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小松 大介, 小池 祥一郎, 金井 敏晴, 三原 基弘, 中村 俊幸, 清水 忠博, 岩浅 武彦
2003 年 23 巻 5 号 p.
709-712
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
1999年10月から2002年9月までに国立松本病院で高気圧酸素療法 (Hyperbaric Oxygenation Therapy: HBO) が施行された癒着性イレウス症例につきretrospectiveに検討を行った. 保存的療法として, 胃管およびイレウス管を併用せずHBOを単独施行した. 対象となったのは57例で, 男性34名 (60%), 女性23名 (40%) で, 平均年齢は62.8歳 (15~90歳) であった. 胃・大腸・直腸癌術後の症例が約半数 (51%) を占めていた. HBOによりイレウスが解除されたのは49例 (86%) で, 経口開始までの期間は平均2.4日であった. HBO無効は8例 (14%) 存在し, イレウス管により5例解除され, 3例で外科的治療を要した. 副作用は重篤なものはなく, 軽度の耳痛が認められたのみであった. HBOは低侵襲であり, 癒着性イレウスに対する保存的治療として積極的に試みられるべき治療法であると考えられた.
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北村 宏, 秋田 倫幸, 古沢 徳彦, 田中 研一, 小林 忠二郎, 井上 善博, 柳沢 温
2003 年 23 巻 5 号 p.
713-718
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
1997年1月より2002年4月までの6シーズンに経験したスキー, スノーボード (ボード) による腹部鈍的外傷102例を検討した. ボードに因る受傷はスキーの2倍で, 若年の男性が多かった. 受傷機転はスキーが転倒, 衝突, ジャンプ失敗 (17: 14: 3) の順に多く, ボードが転倒, ジャンプ失敗, 衝突 (38: 13: 12) の順に多かった. スキーでの損傷では腎, 肝, 脾の順に多く (13: 7: 4), ボードでは腎, 脾, 肝の順に多かった (29: 13: 5). 33例では腹部打撲のみで内臓損傷を認めなかった. 肝損傷12例, 腎損傷42例はすべて保存的に治療した. 脾損傷は17例中10例に手術を施行した. 脾損傷の手術のうち9例はボードによるもので10例とも脾臓摘出術が施行された. スキー, ボードいずれによる損傷においても約30%の症例に腹部以外の重度外傷を合併した. 腹部外傷においてもボードはスキーと比較し危険度が高く, 対策が必要と考えられた.
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三好 篤, 佐藤 清治, 古賀 靖大, 阪本 雄一郎, 北島 吉彦, 中房 祐司, 宮崎 耕治
2003 年 23 巻 5 号 p.
721-727
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
開胸開腹食道亜全摘術を施行した53例を対象とし, 術後の重篤な合併症のrisk factorおよびその病態について検討した. さらにエンドトキシンショック症例の特徴, 診断のポイントおよび血液浄化療法の有用性について検討した. 重篤な合併症を併発するrisk factorは, 宿主因子では耐糖能障害, 摂食障害, 術前細菌培養陽性, 侵襲因子では術中輸血の有無Neoadluvant therapy, 手術時間, であった. 術後合併症の予防には術前栄養および免疫能の改善が重要と考えられた. また, エンドトキシンショックは術後1日以内に発症し, hypovolemic shockなどの鑑別に時間を要した. 原因としては術前感染症が推察され, 術直前の感染症検査は, 合併症の鑑別診断と同時に予防にも有用と考えられた. エンドトキシンショックの救急処置としては, エンドトキシン吸着療法 (PMX-DHP) を含む血液浄化療法が有効であり, 速やかな施行と同時に感染源の治療を行うことが重要と考えられた.
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島田 英雄, 千野 修, 西 隆之, 田仲 曜, 木勢 佳史, 劔持 孝弘, 山本 壮一郎, 原 正, 田島 隆, 名久井 実, 幕内 博康
2003 年 23 巻 5 号 p.
729-734
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
食道癌術後の縫合不全は, 幾つかの要因が複合的に存在し発生することが推測される. 全身的要因, 局所的要因さらに, 用いられる再建臓器や再建経路によつても異なる. 医療技術が進歩し, 優れた機材が開発されても, 切除, 再建を必要とする外科手術では宿命的な合併症である. 治療法も各病態により大きく異なり, 局所の処置で対応できる症例, 臓器壊死を伴い緊急手術を必要とする症例, 縦隔膿瘍を併発し縦隔ドレナージ術が必要となる症例とさまざまである. 本項では縫合不全の診断と全身状態を悪化させないための適切な緊急処置とその後の管理法について解説した.
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石神 純也, 宮薗 太志, 夏越 祥次, 帆北 修一, 愛甲 孝
2003 年 23 巻 5 号 p.
735-739
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
当科の症例をもとに胃癌術後に再開腹手術が必要な疾患の臨床的特徴と治療上の留意点を述べた. 術後再開腹が必要となる疾患の発症が疑われた場合, CTや超音波検査, 各種X線検査を駆使してそれぞれの疾患の確定診断に迫らなけれぼならない. 一方で, 術後早期から患者さんのバイタルサインの把握, 腹部理学所見, ドレーン浸出液の性状, 血液生化学検査所見を詳細に観察し, 手術の適応があるかどうかを総合的に判断しなけれぼならない. 胃癌術後合併症の大部分が保存的に治療可能であるが, 合併症の中には放置すると致命的な病態が存在する. 胃癌手術を施行するにあたっては, 術後に重篤な合併症を起こさないように術中留意することはもとより, これら合併症の治療の際には疾患の病態を熟知し, 開腹治療のタイミングを逃さないようにしなけれぼならない.
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廣瀬 和郎, 佐藤 嘉紀, 村上 真, 廣野 靖夫, 前田 浩幸, 五井 孝憲, 石田 誠, 片山 寛次, 山口 明夫
2003 年 23 巻 5 号 p.
741-748
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
胃癌切除例724例のうち消化管縫合不全は66例 (9.1%) で, そのうち臓器不全または多量の体腔内出血を生じた重症合併症は13例 (19%) であった. すべて胃全摘例で, stageIII-IV, D2-D3郭清, あるいは, 膵や脾の合併切除を行った根治切除例が多かった. 多量出血を生じた5例 (2例に呼吸不全併発) には, 迅速な外科的ドレナージおよびInterventional radiology (IVR) に基づく動脈塞栓術または再手術を行い止血し救命できた. しかし, 2例が再出血し, 再度のドレナージとIVRによる止血を要した. その他8例では臓器不全のみ (肺5例, 腎1例, 多臓器不全2例) を生じた. このうち, 6例は臓器不全に対する迅速な治療とドレナージが有効であり救命できたが, 2例は腎不全あるいは重症誤嚥性肺炎から多臓器不全を併発し在院死亡した. 以上より, 胃癌術後の縫合不全に臓器不全や多量出血を併発した重症例においても, 大多数の症例は迅速で適切な治療を行うことにより救命が可能と考えられる.
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杉山 保幸, 川口 順敬, 田中 千弘, 松橋 延壽, 今井 寿
2003 年 23 巻 5 号 p.
749-756
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
過去8年間の大腸癌手術385例中, 術後早期の腹部合併症は29例で, このうち再開腹したのは, 縫合不全: 21例中8例, イレウス: 6例中3例, 虚血性大腸炎と特発性十二指腸穿孔が各1例であった. 縫合不全徴候の出現は再開腹群の方が保存的治療群と比較して早く, CRPや白血球数は高値を呈する症例が多かった. 縫合不全部が1/8周以下であった4例には吻合部に操作を加えずにドレナージのみとしてループ式ストーマを, 吻合部が半周以上離開していた2例には吻合部を切除後, 肛門側を盲端として単孔式ストーマを造設した. リークの部位が判然としなかった2例には腹腔内洗浄後にドレナージのみ行った. イレウスをきたした6例に対しては全例ともイレウス管を留置したが, 症状が改善せず, 造影検査で機械的閉塞が疑われた3例で再開腹した. 術後早期の重篤な合併症に対しては, 全身状態や腹部の局所所見, 血液検査データ, 画像所見などを総合的に判断して迅速に手術適応の有無を決定すべきである.
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平松 昌子, 菅 敬治, 住吉 一浩, 西村 東人, 谷川 允彦
2003 年 23 巻 5 号 p.
757-763
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
1996年1月から2002年12月までに行われた消化管悪性腫瘍手術1, 974例のうち28例 (1.4%) に術後出血が認められた. 原疾患では胆道癌・胃癌に多く, 術直後の非感染性出血は他臓器合併切除を伴う胃全摘や直腸切除後に, 縫合不全などの腹腔内感染に起因する出血は活性化膵液の漏出を伴いやすい幽門側胃切除や膵頭十二指腸切除後に多かった. 非感染群は1回のみの出血で予後も比較的良好であるが, 感染群では初回出血は術後14.3±9.8日と後期で, 平均2.4回の出血を繰り返し, 大出血の予兆となるsentinel bleedingを認めることが特徴である. 死亡率は57. 1%と予後不良で, 初回出血時に直ちに治療が行われた6例中5例は止血に成功したのに対し, 出血死亡例8例中5例はsentinel bleedingに対し経過観察が行われていた. 救命率向上のためには, 初回出血時に血管造影や3D-CT Angiographyなどを用いて仮性動脈瘤や新出血の有無を早期に診断し加療することが重要である.
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紛争予防の観点から
古川 俊治
2003 年 23 巻 5 号 p.
765-771
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
患者の治療上の自己決定権は「人格権」 (憲法13条) の一内容として基本的人権として尊重される. この趣旨からは, 手術と選択可能な他の保存的治療法の有効性と危険性について, 奏効率や合併症発症率の具体的数字 (何%程度など) をあげて説明することが重要である. また, 臓器によっては特に進行悪性腫瘍の手術成績は不十分であり, その状況を具体的に説明することも必要である. 患者の自己決定権を絶対視する必要はなく, 医師が自ら選択する合理的治療方法を患者に勧めることは医師の義務でもあるが, その実施には患者の同意が必要である. ただし, 今日, 特に, 侵襲的方法を避けて保存的療法を選択する患者の権利が強調されてきており, たとえ奏効率の低い保存的療法でも, それを患者が理解したうえで敢えて希望しており, 合理的適応の余地がないとはいえない場合, 医師自身が手術が適切と考えても, 患者が保存的療法を受け得るよう配慮する義務がある.
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濱畑 淳盛, 長谷川 俊二, 瀬田 真祐, 小島 伸, 山村 芳弘, 永田 博康, 伊藤 嘉智, 佐々木 勝海
2003 年 23 巻 5 号 p.
773-777
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
症例は, 51歳男性で右下腹部痛があり, 近医にて超音波検査で腸重積を指摘された. 当科初診時, 腹部CTでも右下腹部に腸管内層状をもつ腫瘤像を認め, 回盲部腸重積症が疑われた. しかし, 入院後, 腫瘤は触れなくなり, 腹部CTでも腸管内に縮小した層状構造の腫瘤像を認めるのみとなった. 腸重積像は消失し, 腸管内に隆起した腫瘤像を認めた. 注腸検査では, 虫垂重積症に特徴的なCoiled-spring signを認め, 内視鏡検査では盲腸内腔に突出する半球状の腫瘤と, その頂部に虫垂の開口部を認めた. 虫垂重積症および虫垂腫瘍などを考え, 開腹手術を行った. 盲腸・虫垂は炎症性に肥厚して一塊となっており, 回盲部切除を行った. 摘出標本では, 虫垂の開口部が開大し, 基部が一部翻転して半球状の降起を形成する虫垂重積症と診断された. 虫垂重積症はまれな疾患であるが, 回盲部腸重積症の原因として鑑別診断に加えなけれぼならないと思われる.
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特に術式の工夫について
太田 篤, 加納 宣康, 深澤 基児, 田邊 晴山, 小川 太志, 玉木 雅人, 山田 成寿, 渡井 有, 草薙 洋
2003 年 23 巻 5 号 p.
779-783
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
症例は62歳, 男性. 出血性胃潰瘍にて当院内科に入院歴あり. 今回胃潰瘍穿孔による脾周囲の腹腔内膿瘍, 腹膜炎の診断にて当科を紹介され, 緊急手術を施行した. 開腹洗浄ドレナージを施行し軽快退院したが, 腹腔内膿瘍再燃のため再入院した. その経過中に胃潰瘍からの出血がコントロール不能となり手術療法を選択した. 腹腔内に膿瘍腔が残存している状態であったため手術適応, 手術術式について慎重に検討し, 胃部分切除術を施行した. 経過は良好であった.
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大木 孝, 棚橋 美文, 竹吉 泉, 前村 道生, 安齋 徹男, 横江 隆夫, 大和田 進, 森下 靖雄
2003 年 23 巻 5 号 p.
785-788
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
イレウス管が誘因と考えられた空腸腸重積症を2例経験した. 症例1: 53歳男性. 2000年1月, 絞扼性腸閉塞の診断で小腸部分切除およびイレウス管によるsplinting施行後7日目より胃からの排液が増加した. エコーおよびCTで腸重積と診断し, 術後27日目に再開腹した. 前回吻合部の肛門側空腸が重積しており, 用手解除不能だったため小腸部分切除を施行した. 症例2: 68歳男性. 腸閉塞を繰り返すため, 2000年11月, 小腸部分切除およびイレウス管によるsplintingを施行した. イレウス管抜去翌日 (術後5日目), 左下腹部に軽度の圧痛を訴えた. エコーおよびCTで腸重積と診断し, 再開腹した. 前回吻合部の肛門側空腸が重積しており, Hutchinson手技による重積解除術を行った. 以上2例は, 腸重積先進部に肉眼上明らかな病変は認められず, イレウス管が誘因と考えられた. エコーやCTは腸重積の術前診断に有用であった.
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大森 浩明, 旭 博史, 入野田 崇, 斎藤 和好
2003 年 23 巻 5 号 p.
789-793
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
症例は47歳女性. 1999年5月29日より下腹部痛を認め当科受診. US・CTで左卵巣嚢腫と小腸の拡張を認めた. イレウスと診断し, イレウス管を挿入した. 小腸造影では通過障害はなく, 腸管運動は微弱であった. 卵巣嚢腫破裂によるイレウスを疑い開腹手術を施行した. 左卵巣嚢腫の破裂と回腸の一部に癒着と硬結を認めた. 術中に心室性頻拍から心停止となった. 蘇生術にて, 呼名反応を得るまで蘇生した. 嚢腫摘出術および腸管切除術を行った. 心エコー図では心臓の器質的異常は認めず, 下痢により生じた低K血症により不整脈を起こしたと考えられた. 術後経過は問題なく, 第19病日に退院した. 病理組織検査では回腸固有筋層に子宮内膜が島状に散在していた. 小腸子宮内膜症はまれで, 術前診断は困難といえる. 原因不明のイレウスの診断に際して本疾患を念頭に置く必要があると思われた.
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飛永 覚, 赤須 晃治, 佐島 秀一, 松尾 英生, 吉田 正, 明石 英俊
2003 年 23 巻 5 号 p.
795-798
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
症例は78歳, 男性. 急性腹症にて当院へ搬入された. 理学的所見では, 自発痛は強いが腹膜刺激症状や筋性防御は認めず, 腸管蠕動音は減弱していた. 腹部単純X線写真では, 異常ガス像を認めなかった. 心電図検査にて心房細動を認めた. 入院後保存的治療を施行したが改善せず, 腹部CTおよび血管造影検査で, 中結腸動脈分枝部以下末梢の急性上腸間膜動脈塞栓症と診断され, 発症後34.5時間で緊急手術となった. 術中所見では, 腸管壊死は認められず, 中結腸動脈分枝部末梢に血栓を認めこれを摘出し手術を終了した. 発症後34.5時間経過し血行再建術のみで救命できた症例は本邦報告例ではまれであるが, 腸管壊死に至るまでの発生機転には, 閉塞部位や範囲および腸間膜血行動態の状況などが左右するものと考えられた.
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生方 英幸, 本橋 行, 中地 健, 春日 照彦, 片野 素信, 佐藤 茂範, 田渕 崇文
2003 年 23 巻 5 号 p.
799-803
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
術後不幸な転帰をとった壊死型虚血性大腸炎の1例を経験した. 症例は82歳, 男性. 主訴は下腹部痛. 腹部単純X線検査, 腹部CT検査では腹腔内遊離ガスはなく, 腹水も少量であり, 術前に確定診断はできなかったが, 汎発性腹膜炎を疑い緊急手術を施行した. 開腹すると, S状結腸が18cmにわたり壊死に陥っており腸管壁が穿孔寸前まで菲薄化していた. 支配動脈の血行は良好であり下腸間膜動脈血栓症は否定的であった. 壊死部位を切除し下行結腸にて人工肛門を造設した. 術後は経口摂取可能となったが突然肺硬塞を疑わせる病態を合併して急死した. 虚血性大腸炎は, 一過性型, 狭窄型は保存的に改善し予後良好であるが, 壊死型は進行性で腹膜炎をきたし外科的治療を要し予後不良である. 特に非穿孔例の術前診断は困難であるが, SIRSの所見と腹部理学的所見が緊急手術の重要な診断根拠となる. また術後は肺硬塞の合併に十分注意する必要がある.
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広松 孝, 小林 建仁, 太田 俊介
2003 年 23 巻 5 号 p.
805-809
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
胃癌穿孔は比較的まれな病態であり, その治療成績は不良である. 過去10年間の当科における胃癌穿孔例は4例で, 上部消化管穿孔41例中9.8%, さらに胃穿孔17例中23.5%を占め高率であり, 胃穿孔と確認されたときは悪性疾患を念頭に置く必要があると考えられた. 主たる占拠部位は, L領域2例, M領域1例, U領域1例で, 穿孔部位は前壁または前壁小湾だった. 4例すべてに幽門側胃切除を施行した. 肉眼型は3型が3例, 2型が1例, 組織型は低分化型腺癌が2例, 中分化型腺癌が1例, 高分化型腺癌が1例であった. 自験例ではいずれも術前診断できなかったことから肉眼的に良性潰瘍と診断しても必ず術中病理検査が必要であると考えられた. 穿孔例非治癒切除は穿孔治癒切除に対し, 累積5年生存率で大きく劣ると報告されており, 治癒切除が可能な症例は全身状態の許す限り根治術を施行すべきであると考られた.
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石井 要, 西村 元一, 藤村 隆, 清水 康一, 太田 哲生, 三輪 晃一
2003 年 23 巻 5 号 p.
811-814
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
腸骨採骨部に生じた腹壁搬痕ヘルニアの1例を経験したので報告する. 症例は66歳, 女性. り, その際に左腸骨採骨術が施行された. 2001年5月より, 主訴を自覚し, 当院を受診した. 左側腹部には圧痛のない膨隆を認めた. 骨盤部X線写真およびCT検査で左腸骨の骨欠損が見られ, 同部の筋層が離解し, そこから腸管の脱出が認められた. 以上より腸骨採骨部に生じた腹壁搬痕ヘルニアと診断し, 腸閉塞への移行も懸念されたことから, 手術を施行した. 手術は, 外腹斜筋腸骨付着部が断裂, そこからヘルニア嚢が露出していた. 嚢を開放の後, 切除および結紮縫合を行った. 筋層骨膜縫合の後, メッシュを創下に挿入した. 術後経過は良好で, 現在再発の徴候は見られていない. 腸骨採骨時には, 合併症として本例のような腹壁搬痕ヘルニアを念頭に起き, 予防を行うことが肝要と思われた.
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進士 誠一, 田尻 孝, 宮下 正夫, 古川 清憲, 高崎 秀明, 源河 敦史, 佐々木 順平, 田中 宣威, 内藤 善哉
2003 年 23 巻 5 号 p.
815-819
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
症例は61歳男性. 1995年8月に十二指腸潰瘍穿孔のため上腹部正中切開開腹下に幽門側胃切除術施行. 1996年5月頃より手術瘢痕部に直径約10cmの半球状に膨隆する腹壁瘢痕ヘルニアを生じ, 近医でフォローアップされていた. 2002年9月4日排便時に腹壁破裂を生じ, 救急外来受診. 小腸脱出を伴った腹壁破裂と診断され緊急手術となる. 腹壁破裂創は約10×20cmで, 脱出した腸管の色調は良好であった. 腹腔内の感染が危惧されたため, 腹腔内を洗浄後, 腸管を腹腔内に戻し, 一時的に皮膚一層のみを縫合した. 術後感染を合併せず順調に回復. 術後26日目の9月30日に待期的に腹壁形成術を行った. 腹直筋前鞘と後鞘はメッシュを用いて補強した. 腹壁瘢痕ヘルニアは腹部手術における比較的多い術後合併症であるが, 破裂に至る症例はまれである. 今回, 腹壁破裂を生じ二期的手術により治療し得た1症例を経験した.
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新宮 優二, 寺崎 正起, 後藤 康友, 久留宮 康浩, 夏目 誠治
2003 年 23 巻 5 号 p.
821-826
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
ジャーナル
フリー
症例は81歳, 男性. 右下腹部痛と右下腹部腫瘤を主訴に当院受診となった. 腹部超音波, 腹部CT検査にて虫垂粘液嚢腫を疑ったが, 来院翌日高熱をきたしたため膿瘍を合併した急性虫垂炎の可能性も否定できず緊急手術を行った. 手術所見では虫垂は85×60mm大の嚢腫状に腫大し, その根部で時計針方向に540度捻転していた. 捻転を解除し虫垂切除を行った. 摘出標本では虫垂内腔に粘液が貯留し, 病理組織学的所見では虫垂全層にうっ血と出血, 炎症反応が認められたが, 粘膜面に腫瘍性病変はみられなかった. 以上より軸捻転症をきたした虫垂粘液嚢腫と診断した. 虫垂粘液嚢腫軸捻転症はまれな疾患であり, 本邦報告例は自験例を含め9例認めるだけである. 今回われわれは虫垂粘液嚢腫軸捻転症の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加え報告する.
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松尾 浩, 小久保 光治, 近藤 哲矢, 三鴨 肇
2003 年 23 巻 5 号 p.
827-830
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
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フリー
症例は43歳, 男性. 2001年3月22日午後9時頃より腹痛を自覚し, 腹痛が強度となり4時間後に救急車にて当院に緊急入院した. 腹部は軽度膨隆し, 全体に圧痛と筋性防御を認めた. 血液検査にてCRPは陰性であったが, 白血球の上昇を認めた. 腹部CT検査にてfree airと腹水, 骨盤腔にlow density areaを認めた. 肛門よりビニール製のひもが1mほど脱出しており, 出血を軽度認めた. 直腸異物による消化管穿孔の診断のもとに緊急手術を施行した. 開腹すると便汁を混じた腹水を認め, 骨盤腔に直径5.5Cm高さ19cmの哺乳びんを認めた. 腹膜翻転部から10cmの直腸前壁が長軸方向に10cmにわたり穿孔しており, 同部より哺乳びんが腹腔内に露出していた. 手術は同部を縫合閉鎖し, 横行結腸にて双孔式人工肛門を造設した. 経肛門的に異物が入った経過を何度も確認したが, 風呂場で転んだ拍子に哺乳びんが肛門から入ってしまったとのことであった. 術後6ヵ月後に人工肛門を閉鎖し経過良好である.
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青木 豪, 和田 靖, 横山 智, 吉松 軍平, 安達 尚宣, 富永 剛
2003 年 23 巻 5 号 p.
831-835
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
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高齢者に発生した盲腸軸捻転症の1例を経験した. 症例は85歳女性. 腹痛を主訴に近医を受診. 腹部CT像にて腹水の貯留および腸管の拡張を認め, 腸閉塞の診断で根治術目的に当院を紹介された. 腹部単純X線像にて左下腹部に巨大結腸ガス像を認めた. 結腸癌による腸閉塞を疑い, 同日緊急手術を施行した. 開腹したところ, 後腹膜との固定が不十分な回盲部が時計方向に360℃捻転し, 盲腸が著明に拡張していた. 盲腸軸捻転症と診断した. 腸管の虚血性変化が強く, 回盲部切除術を施行した. 術後経過は良好であった. 本症はまれな疾患であり, 特に高齢での発症が少ないとされてきたが, 今後増加が予想される. 高齢者の腸閉塞であっても, 本症を念頭に置いて診療にあたる必要がある.
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柳本 泰明, 里井 壮平, 小池 保志, 寺川 直良, 川口 雄才, 高井 惣一郎, 灌 雅憲, 上山 泰男
2003 年 23 巻 5 号 p.
837-842
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
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急性肺障害 (ALI) の原因となる疾患はsepsisが最多であり, 生体の侵襲に対する反応として多臓器不全の一つとして発症することが多い. 最近, 手術手技や術後管理の向上により高齢者や免疫機能低下症例に手術治療が選択される機会が増加してきた. 明らかな感染巣の同定できないsepsisの存在がクローズアップされ, 治療上大きな障害となってきている. 血液浄化療法は, エンドトキシンや各種メディエーターを除去し, 過剰に産生されたhumoral mediatorの除去や, さらには組織浮腫の除水効果を介して, 組織酸素代謝の改善をも期待できる. 今回われわれは, 縫合不全や腹腔内膿瘍などの感染巣が不明な術後sepsisに併発した急性肺障害に対して, 血液浄化療法が奏功した3例を経験したので報告する.
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浦松 雅史, 斉田 芳久, 長尾 二郎, 高瀬 真, 崔 勝隆, 奥村 千登里, 中村 陽一, 中村 寧, 草地 信也, 柁原 宏久, 炭山 ...
2003 年 23 巻 5 号 p.
843-847
発行日: 2003/07/31
公開日: 2010/09/24
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当科では, 左側結腸癌イレウス症例に対し術前に金属ステントを挿入し狭窄を解除するStent Endoprosthesis for Colorectal Cancer (SECC) を施行し良好な手術成績を得てきた. 今回われわれは低左心機能および腎機能障害を伴った直腸癌イレウス症例に対しSECCを施行し, 待期手術を行い軽快した症例を経験したので報告する. 症例は66歳男性. 既往歴は心房細動, 糖尿病, 虚血性心疾患. 1999年12月11日呼吸困難が出現し, 当院救急外来受診. 入院時NYHAIIIの低左心機能およびイレウスと診断. 大腸内視鏡検査で, 直腸に全周性の腫瘍を認め, SECCを施行した. これによりイレウスは解除され全身状態改善し, 機械的前処置の後, 2群郭清ハルトマン法を施行した. 根治度はAであった. 術後経過は良好で, リハビリ, 心機能精査の後, 術後37日目に退院となった.
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