経済地理学年報
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最新号
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表紙
論説
  • 遠藤 貴美子
    2019 年 65 巻 2 号 p. 151-176
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

        本研究は,東京を中心に広域な生産システムを構築している丸編ニット製衣服産業を対象に,情報伝達および関係性にもとづくコミュニケーションに着目して,企業間・企業内事業所間の連関構造を解明するとともに,東京における集積がどのような機能を担っているのかについて検討した.その際,生産システム上でオーガナイザー役を担っている東京のニットメーカーを分析の主眼とした.
        ニットメーカーは都区内における受注先や,既存の工業集積内における資材購買先・各種加工業者群との間で,その空間的近接性を活かして迅速で円滑な暗黙知の伝達・共有や意思決定を活発に行っており,ファッション化の進展やデザインの高度化,小量生産化,短サイクル化のもとで集積の意義が強められている側面が明らかとなった.地方圏や海外といった遠隔地との間では遠隔通信手段によるコミュニケーションが主であるが,物理的距離,場合によっては心理的距離を隔てての意思疎通を可能にしているのは,ニットメーカーと地方圏・海外の生産拠点との間の長期取引および過去の対面接触の蓄積によって構築された,相互理解でもあることが明らかとなった.こうしたニットメーカーの調整機能は取引費用の削減に貢献しており,生産システムの地理的広域化がなされた現在,これまで以上にその機能が重要になっているといえる.

研究ノート
  • ―関東地方の人工光型植物工場を事例に―
    柏木 純香
    2019 年 65 巻 2 号 p. 177-191
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

        本研究は,人工光型植物工場がその経営主体の生産活動に果たしうる役割を明らかにした.その際,関東地方に位置する2社(製造業G社・飲食サービス業T社)の植物工場を事例として,植物工場における生産形態の特徴と植物工場産野菜の供給体系の特質を検討した.性格の異なる2つの主体が運営する植物工場を比較検討することで,植物工場における野菜生産の意義をより体系的に理解することを目指した.得られた知見は以下のように整理される.
        第1に,農外資本であるG社とT社は野菜の栽培経験に乏しく,植物工場で野菜を生産することで,栽培環境の変動を抑え,予測通りの生産量をあげていた.第2に,G社・T社は植物工場で養液栽培や多段栽培を行うことにより,従来型の露地栽培とは異なる環境をつくり出しており,このことが作付体系の管理の効率化や,土地生産性の向上を可能にしていた.第3に,G社は製造業者ということもあり,事業への参入当初,十分な野菜の販路を確保していなかった.植物工場で高付加価値の野菜を生産することにより,高価格帯の新たな流通チャネルを創出していた.一方,飲食サービス業のT社は,事業開始前から,セントラルキッチンや飲食店といった生産物の販路を十分に確保しており,植物工場で安定的に生産することで,その流通チャネルに確実に野菜を供給していた.

フォーラム
  • ―栃木地域大会シンポジウム(2018年10月28日開催) 趣旨説明―
    山本 健兒, 丹羽 孝仁
    2019 年 65 巻 2 号 p. 192-193
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー
  • ―産業集積と地域経済との関連を中心に―
    松橋 公治
    2019 年 65 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

        本講演の目的は,関東の工業地域構造の中における北関東・栃木県の特徴を指摘した上で,経済地理学の産業集積論と特定領域(自治体など)の経済との接点を捉えることである.産業集積論は企業・産業を基礎とする議論であり,企業・産業空間を扱う.そのスケールは生産ネットワークのあり方に規定される.他方で,特定領域の経済には,そのネットワークの一断面だけしか表れない.特定領域の立場からすれば,特定の産業・企業集積への過度の依存は避けたい.特定領域の経済の持続的発展のためには,産業集積のどのような断面と機能がそこに現れているのかを見極め,当該領域の産業集積と適切に対応していくことが重要である.

  • 関本 充博
    2019 年 65 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

        この報告は栃木県の産業構造の特徴を踏まえて,県による産業政策について紹介することを目的とする.県内総生産における製造業の割合は4割を占め,その比率は全国2位となっている.それは,県の企業立地政策により造成してきた大規模工業団地などに自動車・航空宇宙・医療機器関連等の大手企業の工場が多数立地していることによる.これにより,栃木県の一人当たり県民所得は全国第4位となっている.栃木県経済のさらなる成長のため,県では重点振興5分野の産業をはじめとする各種の産業振興政策,地域中核企業を牽引者とする地域経済振興政策,IoTの活用推進,製造企業の更なる立地促進などの政策に取り組んでいく.

  • 矢口 季男
    2019 年 65 巻 2 号 p. 204-207
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

        本報告は,栃木県産業振興センター内に置かれている栃木県よろず支援拠点の活動の紹介を目的とする.これは,2014年に中小企業庁が各県に設置した拠点の一つで,中小企業・小規模企業が抱えるあらゆる悩みの相談にワンストップサービスで対応し,経営革新や経営改善につなげることを目的としている.相談件数は毎年伸びてきており,2017年度の来訪相談者数は1800人を超え,相談対応件数は4,100件を超えるに至っている.相談員は13名おり,栃木県産業振興センターのみならず,県内各地での来訪相談に対応できる態勢を取っている.本報告では,相談の具体的事例や成功事例について紹介する.

  • 鈴木 庸介
    2019 年 65 巻 2 号 p. 208-212
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

        本報告の目的は,かつての金属部品加工という事業から,如何にして医療機器を開発生産する事業へと転換できたのか,そのプロセスを具体的に紹介し,イノベーションの重要性を,栃木県鹿沼市に立地する(株)スズキプレシオンの例で示すことにある.2000年代初めから経営革新に取り組み,薬事法の改定に着目して2005年頃から医療機器の開発生産に取り組んだ.他の金属加工企業との差別化を図るためである.その開発過程で,医療機器を生産できる高度な工具であるスピンドルも自社開発した.リーマンショックを乗り越え,アメリカでの展示会でも積極的に展示し,顧客を内外に増やしてきている.

  • 丹羽 孝仁
    2019 年 65 巻 2 号 p. 213-216
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

        本報告は,栃木県における産業集積の特徴を,栃木県に本社を置く製造企業の取引ネットワークから捉えることを目的とする.とくに栃木県経済におけるキープレイヤーであるコネクター型企業に注目し,これらの企業の企業間取引ネットワークの特徴を分析する.その結果,栃木県の製造業において,技術力のある企業がコネクター型企業として企業間取引ネットワーク,特に業種を跨ぐネットワークの接続点として機能していると捉えられる.政策的支援を考察すると,コネクター型企業を育成するためには,新規の技術開発支援が重要だと考えられる.

  • 山本 健兒
    2019 年 65 巻 2 号 p. 217-218
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー
  • ―『経済地理学再考』考―
    中澤 高志
    2019 年 65 巻 2 号 p. 219-231
    発行日: 2019/06/30
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

        加藤和暢氏による『経済地理学再考』は,経済地理学の理論的発展に貢献する高著であるが,その理解は容易ではない.本稿は,本書の要諦を示すことで読者の便宜を図るとともに,筆者による本書の評価と批判的検討を示すことを目的とする.前半にあたるⅡにおいて本書を要約した後,Ⅲでは,立地論に立脚した経済地理学理論と比較することで,加藤氏の提起する空間的組織化論の特長を浮かび上がらせる.Ⅳは,空間的組織化論の発展段階論的性質と国家の扱いをめぐり,いくつかの疑問を提示し,理論的発展に向けての提案を行う.

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