本稿は従来行政が指針を決定し,非営利組織が活動を担っていたまちづくり事業を,平成の大合併に伴う自治体の消滅後,非営利組織が行政の指針を引き継ぎつつ,自律的な活動へと変化した過程と現状を明らかにするとともに,非営利組織が果たす役割と課題を検討することを目的とする.鳥取市旧鹿野町の事例において,合併前には町が中心となってまちづくり事業の指針を策定し,町内会の活動から派生した非営利組織が,補助金を利用して修景事業を中心に担っていた.しかし合併後に補助金が削減される中で,非営利組織は飲食店・物販による活動を展開すると共に,修景事業は域外の省庁や大学,財団等の補助金を利用して合併前に行われてきた事業の継続を図っていた.編入合併による自治体の消滅によって,まちづくりに関わる補助金が削減され活動の継続が危ぶまれたが,非営利組織は域内での共同事業や域外からの支援を通じて,まちづくりに必要な資金,情報やノウハウを獲得し,事業の持続と自律的な活動への移行に向けた努力を行っている.この背景には,地域内での長期に渡る非営利組織の活動蓄積と合併に対する住民の危機感が存在していた点が大きく働いている.
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