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藏元 航平, 梶田 幸秀, 松田 泰治
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_1-4_11
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
2016年熊本地震により惣領橋では,左岸橋台を基準として中間橋脚が約30 cm沈下する被害が発生した.この被害に対して著者らは過去に砂質土地盤の液状化のみを考慮した解析を実施している.本研究では,砂質土の液状化に加えて阿蘇山由来の火山灰質粘性土の繰り返し作用による軟化を考慮し,2次元有効応力解析により中間橋脚の沈下被害に対して改めて検討を行った.その結果,粘性土の繰り返し軟化を考慮すると,中間橋脚の沈下の程度が大きくなること,また,短い時間間隔で発生する地震動により砂質土の再液状化が起こる可能性が高くなることが確認された.
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佐藤 浩章, 栗山 雅之
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_12-4_23
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
地形サイト特性を,単純な形状の尾根上(尾根中心と尾根端部)と平坦な尾根麓(基準点)の地震記録のスペクトル比に基づき検討した.その結果,地形の影響は,尾根方向に比べて,尾根直交方向の震動に明瞭に表れやすく,その特性は基準点に対して,2Hz付近から大きくなり,5 Hzまでほぼ平坦なピークが特徴であった.また,同じ尾根上でも,尾根中心よりも端部で増幅効果が大きかった.この尾根中心と尾根端部の増幅効果の特徴の差異について,数値標高モデルに基づく再現計算からは,2元的な地形のモデル化では十分ではなく,3次元的な地形を考慮する必要性が示された.さらに,観測から得られた地形サイト特性の大きさと地形指標との相関関係ついて検討した結果,一般的な地形指標の形状比(幅と高さの比)よりも,地表開度と地下開度による尾根谷度の相関が高かった.そこで,標高200 m以上のK-NET, KiK-netに対し尾根谷度の評価を行い,大加速度記録が得られている尾根谷度の大きな観測点としてAKTH04に着目し,尾根谷度が小さい近接観測点との比較からその有効性を検証した.
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Harusato KIMURA, Haruka TOMOBE, Vikas SHARMA, Hitoshi MORIKAWA
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_24-4_36
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
The preparation of a mesh is a costly procedure in finite element analyses. Energy-based overset finite element method (EbO-FEM) is a method that facilitates the creation of the mesh by composing several subdomains into a single computational domain. This paper presents a fundamental study to extend the EbO-FEM to dynamic problems, focusing on the one-dimensional scalar wave problem. In particular, the relationship between the parameter representing the degree of coupling and the magnitude of the undesired reflected waves generated at the overlapping regions is investigated. The results show that the EbO-FEM provides as accurate a solution as the conventional FEM when adopting well-tuned values as the parameter. Error analysis in the frequency domain showed that the unwanted reflected wave generated at the overlapping region is controlled by the characteristic of the incident wave and the size of the overlapping region. Numerical examples of coupling the computational domain with different materials implied that the overlapping region acts stiffer than it is. These results suggested that the overlapping region should be as small as possible to obtain an accurate solution, even though the EbO-FEM is an overlapping mesh method.
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佐藤 吉之
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_37-4_50
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
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強震動予測の精度向上のために,観測記録に基づいて導出された見かけ入射角に依存する伝播経路特性モデルを取り入れ,計算波に対する影響について検討した.計算法には統計的グリーン関数法を用い,従来型の伝播経路モデルを用いた解析と比較した.震源としてマグニチュード7級の断層を仮定し,横ずれ断層と逆断層モデルを設定して地震動を算出した.見かけ入射角依存モデルの場合,断層分布範囲の直上,特にアスペリティ上部付近の振幅が増大するという影響が現れ,それ以外の領域では影響が小さいことが確認された.逆断層モデルでも同様に断層面直上付近の振幅増大が顕著であったが,断層下端直上から離れた領域においても振幅増大の影響が確認された.また,逆断層モデルでは上盤側の振幅が増大するいわゆる上盤効果が見られ,見かけ入射角依存モデルではこの領域内でも振幅を増大させる効果がみられた.以上のように大地震の場合には,見かけ入射角依存モデルの影響で振幅の増大が顕著な領域は震源断層直上全体に亘るのではなく,断層あるいはアスペリティとの位置関係によって,より狭い領域に限られる可能性があることが確かめられ,また逆断層の場合には,上盤効果と見かけ入射角による振幅増大効果が重畳する可能性が示唆された.
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中村 晋, 仙頭 紀明, 齋藤 和寿
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_51-4_61
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
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フリー
修正フェレニウス法による斜面の地震時安定性評価に関する不確かさを明らかにすることを目的として,既往の遠心実験により得られた結果の整理,および分析を実施した.既往の海底斜面モデルに関する一連の遠心載荷実験の中から15ケースを対象とし,実験条件,地盤の強度特性および実験結果の整理,分析を実施した.分析として,斜面内に生じたすべり面とその時点での作用震度,さらにそのすべり面近傍に設定した円弧状のすべり面に対して修正フェレニウス法により求めた作用震度やすべり安全率について分析を実施した.また,地震時安定性評価に用いる手法の不確かさとして,すべり面形成時点の作用震度は安定解析による降伏震度に比べて,ばらつきは大きいものの小さく,すべり安全率は降伏震度算出時の安全率(1.0)と比べ,ばらつきはあるものの大きいことが分かった.
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田中 仁規, 坂井 公俊
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_62-4_73
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
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応答変位法を行う際の地盤変位と慣性力の組合せの高度化を目的として,地盤,構造物それぞれの非線形挙動に着目した検討を行った.具体的には,多様な地盤,構造物に対して,いずれか一方が非線形化する条件で動的解析を実施するとともに,作用の組合せ係数の整理,考察を行った.その結果,地盤と構造物の固有周期の関係とともに,それぞれの非線形化の程度を指標として考慮することで,作用の組合せ係数の変動が低減されることを確認した.今回提案した手法を用いることで,地盤,構造物の塑性化の程度を簡易に考慮した上で,従来よりも適切な作用の組合せ係数を設定可能である.
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有賀 義明, 市山 誠, 鈴木 隼人, 坂下 克之, 渡辺 高志, 西本 安志, 佐藤 優乃
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_74-4_85
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
沿岸域の構造物の防災・減災に役立てるために,免震・免波という考え方に基づく対策技術について研究した.ここでは,津波対策に着目し,緩衝材による津波の波圧の低減効果を模型実験により検討するとともに,波圧の低減効果が構造物の安全性評価にどのような影響を及ぼすかについて,動的な波圧を考慮した三次元FEM解析により検討した.その結果,緩衝材を活用することによって,構造物に作用する津波段波の波圧を低減することが可能であり,津波による構造物の損傷・破壊の抑止軽減に有効であることを示す結果を得ることができた.
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Haruka TOMOBE, Vikas SHARMA, Harusato KIMURA, Hitoshi MORIKAWA, Kahori ...
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_86-4_96
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
This paper proposes a modal analysis method based on the energy-based overset finite element method (EbO-FEM) for rigid frame bridges. Rigid frame bridges and the foundations have complex geometries, which makes the mesh generation for finite element analysis expensive. The EbO-FEM has been developed to reduce the cost of mesh generation by allowing the use of nonconforming meshes without iterative computations. However, the EbO-FEM has only been applied to the static analysis and the applicability for the modal analysis has not been investigated. We applied the EbO-FEM for the finite element modal analysis, evaluated the accuracy of the method by comparing the solutions with existing FEM solutions, and utilized the EbO-FEM for the parameter identification with records of microtremors through the following procedure. First, a modal analysis of the virtual cantilever beam was performed to verify the accuracy, and the EbO-FEM solution agreed well with the conventional FEM solutions under different discretization scales, where overlapping regions is carefully localized. Second, the natural vibration modes and frequencies are estimated using the EbO-FEM for a frame bridge under construction. The EbO-FEM gives similar natural vibration modes to ones estimated by the frequency domain decomposition (FDD) method, and the elastic moduli of the surface soils were estimated so that the corresponding natural frequencies were consistent. The estimated elastic moduli were not significantly different from the data obtained from the preliminary survey. Above all, it was found that EbO-FEM can be as accurate as conventional FEM when the mesh overlapping is carefully minimized, in the modal analysis in spite of allowing non-conforming mesh.
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溝淵 陸大, 小檜山 雅之, 山下 拓三
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_97-4_108
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
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繰り返し地震動が入力し木造建物が倒壊して人的被害が発生することを防ぐため,構造ヘルスモニタリングシステムによる迅速な損傷評価が期待されている.ニューラルネットワークは建物応答から倒壊の危険性を判別する有力な手法であるが,未学習の損傷パターンの判別を苦手としている.本研究では,ニューラルネットワークを用いた木造建物の損傷判別器の構築において,学習データを作成する際に対象建物モデルの応答解析の入力にパルス性模擬地震動を用いることで損傷パターンの多様性を考慮する手法を提案し,判別精度を比較することでその有効性を検証した.
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岩崎 洋矢, 鈴木 有美, 中野 尊治, 尹 ロク現, 真田 靖士, 柳澤 信行, 芹澤 好徳
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_109-4_119
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
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現在の耐震設計では60 m以下の高層建物に時刻歴応答解析は要求されておらず,保有水平耐力計算もしくは限界耐力計算により安全性が検証されている.これら二つの設計法のうち,一般に普及している保有水平耐力計算では地震時の建物の変形を陽に評価できないため,同計算法により設計された建物に対し,地震時の層間変形が,例えば限界耐力計算で定められた安全限界変形を超過するかは一般的には検討されていない.そこで,本研究では保有水平耐力計算に基づき設計された高層RC建物の地震応答変形を明らかにすることを目的とし,時刻歴応答解析と限界耐力計算の等価線形化法により評価された地震時の層間変形と,安全限界変形との比較検討を行った.
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川野 菜々美, 櫻井 真人, 菅野 秀人
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_120-4_130
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
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超高層鉄筋コンクリート(RC)造建物の構造設計において,マルチスプリング(MS)モデルが柱部材の弾塑性モデルとして採用されている.超高層建物に地震動のような水平力が作用すると,全体曲げ変形挙動により下階柱には大きな軸力変動が生じ,その軸変形挙動は無視できないものとなる.高軸変動力下の柱軸挙動に関する検討例は少ないため,軸力変動を受けるRC柱部材静的加力実験を行い,その結果を基に実験再現性の高いMSモデルを検討した.MSモデルを構成する各ばねについて,復元力特性やばね長さなどが部材挙動に及ぼす影響を整理し,水平挙動だけでなく軸挙動の実験再現性にも着目してMSモデルの設定方法を検討した.
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大野 晋, 森川 拓海
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_131-4_141
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
地震災害時における応答スペクトル分布の迅速な推定のために,等価線形スペクトルモーダル解析による非線形地盤増幅と,応答スペクトルの空間相関の周期依存性を考慮できる大野・柴山(2010)の手法を模擬する機械学習による代理モデルについて検討した.複数の手法を検討した結果,線形地盤増幅補正と空間補間による中間出力に対して深層学習ネットワークを組み合わせた方法を提案した.仙台市を対象に検討した結果,学習したモデルは,周期約1秒以下では非線形増幅の影響を考慮した応答スペクトル分布の推定に有効であり,常用対数標準偏差で約0.1程度の精度で既往手法の代理モデルとして使用できることを示した.一方周期約1秒以上では中間出力のままの方が精度が高い結果となったが,この原因としては,表面波の影響や今回考慮していないハイパーパラメータの周期依存性が考えられ,長周期の精度向上が今後の課題である.
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永坂 英明, 大西 亮, 伊藤 一成, 吉田 靖司, 飛田 潤
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_142-4_154
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
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フリー
地震時の安全確保や事業継続のための構造ヘルスモニタリングの検討が進んでいるが,中高層建物で複数のセンサを用いるものが多い.本論では低層建物を対象に,簡易な計測により被災情報を得ることを目的として,上層階1点の加速度記録からマルチ・フィルターの原理を強震記録解析に応用した非定常振幅スペクトルを用いて地震時卓越振動数とその経時変化の抽出を試みた.1994年三陸はるか沖地震で被災したRC造3階建物の多点観測記録を用い,地盤・建物系の応答特性を検討したうえで,屋上1点による提案手法と,1階も含む2点からARXモデルで求めた卓越振動数の経時変化の比較を行った結果,1点の簡易な計測でも低層建物の被災判定につながる変化を捉えうることを確認した.また,比較のため東北地方太平洋沖地震で被災した中層SRC造建物の分析を行い,本手法の特性を検討した.
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大和 征良
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_155-4_163
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
既存鉄筋コンクリート系建造物の耐震補強として接着系注入方式あと施工アンカーが使用されている.しかしながら,長期部材接合を想定した接着系注入方式あと施工アンカーの長期特性の検証は十分とは言えず,特に火災時(高温時)の付着強度の検証は未だ不十分である.従って,接着系注入方式あと施工アンカーの長期部材接合(長期許容応力度)を想定した,火災時(高温時)の付着破壊強度に関する実験的研究を,コンクリート強度をパラメータとして行った.その結果,一部コンクリート強度の影響が見られたものの,大半の試験体においてコンクリート強度の影響が見られず,火災時(高温時)はコンクリートと接着剤の界面よりも異形鉄筋と接着剤の界面の支圧効果の方が支配的となること,コンクリート強度がほぼ同じ強度であっても,鉄筋の節の種類により高温時の付着破壊強度に差異が生じることが解った.従って,今後鉄筋の節の種類をパラメータとしたより一層の検証が必要であることが認識できた.
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Joshua PANGANIBAN, Amit GILL, Lalith MADDEGEDARA, Muneo HORI, Tsuyoshi ...
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_164-4_175
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
Although most natural disasters such as major earthquakes are spatially localized, the strong interdependencies among economic entities can make their impacts ripple through the nation for several years, producing substantial economic losses. Enhancing disaster resilience necessitates a comprehensive assessment of the long-term economic impacts of candidate recovery plans considering the complex interrelationships of economic entities, and other real-world constraints such as lifeline access, transportation, and government policies. This requires fine-grained modeling of the economy and infrastructure as an integrated system. To attain this objective, we developed a high-performance computing (HPC) extension for an agent-based economic model, making it possible to efficiently simulate large-scale economies consisting of hundreds of millions of agents at a 1:1 scale. This paper presents the validation of the developed system for the Japanese economy by reproducing the past observations at the national and sectoral levels. As a demonstrative application, we present a simulation of a post-disaster economy considering hypothetical disaster scenarios.
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増田 顕, 松田 和浩
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_176-4_188
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
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近年,世界中でCLTを用いた中高層建物が実現(施工 / 建設)されている.一方で,CLTを用いた中高層建物が大きな地震を経験した後にも,建物の継続使用を可能にする技術は開発途上の段階にある.筆者らはこれまでCLTロッキング壁柱とダンパーを併用することで,エネルギー吸収性能に優れたCLTロッキング架構を開発した.しかしながらその研究では1層1スパンの架構全体の力学的挙動を把握したが,柱梁接合部などの架構の局所の挙動は把握していない.そのため,本研究ではCLTロッキング架構の柱梁接合部の実大実験を実施して,柱梁接合部の力学的挙動を把握する.また,今後予定しているフレームモデル作成に向けて,柱梁接合部の曲げモーメントと回転角関係を骨格曲線で評価する手法を提案する.実大実験では接合部形状がト型や十字型の場合の力学的挙動の違いについて把握した.また,提案した評価手法は引きボルト・座金・CLTの支圧剛性などを直列結合としたこと,柱梁接合部を三角形めり込みとして応力度を6つに場合分けしたことに特徴がある.その評価手法にいくつかの制限はあるものの,評価値は実験値を概ね再現することができた.
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福島 洋, 栗山 進一
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_189-4_195
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
健康に関する行動変容促進の手法に関しては,理論的体系化およびたばこ対策などの実践の実績がある.健康と防災分野は,互いに,「個人や集団の行動変容をリスク減につなげられる可能性が高い」という共通点があり,従って,健康分野の理論・実践を応用して防災に関する多様な取り組みを検討することは,防災課題の明確化や新たなアプローチの考案などの観点で有益と考えられる.本研究では,地震防災に関し実施されている取り組みをProchaskaの変容ステージモデルに基づく手法論(無関心期,関心期,準備期,実行期,維持期それぞれの対象者の心の状態に合わせた働きかけの方法論)に基づき試行的に検討した.その結果,健康分野に比べ,実行期・維持期の個別支援が薄いことが示唆された.また,地震の警戒・注意情報の浸透や適切な対応能力の獲得に対しても,このような個別支援やそのための人員の必要性が考察された.今後,変容ステージモデルを防災に関する課題へ適用することの有効性の検証や,個人(生物的,心理的)・個人間(社会的,文化的)・組織・コミュニティ・環境・政策といった細かい粒度での整理を進めていくことが有効であると考えられる.
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早川 崇
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_196-4_205
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
日本建築構造技術者協会(2018)による性能設計は基本的な考え方として再現期間に応じた地震動強さに対して建物損傷をコントロールする.対象とする地震に対して性能設計を行う場合は,その地震動の再現期間と地震動強さの対応を明らかにする必要がある.防災科学技術研究所のJ-SHIS(2024)によると,都心の地震動ハザードにはフィリピン海プレートと太平洋プレートの震源断層を予め特定しにくい地震が大きく寄与する.本研究では,関東平野周辺のフィリピン海プレートおよび太平洋プレートの内部と上面で発生する震源断層を予め特定しにくい地震を対象とし,再現期間が500,1000年,2500年に応じた速度応答スペクトルを新宿において評価した.評価の結果,再現期間1000年の速度応答スペクトルは80~110 cm/s程度であった.速度応答スペクトルは周期2秒と7.5秒において,それぞれS波速度が1.5 km/sの層と地震基盤より上層によるS波増幅のピークによって卓越した.これらの卓越は近傍の周期のレベルと比較して1.05~1.1倍程度であった.
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内藤 昌平, 藤原 広行, 中村 洋光, 鈴木 晴彦, 櫻井 健, 小西 千里, 小川 直人, 武部 真樹
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_206-4_219
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
光ファイバDASを用いた地盤モニタリングによる地盤モデルの高度化を目的に,試験場に5種類の光ファイバケーブルを埋設し,3種類のインテロゲータと接続後,複数台の微動計との並行観測を行い,かけやによる加振や常時微動等の試験観測を行った.隣り合う微動計の差分記録を設置間隔で除することにより算出したひずみ速度記録との比較を行ったところ,かけやによる加振記録は正常に取得出来ており,常時微動観測記録については約2 Hz以上の周波数帯域においては位相速度の推定等に活用可能な観測記録が得られていることを確認した.また,DAS記録,およびDASと微動計の観測記録と組み合わせた記録により地震波干渉法解析を行った結果,微動探査により推定されたレイリー波の位相速度と整合的な分散曲線が得られた.
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加藤 一紀, 石丸 真, 沢津橋 雅裕, 平賀 健史, 徳永 仁志
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_220-4_230
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
近年,設計用地震動の増大により,密な砂や固結した砂地盤に対する地震時の液状化判定や,安定性評価が必要なケースが増加している.その中において,液状化強度のばらつきに対する保守性の考慮が要求されている.本研究では,密な砂地盤中の相対密度が比較的小さい領域の空間配置が異なる2種類の地盤模型に対して遠心力場において加振実験を実施し,地盤物性のばらつきによる防潮堤杭基礎への影響を検討した.その結果,地盤の過剰間隙水圧応答,杭基礎の曲げひずみ応答にほとんど差が見られないことを明らかにした.
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内藤 康夫, 島田 将伍, 品川 恭一, 権田 将也, 三辻 和弥, 酒句 教明
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_231-4_240
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
近年の小規模建築物(ここでは戸建て住宅を指す)は, 造成地盤上に建つことが多くなり,地盤補強を施す割合が高くなってきた.地盤補強とは支持力向上および沈下抑制を目的とした狭義の地盤改良を指す.従来の地盤補強の設計では, 明確な根拠がないままに, レベル1地震動でさえ水平動に対する検討は実施されてこなかった.本研究では(1)大地震を対象に地盤補強体の被害をアンケート調査により確認, (2)パラメトリックスタディにより水平抵抗の安全性の検証をおこなった.その結果, レベル1地震動による地盤補強体の被害は皆無ということが判明し, 接地圧の小さな戸建て住宅であれば, 地盤補強は十分にレベル1地震動に対する安全性が担保されていることが確認できた.
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年縄 巧, 高橋 悠貴, 村山 莉奈
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_241-4_253
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
多摩丘陵地上の造成地において常時微動測定を行いこの地域の地盤特性の分布を調べた.この地域は標高110〜150 mの3つの段に造成され,上段は自然に堆積したローム層が,中・下段は表土・盛土が表層を構成している.ボーリング調査地点での常時微動測定から,常時微動のH/Vスペクトル比のピーク周期Tpが長くなると表層地盤が厚くなることを確認した.中段の崖縁線上と一広場において高密度微動測定を実施し,直線的・平面的なTpの空間分布を図化した.その結果,崖縁線上のTpは旧谷上で0.3〜0.4 sに明瞭に表れ,崖軸直交方向により増幅されること,広場内のTpが長い部分は旧谷上に位置しておりTpの空間変化は旧地形とほぼ対応するほか,旧地形からだけでは推定できない実際の地盤特性を検知し得ることがわかった.また,過去に斜面崩壊した盛土部分のH/Vスペクトル比は鋭いピークを持つことや地震動増幅が観測された地点のTpは強震動のスペクトルのピーク周期に一致していることもわかった.
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野口 竜也, 西村 武, 香川 敬生
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_254-4_264
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
ジャーナル
フリー
1943年の鳥取地震により生じた吉岡断層おいて,地震断層ごく近傍の地盤構造を把握するために,鳥取市大塚地区で稠密な微動および重力観測を実施し,地盤震動特性と地盤構造を調べた.微動の解析では,微動H/Vの特徴を調べ,S波速度構造を推定した結果,断層線近傍では水平動の方向でH/Vの形状が異なる地点がみられ,地下構造モデルも断層近傍とそれ以外の地点で異なっていた.重力の解析では,重力異常より表層:2.0t/m3,基盤:2.4t/m3の2層均質モデルによる3次元密度構造を推定した.その結果,断層線の近傍でその走向方向に沿って,南落ちの基盤の急激な落差が確認できた.
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青柳 恭平, 大沼 巧
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_265-4_274
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
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フリー
本論では,リモートセンシング技術による系統的な断層変位量評価法を提示し,その課題と将来展望について議論する.差分干渉SAR,航空レーザー計測などのリモートセンシング技術で得られた高分解能で3次元的な地表変動分布データに対して,地表地震断層に一定間隔で直交する測線上で相対変位を計算することにより,断層の変位量や変位センス,傾斜角の走向沿いの変化を求められる.本手法を2016年熊本地震で広範囲に生じた副断層群に適用した結果,その変位量が主断層からの距離に応じて減衰する関係を明らかにした.本手法は,主断層から離れた副断層の変位量データの拡充において,特に有効である.
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柴田 大雅, 沼田 宗純
2025 年 25 巻 4 号 p.
4_275-4_284
発行日: 2025年
公開日: 2025/03/14
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地震後の住家被害認定調査は,調査量が膨大でありかつ自治体職員による外観の目視等から被害度が判定されるため,調査に多大な時間を要する上,判定結果にばらつきが起こりうる.そこで本研究では,調査の効率化を図ることを目的としてAIによる住家被害認定調査の自動化を目指す.そのために本稿では,被害率算定における補修見切り算定システムの構築を試みた.具体的には,領域提案により建物外観を区分けし,それを基に補修見切りを算定するプログラムを構築した.構築した算定プログラムに関する実験を行い,補修見切りの判定結果の予測可能性を検討した.
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