日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
9 巻, 1 号
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論文
  • -2005 年福岡県西方沖地震の観測記録に基づく検討-
    鶴来 雅人, 香川 敬生, 入倉 孝次郎
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_1-1_18
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    強震動予測の高周波数帯域における精度向上を図るには,この帯域における地震動特性を明らかにする必要がある.そこで本研究では強震動予測のための高域遮断フィルターを提案することを目的に,2005 年福岡県西方沖地震の本震および余震の高周波数帯域におけるスペクトル低減特性を示す高域遮断フィルターを求めた.その結果,2005 年福岡県西方沖地震の本震の高域遮断フィルターを規定する周波数(高域遮断周波数 fmax)は6.5Hz,余震のそれは9Hz~20Hz と推定された.また,強震動予測においては大地震と小地震のスペクトル低減特性の違いを補正するフィルターも重要であり,これについても検討を行った.
  • 茂木 秀則, SHRESTHA Santa Man, 川上 英二, 岡村 真也
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_19-1_31
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所において観測された2007 年新潟県中越沖地震とその前後の地震記録が公開された.これらの記録は,震源近傍の非常に高密度の地震記録として極めて貴重なものである.本研究では,NIOM 法を東京電力株式会社柏崎刈羽原子力発電所のサービスホール(KSH)の鉛直アレーにおける観測記録に適用して,2007 年新潟県中越沖地震とその前後のS 波速度の経時変化を検討した.その結果,表層(地表~地下50m)と中間層(地下50m~100m)では本震主要動時に顕著なS 波速度の低下が見られること,その一方で,主要動直後からS 波速度が増加し始めていることなどから,これらの層においても大規模な液状化は生じなかったものと考えられること,基盤層では主要動時においてもS 波速度の低下はごくわずかであり,強震動による非線形化の影響は殆ど生じていないと考えられることなどを指摘した.
  • 境 有紀, 飯塚 裕暁
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_32-1_45
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    非線形地震応答解析による地震被害推定を目的とした日本の中で平均的な耐震性能をもつ木造建物群モデルの構築を行った。具体的には、建物の耐震性能の中で地震応答に大きな影響を与える建物の周期と耐力について、建物群の周期分布を実在建物の微動計測結果と建築年を基に作成し、周期と耐力の関係式から耐力分布を求めて建物群を構築した。この方法を用いれば、微動計測結果から建物耐力を推定することができ、数多くの建物耐力データを得ることができる。構築した建物群の妥当性を検証するために、建物群中の個々の建物を一自由度系にモデル化し、建物群モデルに既往の強震記録を入力して非線形地震応答解析を行って、地震応答解析で得られた被害率と、強震記録が得られた観測点周辺の実際の被害率を比較した。その結果、提案した木造建物群モデルは、被害率の誤差が平均2 ~3%程度という精度で実際の全壊率を推定できることを確認した。提案した木造建物群モデルは、大地震が発生して強震記録が得られたとき、あるいは、強震動シミュレーションにより予測波形が得られたとき、非線形地震応答解析を行うことにより、その波形が日本の中で平均的な耐震性能をもつ木造建物群にどの程度の被害を及ぼすものであるかを定量的に全壊率という形で推定することができる有効なツールとなる。
  • 福元 俊一, 吉田 望, 佐原 守
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_46-1_64
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    工学的基盤以深の地盤は通常は弾性と扱われるが,非線形性が地表の応答に影響する事例も現れている.そこで,工学的基盤の一つとして扱われる堆積軟岩の三軸圧縮試験結果と動的変形特性の実験結果を集め,これらを整理し,実験式を得た.さらに,比較的乱れの少ない試料を用いた試験結果をもとに非線形特性の特徴を示すと共に,実務で扱う際の注意点をまとめた.まず,ダイヤモンド・コアドリルを用いて採取した堆積軟岩試料を用い,LDT(局所変位計測)装置付きの静的な三軸圧縮試験を行い,せん断剛性比(G/G0)-せん断ひずみ(γ)の関係に着目して整理し,乱れのない試料ではγが10-3程度まではG/G0 は0.9~1.0程度と剛性の低下はほとんどなく,ほぼ線形の応力-ひずみ関係となるが,乱れの多い試料ではγが10-5程度でも剛性低下が著しく現れることを示した.一方,N 値30以上またはせん断波速度Vs が300m/s 以上の洪積層~第三紀層の堆積軟岩の不撹乱試料の動的変形試験結果データを整理したところ,γが10-3以下における挙動がLDT を用いた静的試験で得られたG/G0-γ関係に近い挙動を示す試料が存在することが分かった.これらの乱されない試料では,G/G0 のγ=10-3における値は拘束圧依存性がなく,塑性指数と正の相関があることがわかった.最後に,塑性指数毎に分類した乱れの少ない動的変形試験結果をRamberg-Osgood モデルでよく表現できることを示した.
  • 池浦 友則
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_65-1_82
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    鉛直アレー地震動観測記録の周波数領域における統計的な解析法として,観測地震動をコヒーレントな波動成分(信号成分)とインコヒーレントな波動成分(雑音成分)に分離する手法を示した.ここに,信号成分はアレー観測点間で完全に相関する成分であり,一方,雑音成分は自分以外との相関性を持たないものとしている.この方法を仙台高密度アレーMIYA地点の鉛直アレーデータに適用して信号成分と雑音成分の振幅特性を調べた.その結果,全測点とも概ね雑音成分に比べ信号成分が卓越するが,地中観測点において上昇波と下降波の相殺効果が生じる周波数や地表観測点の高周波数領域では,信号成分に代わって雑音成分が卓越することがわかった.このことは鉛直アレー観測記録から地盤内部の波動伝播現象を解釈する際に観測点間でインコヒーレントな雑音成分の存在が無視できないことを示唆している.事実,信号成分のみから評価される地盤伝達関数は観測記録から直接求められる従来の地盤伝達関数に比べてピークが高くトラフが深い.そこで,これらの地盤伝達関数から推定される地盤パラメータの違いを明らかにするため,信号成分の伝達関数と従来法による伝達関数を用いてそれぞれ地盤定数の最適化解析を行い,低周波数領域では信号成分の地盤伝達関数から推定される減衰定数が従来の伝達関数を用いた場合に比べて小さくなることを示した.結論として,鉛直アレー地震動記録に含まれるインコヒーレントな雑音成分は地盤伝達関数のピークを抑制しており,その結果,低周波数領域における地盤減衰定数の過大評価の原因となっている.
  • 山田 真澄, 宮地 周吾郎, 森井 雄史, 林 康裕
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_83-1_93
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
     本研究では、アメリカカリフォルニア州の建物で記録された強震観測記録を用い、建物内での地震動増幅度の傾向を調べるとともに、建物を等価1 質点系でモデル化し、建物階数、構造種別、建物の塑性率などを考慮して地震動増幅度を推定する経験式の構築を行った。地震動の強さを示す指標としては、計測震度に加えて、最大加速度と最大速度を用いた。1 次モードが卓越している場合は、地上から頂部まで震度増幅は線形増加、加速度、速度増幅は指数関数的な増加になる傾向がある。建物が共振するTf /Te=1 付近では増幅度は最大となり、その値は、建物の階数に関係なく建物頂部で震度増幅は1 前後、加速度増幅、速度増幅は3 前後となる。構築した加速度・速度・震度増幅度の経験式は観測記録の傾向を概ね説明できている。この経験式を用いて、地表面での地震動情報から建物内での地震動強さを迅速に推定することが可能となる。
  • 八木 康夫, 藤 雅行
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_94-1_112
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
     地震発生後の避難所生活の質的向上は緊急課題である。そこで本研究は、ダンボール素材の利用しやすさに着目し、ダンボール仮設空間の印象評価について検討したものである。
     実験は滋賀県の大学キャンパス内にある4 階建て建物の1 階ホールに実寸大のダンボール仮設空間を製作し、避難所と設定した実験を行った。その仮設空間は、3タイプの部屋サイズ、3タイプのダンボール高さ、3タイプの屋根割合、3タイプの屋根形状の設定とした。その実験結果をSD法と主成分分析を用いて印象評価について検討した。その結果、ダンボール高さが高く屋根の割合が小さく楽な体勢である寝転べるスペースがある空間やトップライトタイプの屋根が快適と評価された。
  • 飯塚 裕暁, 境 有紀
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_113-1_127
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    木造建物の地震応答解析をより簡便に行うために、建物を一自由度系の単一ばねにモデル化する際の復元力特性モデルを提案した。具体的には、Takeda-Slipモデルに木造建物の挙動を表現できるよう修正を加えた。提案したモデルの妥当性を確認するため、地震応答解析を行って、既往の実大振動実験結果を再現できるかどうかを検証した。その結果、実験結果を概ね再現できることを確認した。そして、建物を構成する耐力壁の仕様より復元力特性モデルのパラメタを決定する方法について検討した。耐力壁ごとの復元力特性を重ね合わせることで、提案するモデルのパラメタを設定し、地震応答解析を行って実大振動実験結果と解析結果との比較を行った。解析結果は実験結果を概ね再現することができ、耐力壁の仕様がわかれば、提案するモデルのパラメタを設定して地震応答解析ができることになり、提案するモデルの有用性を確認できた。
  • 糸井 達哉, 翠川 三郎, 鬼頭 順三, 三浦 弘之, 内山 泰生, 坂本 成弘
    2009 年 9 巻 1 号 p. 1_128-1_142
    発行日: 2009年
    公開日: 2011/03/02
    ジャーナル フリー
    断層パラメータのバラツキが地震動の応答スペクトルのバラツキの特性に与える影響を評価するために、過去に日本で発生した内陸地殻内地震のすべり分布を用いて特性化震源モデルの統計的特性を評価し、この結果に基づき統計的グリーン関数法を用いた地震動シミュレーションを行った。まず、アスペリティ分布と破壊開始点位置が応答スペクトルのバラツキに与える影響を中心に評価した。バラツキの大きさは短周期では小さく、長周期になるにつれて増加した。さらに、他の断層パラメータのバラツキの影響についても簡易的に評価し、距離減衰式の回帰誤差との比較を行い、距離減衰式の地震間誤差が主に断層パラメータの影響で説明可能であることを示した。
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