沖縄本島北部は西表島と並び沖縄県内の主要森林地帯である. リュウキュウマツを中心とする人工林資源が伐期を迎えつつあるが, 十分に生育していない. また, リュウキュウマツの白蟻問題等のため木材需要の中心である建築材に用いることが困難である. 針葉樹, 広葉樹ともに森林資源は全般に未成熟で資源は回復途上にある. 日本復帰後, 造林政策をリュウキュウマツ中心から広葉樹へと転換した. さらに近年, 複層林施業が始まった. 私有林が未発達で, 国有林が米軍演習地であり, 公有林の果たす役割が重要であるが, 市町村は必ずしも林業に積極的ではなく長期的計画を持たない. 北部地域では国頭村森林組合が木材の生産・加工の中心的役割を担っている. これまで森林組合は, 各種補助金によりチップ工場, 製材所等を建設し, また最近では, 集成材工場の稼働を開始した. 最大の生産品目はチップであるが, これは農用地, ゴルフ場, ダム等の開発伐採と公有林伐採に支えられている. 近年, 開発面積が減少し, 公有林伐採の比率が高まっている. 木材の生産, 消費の双方が本土以上に補助金, 公共事業と関連している. 製材品はリュウキュウマツによる矢板生産と広葉樹による支柱材生産が中心である. 前者は加工度合が低く, 原木は経営意欲のない私有林に偏っている. 後者は県産品優先利用政策により安定した需要があるが, 採算上の問題がある. 伐採木の小径化により, 島内での用材向け広葉樹原木の確保が難しくなっている. こうした状況下で集成材工場が稼働を開始するが, 原木確保, 技術習得, 販路に問題をのこしている. このように各部門とも原木確保が課題となっており, 島内の国有林, 公有林, 私有林が協力して地域の木材産業に原木を安定供給できるか否かが問われている. 従って, 島内の森林及び林業に関する計画が必要であるが, 全国画一的に樹立される地域森林計画以外に特に計画を定めておらず, この策定が今後の重要課題といえる.
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