日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
8 巻, 3 号
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  • 大岡 優, 鈴木 隆志, 伊津野 和行, 土岐 憲三
    2008 年 8 巻 3 号 p. 1-18
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本研究では、経年変化が清水寺本堂の耐震性能にどのような影響を与えるか検討を行った。劣化が起こりやすく、清水寺本堂の耐震性能に大きな影響を与えることが予想される柱脚部と柱貫接合部に劣化を仮定し、耐震性能評価を行った。また、清水寺本堂の主要構造部材はケヤキであるが、ケヤキは構造材となってから年が経つにつれて材自体の強度が低下するという研究報告がある。この経年による材自体の強度低下を考慮した耐震性能評価も行った。
    荷重増分解析の結果、経年変化を考慮することで清水寺本堂の保有水平耐力が低下した。特に、柱貫接合部の劣化が激しいと仮定した場合においては、保有水平耐力は健全時の70%程度になり危険であることがわかった。非線形地震応答解析の結果、柱脚部より柱貫接合部の劣化の方が清水寺本堂の耐震性能に与える影響は大きいことがわかった。さらに、懸造部の柱貫接合部の劣化が本堂部の耐震性能に与える影響は小さいことがわかった。清水寺本堂は建立されてから約400 年経過しており、このことからケヤキのヤング係数を低下させて非線形地震応答解析を行った結果、応答変位の最大値が大きくなったが倒壊に至るほどではなかった。
  • 翠川 三郎, 駒澤 真人, 三浦 弘之
    2008 年 8 巻 3 号 p. 19-30
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    横浜市高密度強震計ネットワークで観測された地震記録と地盤データを用いて、最大加速度、最大速度、計測震度および応答スペクトルに対する増幅度と地盤の平均S波速度との関係を検討した。最大加速度、最大速度および計測震度に対する増幅度と平均S波速度との関係については、Mが小さな地震の記録とMがより大きな地震の記録による結果は異なり、これはMの大小で卓越する周期成分が異なるためと考えられる。Mの比較的大きな地震の記録から、最大加速度、最大速度および計測震度に対する増幅度はそれぞれ深さ10m、30mおよび20~30mまでの平均S波速度とよい対応がみられる。応答スペクトルに対する増幅度は、周期0.6秒程度までは深さ10mまでの平均S波速度、周期0.6秒~0.8秒程度では深さ20mまでの平均S波速度、周期0.8秒程度以上では深さ30mまでの平均S波速度とよい対応ががみられ、周期0.3秒程度までの短周期に比べてより長い周期で地盤の増幅度が地盤の平均S波速度の相関が高い傾向にある。
  • 古田 和久, 伊藤 智博, 新谷 篤彦
    2008 年 8 巻 3 号 p. 31-45
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    原子力発電所では使用済放射性廃棄物の貯蔵容量が不足しており、それらを一時的に保管する貯蔵施設の建設が計画されている。このような貯蔵施設において、使用済放射性廃棄物は、キャニスタと呼ばれる容器に収納され、そのキャニスタはキャスクと呼ばれる自立した円筒状の容器に収納される。一般的に、キャスクは水平な地盤に固縛されずに自立して設置される。このように、キャスク-キャニスタ系は、地盤に固縛されずに自立する2自由度連成系とみなすことができる。したがって、地震動に対するキャスク-キャニスタ系のすべり・ロッキング運動を評価することは重要である。解析モデルでは、キャスクおよびキャニスタは、互いにばねで連結される剛体として取り扱う。地震動に対するキャスクのすべり量およびロッキング角ならびにキャニスタの振幅を数値解析によって求め、キャスクのすべり・ロッキング運動におけるキャニスタの影響について考察する。
  • 山口 晶, 吉田 望, 飛田 善雄
    2008 年 8 巻 3 号 p. 46-62
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    本研究では、再液状化が発生するメカニズムを検討した。はじめに模型地盤を用いた振動台実験により、再液状化時の噴砂分布を調べた。この実験から、再液状化時は噴砂が発生しやすいことがわかった。次に、再液状化を繰り返した模型地盤の深さ方向のせん断抵抗の分布をハンドベーン試験により調べた。この結果、液状化後の地盤のせん断抵抗は、模型地盤の底面部に近い位置でのみ増加した。上層部でせん断抵抗が増加しない理由を、液状化によって排出された間隙水の上向き浸透流によるものと考え、クイックサンド実験からこの影響を確認した。再液状化が繰返し発生する理由は、液状化によって発生した上向き浸透流が上層部の密度増加を妨げるためであることがわかった。
  • ペンレコードの数値化による地震動の推定
    田中 信也, 真下 貢, 湯沢 豊, 中島 由雄, 高橋 裕幸, 工藤 一嘉
    2008 年 8 巻 3 号 p. 63-78
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    2007年新潟県中越沖地震 (M6.8) による東京電力柏崎刈羽原子力発電所の地中地盤系の本震時のデジタル強震記録は余震による上書きにより消失した。しかし地中観測点の一部の成分については熱ペンレコーダーによるモニター記録として残されている。今回このペンレコーダーによる可視記録を、CADを利用して目視による数値化を行い、地中地震動推定のための資料を作成した。
  • 境 有紀, 野尻 真介, 熊本 匠, 田中 佑典
    2008 年 8 巻 3 号 p. 79-106
    発行日: 2008年
    公開日: 2010/08/12
    ジャーナル フリー
    2007年能登半島地震を対象として, 震度6弱以上を記録した全ての強震観測点と5 強を記録した一部の強震観測点周辺の被害調査を行った.震度6 強を記録した全ての強震観測点周辺で, 全壊木造建物が見られた.中でもK-NET穴水と輪島市門前町走出震度計周辺では, 木造建物全壊率は20%近くに達していたが, 多くは老朽化した建物, 1階が商店等で開口部が広い建物であった.震度6弱を記録した観測点は, 全壊木造建物が見られたところとそうでないところがあり, 同じ計測震度でも被害状況にばらつきが見られた.また, いずれの強震観測点周辺にも非木造建物で大きな被害を受けたものは見られなかった.強震記録を見ると, 様々な周期特性をもった地震動が発生しており, 中でも周辺に大きな建物被害があり, かつ, 1.5-2秒程度とやや長い周期に大きな応答をもった地震動が初めて記録されたJMA 輪島は, 貴重なデータとなった.収集した建物被害データと観測された強震記録を用いて, 建物被害と地震動の性質の関係について検討した結果, 強震観測点周りの被害は, 概ね建物の大きな被害と相関が高い1-2 秒応答で説明できるものであったが, JMA輪島の被害レベルは, やや説明が難しいものであった.
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