日本地震工学会論文集
Online ISSN : 1884-6246
ISSN-L : 1884-6246
特集号: 日本地震工学会論文集
25 巻, 1 号
特集号「第16回日本地震工学シンポジウム」その3
選択された号の論文の27件中1~27を表示しています
論文
  • 植竹 富一, 引間 和人, 新村 明広, 藤岡 将利
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_1-1_12
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    柏崎刈羽原子力発電所で行われている地表稠密アレイ,鉛直アレイ,深さ1kmを超す大深度観測で得られたデータを用いて,敷地近傍の小規模地震による地震波の伝播性状を分析した.P波,S波の初動部が敷地を通過する速度と鉛直アレイを通過する時間は,敷地への入射角と関係しており,地盤深部からの3次元的伝播が確認できた.大深度観測記録で見ると,長周期成分が小さく短周期の卓越するMj2クラスの地震波形では,地表からの反射波が不明瞭で明瞭な後続波は見いだせない.一方,Mj4クラスの地震波形では,地表からの反射波に加え,S波到達後6~7秒後に実体波的な伝播を示す明瞭な後続波群が確認された.また,地表アレイ記録と鉛直アレイ記録から,表層の空間的に狭い範囲でトラップされたと考えられる表面波群も確認された.三次元的な地震観測点の配置が,地震波の伝播性状の理解には有効である.

  • ―KiK-net銚子中観測点における事例―
    青木 雅嗣, 山本 優, 内山 泰生, 高井 伸雄
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_13-1_24
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    地震動評価において設定モデルの不確実性に起因するばらつきを考慮することが重要視されつつある.地盤増幅特性は,地表/地中スペクトル比をターゲットとした逆解析により推定される地盤構造モデルを基に評価されることが多い.観測点では水平2成分の地震動観測記録が得られるが,それぞれの方位で評価される地表/地中スペクトル比に差異が確認される場合がある.本論文では,水平成分の方位ごとに算出する地表/地中スペクトル比の変動を定量評価し,KiK-net銚子中観測点を事例として地表/地中スペクトル比の変動と入射波動場との関係について分析した.その結果,水平成分の方位による変動は地震波の到来方向に影響を受けており,不整形地盤による地表/地中スペクトル比の方位依存性に起因していることを定性的に示した.また,有限要素法により地盤の不整形性が地表/地中スペクトル比へ及ぼす影響について検討し,鉛直下方入射の場合においても地盤の不整形性により水平成分の地表/地中スペクトル比が変動することを示した.

  • 時実 良典, 中村 洋光, 小丸 安史, 藤原 広行
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_25-1_37
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    広域に分布するポートフォリオを対象とした地震リスク評価を行う際には,地震動の平均値からの残差項の空間相関を考慮することが必要である.また,リスク評価を防災対策に繋げるためには,被害と超過確率の関係を表すリスクカーブを求めるだけで無く,リスクカーブを構成する地震動や被害の分布も示す必要がある.本研究では,既往のモード合成による地震動生成手法を元に,強震動計算結果をトレンド成分とランダム成分に分離したうえで,ランダム成分のみをモード合成する手法を提案した.また,本手法ではトレンド成分を地震動予測式による推定値に置き換えるとともに,調整した特異値を用いてモード合成することにより,生成する地震動の平均値とばらつきの水準を観測記録と整合させる手法を提案した.更に,提案手法による地震動分布に基づいてリスクを試算し,全国地震動予測地図の簡便法に基づいたリスク評価結果と比較してその妥当性を示した.

  • 河原井 耕介, 大住 道生
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_38-1_49
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    道路橋を始めとした構造物は,様々な不確実性を考慮して設計される.部分係数設計法により設計される道路橋においては,確率的に評価される不確実性を部分係数により体系的に考慮している.一方,確率的な評価が難しい不確実性に対しては,一連の設計の中で様々な形で考慮されてはいるが,部分係数で表現されるもの以外の不確実性への対応について信頼性の要求水準は不明確である.本研究では,道路橋の耐震設計における不確実性への対応の説明性を向上し,より確実・効果的な対応を可能とすることを目的に,道路橋における不確実性について考察し,耐震設計における不確実性への対応の枠組みについて検討した.

  • 後藤 源太, 髙原 良太, 植村 佳大, 高橋 良和
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_50-1_63
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    山間部の橋梁等の橋脚は高さが30mを超える高橋脚が採用される.それらの橋脚には基礎への負担軽減や施工コスト低減を目的に,自重を小さくする対策として橋脚内部を中空にした橋脚(以下,中空断面橋脚と称する)が用いられる.地震時に圧縮を受ける中空断面橋脚のフランジ部及びウェブ部の損傷は,中立軸の位置と相関があることが既往の研究で指摘されている.そこで,本検討では,実橋脚の1/5スケールの大型RC中空断面供試体を用いた正負交番載荷実験を行い,中立軸の位置が既設RC中空断面供試体の破壊挙動に与える影響を検討した.軸応力のみあるいは配筋のみを変えることで中立軸の位置を変化させた場合の破壊挙動に与える影響について考察を行った.

  • 和田 一範, 坂井 公俊, 高橋 良和
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_64-1_77
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    近年,鉄道構造物における危機耐性の評価法が提案されているが,依然として概念的なものであり,設計実務において適用可能な定量評価法は確立されていない.そこで,危機耐性の性能項目のひとつである冗長性に着目して,鉄道橋りょう・高架橋を対象とした冗長性の定量評価法を提案した.具体的には,設計限界変位に対する崩壊に至る変位を「余裕度」,柱部材が消失したときの余裕度の変化を「並列性」と捉え,両者の観点から構造物の冗長性を評価する指標を提案し,ラーメン高架橋を対象に試算を行った.本手法を用いることで,耐震設計・診断・補強等において冗長性を陽に考慮することが可能となる.

  • 赤松 伸祐, 服部 匡洋, 谷口 祥基, 西村 美紀, 青木 康素, 宮田 秀太, 杉浦 邦征
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_78-1_89
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    実橋梁として建設された鋼管集成橋脚に対して,設計で想定したコンセプトに従って挙動しているかを確認するためにモニタリング計測が実施されており,常時や小規模地震動に対する応答が計測されている.本研究では,実橋に適用された鋼管集成橋脚の性能検証方法を提案するとともに,これまでに得られた計測値を用いた性能評価を行った.常時に対しては,計測値を用いて設計時に想定した挙動であるかを確認し,小規模地震動に対しては,観測波形を用いた再現解析により解析モデルの妥当性を検証した.

  • 番場 恵梨子, 海野 寿康, 江守 辰哉, 上野 一彦
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_90-1_101
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    近年,自然災害時に被害が生じた地盤では,破砕性土で構成されている地盤が複数確認されている.本研究では破砕性を有する土質試料について,土粒子の強度や破砕性に着目して検討した.土粒子単体の破砕強度を調べるとともに,土の静的せん断強さ,液状化抵抗性,およびそれらと土の粒子破砕の関係を検討するため,単粒子破砕試験,中空ねじり装置を用いた単調せん断試験,繰返しせん断試験を実施した.非排水条件下での単調せん断試験では,単粒子破砕試験で求めた破砕強度と粒子破砕の程度によって有効主応力の挙動が異なることを確認した.繰返しせん断試験の結果からは,単粒子の強度が大きい土質試料は,発生する片振幅のせん断ひずみが7.5%未満では,繰返しせん断時に過剰間隙水圧とせん断ひずみが少ないサイクルで発生する傾向を示した.しかし,荷重サイクルが増加し,発生する片振幅のせん断ひずみが7.5%を超えて液状化の程度が進むと,単粒子の強度が大きい土粒子を含む土質試料と単粒子の強度が小さい土粒子を含む土質試料の間で,せん断ひずみの発生に差が生じることが明らかになった.

  • 安原 知輝, 庄司 学
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_102-1_112
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    2011年東北地方太平洋沖地震では長周期地震動が励起され,関東圏のインフラ構造物が被害を受けた.そのため,長周期型インフラ構造物の地震被害を支配する地震波の特徴を明らかにする必要がある.本研究では主に長周期型橋梁群を対象に計83地点に,不連続格子を用いた空間4次,時間2次精度の有限差分法を適用して各対象地点の工学的基盤D1層(せん断波速度Vs = 350 m/s相当)に入射したサイト波を推定した上でその特徴を明らかにした.

  • 大笹 航汰, 加藤 圭祐, 髙瀬 裕也, 中嶋 唯貴
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_113-1_122
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    日本では大規模な地震が多く発生し,建物の倒壊など甚大な被害が生じている.早急に復旧活動を始めるには,まず応急危険度判定など建物の損傷状況を的確に判断する必要がある.現状,調査員による現地調査が行われているが,本研究では効率的かつ迅速な調査を実現するべく,人工知能(AI)とIoT技術を活用した損傷度判定を試みた.まず,過去に発生した地震による被害写真を使用し,深層学習モデルを作成した.続いて,石川県珠洲市で撮影した建物の動画を,本学習モデルで損傷度を判定し,さらにドローンによる空撮画像と組み合わせて被災度マップを作成して,現地調査の結果と比較した.その結果,全壊については適切に判別できたが,半壊に対しては過小評価する傾向が確認された.

  • 井上 修作, 渡井 一樹, 曽根 孝行
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_123-1_131
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    地震時のプールスロッシングの検討には,数値流体解析を実施する必要があるが,計算コストが高く容易ではない.そこで,本研究では,周波数応答解析により任意の地震動に対する動的な水面波形をより簡便に算出できるかを確認することを目的とする.本検討では,最初に微小振幅理論に基づき水位変動を線形応答とした評価式を示し,その評価式に減衰を考慮した入力加速度に対する水位や圧力の応答関数を示す.次に正弦波入力による数値流体解析と比較し,評価式の妥当性を確認し,最後に地震動入力による数値流体解析結果と比較することで,任意の地震動に対しても動的なスロッシングを計算可能であることを示す.

  • 大渕 正博, 藤井 中, 吉澤 睦博, 佐藤 吉之, 井上 修作
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_132-1_141
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    災害拠点建築物は主要拠点と同時に被災するリスクが低い地域に建設することが望ましいことを踏まえ,本稿では,主要拠点の震度が一定以上となることを前提条件とした条件付き地震ハザードマップを提案した.東京,大阪,名古屋に対して条件付き地震ハザードマップを用いて主要拠点と災害拠点が同時に被災する可能性の低い地域を評価した結果,東京都千代田区に対しては練馬区周辺が,大阪市中心部に対しては神戸市東部地域が,また名古屋市中心部に対しては小牧市・長久手市付近が立地候補として選定された.

  • 中村 孝也
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_142-1_152
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    脆弱な鉛直部材を有する既存鉄筋コンクリート(RC)建物では大地震時に甚大な損傷が生じることが危惧されるため,避難計画を考える際に被災に至るまでの時間を把握することには意味があると考えられる.RC部材の終局的な靭性能は限界変形(水平力が最大耐力の80%まで低下した時の水平変形)で評価されることが多い.そこで,地震時に建物が揺れ始める時点を柱のひび割れ発生時と考え,そこから限界変形に至るまでの時間を「限界時間」と定義した上で,せん断破壊型柱からなる脆弱なRC建物に対して,実験と解析から,柱の限界変形の大小や地震動の継続時間等が限界時間に及ぼす影響を検討する.

  • 萩原 大生, 大久保 天, 南雲 人
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_153-1_163
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    農業用パイプラインでは地震時に急激な水圧変動を引き起こす地震時動水圧の発生が確認されている.地震被害の例として,曲管部における離脱や空気弁の破損のようなことがあり,地震時の内水圧の変動がこれらに影響している可能性があると考えている.パイプラインに関する地震時動水圧について,それを実測として捉えた事例がほとんどなかったことから,農業用パイプラインの設計や地震対策に現時点では十分に反映されていない.本研究では,農業用パイプラインで観測された地震時動水圧の実測値に対して,数値シミュレーションおよびFFTによる周波数解析により,加速度と水圧変動の関係の評価を試みた.

  • 濱田 純次, 奥村 豪悠, 中根 一臣
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_164-1_174
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    パイルド・ラフト基礎の常時の沈下挙動は多くの実建物で観測されているものの,耐震設計の妥当性を確認した地震観測事例は少ない.本報では,杭基礎建物と併設した10階RC建物の基礎形式として採用されたパイルド・ラフト基礎の地震観測事例を示す.地下1階の加速度,杭の軸歪,曲げ歪と杭周辺の底面土圧,水圧に関して,2016年7月より地震観測を開始し,M7.4を含む地震動を約380回観測している.杭の曲げ歪と建物慣性力の関係,杭の軸歪と底面土圧の関係などを調べた.建物の慣性力が卓越する主要動の時間帯とその後で基礎の挙動の違いが見られた.

  • 周 宇廷, Thinzar Yadanar , 長嶋 史明, 松島 信一
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_175-1_185
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    詳細な強震動予測のためには,高精度な地盤構造モデルは不可欠である.地震基盤以浅の地盤の速度構造を推定するために様々な手法が用いられている.そのうちの一つである常時微動の水平上下スペクトル比(MHVR)から地盤構造を推定する手法は,観測や解析が簡単で利便性が高いため,よく使われている.しかしながら,一次元の地盤構造を仮定する場合が多く,不整形な地盤におけるMHVRの性状についての検討はまだ十分にはなされていない.本研究では,京都府宇治市五ケ庄周辺において常時微動を観測し,不整形地盤とMHVRや位相速度の方位依存性との関係について検討した.その結果,MHVRのピーク周波数やその振幅の方位差及びピーク周波数の空間変化は,対象地域の基盤である丹波層群の傾斜と対応することが分かった.また,Rayleigh波の位相速度は波の到来方向に依存し変化することが分かり,研究対象地域の南側は西側と比べて1.2 Hzにおいて位相速度が小さく,その周波数帯に関連する地盤速度構造が遅い可能性が示された.

  • 加藤 研一, 渡辺 哲史, 友澤 裕介, 野尻 揮一朗
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_186-1_199
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    断層面が地震発生層内に広がると,地表地震断層が現れるようになる.どの程度の地震規模になると地表地震断層が現れるかを定量化することは,強震動予測の重要なテーマである.武村(1998)は1885年~1995年に発生した日本の内陸地殻内地震を対象とし,気象庁マグニチュードと地表地震断層の出現率の関係を整理した.本報は1995年以後に発生した地震を武村(1998)のデータセットに追加し,モデル関数を用いて地表地震断層の出現率を定量化した.モーメントマグニチュードを用いた地表地震断層の出現率も新たに定量化した.データの少ない大規模地震の地表地震断層の出現率については海外の地震や,特性化震源モデルを用いた理論的検討により補った.

  • 奥村 豪悠, 濱田 純次
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_200-1_211
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    軟弱地盤上に立つ建物を支えるパイルド・ラフト基礎は,大地震時に上部構造の慣性力と転倒モーメントおよび地盤変形の作用を受けるため,その挙動は複雑になるが,その動的挙動を観測した事例は少ない.そこで本研究では,軟弱粘性土地盤上に立つパイルド・ラフト基礎に関する遠心模型実験における上部構造の有無に関する実験ケースを比較検討した.その結果,上部構造が無いケースに比べ,上部構造が有るケースでは上部構造物の転倒モーメントが大きく杭頭が回転した結果,建物慣性力が3倍程度だったにもかかわらず,杭頭に生じる曲げモーメントは小さくなった.

  • 小嶋 啓介, 松本 和樹, 大堀 道広
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_212-1_221
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,並進3成分に回転3成分を加えた6成分観測による,表面波特性推定法の有効性を検討している.Rayleigh波とLove波が同一方向から伝播すると仮定し,水平軸周りの回転速度に基づいて到来方向を求める.これにより水平方向並進成分からRayleigh波とLove波が分離でき,並進加速度と回転速度の比をとることによって,Rayleigh波とLove波の位相速度を求めることが可能となる.任意の方向から平面波として伝播するRayleigh波とLove波からなる人工振動の単点6成分観測情報を作成し,その分析を通して,表面波の伝播方向,Rayleigh波とLove波の周波数ごとの振幅,ならびに位相速度が正確に算出可能であることを確認している.また,提案手法を強震動観測データに適用し,表面波位相速度が求められる可能性があることを示している.

  • 王 博涵, 毛利 栄征, 田頭 秀和, 泉 明良, 田中 忠次
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_222-1_231
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    地震によるため池堤体の被害は,堤体土が地震時に強度低下することに大きく関連している.このため,ため池堤体の地震時挙動の解析にあたっては,土の破壊と地震動による繰返しせん断による強度低下特性を導入することが重要である.本研究では,貯水状態にあるため池堤体模型の遠心載荷振動実験を行い,弾塑性動的有限要素解析を実施して地震時挙動の比較検証を行った.その結果,地震時の堤体土の強度低下特性を考慮した解析によって,模型堤体の動的応答とともに,堤体のせん断破壊や変形を精度よく評価することができた.さらに,ため池堤体の部分的な耐震補強対策の有効性についても報告する.

  • 仙頭 紀明
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_232-1_238
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    2022年3月16日福島県沖地震では,福島県の相馬港は震度6強の強い揺れによって,5種類の異なる形式の岸壁に被害が発生し,その状況は構造形式毎に異なっていた.本論文では,地震後に実施した測量結果をもとに,岸壁の水平変位と背後の沈下について岸壁の形式毎に比較を行った.その結果,鋼管矢板岸壁の変位量が最も小さく,最も粘り強い構造形式であったことがわかった.一方,相馬港では,2021年に液状化した箇所が2022年の地震で再び液状化する再液状化が見られた.そこで,ふ頭内で採取した噴砂について室内土質試験を実施してその物理特性を明らかにした.

  • 笠松 健太郎, 渡辺 哲史, 鈴木 文乃, 引間 和人, 植竹 富一, 新村 明広
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_239-1_249
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    動力学的断層破壊シミュレーションに基づいて,地殻内で発生する横ずれ型と逆断層型の地震(地震モーメントM0 = 4×1017~8×1020 Nm)および地震動のデータセットを作成し,断層近傍における地震動の最大速度振幅および擬似速度応答スペクトルと地震規模の関係について検討した.横ずれ型の地震の地震動振幅は,1020 Nm程度で頭打ちする.逆断層型の地震では,最大速度振幅で見るとM0との比例関係は約1020 Nm以上で鈍化するが,対象とした地震規模では周期1秒と5秒の擬似速度応答値に頭打ちは見られない.平均応力降下量を変数として,地表での最大すべり量と断層長のスケーリング則を評価した.

  • 真島 僚, 齊藤 大樹, 境 茂樹, 山崎 康雄
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_250-1_260
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    動滑車天井制振システムは著者らが提案している滑車装置を用いた制振システムを吊り天井に適用した新しい制振方法である.滑車装置によって増幅された天井と主架構間の相対変位をダンパーに伝達し,在来天井よりも地震時の振動を低減することで天井の損傷を防止する.本研究では,1方向加振実験より動滑車天井制振システムの天井面応答低減効果や動滑車の有用性を検証した.その結果,提案システムは天井入力エネルギーの90%以上を吸収し,天井面の応答変位と加速度の両方の応答を非制振時の半分以下に低減した.また,吊り天井の固有周期算出における吊りボルトの支持条件や計算式の影響について検討した.さらに,2方向加振実験よりシステムの直交方向に地震動が作用する場合の実用性や天井面における回転挙動の有無を検証し,ねじれ応答は確認されず各構面の応答は独立していることを明らかとした.

  • 中溝 大機
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_261-1_272
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    建築構造物の性能設計における耐震性能の評価においては,応答変形値を可能な限り迅速かつ的確に推定できる手法が望まれる.本報告では総エネルギー入力が一定,塑性変形に伴い等価繰返し数は変化する,と考えた場合の応答変位推定式について考察した.建築基準法の地震荷重相当の応答スペクトルを用いて,降伏せん断力係数を変動させた等価線形モデルにおける応答検討を行い,構造設計実務に有用な応答変位推定式策定の可能性に向けて考察を行った.

  • 石丸 真, 沢津橋 雅裕, 平賀 健史, 加藤 一紀, 小林 孝彰, 兵頭 順一, 横田 克哉
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_273-1_283
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    岩ずりによる埋立地盤はこれまで液状化しにくい地盤として扱われてきたが,近年,設計用地震動の増大により,液状化の影響を考慮した安定性評価が必要なケースが増加している.本研究では,深さ15 mの岩ずり埋立地盤の上に,高さ10 mのセメント改良盛土を築造した条件を対象とし,岩ずりの地震時挙動に関する遠心力模型実験と数値解析を実施した.数値解析では,非排水条件と排水条件の2種類の有効応力解析コードを用いて,主に盛土沈下量に着目して検討を実施した.その結果,岩ずりは砂よりも透水性やダイレイタンシー特性の影響が大きいこと等により,排水条件の有効応力解析手法の方が実験結果との整合性が良いこと等を明らかにした.

  • 春日井 秀俊, 久田 嘉章, 田中 信也
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_284-1_294
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    近年我が国では強震観測網の充実により膨大な地震観測記録が蓄積されており,経験的グリーン関数法(Empirical Green's Function Method, 以下,EGF法)のより有効な活用が期待できる.しかしながら,従来のEGF法では,主に実体波を対象とした短周期地震動の活用例が多く,表面波を含む広帯域地震動への適用に関する研究や活用例はあまり多くはない.その際,ランダム性状の短周期の実体波と,コヒーレント性状の長周期の表面波では要素波形の重ね合わせによる振幅特性が大きく異なることに注意が必要になる.本研究では,余震記録が豊富に得られている2000年鳥取県西部地震を対象として,表面波を含む広帯域の本震波形の再現を行い,波形合成の際の注意点を調べた.規模の異なる2つの要素地震を選定し,2つの強震動生成域(Strong Motion Generation Area:以下,SMGA)への割り当てと破壊伝播形式を変えた4つのCaseの震源モデルを用いてシミュレーションを行った.遠方の観測点で長周期の後続波を合成するには,地震規模が大きくS/N比の良好な要素地震の記録を使用する必要があり,SMGAの要素分割数が少なくなるCaseも検討した.その結果,断層面での破壊形式や破壊伝播方向の違いなどにより,要素地震波の合成時に異なる時間ずれが生じ,特に長周期の後続波の振幅の結果に大きな違いが生じることを確認した.

  • 苅米 和樹, 劉 ウェン, 丸山 喜久
    2025 年 25 巻 1 号 p. 1_295-1_304
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/01/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,液状化ハザードマップの高度化を目的に,地盤沈下量の予測モデルを機械学習によって構築した.データセットには南海トラフの巨大地震モデル検討会による分析結果を使用し,アンサンブル学習の一つであるXGBoostを用いて,液状化による地盤沈下量予測モデルの構築を試みた.さらに,東日本大震災で広域的に液状化現象が確認された千葉県を対象として,震度階級別の地盤沈下量を予測した.その結果,液状化発生条件を満たす地域では地盤沈下が顕著に現れたために,地盤工学的に妥当な予想地盤沈下量マップを作成できた.

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