日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
特集号: 日本地震工学会論文集
19 巻 , 5 号
特集号「第15回日本地震工学シンポジウム」その1
選択された号の論文の39件中1~39を表示しています
巻頭言
論文
  • 日野浦 雄高, 永野 正行, 田沼 毅彦, 小田 聡
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_2-5_11
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    高層ビル内における人間の体感・行動や室内被害の評価指標として,絶対速度応答スペクトルに基づく長周期地震動階級が気象庁より公開されている.しかしながら,当該建物の被害状況に対する適用性の確認が不可欠である.本稿では,絶対速度応答スペクトルを用いた長周期地震動階級の現行評価手法と併せ,1次刺激関数の形状を利用した高さ方向の応答補正,1次固有周期を用いた応答推定について検討した.関東・関西圏に位置する超高層集合住宅13棟で得られた2011年東北地方太平洋沖地震時の建物観測記録を用い,1次刺激関数と1次固有周期に着目した手法が現行手法よりもばらつきが少なく,階級一致率が高い結果を示した.また,アンケート調査に基づく被害評価値と建物応答の関係式より,実被害状況と長周期地震動階級の関係性を得た.

  • 小嶋 啓介, 伊藤 雅基, 水野 智洋
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_12-5_20
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    福井地震で被害を受けた九頭竜川堤防を対象とし,常時微動観測に基づいて堤防の振動特性と地下構造を推定した結果を検討している.土質情報と比較できる11地点では測線展開アレイ観測を実施し,伝達関数を求めるとともに拡張SPAC法を適用しRayleigh波位相速度を算出した.47地点の単点3成分観測ではH/Vスペクトルを算出し,堤体と基礎地盤の卓越周期を判読した.さらにH/Vスペクトルをターゲットとする逆解析により,堤体と基礎地盤の構造推定を行い,その妥当性を検証するとともに福井地震の被害との相関を検討した.

  • 柳田 匡慶, 海野 寿康
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_21-5_33
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    近年の多くの地震ではこれまで液状化しにくいとされてきた細粒分を多く含む土の液状化被害が多くみられる.本研究では非塑性シルトと低塑性粘土,高塑性粘土を用いて繰返しせん断が作用した時の各試料の軟化挙動と体積変化挙動を観察した.飽和試料を中空ねじり試験機を用いて繰返し載荷実験を行い,その時の応力ひずみ履歴と過剰間隙水圧,有効応力経路の挙動を把握した.さらに,繰返し載荷後に得られる排水量から体積圧縮量を算出した.一連の試験の結果,塑性指数Ipの違いにより軟化挙動と体積変化挙動に違いがみられることがわかった.

  • 浅野 公之
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_34-5_45
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    強震動予測において,震源パラメータの不確実性を考慮して予測結果のばらつきを提示することが強く意識されるようになってきた.本研究では,震源特性のばらつきに注目し,気仙沼沖で約15年の平均繰り返し間隔で発生するM6級のプレート境界地震を例に,直近4回の地震の強震動生成域(SMGA)を推定した.その結果,1973年,1986年,2002年の地震は1つのSMGA, 2015年の地震は2つのSMGAで観測強震記録の特徴を説明できた. 2015年のSMGA1及び1973年,1986年,2002年のSMGAはほぼ同一の大きさをもつSMGAの活動と考えられ,その応力降下量のばらつきは,最小値に対し約1.6倍の範囲に収まっていた.

  • 能島 暢呂, 久世 益充
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_46-5_58
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    水平2成分の地震動の加速度波形について,軸を回転させて得られる成分の波形を用いて,振幅特性と継続時間に与える回転角の影響について検証した.軸を0°~180°の範囲で回転させ,振幅特性(最大加速度およびトータルパワー)および3種の継続時間(Significant,Bracketed,Uniform)を評価対象として,2011年東北地方太平洋沖地震における加速度記録を用いた評価事例を示した.最大加速度およびトータルパワーはそれぞれ区分的および完全な三角関数で表されること,Significant継続時間はトータルパワーと負相関の三角関数に近いこと,BracketedおよびUniform継続時間は不規則な傾向を示すことを明らかにした.さらに,各指標の最大値および最小値の50%パーセンタイル値に対する比率の頻度分布や,それらを与える回転角を求め,指標間の相互関係に見られる特性を明らかにした.

  • 田中 信也, 金田 惇平, 中村 航, 久田 嘉章
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_59-5_76
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    2016年熊本地震では,地表地震断層から2km程度に位置する益城町中心部において多くの建物被害が確認された.一方,益城町中心部から東に約3km離れた益城町下陳では,地表地震断層直上に位置するものの倒壊した住宅はなく,建物被害の性状は地点によって異なる.本報では,理論的手法に基づく地震動評価を行い,地表地震断層と評価地点の位置関係の違いが益城町中心部と下陳の地震動特性に与える影響を明らかにした.また,益城町中心部と下陳において推定した地震動と建物被害の関係が定性的に対応することを示した.

  • 山口 輝大, 加村 晃良, 金 鍾官, 風間 基樹
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_77-5_87
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    地盤の詳細な液状化の予測判定を行う場合,原位置からのサンプリング試料を用いて非排水繰返し試験によって土の液状化特性が評価される.原地盤そのものに不均質性,サンプリング時の乱れ,要素試験法自身の問題などのため,得られる液状化強度曲線には一定の不確実性があると考えられる.本稿では,土木研究所が実施した原位置試料による室内試験結果から液状化強度曲線の信頼性を検討した.その結果,液状化強度曲線に含まれるばらつきの原因の傾向を明らかにし,液状化の程度をエネルギー的観点で評価することの優位性を示した.

  • 仙頭 紀明, 後藤 直紀
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_88-5_95
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    地震により液状化が発生すると地盤の残留変形により土構造物に被害が生じる.地盤の残留変形には側方(水平)変位と沈下があるが,両者が相互に及ぼす影響,具体的には沈下に及ぼす側方変位の影響に関する研究は少ない.本研究では,きれいな砂を対象として,中空ねじり試験装置を用いて液状化試験を実施し,試験後にせん断ひずみを調整して与えてから排水して再圧密試験を実施した.その結果,再圧密体積ひずみは残留せん断ひずみが大きくなるほど小さくなり,緩い砂では最大で約2割,密な砂では約5割減少することがわかった.

  • 壇 一男, 藤堂 正喜, 小穴 温子
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_96-5_110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    平均応力降下量の算定式は巨視的断層パラメータと微視的断層パラメータを力学モデルで結びつける重要な式であるにもかかわらず,これまで十分な検討が行われてこなかった.そこで,本論文では,潜在円形クラックの式を含むいくつかの平均応力降下量の算定式を,地震モーメントおよびアスペリティの面積と応力降下量を用いて調べた.その結果,地震モーメントと震源断層面積との既存の経験的関係式との比較から,地表断層破壊をともなわない内陸地殻内およびプレート境界の小地震には潜在円形クラックの式が適用できるが,2016年熊本地震や2011年東北地方太平洋沖地震のように,地表断層破壊をともなう内陸地殻内地震およびプレート境界地震には潜在円形クラックの式以外の式の適用がふさわしいことが示唆された.

  • 林田 拓己, 横井 俊明, Mukunda Bhattarai
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_111-5_124
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    微動アレイ観測記録から抽出されるRayleigh波の位相速度と群速度の同時逆解析により深部~浅部に至るS波速度構造モデルを推定する手法を提案し,その利点及び適用条件を数値モデルに基づいて検討した.微動アレイ探査記録に地震波干渉法を適用し,位相速度と併せて短波長域の表面波群速度を抽出することが可能である場合,小規模アレイによる観測を行うことなく適切に地盤構造モデルが推定され,探査の効率性向上に寄与する.ネパール・カトマンズ盆地で測定した既存の微動アレイ探査記録(センサー間距離240~801m)に同手法を適用したところ,方位によらずセンサー間距離の1/2~1/10倍の範囲の波長域でRayleigh波の群速度が安定的に求められ,手法の有効性を確認した.

  • 渡辺 哲史, 加藤 研一, 大塚 康弘, 引間 和人, 植竹 富一, 新村 明広
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_125-5_135
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    断層面内の破壊の相互作用を物理的に解く動力学的断層モデルを強震動評価に活かすためには,断層の摩擦構成則に関するパラメタの設定を地震観測記録の再現性の観点から検討することが重要である.2016年10月21日の鳥取県中部の地震を対象として,運動学的な波形インバージョン結果に基づき,破壊開始時刻を拘束しすべり弱化則の空間分布を設定することにより,動力学的断層モデルで断層面上の破壊の挙動(進展)と震源近傍の強震動を十分再現できた.一方,特性化震源モデルで用いられている応力降下量の設定法では,動力学的断層モデルによる振幅の再現には限界があることが改めて確認された.波形インバージョン結果から可能な限り詳細にすべり弱化曲線の傾きと応力降下量の情報を抽出することが記録の再現性向上に有効である.

  • 落合 努, 犬伏 徹志, 荏本 孝久
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_136-5_145
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
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    本文は常時微動の単点観測記録のH/Vスペクトル比(以降,HVSRと略す)を用いて,比較的簡便な手法で地域の地盤振動特性を考慮した地盤ハザード把握を試みた.常時微動のHVSRから得られる卓越周期(Tm)・ピーク値(Rm)と,強震観測から得られる卓越周期(Ts)・ピーク値(Rs)の比較を行った.卓越周期はピークが確認できる地点の7割以上で,ピーク値は全体に強震記録の方がやや大きいがある程度の相関性が確認できた.そこで,ハザード評価として,HVSRのTmとRmを乗じ,地盤ハザード(PE)と定義し,その適用性の検討を行った.作成した地盤ハザードの分布図は,ボーリングデータから作成されたAVS30分布と整合的であることが確認できた.

  • 上村 健太郎, 永尾 浩一, 末政 直晃, 伊藤 和也, 佐々木 隆光
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_146-5_155
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    固化改良砂および不飽和砂の液状化強度は,中空ねじり試験や側圧一定の繰返し非排水三軸試験から求めることが一般的であるが,固結供試体端部における局所破壊や不飽和砂における供試体のネッキングの発生が液状化による破壊に先行するため,液状化強度が低く見積もられていると考えられる.そこで,本研究では簡易的な側圧可変の三軸試験装置を試作し,固化改良砂および不飽和砂に対して平均主応力一定の液状化試験を行い,その結果を通常の液状化試験結果と比較,考察する.

  • 徳光 亮一, 山本 優, 内山 泰生
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_156-5_169
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    表層の地盤物性が隣接地点間の地震動の空間変動に与える影響について,不均質地盤モデルを用いた地震動シミュレーション結果に基づき分析した.隣接地点間の地震動のコヒーレンスを指標として地震動の空間変動特性を分析した結果,地盤モデルを深くするほど隣接地点間の地震動の空間変動が大きくなるが,ある深さより地盤モデルを深くしても空間変動特性に大きな差異が見られなくなることを確認した.また,地震動の空間変動特性に大きな差異が見られなくなる地盤深さを地震動の空間変動に影響を与える地盤深さhrと仮定した場合,隣接地点間の離間距離が大きくなるほどhrの値が大きくなる傾向が見られることを確認した.

  • 海野 寿康, 緑川 雄介
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_170-5_183
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    地震時に発生する流動性崩壊の流下土砂は,飽和度が100%未満である場合が多く,メカニズムについて未解明な点が多い.不飽和土の力学挙動は,既知の通り間隙空気や間隙水の状態に応じてせん断強度や発生するせん断ひずみ等,せん断変形挙動が大きく影響を受けることから,メカニズム解明には水分状態と繰返しせん断変形挙動の関係について検討する必要がある.本研究では,空気連行剤(AE剤)を使用し強制的に土中の水分状態を変化・流動化させた不飽和土の繰返しせん断試験を実施し,その挙動を観察した.その結果,不飽和土の繰返しせん断変形挙動は土中の水分状態によっても影響を受け,一概に間隙中の水分量のみで決まるものではないことが分かった.

  • 川崎 肇, 伊津野 和行
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_184-5_191
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    津波による橋梁の流出を防ぐ対策として,桁側面にフェアリングを設置して抗力を軽減する方法がある.しかし,施工上の制約等により全面にフェアリングを設置できない場合や,抗力は軽減できても揚力の軽減効果が見込めない場合がある.本研究では,部分的に設置したフェアリングとオープングレーチング床版を利用することにより,抗力のみならず揚力をも軽減することを目的として数値解析的に検討を行った.その結果,グレーチング床版とフェアリングとを併用することにより,部分的に設置したフェアリングであっても,フェアリングの設置率に応じて揚力を軽減することができることがわかった.

  • 眞野 英之, 周 友昊, 吉成 勝美
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_192-5_202
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    杭の水平地盤反力係数は杭幅により変化することが知られている.既往の式は比較的小径の杭の試験結果から提案されたものであり,近年採用が増えている杭径が2mを超えるような大口径杭や壁杭のような線状の構造物への適用性は明確となっていない.本報では遠心模型実験により杭幅と杭剛性を変えた杭の水平載荷実験を行い,これらが水平地盤反力係数に与える影響について考察した.実験結果から,杭幅が大きくなると小口径の場合ほど水平地盤反力係数は低下せずやがて一定値に収束すること,杭の曲げ剛性は水平地盤反力係数に大きく影響しないことを明らかにし,新たな評価式を提案した.原位置における大口径杭や壁杭の水平載荷試験結果と比較を行い,評価式の妥当性を確認した.

  • 大住 道生, 中尾 尚史, 西 弘明
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_203-5_213
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    道路橋の耐荷性能の照査に用いる設計地震動は,地震動特性等のばらつきの影響を考慮して設定されているが,設計地震動を上回る地震動が発生する可能性は否定できない.また,津波や斜面変状,断層変位などの直接設計照査を行っていない極めて大きな作用に対して性能を確保することは困難であると考えられる.そこで,耐荷性能の照査において設定する作用を超える作用を受けたときの橋にとって致命的な被害を特定するとともに,致命的な被害への至りにくさや致命的な被害に至ったとしても機能回復のための応急復旧のしやすさを実現するための考え方として,橋の損傷シナリオをデザインする方法について検討した結果について論じる.

  • 伊藤 浩二, 樋口 俊一
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_214-5_223
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    地中構造物の耐震設計では,構造物,周辺地盤の非線形域までを対象とした時刻歴応答解析が適用される.地中構造物の耐震補強では,構造物の両脇に固結体を設置した水平載荷試験とその解析から,固結体による補強効果が検討されている.地中構造物の両脇の固結工法による液状化対策を想定して,下負荷面モデルで表現した液状化地盤と固結体および鉄筋コンクリート製地中構造物の材料非線形を考慮した地震応答解析を行い,固結工法による液状化対策の耐震補強効果を検討した.固結体の形状がブロック状の二次元有効応力解析,固結体の形状が格子状の三次元有効応力解析で得られた構造物の応答,固結体の応答を基に,固結工法による液状化対策の合理的な改良仕様を提示した.

  • 石原 直
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_224-5_234
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    構造躯体の揺れが入力となる2次系(例えば,天井)の地震応答に関して,偏心によるねじれ応答の特性は明らかにされていない.本稿では2次系の地震時ねじれ応答に関して考察する.1層1軸偏心の各種特性や応答の作図方法を示した上で,整形な構造躯体に取り付けられた2次系を対象として,主系すなわち地震動を入力とする系との比較を通じて,並進に対する回転の比や変位分布の特性等を示している.

  • 神戸 寛史, 石原 直, 永野 正行
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_235-5_246
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    浮き上がりを伴う地震時の建物応答に関する研究は多くなされているが,上部構造は左右対称を仮定している.実建物は建築計画に伴う質量偏心を有するため,左右の浮き開始レベルや振動強さの違いが非線形応答にどう影響し得るかは明らかでない.本稿では左右の質量が不均等な浮き上がり模型の振動実験を行い,その振動特性を把握し,エネルギの釣合いによる最大応答予測を地震応答に準用した.非対称構造では浮き上がりに伴う応答が正負で異なることや算定式の予測値は非対称の場合にも実験と対応することを示している.

  • 藤井 賢志, 菅野 秀人, 西田 哲也
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_247-5_266
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    本論文では,初めに地震動の有限フーリエ級数におけるフーリエ振幅と位相差分に着目して,地動加速度の経時関数を定義するとともに,これがフーリエ級数にて表現できることを示す.次いで,粘性減衰と複素減衰の並列する線形1自由度系が定常振動する場合を考え,中村・堀・井上(1998)の提唱する「瞬間入力エネルギー」の経時関数のフーリエ級数表現を示す.数値計算による検証の結果,本論文で定式化した地動加速度の経時関数は地震動の包絡線と対応すること,ならびに本論文で定式化した瞬間入力エネルギーの経時関数が時刻歴応答解析より求めた結果と対応することがわかった.

  • 安井 譲, 前田 寿朗, 井口 道雄
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_267-5_282
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    相互作用の影響を受けた構造物の応答から各層の剛性と減衰を推定する方法を提案する.本方法は,任意の階で切り取ったサブストラクチャーモデルの基部固定時の一般化座標の絶対応答倍率(モード応答)を各階の観測値から求め,これを計算モデルのものと一致するように層剛性と減衰定数を同定するものである.同定計算の際,構造物の減衰分布が任意の場合(非比例減衰)に適用できるように,擬似複素モードパラメタを用いている.ここに,対象とする構造物はせん断型であること,基礎の水平動と回転動,および全階の水平動が観測されているものとしている.本論ではまずこの方法のもとになる基礎式を示し,続いて相互作用を考慮した構造物の応答計算値を用いてその適用性を検討する.

  • 能勢 侑希, 伊津野 和行, 川崎 佑磨
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_283-5_293
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    1995年の阪神・淡路大震災以降,橋梁に免震ゴム支承が積極的に採用されるようになったが,近年では経年劣化に関する課題が顕在化している.積層ゴム支承の内部損傷は,設計で想定された免震橋の地震時機能が十分発揮されないことにつながりかねない.よって本研究では,積層ゴム支承内の損傷の有無を非破壊検査手法で判定することを目指し,有理関数CIP法による波動伝播シミュレーションを行った.ゴム供試体を用いた衝撃弾性波法による実験結果との比較を行い,数値解析の妥当性を示した.また,内部空洞がある場合には,空洞側面における波の反射によって伝達波の振幅に変化が生じることを示した.

  • 猪股 渉, 丸山 喜久
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_294-5_303
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    2011年3月11日に発生した東日本大震災において,東北地方の都市ガス事業者は甚大な被害を受けた.保安確保のため供給停止措置を行った事業者は16事業者(8県)に及び,約46万件の供給停止に至った1).中でも約36万件の需要家へのガス供給を停止した仙台市ガス局では,大規模な盛土造成地で低圧ガス導管の被害が集中した.本論文では盛土造成地における低圧ガス導管の被害状況を整理し,空中写真測量によって作成した切土・盛土分布の空間データと比較することで詳細な被害分析を行った.

  • 石川 大輔, 田村 修次, 柴田 景太, 船原 英樹
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_304-5_310
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    遠心場における押込み載荷実験,鉛直交番載荷実験および転倒モーメントを伴う静的水平交番載荷実験を行い,地震時の変動軸力を受ける杭の周面摩擦力を検討し,以下の知見を得た.転倒モーメントを伴う水平交番載荷における杭の周面摩擦力は,押込み載荷および鉛直交番載荷のそれを明らかに上回った.この傾向は杭の上部で顕著であった.また,水平交番載荷における杭の周面摩擦力は,水平地盤反力に依存して大きくなった.これは,水平地盤反力によって杭の拘束圧が増加したためと考えられる.

  • 中島 昌一, 荒木 康弘, 北守 顕久, 中川 貴文, 五十田 博, 河合 直人
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_311-5_323
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    CLTを用いた建築構造物のパネル端部を対象とした,CLTと鋼板のボルト接合部の降伏荷重の推定と実験による検証を実施した.接合形式(鋼板添板一面せん断接合,鋼板添板二面せん断接合,鋼板挿入二面せん断接合)と層構成(3層3プライ,5層5プライ),ボルト径(12mm,16mm,20mm)をパラメータとして,それぞれの条件における単位接合部の降伏荷重をヨーロッパ型降伏理論に基づき推定し,CLTと鋼板を使用したボルトのせん断実験により検証した.実験値と計算値は良い一致を示し,式の有用性が確かめられた.

  • 荒木 康弘, 五十田 博, 河合 直人, 中川 貴文
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_324-5_333
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    昭和55年建設省告示第1791号第2によると,鉄骨造の筋かい架構のβ割増しについて,「地震応答解析結果によれば,筋かいの強度が混合構造体の強度の大略70%以上となると筋かいの荷重-変形関係の特徴が極めて強く出てくる」ことから「筋かいの強度を増加することによりエネルギー吸収性能をラーメン構造のそれに近づける」ために地震時応力を最大1.5割り増す,とされている.木造建築物の筋かい架構にも,同号第1で同様の規定に適合することが求められているが,応力割増し係数については合理化の余地があると考えられる.そこで本研究では,異なる仕様の筋かい耐力壁を用いた地震応答解析を行い,構造用合板の応力割増し係数に対する筋かいの種類に応じた適切な応力割増し係数を提案することを目的とする.

  • 吉川 秀平, 中村 貴久, 桃谷 尚嗣, 牛田 貴士, 佐名川 太亮, 西岡 英俊
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_334-5_344
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    盛土と橋りょうのような構造物境界部は,地震時に橋台背面の盛土が沈下しやすく,バラスト軌道に局所的な沈下が生じて道床横抵抗力が低下する恐れがある.特にロングレール区間で夏季のレール温度が高い状態では,レール軸力が高くなるため,地震時において軌道座屈の発生リスクが高くなる.そこで,地震時の橋台背面盛土部の沈下による軌道の座屈安定性を検討するため,大型振動台を用いて構造物・軌道一体型模型で加振実験を実施した.その結果,盛土の地震対策工により,加振後の橋台天端の水平変位量および橋台背面盛土沈下量を低減することでバラストの沈下が抑制され,軌道の座屈対策工を組み合わせることにより,軌道の座屈を防止できることを確認した.

  • 本山 紘希, 園部 秀明, 堀田 渉, 鈴木 俊一, 堀 宗朗
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_345-5_355
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    原子力発電所の建屋のような大規模鉄筋コンクリート構造物に適用可能な詳細モデルによる地震応答解析手法の開発について示す.具体的な開発項目として,高性能計算の有限要素法のソルバの活用を考慮したコンクリート構成則および非線形解析手法の実装を示す.高性能計算の有限要素法ではソルバにCG法を使用するため,剛性マトリクスが正定値性を失わない実装が特に重要である.開発した手法を鉄筋コンクリート構造物の載荷実験の再現解析に適用することで,手法のパフォーマンスを示す.また,モデル化手法の妥当性の確認に関する基礎検討として,鉄筋コンクリート構造物の応答解析における解の収束性を確認し,結果について考察を行う.上記手法により原子力発電所の建屋を簡易に模した解析モデルの地震応答解析を実施し,解析速度の観点で手法の適用性を示す.

  • 東城 峻樹, 中村 尚弘, 梶原 浩一, 佐武 直紀
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_356-5_367
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    構造物の耐震設計において,地震時の建物挙動を推定する際,固有周期や減衰定数は,応答に大きく影響を及ぼす重要なパラメータである.これらの振動特性を評価するのに有用な実測データの一つに,実大三次元震動破壊実験施設(E-ディフェンス)の公開データがある.一方,震動台実験における特徴として,重量の大きい試験体では,震動台に回転が生じ,建物の振動特性に影響を及ぼすことが指摘されている.既往の検討でも,一部の試験体で,減衰定数が通常より大きい値となるなど,この影響が示唆されている.本報では,まず,重量の大きなRC試験体を対象に,震動台の回転入力が振動特性に及ぼす影響を確認する.更に,それらを補正した振動特性を評価する.

  • 瀧野 敦夫, 上松 千陽, 中川 貴文
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_368-5_377
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,在来軸組構法木造住宅が地震による被害を受けた際の構造体の被害の程度を定量的に評価することを目的とし,木造住宅倒壊解析ソフトウェアwallstatを用いた地震応答解析を行い,建物の応答加速度と被害の程度との関係について考察した.対象建物は2階建ての在来軸組構法木造住宅とし,過去に観測された12種類の地震波を用い,それぞれ倍率を変えながら合計で169ケースの解析を実施した.地震波ごとにばらつきは見られるものの,解析から得られた2階床面の応答加速度と,耐力壁の応力状態(弾性/塑性化/負勾配/耐力喪失)に応じて求めた構造体の被害の程度との間には一定の相関を確認することができた.

  • 林 和宏, 齊藤 大樹
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_378-5_387
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    南海トラフの巨大地震に備えて,東三河地域における防災拠点建物群にリアルタイム耐震診断システムの導入を計画する.当該システムでは,建物に地震計を設置し,観測記録をリアルタイムにインターネットクラウドに保存する.発災直後に,建物残存耐震性能に関する質点系モデルを用いた簡易診断を行い,その結果を防災担当者にメールで通知する.また,発災後数時間に,立体骨組モデルを用いた被災状況に関する詳細な分析を行い,建物の具体的な損傷部位の評価を試みる.本論では,提案するシステムについて述べ,次に,当該システムの社会実装に向けたテストケースとして,実在の市役所庁舎にシステムを構築して試験運用を行った結果を示す.

  • 岩田 直泰, 津野 靖士, 山本 俊六, 是永 将宏, 野田 俊太, 岡本 京祐
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_388-5_398
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    地震時の列車運転規制は,一定間隔に設置された地震計の観測値に基づき実施される.適正な運転規制のためには路線に沿った詳細な揺れの把握に加え,列車の走行安定性の観点から構造物の地震応答の把握も重要となる.本研究では,それらを考慮した運転規制の提案を行うことを目的として,営業線のモデル区間において地震や微動の観測を行い,地盤や構造物の振動特性を評価した.次に,路線に沿った地震動や構造物応答の推定を行って運転規制への適用性を検討し,良好な結果を得た.本研究で提案する地震動と構造物応答を組み合わせた新たな手法により,現行よりも適正な運転規制が可能になると考える.

  • 後藤 洋三
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_399-5_408
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    東日本大震災は金曜日の午後に発生した.そのため,昼間人口の変動が激しい地域の人的被害の様相には特徴があると考えられ,仙台近郊のA町とB市の津波避難を分析した.その結果,A町,B市ともに昼間流入者の被災率が域内にいた市民の被災率の数倍に達していることが明らかとなり,特に津波ハザードの大きさに比べて犠牲者が多かったB市では流入者の多くが津波に襲われた低地の商工業施設や幹線道路上にいたことが影響したと考えられた.また,A町とB市では地形と道路状況ならびに津波被災経験に違いがありそれが住民のみならず流入者の避難の成否に影響していると考えられた.

  • 加藤 宏紀, 能島 暢呂
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_409-5_422
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    筆者らは震度情報に基づく供給系ライフラインの機能的被害・復旧に関する評価モデル(評価モデルと表記)を提案し,東日本大震災の事例で推定値と実測値が概ね整合することを確認した.2004年新潟県中越地震の事後推定において実測値の初期被害とは概ね整合していたものの,復旧所要期間を実測値よりも過大評価する傾向にあった.そこで本研究では評価モデルの推定精度向上を目的として,震災規模の違いが復旧所要期間に影響することに着目し,その改良方法を検討した.まず,復旧所要期間の推定値に対する実測値の乖離の程度を表す指標として,供給支障人口の累積値(累積供給支障人口)の実測値と推定値との比率を定義した.次に,震災規模の違いを表す指標として,震度曝露人口を用いた影響規模指数を定義した.これらの指標に基づき,電力・水道の復旧所要期間を対象として,震災規模に応じた補正係数を用いて補正した.国内における主要5地震の再推定を行った結果,推定値が改善される傾向にあった.

  • ~自助・共助・公助による減災対策効果の限界~
    角田 叡亮, 岡田 成幸, 中嶋 唯貴
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_423-5_439
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    本研究では,これまでに考慮されて来なかった「地震による複合災害の影響」を議論する.すなわち,室内散乱や家屋の倒壊により避難行動を行えない「閉じ込め」状態の被災者を考慮し,地震津波発災時の人的被害予測式を提案した.また,北海道釧路市において本式を用いて被害予測を行い,地震発生と同時に避難を開始したとしても閉じ込め等により約2万人の住人が津波により死亡するというシナリオを明らかにした.更にこの結果に加え,少子高齢化の社会現象を踏まえ釧路市の根本的防災対策としてより安全な都市形態の一例を提案することを目指した.コーホートモデルによる将来人口予測を行ったうえで住民による自助・共助そして自治体による公助に伴う減災効果の評価を行い,今後あるべき減災戦略の在り方を考察する.

報告
  • 中西 真子, 久田 嘉章, 山下 哲郎
    2019 年 19 巻 5 号 p. 5_440-5_462
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/27
    ジャーナル 認証あり

    近年,超高層建築には従来のL1,L2地震動に加え,最大級地震動を想定し,余裕度を見込んだL3地震動を考慮した耐震性能の評価が求められている.また,米国では超高層建築などの重要施設に関して,リスク評価手法とレジリエンスベースドデザインの考えを取り入れ,安全性能だけでなく経済・復旧性能の面から優良な建物の耐震性能を総合的に評価する制度が始まっている.本研究では,東京都心部に実在する既存超高層建築を対象にL1~L3地震による設計クライテリアを設定し,現有の非制振の建物と,ダンパーを付加した補強案による建物の地震応答解析を実施し,比較検討を行った.まず補強による地震応答値の低減効果を確率的に評価し,そのリスク評価手法による費用対効果を検討した.その結果,損傷費用の期待値は大きく低減し,さらに制振化する費用を含めた総価格でのメリットがあることを確認した.次に地震発生確率を考慮したライフサイクルコスト(LCC)による評価を行ったが,L1~L3地震の発生確率を考慮した工学的モデルと、各種地震の発生確率を評価した地震学的モデルとでは評価結果が大きく異なった.すなわち,前者では約80年間以上の供用期間から制振化の費用対効果が現れるが、後者では僅か5~10年で効果が現れる結果となった.これは東京都心部での地震発生確率が後者で非常に高く評価されているためである.逆に確率が低い地域では制振化の効果が現れないことも確認した.地震学の最新知見を導入したリスク評価手法による耐震設計や優良建物の評価認証は世界的な潮流であり,今後は我が国でも理学・工学分野が融合したコンセンサスに基づく地震の確率評価モデルや建物の性能評価法の整備が重要になると考えられる.

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