日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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23 巻, 3 号
選択された号の論文の20件中1~20を表示しています
  • 片岡 祐一, 島田 謙, 相馬 一亥, 今井 寛, 町井 正人, 大和田 隆
    2003 年 23 巻 3 号 p. 447-452
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    過去18年間 (1983~2001年) に当院で経験した特発性食道破裂 (Boerhaave症候群) は, 心肺機能停止 (CPA) 症例2例を含め, 13例であった. ほとんどの症例が発症前に嘔吐を認めていた. 主訴は胸部と腹部の症状に分かれていた. 全例, はじめ近医を受診後, 当院へ紹介来院となった. 初診の病院での正診率は15.4%であった. 発症から初診までは平均1.3時間であったが, 初診から治療開始まで平均25.3時間かかっており, 診断と治療の遅れが明らかとなった. 来院時の胸部X線ならびに胸部CTにおける, 縦隔気腫, 胸水, 気胸の所見は, 診断のために有用であり, 食道破裂の確定診断のため, 食道造影や内視鏡検査を行った. 10例に緊急手術, 1例に保存的治療を行い, 11例全例軽快した. CPA症例は2例とも緊張性膿気胸から心肺停止となり死亡した. 予後の改善のためには, 早期診断と早期治療が重要であると考えられた.
  • 谷 徹, 遠藤 善裕, 山本 寛, 花澤 一芳
    2003 年 23 巻 3 号 p. 455-461
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    BacterialTranslocation (BT) は多くの動物実験で証明されてきたにもかかわらず, 人間においては必ずしも十分に存在が認識されたとはいえない. ヒトにおいて確認されない理由の一っとして, BTの評価法がある. つまり生きた菌を領域リンパ節などで確認するためには, 観血的な手法がいるためと思われる. 微生物由来の物質が腸管から生体内に入る現象もBTに含んで考えるとすれば, 日本中心に新しく開発された微生物由来物質を測定する測定法 (SLP: peptidoglycan) などがBTの評価として利用される. われわれはこの方法を用いて非感染性の侵襲モデルとしてラットの出血性ショックやアルコール服用モデルにおいて新しいコンセプトのBT存在を証明できた. 同じことがヒトにおいても周術期でほぼ確認されている. したがって, BTはヒトにおいても起こっており, それはアクシデンタルにもインシデンタルにも起こっていると考えられる. 今後この現象が生体に及ぼす急性のみならず, 慢性的な影響も検討されるべきと考えられる.
  • 福島 亮治, 小林 暁, 稲葉 毅, 飯沼 久恵, 沖永 功太, 斎藤 英昭
    2003 年 23 巻 3 号 p. 463-468
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    栄養法によって生体防御を高めることを目的としたimmunonutritionが注目されている. 具体的には, (1) 栄養投与経路, (2) 特定の栄養成分を強化して与えること, (3) 成長因子の応用, などが検討されてきた. 中でもグルタミン, アルギニン, ω3系脂肪酸, 核酸, などを強化した製剤による早期経腸栄養法は, 臨床的に欧米で広く実践され, 多くのprospective randomized trialの結果, 外傷や外科手術後の感染性合併症や在院日数を有意に減少させることが判明してきている. このようなimmunonutritionの手法の多くは, bacterial translocation (BT) の予防あるいは治療と共通するものである. 臨床において, BTが全身感染やMOFの直接的な原因となるか否かについてはいまだ議論のあるところではあるが, immunonutritionの効果の一部が広い意味でのBT防止を介したものである可能性は否定できない.
  • 小野 聡, 辻本 広紀, 山内 明, 生田 真一, 平木 修一, 望月 英隆
    2003 年 23 巻 3 号 p. 469-476
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    近年急速な進歩を遂げた分子生物学的手法の中でもpolymerasc chain rcaction (PCR) は血液, 体液中の極めて微量な細菌やウイルス, 癌関連遺伝子の解析までを可能とし, 各分野において応用されている. しかし外科領域においては, 感染症診断法としてのPCRの意義に関してはまだほとんど研究されていないのが実状である. そこで今回われわれは, bacterial translocationに代表される外科侵襲時の内因性sepsisの病態解明をめざし, ヒト血液中microbial DNA検出法としてのPCR法の実際, 臨床的意義について検討した. その結果, 消化器外科手術では肝切除術, 開胸開腹下食道切除術において, 外科的感染症例では上腸間膜動脈塞栓症やイレウス, 進行癌患者に対する抗癌剤治療中の発熱患者において血液中にmicrobial DNAが検出され, bacterialtranslocationとの関連がうかがわれた. したがってPCR法による血中microbial DNAの検出はヒトにおけるbacterial translocationの病態解明に極めて有用であると考えられた.
  • 田中 英則, 炭山 嘉伸, 草地 信也, 有馬 陽一, 吉田 祐一, 中村 陽一, 長尾 二郎, 柁原 宏久, 斉田 芳久, 碓井 貞仁
    2003 年 23 巻 3 号 p. 477-483
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    SAは単独培養では培地が中性化すると発育できるが, 複数の菌株が同時に発育する環境では, 細菌間のinteractionにより異常増殖が起きなかった. しかし, E. coliとB. fragilisないしE. coliとE. faecalisの発育を抑制するとMRSAは有意に増加した. 完全静脈栄養 (TPN) ラットを用いた実験では, 胃内が減酸状態となればMRSAは小腸以下へ侵入できるが, 腸炎を発症することはなく, 抗菌薬による腸管前処置後MRSAを接種し, その後抗菌薬を投与すると下痢を生じMRSA腸炎を認めた. マウス術後MRSA腸炎モデルではbacterial translocationが確認され, 肝脾マクロファージが感染初期における宿主防御の最前線であると考えられた. 臨床の場において, 不用意な抗菌薬による腸管前処置はMRSA腸炎を惹起すると考えられる. また, 肝脾マクロファージが減少する術後の患者では, MRSA腸炎を併発した際, 重篤化する可能性が高いと考えられる.
  • 安田 武生, 竹山 宜典, 上田 隆, 新関 亮, 岸 真示, 黒田 嘉和
    2003 年 23 巻 3 号 p. 485-489
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎患者では, 早期のエンドトキシン血症や膵および膵周囲の壊死巣への感染発症の機序として腸管由来のbacterial translocationが考えられている. 一般に腸管粘膜は腸内細菌やエンドトキシンに対するバリアーとして機能しているが, 膵炎による微小循環障害・虚血再灌流障害, あるいはアポトーシス誘導やさまざまなサイトカインにより腸管粘膜透過性が充進し, 加えて全身・局所の免疫能の低下, 腸管運動麻痺, 長期間の絶食やグルタミン欠乏などの蛋白代謝障害により腸管の機械的・免疫学的バリアーが破綻すると, エンドトキシンや腸内細菌の全身への移行が惹起される. そのためbacterial translocationのcontrolが治療上重要であり, 近年持続動注療法やselective digestive decontaminationが治療に導入され治療成績の向上が認められつつある.
  • 織田 成人, 平澤 博之, 志賀 英敏, 中西 加寿也, 松田 兼一, 仲村 将高
    2003 年 23 巻 3 号 p. 491-497
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    多臓器不全 (MOF) の発症. 増悪因子の一つとしてbacterial translocation (BT) が注目されている. われわれの検討では, MOF症例の10.5%が臨床的にBTと考えられる症例であり, BT合併MOF症例の救命率は24.3%と, 非合併例に比し有意に低かった. 臨床例においてBTを早期に診断するのは困難であるが, IL.6迅速測定法によるIL-6血中濃度の肺動脈血/動脈血比 (PA/A) がBTの早期診断に有用である可能性が示唆された.BTに対する対策として以前より選択的腸管内除菌 (SDD) の効果が検討されている. われわれはBT対策としてSDDと早期よりの経腸栄養 (EN) を積極的に施行している. その結果, MOF症例の新たな感染症発症率が低下し, 感染症合併MOF症例の救命率は有意に改善した. BTは, MOF発症・増悪に深く関与しておりBT症例の予後は不良であることから, BTを早期に診断しhighrisk症例に対してはSDD, ENを積極的に施行することが重要であると考えられた.
  • 趙 秀之, 高階 謙一郎, 大垣 雅晴, 川上 定男, 藤田 佳宏
    2003 年 23 巻 3 号 p. 499-504
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳女性, 腹部膨満, 食欲不振を主訴とし当院受診となった. 胸部単純X線検査にて両横隔膜下にfree airを認め, 腹部単純X線検査にて小腸拡張像およびniveau形成を認めた. また腹部単純CTにて腹水の貯留と, 肺野条件では約10cmのぶどうの房状の腫瘤を認めた. 消化管穿孔を疑い開腹術を施行した. 回腸末端より約80cmの部位に手拳大の嚢胞性腫瘤を認め小腸嚢腫様気腫症 (pneumatosis cystoides intestinalis;以下, PCI) と診断し, この部分を含む小腸切除術を施行した. 摘出標本では, 粘膜面には明らかな病変は認めず, 漿膜下に多数の気腫性嚢胞を認めた. 病理所見では, 粘膜面の一部に高度な炎症細胞の出現を認め, その粘膜下, 筋層内にも気泡を認めた. これらのことより, 本症例は粘膜面の微細な損傷部位より気泡が侵入し, 発症したものと考えられた.
  • 勝野 秀稔, 丸田 守人, 前田 耕太郎, 内海 俊明
    2003 年 23 巻 3 号 p. 505-508
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    極めてまれな腹壁正中ヘルニア嵌頓例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する. 症例は80歳女性で. 1~2年程前から臍上部の腫瘤を自覚したが放置していた. 最近になり間欠的腹痛を伴い来院した. 上腹部に手拳大の腫瘤を触知し, 腹部CT検査で正中の筋膜欠損部より横行結腸が脱出, 嵌頓していた. 腹壁正中ヘルニア嵌頓の診断で緊急手術を施行した. ヘルニア門まで剥離後, 嚢を開放したところ, 内容は横行結腸および大網であった.壊死所見は認められなかったため, 腹腔内に還納可能で他に筋膜欠損部がないことを確認後, 前鞘と後鞘を2層に縫合し, ヘルニア門を閉鎖した. 術後は経過良好で現在まで再発は認められない. 腹壁正中ヘルニアは本邦では比較的まれな疾患であり, 結腸嵌頓例は極めてまれで定型的な術式がない. 詳細が明らかな本邦62例の集計も合わせ文献的考察を加えて報告する.
  • 谷崎 裕志, 菅井 桂雄, 旗手 和彦, 小山 尚也, 吉野 信哉, 河野 至明
    2003 年 23 巻 3 号 p. 509-513
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    膵外傷保存的治療4年後の再発性膵仮性嚢胞に対し内視鏡的膵嚢胞胃内痩術を施行した1例を経験した. 症例は24歳, 女性. 主訴は背部痛. 既往歴として4年前に膵外傷があり, 主膵管完全断裂 (IIIa) を認め, 骨盤腔内にまで達する膵仮性嚢胞を形成したが, ソマトスタチン誘導体を使用することにより膵仮性嚢胞は徐々に縮小し, 保存的治療にて軽快した. 膵外傷治療後, 定期的に外来で経過観察していたが, 今回, 腰背部痛にて来院したO腹部CT, USにて膵体尾部に径6×5cm大の膵仮性嚢胞を認めた. 再発性膵仮性嚢胞と診断した. 入院後絶食とし, 点滴にて経過をみたが膵仮性嚢胞の大きさには変化を認めず, 入院3週目に内視鏡的膵嚢胞胃内痩術を施行した. 施行後7日目に膵嚢胞胃内痩化チューブを挿入したまま, 退院した. 退院後2ヵ月目に胃膵内痩化チューブを抜去した. 膵嚢胞胃内痩化チューブを抜去後は経過良好で合併症もとくになく, 抜去後1年3ヵ月経った現在も再発は認めていない.
  • 飯島 準一, 光定 誠, 小坂 至, 澤谷 哲央, 小川 雅子, 新井 浩士, 松浦 篤志, 若山 達郎, 石川 文隆, 田中 道雄
    2003 年 23 巻 3 号 p. 515-519
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は74歳男性。前日朝から増強する腹痛, 腹部膨満感, 嘔吐を主訴として翌朝当院救急外来を受診した。腹部単純X線上イレウス像を呈し, CTにてdouble target sign陽性で, 中央に低吸収域を認めた。超音波検査でも同様の所見で回腸回腸型腸重積と診断した。手術所見: 回腸末端より約40cm口側に回腸重積を認め, 用手整復後に腸管内に可動性良好な有茎性ポリープ状腫瘤を触知した。回腸部分切除術を施行し術後経過は良好で術後14日に軽快退院した。腫瘤は肉眼的に長径7cmの黒色のポリープ状を呈したが, 病理組織学的所見では内翻した真性憩室で出血壊死を伴い, また憩室頂部に異所性膵組織の迷入を認めた。膵組織には腺房細胞, 導管を認めHeinrichII型と診断した。成人例における憩室壊死の報告はわれわれの検索範囲では2例とまれである。
  • 森田 康, 河野 誠之, 島田 悦司, 中本 光春
    2003 年 23 巻 3 号 p. 521-524
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    術後胆嚢癌と診断された胆嚢軸捻転症の1例を経験したので報告する。症例は83歳, 女性。右上腹部痛を主訴に当科受診。血液検査で炎症反応を認め, 腹部超音波, CT検査では, 少量の腹水貯留, 胆嚢の著明な腫大ならびに頸部の壁肥厚を認めたが, 胆嚢頸部に結石の嵌頓はなく胆嚢管は不明瞭であった。急性胆嚢炎の診断で緊急手術を施行したところ, 胆嚢は胆嚢管を軸として時計回りに540°捻転していた。捻転を解除し胆嚢摘出術を行った。術後病理検査で胆嚢癌と診断され, 術中所見と合わせた総合進行度はStage IIであった。胆嚢癌合併胆嚢軸捻転症では, 胆嚢壊死, 穿孔による胆汁性, 癌性腹膜炎などの合併症を念頭におき, 早期の診断, 治療が重要であると考えられた。
  • 阪本 研一, 広瀬 一, 山田 卓也, 安村 幹央, 森 美樹, 仁田 豊生, 二村 直樹
    2003 年 23 巻 3 号 p. 525-530
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の男性。1ヵ月前に慢性関節リウマチの増悪のため前医に入院した。ステロイド投与量を漸増したところ下血が出現し, 上行結腸憩室出血と診断され内視鏡的止血術を施行された。右大腿静脈よりIVHカテーテルを挿入し, 高カロリー輸液と輸血を開始した4日後に右下腹部痛が出現し当科に紹介された。右腹直筋に一致する圧痛を認めるも, 発熱と腹膜刺激症状はなく, 白血球数は18, 100/μl, CRPは0.47mg/dlであった。USで右腹直筋は内部不均一でレンズ状に腫脹し, CT腹直筋鞘内にガス像と異物像を認めた。腹直筋血腫もしくは膿瘍を疑い手術を施行した。腹直筋鞘内にIVHカテーテルが迷入しており, 右大腿静脈から挿入したIVHカテーテルが下腹壁静脈内に達した後に血管が破綻し腹直筋壊死をきたしたまれな症例と判断した。
  • 平沼 知加志, 尾山 佳永子, 石川 暢己, 前田 一也, 石黒 要, 川上 和之, 金平 永二, 大村 健二, 渡邊 剛
    2003 年 23 巻 3 号 p. 531-534
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性。脳梗塞, 心房細動にて近医入院中, 腹部膨満, 右下腹部を中心とした腹痛, 発熱を認めたため, 麻痺性イレウスとして保存的加療していたが症状軽快せず, 当科紹介となった。腹部CT, MRI上, 胆嚢床に胆嚢は認められず, 肝門部に渦巻き様構造を認めた。また回盲部に, 内部に液体貯留を伴う厚い壁に囲まれた管腔様構造を認めた。胆嚢軸捻転症と診断し, 緊急手術を施行した。開腹すると胆嚢管から頸部にかけて捻転しており, 胆嚢底部は巨大な膿瘍を形成し, 右下腹部まで及んでいた。周囲との癒着は強く, 可能な限り剥離し胆嚢摘出術を施行した。術後は順調に経過し, 18日目に前医に転院となった。
  • 吉田 誠, 多保 孝典, 林 秀樹, 小野寺 久
    2003 年 23 巻 3 号 p. 535-539
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    57歳男性が階段から転落し左側腹部を打撲。その後上腹部痛が増強し3日後に救急搬送された。腹部CT検査などにて腹腔内遊離ガス像と胃壁の肥厚を認め外傷性胃破裂が疑われた。受傷後3日経過していることと, 腹膜刺激症状が限局していたことから保存的治療を継続した。胃透視と胃内視鏡検査にて胃体下部小蛮後壁破裂の確定診断を得た。破裂部の治癒過程は内視鏡にて経時的に観察し得た。経過中腹腔内膿瘍形成を認めたが, 経皮的ドレナージにて軽快した。外傷性胃破裂の治療は観血的整復が原則とされるが, 非観血的治療にて治癒した症例を報告した。
  • 同時性胃, 大腸重複癌の1例
    市橋 真一, 前田 清, 小坂 博久, 小野田 尚佳, 坂手 洋二, 雪本 清隆, 西口 幸雄, 平川 弘聖
    2003 年 23 巻 3 号 p. 541-545
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    全周性大腸癌のためイレウスをきたした症例に対し, ステントを留置することにより, 十分な術前検索, 腸管のpreparationが施行でき, 待期手術可能となった胃, 大腸重複癌の1例を経験した。症例は70歳, 男性で, 併存疾患として高度の慢性肺気腫を有していた。腹痛, 便秘のため, 近医受診。胃腫瘍, 横行結腸腫瘍を指摘された。腹部単純X線像にてniveauを認め, 横行結腸腫瘍によるイレウスと診断し, ステント留置を行った。留置直後より多量の排便が見られ, 症状は改善した。その後の検査にて胃, 大腸重複癌と診断し, 一期的に胃全摘術, 左半結腸切除術を行った。術後経過良好で, 現在, 明らかな再発は認めていない。大腸癌に対する術前ステント留置の適応については慎重な選択がなされるべきであるが, 本法は低侵襲で緊急手術, 複数回の手術を回避でき, 患者の精神的, 肉体的負担を軽減できることから, 症例によっては有用な方法であると考えられた。
  • 天野 良亮, 西森 武雄
    2003 年 23 巻 3 号 p. 547-551
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は78歳, 男性。上腹部痛, 全身倦怠感を主訴に当院へ入院した。入院時に高度の貧血があり, 上部消化管内視鏡検査にて胃体中下部大弯側に巨大潰瘍を有する3型腫瘍を認め, 生検で悪性リンパ腫と診断した。手術を施行したところ, 多量の腹水, ダグラス窩・腹膜・横隔膜に多数の硬結, 小腸・結腸間膜のリンパ節の数珠状の腫大があり, 切除不能と判断した。術後CHOP療法を開始したが, 第3日に腫瘍壊死による胃穿孔, 腹膜炎をきたしたため, 穿孔部大網充填術, 胃瘻造設術を施行した。術中所見では, 腹膜転移は消失していた。術後50日目の胃内視鏡検査では充填部は上皮化し, 潰瘍は著明に縮小していた。腹水細胞診も陰性であった。化学療法を継続し, 寛解となった。化学療法中の腫瘍穿孔の治療成績は極めて不良であるが, 今回われわれは胃悪性リンパ腫化学療法中の胃穿孔による腹膜炎に対して手術を施行し救命しえた。
  • 岡本 大輔, 浮草 実
    2003 年 23 巻 3 号 p. 553-556
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は51歳男性。精神分裂病にて近医通院加療をしていた。2002年6月30目頃から腹痛を訴え経過観察していたが7月5日, CTにて肝内門脈ガス像を認め当科を紹介された。汎発性腹膜炎の診断のもと緊急開腹手術を施行したが, 腸管の壊死は認めず虫垂が根部で穿孔していた。虫垂切除, 盲腸人工肛門造設術を施行し術後の経過は良好であった。急性虫垂炎が原因で門脈ガス血症を呈した症例は非常にまれであり, 文献的考察を加えて報告した。
  • 本邦38症例の嵌頓部位別の検討
    竹下 訓子, 前田 利郎, 関川 修司, 丸山 恭平, 矢田 善弘, 大同 毅, 文 圭三
    2003 年 23 巻 3 号 p. 557-560
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性。左上腹部痛と嘔吐を主訴に来院。入院時現症は上腹部が軽度膨満, 左上腹部を中心に圧痛を認め腸蠕動音は亢進していた。入院時検査成績は炎症反応, 胆道系酵素の軽度上昇を認めた。腹部単純X線検査で小腸のガス像と鏡面形成がみられイレウスと診断した。腹部US, CTで小腸の拡張, 萎縮胆嚢内に結石, pneumobiliaを認めた。小腸での単純性イレウスと考え, イレウス管を挿入し造影検査を行ったところ, 上部小腸で完全閉塞をきたしていた。続いて閉塞部位を狙い, 2mm sliceで腹部thin-section CTを行ったところ, 腸管内に比較的lowとhigh densitiyの混在する腫瘤を認めた。臨床経過と画像所見から胆石イレウスを疑い開腹術を施行した。閉塞部の空腸には長径約40mmの胆石が嵌頓, 胆嚢底部は十二指腸球部と穿通しており, 結石除去と胆摘, 瘻孔閉鎖術を一期的に行った。結石分析はビリルビンCa石であった。
  • 道本 薫, 成高 義彦, 我妻 美久, 大部 雅英, 勝部 隆男, 加藤 博之, 小川 健治
    2003 年 23 巻 3 号 p. 561-564
    発行日: 2003/03/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 誤飲した有鉤義歯の鉤部が頸部食道に深く刺入し, 内視鏡による摘出が困難なため緊急手術によりこれを摘出し, 良好な結果をえた1例を経験したので若干の文献を加えて報告する。症例は60歳の男性, 内服薬の服用とともに義歯を誤飲したが放置し, 翌日嚥下時に右頸部痛が出現したため, 当院耳鼻咽喉科を経て当科紹介入院となった。上部消化管内視鏡検査にて食道入口部直下に有鉤義歯を認めた。異物鉗子を用いて把持を試みても可動性はなく, 摘出は困難であり, 内視鏡的摘出も不可能と判断して外科的切開術で摘出した。術後経過は良好で, 術後第12病日に退院した。
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