日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
特集号: 日本地震工学会論文集
16 巻, 3 号
特集号「第14回日本地震工学シンポジウム」その3
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
論文
  • 野津 厚
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_1-3_16
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    2004年紀伊半島南東沖地震の前震を対象として、経験的グリーン関数を用いた波形インバージョンを実施し、震源断層面上においてすべり量およびすべり速度が大きかったと考えられる領域を特定した上で、当該地震の疑似点震源モデルの作成を行った。設定した震源モデルは、比較的震源に近い地点での波形やスペクトルを良好に再現できるだけでなく、適切な伝播経路モデルと組み合わせれば、大阪平野、濃尾平野、関東平野など、比較的遠方の地点での地震動を比較的良好に再現できることがわかった。
  • 長坂 陽介, 野津 厚, 若井 淳
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_17-3_29
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    疑似点震源モデルを用いて2005年7月23日千葉県中部の地震(MJ6.0)の強震動シミュレーションを行い、多くの地点で良好な再現性が確認された。一部で過大評価となる地点が見られたが、これはシミュレーションで考慮していないバックワードディレクティビティの影響などが考えられる。また、サイト増幅特性が評価されていなかった計算対象地点に対しては過去の地震観測記録や常時微動観測結果に基づき新規にサイト増幅特性を評価したが、一部の地点で計算によるフーリエスペクトルのピーク周波数が観測と一致しなかったことは今後の検討課題である。
  • 具 典淑, 壇 一男, 小穴 温子, 鳥田 晴彦, 本村 一成, 一徳 元
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_30-3_40
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    正断層による内陸地震の強震動を予測するための断層モデルを設定できるように、断層の長さと幅の関係、地震モーメントと断層面積の関係、地震モーメントと短周期レベルの関係を調べた。その結果、断層タイプを区別しない地震調査研究推進本部 (2005) と同じ諸関係が得られた。また、提示した方法により設定した正断層の地震の断層モデルがどの程度の強震動を生成するかを統計的グリーン関数法で調べた結果、最大加速度の場合は、ほかの断層タイプとほぼ同程度であるが、最大速度の場合は、地震調査研究推進本部 (2005) の方法による横ずれ断層とほぼ同程度で、壇・他 (2011) の方法による横ずれ断層や、壇・他 (2015) の方法による逆断層に比べて小さい結果が得られた。
  • 宮本 崇, 本田 利器
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_41-3_52
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    著者らは耐震設計用地震動として地震動の集合を代表する波形を用いる手法について検討をしているが、性質の大きく異なる波形を代表する波形を設定することは合理的ではない。この問題を回避するには、類似した地震動波形に分類することが考えられる。本研究では、地震動の性質の非類似度を構造物の非線形応答値に基づいて定量化し、地震動波形の集合をクラスター化する著者らの既開発の手法について、基礎的な有効性の検証を目的とした数値解析を実施する。構造モデルを線形系として提案手法を適用した場合、応答スペクトル形状の異なる地震動波形の集合を提案手法によって適切に分類できることを示した。また、構造モデルを非線形系とした場合は、スペクトル形状とは異なるクラスターが形成されるということも明らかになった。
  • 前川 利雄, 仲野 健一, 久田 嘉章
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_53-3_64
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    2005年千葉県中部の地震(M6.0)において各地で観測された地動の長周期成分について、点震源、平行成層地盤モデルを仮定した波数積分法に基づく理論的手法によりシミュレーション解析を行った。いくつかの観測記録では地動の速度オービットが水平面内において丸く膨らむ軌跡を描く傾向があるが、独立に設定された2つのすべり角による算定波の重ね合わせによりオービットの膨らみがよく説明でき、観測波との適合性が単一のすべり角を用いたモデルよりも向上することを示した。さらに、耐震設計においてこのようなすべり角の複雑さに起因する地動の不確定性を考慮する場合に想定すべき変動量を数値計算により定量的に検討した。
  • 三浦 千穂, 有賀 義明, 猪子 敬之介, 竹原 和夫
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_65-3_74
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    水道施設は、生活に必須のライフラインであり、大地震の際も水道供給機能の安定的な保持が要求される施設である。2011年東北地方太平洋沖地震では、多くの水道施設に被害が生じ断水が長期間に及んだ。また、水道施設は、高度成長時代に建設され高経年化したものが多く、既設の水道施設の耐震性能の照査と耐震化が重要な課題となっている。このような背景から、精度の高い耐震性能照査法の実用化を目的とし、大規模地下浄水池を研究対象として、地震時応答を評価するための三次元動的解析法について検討した。その結果、浄水池の地震時応答に関しては、浄水池の形状の変化部、動的剛性の変化部、浄水池内の柱部で地震時応力が大きくなり、こうした地震時応答を精度良く評価するためには浄水池内の柱や耐震壁を実際に即してモデル化した解析が必要であると考えられる。
  • 若山 志津佳, 小檜山 雅之
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_75-3_93
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    スライディングモード制御はパラメータ変動やモデルの不確かさに対して優れたロバスト性を持つ。しかし、複数の制御パラメータを要し、それらの設計法は確立されていない。本論文では、これらの制御パラメータを建物の供用期間における被害発生確率を最小化するよう決定する設計手順を提案する。セミアクティブ免震建物を対象に検討を行い、提案手法に基づきパラメータを決定した場合の被害確率と、従来の手順による一定の強さの設計用地震動に対する応答を最小化するようパラメータを決めた場合の被害確率を比較し、その差を明らかにする。
  • 岡田 敬一, 片岡 俊一
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_94-3_113
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    本論文では、建物内の入出力関係にある基礎部と頂部の2つの地震計(加速度計)の記録から、建物全層での応答を推定する手法を提案している。この手法では、建物内の2点の記録の伝達関数を求め、そのピークを固有振動数とみなす。2点の波形の差分から求めた頂部の相対応答波形に対して、固有振動数に対応した帯域通過フィルタを施し、各固有モードの応答波形に対応するものを得る。この応答波形に固有振動モード係数を掛け合わせたものを各層における各モードの応答波形と見なし、各モードの応答波形を重ね合せることで各層における応答波形を求める。本手法を全層で地震観測を実施している建物に適用し、その妥当性について検討した。その結果、2点の観測記録から推定した全層応答は、実観測値とほぼ一致していることが確認された。
  • 中島 昌一, 荒木 康弘, 中島 史郎, 五十田 博
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_114-3_125
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    直交集成板(Cross Laminated Timber, CLT)を用いた鋼板添え板木ねじ接合部に繰返し荷重を与える引張実験を実施した。試験は、木ねじ一本当たりの構造性能を評価する単位接合部の一面せん断実験と、木ねじによる接合部を想定した多数本打ち接合部の引張実験の2種類とした。 木ねじを用いたCLT接合部が、材料の方向によって影響を受けるか、幅はぎ接着されていないラミナの境界に木ねじが打たれると構造性能が弱まるか、を実験的に検討した。単位接合部の一面せん断実験のパラメータは、載荷方向(0°方向、90°方向)と隣接するラミナ境界とし、多数本打ち接合部の引張実験は、載荷方向(0°方向、90°方向)と材種(A種、B種)とした。 単調載荷、部分繰返し載荷、正負繰返し載荷のうち、正負繰返し載荷では、それ以外の載荷方法と比べ変形性能が小さくなるなど、構造性能の違いが見られた。
  • − ダミー人形を用いた家具の転倒実験 −
    高橋 徹, 渡辺 慎也, 中村 友紀子, 斉藤 大樹
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_126-3_136
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    家具の転倒が人体に及ぼす影響について、2期に亘る実験を通して検証を行った。第1期の実験では、種々の地震動とスィープ加振により、家具が転倒または移動する状況の把握と、人体ダミー人形への影響(頭部加速度と胸部変形量)の測定を行ったが、大きくばらつく結果を得た。そこで第2期の実験では、床応答を度外視し、転倒時のパラメータを振ってダミー人形への入力を詳細に計測し、人体への影響がどのような条件で大きくなるのかを明らかにした。
  • 鈴木 賢太郎, リュウ ウェン, 松岡 昌志, 山崎 文雄
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_137-3_146
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    想定地震による被害予測を行うためには,建物インベントリデータが必要である.しかし,発展途上国ではデータが整備されていない地域が多く,現地踏査によるデータの構築には多くの労力を伴う.一方,リモートセンシングは現地に行かずに広域を観測できる利点があり,近年地上分解能が1m以下の光学衛星が多く打ち上げられている.これにより,建物を詳細に把握できる高解像度衛星画像が取得できるようになった.本研究では,地震国ペルーにおいてタクナ市を対象地域として,WorldView-2衛星画像のオブジェクト分類を用いた建物インベントリの構築手法を検討した.
  • 郷右近 英臣, 越村 俊一, 松岡 昌志
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_147-3_156
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    本研究では、2011年の東北地方太平洋沖地震津波の被災地において、津波被災前後の高分解能合成開口レーダ(TerraSAR-X)画像を使用し、建物一棟毎と解析区画の2スケールの変化を利用した新しい建物被害把握手法を開発した。両手法の融合には、機械学習のDecision tree法(C4.5)を適用した。構築した建物被害分類手法の検証を宮城県仙台市において実施したところ、総合精度91.0%、カッパ係数0.82が得られ、その有効性を確認することができた。
  • 篠原 崇之, 松岡 昌志, リュウ ウェン, 山崎 文雄
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_157-3_168
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    洪水や津波による浸水域を把握するために光学衛星データによる混合スペクトル解析Spectral Mixture Analysis(SMA)により水占有率を算出し、浸水域を定量的に評価した。さらにSMAによる水占有率と合成開口レーダの後方散乱係数の関係から換算モデルを構築し、光学衛星データの欠点を補間するためにSAR画像と組み合わせて浸水域の定量的な抽出を行った。はじめに、2011年タイ・バンコクの洪水被害について、Landsat-7 ETM+反射率画像に対してSMAにより水占有率を算出し、IKONOS衛星の高解像度画像を用いて精度検証を行った。同様に、東北地方太平洋沖地震後のLandsat-7 ETM+画像にSMAを適用して水占有率を求め、ALOS PALSAR画像との比較に基づき、後方散乱係数から水占有率を推定する回帰式を求めた。
  • 清水 智, 若浦 雅嗣, 小丸 安史, 藤原 広行, 中村 洋光, 森川 信之, 早川 讓
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_169-3_182
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    本稿では日本全国に適用可能な地震災害の地域特性の類型化手法を検討した。これは、地震による被害形態が被災地の地域特性に依存すると考えられるためである。本稿では、地震被害に大きく影響を与える基礎的な要因として、「震動」「液状化」「火災」「土砂災害」といった地震によって発生する災害事象に着目した。この各災害のポテンシャルを定量化・基準化することにより、各災害ポテンシャルを指標値の類似度により比較できるようにするとともに、指標値を用いた地震災害の地域特性を類型化する枠組みを提案した。また、提案した枠組みを用いたケーススタディとして、全国を対象とした地震災害の地域類型化を試行するとともに、実際の地震被害の発生状況と比較し、提案した類型化の枠組みの課題について考察した。
  • 安田 進, 石川 敬祐, 五十嵐 翔太, 田中 佑典, 畑中 哲夫, 岩瀬 伸朗, 並木 武史, 斉藤 尚登
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_183-3_200
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    東日本大震災では、過去の地震では見られなかった平面道路の突き上げや、埋設管路の継手の抜けや外れといった特異な被害が生じた。これらの被害メカニズムを整理すると、埋立土層の下面が傾斜している箇所や地盤剛性が異なる箇所、また、構造物の境界付近で液状化した後も地盤が揺すられ続け、その影響でひずみが生じて、埋設管の継手が外れるといった被害が発生していると考えられた。本研究では、浦安市内で水道管被害を受けた代表的な5測線に対して、深浅測量や航空写真、表面波探査等の結果を総合した地盤モデルを作成し、2次元地震応答解析を実施した。その結果、埋立層の下面が傾斜している箇所や地盤剛性が異なる箇所でひずみが増幅することが明らかになった。
  • 大野 晋, 柴山 明寛, 濱岡 恭太, 吉村 真悟
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_201-3_212
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    東北地方太平洋沖地震における仙台市内の振動被害に対する建物悉皆調査結果に基づき、構造種別・建築年代別被害率と地震動振幅との関係について検討した結果、建築年代別の被害率の相違が大きいこと、全壊率については比較した被害率曲線と矛盾せず、特に木造では概ね整合することを示した。また、同一地区での1978年宮城県沖地震に対するRC造建物の悉皆調査との比較では、古い建物が多い卸町地区で今回も被害が大きかったものの、新しい建物が多い他2地区では被害率が大きく減少したことが確認された。
  • 庄司 学, 岸 太陽, 宮崎 史倫, 若竹 雅人, 伊藤 陽, 鈴木 崇伸
    2016 年 16 巻 3 号 p. 3_213-3_233
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/03/10
    ジャーナル フリー
    2011年東北地方太平洋沖地震では通信埋設管に甚大な被害が生じた。本研究では、それらの被害データを基に通信埋設管の被害モードを分類し、地震動強さの指標として地表面最大加速度PGA、地表面最大速度PGV及び計測震度IJを取りあげ、これらの指標と通信埋設管の被害率との関係を管種、亘長、建設年及び微地形の観点から分析した。地中の一定の深度に埋設され地盤震動により被災するメカニズムと、橋梁背面盛土及び橋桁に添架されそれらの震動により被災するメカニズムは異なると考えられるため、それらのデータを分離した上で、さらに、液状化の有無によってマンホールや埋設管の被災メカニズムが影響を受けることを反映させて、被害率の特徴を分析した。
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