本稿の目的は,生徒指導における「段階的指導」と「ゼロトレランス」の相違を明らかにし,日本における「段階的指導」の特徴を明らかにしていくことである。
文献調査の結果,日本で「段階的指導」は「ゼロトレランス」と一緒に紹介されてきたことから,「ゼロトレランス」と同様の生徒指導と認識されていることが明らかとなった。しかし,日本における「段階的指導」の実践例を検討した結果,米国で注目されてこなかった「指導基準の明確化」,「組織的な指導」に特徴があることが確認された。これらの特徴は今日の生徒指導で強く求められていることでもあることから,「段階的指導」はこれからの生徒指導に適した生徒指導であることが推察された。米国における「ゼロトレランス」は停学者・退学者を増加させることにつながった経緯があるため,日本においても「段階的指導」が子どもの排除に機能しないように工夫することが課題として示唆された。
抄録全体を表示