都市域の地質地盤図のホームページで公開する予定である.今後は地質地盤図で公開されている他の地域においても同様にピーク周波数マップを作成してそれぞれ公開したいと考えている.

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