2008 年6 月14 日岩手・宮城内陸地震(M7.2)では岩手県南部,宮城県北部を中心に非常に大きな被害が生じた.防災科学技術研究所によるKiK-net 一関西観測点が震源のごく近傍に位置しており,本震と数多くの余震の加速度記録が得られた.これらの鉛直アレー観測記録は歪レベルの大きな地震波動の伝播性状を検討する上で極めて貴重なものである.本研究ではKiK-net 一関西観測記録にNIOM 法を適用して2008 年岩手・宮城内陸地震とその前後のS 波速度の変化を検討した.その結果,(1) 本震主要動において,強震動に起因する地盤の非線形化によって,S 波の伝播時間が本震前の0.258 s から0.35 s 程度まで増加したこと,(2) 上記の伝播時間の増加は表層(地表~地下64m)における剪断剛性率が初期剛性の40%程度まで低下したことに相当し,このときの最大剪断歪は1×10
-3 に達するものと推定されること,(3) 本震コーダ部や本震直後の余震の解析から,本震直後のS 波の伝播時間が本震以前の伝播時間よりも大きい値(約0.28 s)を示し,その後緩やかに減少する傾向が見られることなどを指摘した.
抄録全体を表示