日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
Print ISSN : 1340-2242
ISSN-L : 1340-2242
23 巻, 6 号
選択された号の論文の24件中1~24を表示しています
  • 池内 浩基, 中埜 廣樹, 内野 基, 井上 貴至, 野田 雅史, 柳 秀憲, 山村 武平
    2003 年 23 巻 6 号 p. 853-858
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    クローン病手術症例300例, 手術回数415回のうち, クローン病による緊急手術, 30回の術式およびその予後について検討した. その手術適応は穿孔: 12例, 膿瘍: 10例, 出血: 6例, イレウス: 2例であった. 穿孔症例では, 小腸穿孔は原則的に病変部を切除後, 吻合を行う, 1期的手術を, 大腸穿孔では, 初回の手術で病変部位を切除し, 口側腸管を人工肛門とした後, 2回目の手術で人工肛門閉鎖術を行う, 2期的手術を選択した. 膿瘍形成で緊急手術となった症例は術前に十分なドレナージができなかった症例であり, 局所の状態が不良で2期的手術が選択されていた. 出血症例は原則的に1期的手術を選択したが, 再出血時に緊急手術となった1例は2期的手術を余儀なくされていた. 予後は, 死亡症例はなく, 1期的手術を行った1例に縫合不全を認めた. 以上より, クローン病緊急手術症例では, 全身状態として, 手術時すでに, ショック状態の患者や, ステロイドを長期に使用し, 全身状態の不良な患者では, 分割手術を選択すべきであると思われた. また, 局所所見として, 吻合部腸管の浮腫が著明で, 1期的吻合によって, 縫合不全が危惧される症例では, 分割手術を考慮することが, 術後合併症を減少させるために重要であると思われた.
  • 小川 不二夫, 福島 亮治, 稲葉 毅, 荻原 崇, 岩崎 晃太, 荒井 武和, 安達 実樹, 沖永 功太
    2003 年 23 巻 6 号 p. 859-864
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    当教室では1987から1995年の間に十二指腸潰瘍穿孔に対して行った保存的治療の経験から, 原則的に緊急内視鏡にて確定診断をした後, (1) 重篤な合併症がなく全身状態が安定, (2) 腹膜刺激症状が上腹部に限局, (3) 画像診断上腹水の貯溜が少量 (主として上腹部に限局), (4) 発症から来院までの時間が12時間以内である症例, に対して保存的治療をまず行う方針とし, その妥当性について検討した. 1996年4月から2002年10月の間にこの条件に適合した十二指腸穿孔例は27症例であり, うち25例が保存的に治癒した. 手術に移行した1例は24時間後も腹膜刺激症状が改善されず腹腔鏡下手術を施行したが, 術中所見から保存的治療継続の可能性も示唆された. もう1例は腹膜刺激症状が急速に増強し腹水の増加が認められ, acidosisも出現したため保存療法継続は困難と判断し開腹術を施行した. 十二指腸潰瘍穿孔は一定の条件を設定すれば大多数の症例で保存的治療が可能であると考えられた.
  • On-line HDFの臨床経験
    荒田 慎寿, 岩下 眞之, 石川 淳哉, 田原 良雄, 森村 尚登, 森脇 義弘, 山本 俊郎, 菅原 浩二, 杉山 貢
    2003 年 23 巻 6 号 p. 865-873
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    急性肝不全における毒性因子の除去を目的にさまざまな人工肝補助療法が施行されてきた現在ではアンモニアと, 主たる毒性因子が想定される中分子量物質の除去を目的にCHDF, HDFが選択されているが, われわれは簡便性, 効率, 経済性を念頭にon-lineHDFを導入した. on-lineHDFは肝機能の廃絶が推定される状況下でも脳症からの覚醒に有用で, 憂慮される感染性合併症の発症もなく安全に施行し得た. 腎代償治療で認められるdose-dependent effectについては, 今後の検証を要するが, 肝不全治療においても期待できるものと考えられる. 一方, 合成能代償としての血漿交換療法は, 保険診療上の制約があり強力な肝補助療法の妨げとなっており, 今後の検討課題である.
  • 永野 靖彦, 渡会 伸治, 松尾 憲一, 森岡 大介, 田中 邦哉, 舛井 秀宣, 遠藤 格, 関戸 仁, 嶋田 紘
    2003 年 23 巻 6 号 p. 877-881
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    1992年から2000年までに当教室で施行された胆道再建を伴わない肝切除術を313例に施行した. 術後出血は6例 (1.9%) で, このうち4例が再手術による止血を必要とした. 保存的治療例は2例で, 2例ともに術後肝不全を併発し, 1例は在院死亡した. 出血部位は, 副腎, 腹壁, 横隔膜, 胸骨後面, 肝切離面であった. 肝切除後出血の危険因子は手術時間, 出血量, 切除重量, 阻血時間であった. 術後出血の予防は凝固因子欠乏による出血傾向に対し, 術前にビタミンK投与や新鮮凍結血漿による凝固因子補充, 血小板の補正を行い, 術中は出血量を抑え, 術後も凝固因子をモニターしながら適宜新鮮凍結血漿を投与する必要がある. 手技的な面は, 十分な術中の止血操作を心がけるべきであり, 閉腹前には出血のないことを反復確認する. 減少傾向が見られない新鮮血出血が認められた場合, 出血量のいかんにかかわらず速やかに再開腹止血術を施行すべきである.
  • 児玉 孝仁, 木下 壽文, 原 雅雄, 西村 一宣, 青柳 成明
    2003 年 23 巻 6 号 p. 883-889
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    当科で経験した膵頭十二指腸切除術 (PD) 後の腹腔内出血症例について, 治療別による有効性, 問題点を検討した. 1965年1月から2001年12月までの期間に施行したPD症例407例のうち, 術後腹腔内出血をきたした13例を対象とした. 治療別では開腹止血術8例, 保存的治療 (輸血, 止血剤投与例) 3例, 動脈塞栓術 (TAE) 2例. 開腹止血術のうち軽快退院の症例は2例のみで, その他は在院死. TAE群は2例とも軽快退院, 保存的治療群1例のみ軽快退院で2例は在院死であった. 腹腔内出血の13例中8例 (61.5%) は在院死の経過であった.以前は開腹止血術が唯一無二の治療法であったが, 開腹術のみで正確な出血源の同定は困難であり, 癒着剥離操作で副損傷による出血をきたす危険もある. 血管造影の技術, 器機が発達してきた現在では, 血管造影を行い出血源を同定し, 可能な限りTAEを第一選択とすべきと考えられた.
  • 予兆出血を中心に
    唐澤 幸彦, 石村 健, 萩池 昌信, 岡野 圭一, 合田 文則, 臼杵 尚志, 前場 隆志
    2003 年 23 巻 6 号 p. 891-898
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    当科で経験した肝胆膵術後の大量出血例8例 (救命3例, 死亡5例) を検討した. 消化管内への出血が2例, 腹腔内出血が6例で, それぞれ1例ずつにInterventional radiology (IVR) による止血に成功した. 死亡例はすべて膵切除例で, 5例中4例に感染性膵液漏を伴っていた. 死亡例には全例開腹止血術が行われており再出血, MOF, DICなどで失った. 膵液漏を伴った出血例の手術~膵液漏確認までは2~13日, 手術~大量出血までは10~22日で, 大量出血の0~6日前に予兆出血と思われるドレーン内出血を認めた. 大量出血後の予後を不良とする因子は膵切除後の感染性膵液漏であり, 早期積極的ドレナージ・洗浄などの必要性が再認識された. また, 大量出血前に予兆出血が認められるため, この時点で血管造影を行いIVRによる治療をfirst choiceとすべきと考えられた.
  • RTBDチューブに起因する胆道出血症例に対する救急処置
    佐々木 誠, 古川 正人, 徳永 祐二
    2003 年 23 巻 6 号 p. 899-904
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    2002年までに125例の膵頭十二指腸切除術を行い, 膵腸吻合縫合不全が6例, 5.0%に認められた. このうち1例では, 仮性動脈瘤の破裂による腹腔内出血とRetrograde Transhepatic Biliary Drainage (RTBD) による胆道出血が認められたが, 2回のTAEにより救命できた.膵頭十二指腸切除術後の縫合不全では, 腹腔の十分なドレナージとRTBDチューブの持続吸引による空腸脚の減圧が重要である. また, 腹腔ドレーンやRTBDチューブから少量でも出血があれば, 仮性動脈瘤の破裂を疑って直ちに血管造影を試みるべきと思われる.
  • 二度の開腹止血術を行い救命し得た1例
    横山 正, 江上 格, 笹島 耕二, 宮本 昌之, 中村 慶春, 山村 進, 廣井 信, 福原 宗久, 内田 英二, 田尻 孝
    2003 年 23 巻 6 号 p. 905-909
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術後の動脈破綻による二度の腹腔内大量出血に対し, 開腹止血術で救命し得た症例を経験した. 患者は59歳, 男性. 精査にて, 十二指腸浸潤を認める膵頭部癌と診断, 膵頭十二指腸切除術を施行した. 術後は順調に経過していたが16日目に腹腔内出血によるショック状態を呈したため, 緊急開腹術を施行した. 初回手術時に誤って損傷した総肝動脈が出血点であり, これを縫合止血した. しかし, この手術後11日目に再び出血, 動脈塞栓療法が不成功であったため再度の緊急開腹術を施行した. 出血部位は前回と同部位であったが, 血管壁脆弱のため縫合修復不可能であり, やむを得ず刺入結紮を行い止血した. 術後, 軽度の肝機能障害を認めたが比較的速やかに軽快し, 初回手術後から88日目に退院となった. 膵切除術後の腹腔内出血に対し二度にわたる開腹止血術で救命し得た例はまれと考えられた.
  • 再建後12日目に両血管吻合部よりの大量出血に対して施行した緊急処置
    小関 萬里, 宮田 正彦, 北川 透, 伊藤 壽記
    2003 年 23 巻 6 号 p. 911-917
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    術後の大量腹腔内出血に対して, 緊急開腹術により救命が可能であった症例を経験した.症例は65歳女性. 肝門部胆管癌に対して拡大肝左葉切除兼固有肝動脈ならびに門脈合併切除を施行した. 門脈遮断時間は21分, 肝動脈遮断時間は14分ならびに修復のために後刻6分追加した. 術後肝切離面よりの肝汁漏出をわずかに認めたほかは経過良好であったが, 術後12日目に大量の腹腔内出血をきたし, 緊急開腹術を行った. 胆管空腸吻合部の縫合不全や出血は認められなかったが, 肝動脈再建部ならびに門脈再建部より出血しており, 門脈内には血栓の形成を認めた. アンスロン・チューブ ® による門脈・下大静脈バイパスを造設後, 肝動脈については吻合に適さないと判断し結紮切離した.門脈については左大伏在静脈片を間置することにより再再建した. 肝血流遮断時間は3時間であった. 術後, 再出血や多骸器不全に陥ることなく再手術後214日目に退院した. 近年, 術後の腹腔内出血に対してはinterventional radiology (以下, IVR) を第一選択に勧める報告も多い. 開腹術についてはその過大な侵襲より適応には慎重であるべきであるが, 本症例のように肝動脈と門脈双方の血管吻合部に破綻を疑われる場合は躊躇なく開腹手術を行い, 極力肝循環の保持に努めるべきである.
  • 頻回の消化管出血により8回のpolysurgeryに至った特異な1例
    石川 英明, 三和 武史, 豊坂 昭弘, 安藤 達也, 能勢 勝義, 関 保二, 澤井 利夫, 飯干 泰彦
    2003 年 23 巻 6 号 p. 919-925
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    先天性胆道拡張症の胆道再建術後に頻回の消化管出血を呈し, 術後1カ月間に6回の再手術を含み計8回の手術と約30, 000mlにも及ぶ大量輸血を要した7歳女児の1例を報告した. 嚢腫型胆道拡張で膵胆管合流異常を認めた. 術前, 経皮経肝胆管ドレナージ (PTCD) を施行したがhemobiliaを認め術前輸血を要した. 肝外胆管切除・総肝管空腸吻合術後に頻回の消化管出血を認め, このため種々の止血術を施行したが止血し得ず, 6回目の再手術で肝側のRoux-Y脚を全切除することでようやく止血し得た. 6カ月後Roux-Y再々建術を施行し退院した. 20年後の現在, 肝機能は全く正常でCT上胆道系にも問題はない. 以上, 極めて特異な症例で問題点, 反省点を検討し報告した.
  • 渡井 有, 山田 成寿, 玉木 雅人, 加納 宣康
    2003 年 23 巻 6 号 p. 927-930
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    3歳男児の腹腔内異物 (針) に対しImage Scopeを併用し腹腔鏡下摘出術を施行した. 今回, 腹腔内異物は偶然発見され, 臨床症状は認めなかったが上部消化管造影・腹部CTより腹腔内異物であると診断した. 手術は全身麻酔下に3ポートにて施行し, 大網内に迷入した針を容易に摘出することができた. 手術時間は23分で, 第3病日に経過良好にて退院した.
  • 木山 茂, 片桐 義文, 加藤 喜彦, 味元 宏道, 鬼束 惇義
    2003 年 23 巻 6 号 p. 931-934
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は55歳男性. 2002年4月10日より左下腹部痛, 発熱を認め近医を受診した. 抗生剤投与を受けるも症状の改善を認めず, 4月17日当科受診となった. 受診時, 左下腹部に腹膜刺激症状を認めたOCTでS状結腸間膜の肥厚, 腸間膜内のガス像を認め, S状結腸憩室穿通が疑われた. 症状, 炎症所見が改善していることより, 絶飲食, 抗生剤投与にて経過観察し, 一旦, 腹部症状, 炎症所見は改善した. しかし4月30日 (入院後15日目) 発熱, 腹痛があり, CTで門脈ガス血症およびS状結腸間膜内のガスの増大を認めたため, 同日緊急手術を施行した. S状結腸間膜内に膿瘍が形成されており, 膿瘍が腹腔内に穿孔していたため, Hartmann手術を施行した. 摘出標本にて憩室が確認され, 憩室と膿瘍に交通が認められた. S状結腸憩室穿孔の経過観察中, 門脈ガス血症を呈した1例を経験し手術により救命し得たので, 文献的考察を加えて報告する.
  • 森 直治, 岩瀬 正紀
    2003 年 23 巻 6 号 p. 935-938
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    経肛門的に小腸脱出を生じた特発性直腸穿孔の1例を経験した. 症例は88歳の女性. 排便時, 肛門からの腸管脱を生じ救急車にて当院救急外来を受診. 来院時, 肛門より小腸が1m以上にわたって脱出, 脱出小腸は絞扼され暗赤色調であった. 腹部CT検査を施行したところ, 直腸内に小腸が陥入し体外へ脱出していた. 直腸穿孔に伴う小腸脱と考え, 緊急手術を行った. 全身麻酔下に開腹すると汚染腹水はなく, 小腸は直腸S状部の前壁を貫いて直腸内に入り込み, 経肛門的に体外へ脱出していた. 脱出小腸を腹腔内に戻すと, 直腸S状部前壁は長軸方向に3.5cmにわたり破裂, 周囲の直腸壁に炎症所見や浮腫などの異常は認めなかった. 小腸の虚血性変化は可逆的で, 手術は穿孔部を縫合閉鎖し, 腹腔内を入念に洗浄するにとどめた. 術後の経過は良好で, 第15病日軽快退院された.
  • 加藤 賢一郎, 茂木 克彦, 中村 理恵子, 白坂 健太郎, 岡田 慶吾, 村山 剛也, 米山 公康, 戸枝 弘之, 今津 嘉宏, 菊山 茂 ...
    2003 年 23 巻 6 号 p. 939-943
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    後腹膜血腫は早期診断が難しく, ショックとなり初めて発見されることも少なくない. 今回, われわれは心臓カテーテル検査後に生じた巨大な後腹膜血腫を経験した. 症例は71歳の男性. 胸痛を認め緊急入院となる. 心臓カテーテル検査にて急性心筋梗塞と診断しPTCAを施行した. 約10時間後に突然の血圧低下を生じた. 血液検査でHbが9.4g/dlより6.6g/dlと低下し, 側腹部の軽度膨隆を認めた. 腹部CT検査にて後腹膜に低吸収域を認め, 巨大後腹膜血腫と診断した. 鼠径部の穿刺部位には肉眼的に異常なく, 自覚症状も認めなかった. 抗凝固療法を中止し, 輸血を行い経過観察とし, 急性心筋梗塞の症状安定を待ち手術を施行した. 穿刺部は適切であったが, 留置したシースと血管壁の隙間より漏れた血液が大腿血管鞘を通過し, 後腹膜へと流れ込み巨大血腫を形成していた. 心臓カテーテル検査後の後腹膜血腫に関しては本邦での報告例が少なく, 文献的考察を加えて報告する.
  • 森 一成, 佐々木 政一, 坂田 好史, 下村 知雄
    2003 年 23 巻 6 号 p. 945-949
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性. 主訴は発熱, 左上腹部痛. 1999年1月2日, 38℃台に熱発し, 1月11日には著明な貧血と血小板減少をきたしたため, 原因精査を目的に入院した. 1月14日より左上腹部痛が出現, 増強し, 腹部超音波検査にて脾腫と少量の左胸水の貯留があった. 1月16日のdynamic CTにて脾臓iは全くenhanceを受けず, 脾静脈も脾門部から4, 5cmの間がenhanceされなかった. 脾梗塞の術前診断にて同日, 緊急に脾臓摘出術を施行した. 摘出脾は重量882g, 脾門部の脾静脈内に新鮮な凝血塊と器質化した血栓が充満していた. 病理組織検査でもうっ血と出血の強い脾組織は壊死となっていた. 脾静脈血栓形成の原因を検索する目的で術後に諸検査を行った結果, Ham試験陽性, 砂糖水試験陽性の異常が認められ, 基礎疾患の発作性夜間血色素尿症 (PNH) が今回の脾静脈血栓の誘因と考えられた
  • 富田 一郎, 河野 透, 山田 理大, 千里 直之, 柿坂 明俊
    2003 年 23 巻 6 号 p. 951-955
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2011/06/03
    ジャーナル フリー
    直腸穿孔性汎発性腹膜炎に対してエンドトキシン吸着 (PMX), 持続的血液濾過 (CHF) が奏効した1例を経験した. 症例は75歳, 女性. 2001年3月8日, 発症から3日経過した後, 穿孔性腹膜炎の診断を受け当院を紹介され, 緊急手術を施行した. 直腸に穿孔を認めたため, 穿孔部直腸切除, 人工肛門造設, 腹腔内洗浄ドレナージ術を施行した. 手術直後より, 急激な血圧の低下, 心停止に陥り心肺蘇生術を施行した. dopamine, norepinephrineにて血圧維持が可能となったが, 帰室後4時間の時点でも循環動態の改善は得られず, PMXを施行した. PMX後も全身浮腫, 無尿, 肺水腫の増強が認められたため, 追加治療にCHFを施行した. CHFにより, 尿量の確保と循環動態, 呼吸状態の改善が認められた. 術後肺炎, 創感染など全身および局所感染症, 敗血症に対する保存的治療を必要としたが, その後の経過は良好で術後第135病日に軽快, 転院した.
  • 田邊 淳, 阿部 孝, 林 保, 和田 滋夫, 尾下 正秀, 目連 晴哉, 久保 光彦, 岡田 則子, 笠原 彰紀, 川野 淳
    2003 年 23 巻 6 号 p. 957-960
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は23歳, 男性. 急性腹症で緊急入院となった. 腹部単純X線検査にてイレウスが疑われた. 腹部エコーおよびCT検査にて骨盤腔内に径8×4cmの腫瘤陰影を認め, 注腸造影検査では同部位でS状結腸は著明な限局性狭窄像を呈した. 画像所見より腸間膜脂肪織炎が強く疑われた. 手術を施行せずに絶飲食と補液による保存的治療で対処し, 1ヵ月で腫瘤陰影は消失し軽快退院となった. 基礎疾患のない若年者では急性腹症の鑑別診断に腸間膜脂肪織炎を考える必要がある. この際, 発症時の自他覚症状が強くとも短期間の保存的治療で治癒が望めるため, 開腹術の適応は慎重に判断するべきである
  • 金城 僚, 砂川 宏樹, 青木 啓光, 西巻 正
    2003 年 23 巻 6 号 p. 961-965
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    小児腹部鈍的外傷で消化管損傷は少ない. 消化管穿孔は緊急手術の適応と考えられるが, 慎重な経過観察にて手術を回避できた症例を経験した. 症例は8歳男児. 鉄棒の上からバランスを崩して転落, 腹部を強打. 腹痛, 嘔吐を認め近医を受診後, 当科紹介・入院となる. 画像検査でfree airなく, 少量の腹水を認めた. 入院時, ごく軽度の腹膜刺激症状を認めたが, 全身状態が良好なため保存的治療を行った. フォローCTでは腹水増加なく, 腹部CTの際の経口影剤の腹腔内漏出なし. 38℃台の発熱を認めるも腹部所見は完全に消失していた. 受傷4日目には飲水を開始したが5日目の腹部単純写真で直腸膀胱窩に造影剤の貯留を認め, 再度絶食とした. その後, 保存的治療のみで解熱し, 腹部所見も良好, 8日目から食事を開始. その後問題なく経過し, 受傷後10日目に退院となった. 消化管穿孔を保存的に治療した特異な症例であるので報告した.
  • 田島 隆行, 諸角 強英, 宮崎 洋史, 古川 秋生, 仲丸 誠, 中村 哲也, 千野 修, 島田 英雄, 向井 正哉, 幕内 博康
    2003 年 23 巻 6 号 p. 967-971
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 男性. 下腹部痛を主訴に来院した. 腹部所見にて右下腹部に手拳大の腫瘍を触知し圧痛を認めたが, 腹膜刺激症状は認めなかった. 腹部単純X線写真にて右下腹部に鏡面像を認め, 骨盤CT検査では右下腹部に鏡面像を有する約8cm大の膿瘍を認めた. この膿瘍腔に対して超音波ガイド下に穿刺ドレナージを施行し約15mlの膿汁を吸引した. 約1ヵ月間保存的治療を行い全身状態を改善した. この間に精密検査を施行したところ, 膿瘍とS状結腸の間に痩孔を認めたため手術を施行した. 開腹すると虫垂の先端部に炎症を認め膿瘍腔を介してS状結腸と痩孔を形成していた. 虫垂-膿瘍-S状結腸部分切除を施行した. 病理組織では, 虫垂に強度の炎症が認められ, またS状結腸に炎症細胞の浸潤と内腔への穿通が認められた. 以上より虫垂炎が原因となり腹腔内膿瘍を形成し, S状結腸へ痩孔を形成したものと考えられた.
  • 新村 光司, 権田 厚文, 藤井 佑二, 桜井 秀樹, 関 英一郎, 石引 佳郎, 関根 庸, 櫛田 知志, 大坊 昌史
    2003 年 23 巻 6 号 p. 973-976
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は, 34歳, 女性. 1999年1月24日, 正常分娩で出産したが, 1月27日より右上腹部痛が出現した. 腹部超音波検査とCT検査で胆嚢底部側の壁肥厚を認めた. 臨床症状と徴候を考慮し急性胆嚢炎と診断し, 保存的に治療した. 1月29日より腹痛が増強したため, 1月30日, 腹腔鏡下手術を施行した. 胆嚢に頸部での捻転所見はなかった. しかし, 胆嚢のほぼ中央部が白色の索状物で絞拒され, 絞拒部より底部側では壁は暗赤色を呈し, 頸部側の変化は認めなかった. 索状物の胆嚢への癒着はなくこれを切離したところ絞拒は容易に解除され, その後, 胆嚢摘出術を施行した. 病理組織所見では絞拒部より底部側の胆嚢壁は出血壊死を生じていた.
  • 新垣 淳也, 久高 学, 山里 将仁, 羽地 周作, 安田 卓, 盛島 祐次, 平良 一雄, 宮里 浩, 照屋 剛, 大城 健誠, 山城 和 ...
    2003 年 23 巻 6 号 p. 977-980
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    大麻の種子によるイレウスと術前診断し, 緊急開腹術を行った1例を経験したので報告する. 症例は24歳, 男性. 2001年5月に腹痛, 悪心, 嘔吐が出現した. 腹痛が徐々に増悪したため, 当院急病センターを受診した. 腹部単純X線写真では拡張した小腸ガスとniveau像を認め, 更に右側腹部に径4cm大の楕円形の腫瘤陰影を認めた. 腹部CTでは, 小腸内に4cmの異物が確認でき, その内部には多数の粒様陰影を認めた. 消化管内の異物による閉塞性イレウスと診断し再度詳細に問診したところ, 大麻の種子を男性避妊具に詰め込み, 丸飲みしたとのことであった. 同日緊急手術を施行した. 開腹すると回腸に3×5cm大の硬い腫瘤を触知し, 腸管を過伸展させていた. 異物を用手的に肛門側へ移動させることは困難であったため, 腸管を切開し異物を摘出した. ラップに包まれた大麻の種子が男性避妊具内に入っていた.
  • 飯野 年男, 加藤 久美子, 高尾 良彦, 穴澤 貞夫, 山崎 洋次
    2003 年 23 巻 6 号 p. 981-983
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は20歳, 女性. 下痢と腹痛を主訴に来院, 右下腹部に圧痛を伴う鶏卵大の腫瘤を触知した. 超音波検査とCTにて腸重積症と診断し, 非観血的整復術を施行した. Ileocolic typeの腸重積症と思われ整復は比較的容易であつた. 整復翌日に腹部所見は消失した. 第3病日に便培養よりEsccherchia coli O757 (VT2) が検出された.
  • 森 隆太郎, 簾田 康一郎, 松山 隆生, 長谷川 聡, 名取 志保, 長谷川 誠司, 仲野 明, 小林 俊介
    2003 年 23 巻 6 号 p. 985-989
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は68歳, 男性. 急性心筋梗塞の診断で抗凝固療法を施行中であった. タール便を訴え, その2日後, 貧血の進行, 腹痛, 嘔気も出現した. 腹部CT検査で腸管壁の肥厚を認め, 腸間膜梗塞症を疑われ, 同日, 緊急手術となった. 手術所見では, Treitz靱帯から10cmの空腸からはじまり3m 30cmにわたって, 分節状に暗紫赤色から一部緑色の壊死腸管を認めた.非閉塞性腸間膜梗塞症 (NOMI) と診断し, 空腸壊死部を全切除し, 空腸人工肛門, 粘液瘻造設術を施行した. 全身状態が安定した後, 術後39日目に人工肛門閉鎖, 十二指腸水平脚部と残存回腸の側々吻合術を施行した. その後, 経口i摂取も可能となり, 初回手術後79日目に退院となった. 病理組織学的所見では, 血管壁を中心としたアミロイドの沈着を認め, 消化管アミロイドーシスがNOMIの危険因子となる可能性が示唆された.
  • 中村 慶春, 田尻 孝, 江上 格, 柏原 元, 高崎 秀明, 内田 英二, 笠井 源吾
    2003 年 23 巻 6 号 p. 991-994
    発行日: 2003/09/30
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例1: 80歳, 女性. 悪心嘔吐にて来院した. 右大腿部内側に圧痛が認められ, 同部の超音波, CT検査にて右閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断した. 症例2:77歳, 女性. 2年前より股関節痛が左右交代性に認められていたが経過観察されていた. 今回左股関節痛を伴ったイレウスを発症し, 超音波, CT検査にて左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断した. 症例3: 96歳, 痴呆症を伴った女性. 心不全で入院加療中に突然イレウス症状が出現した. 局所所見, Howship-Rombergsignが認められなかったため診断に難渋したが, イレウス管にて減圧後, 小腸造影, CT検査を施行し左閉鎖孔ヘルニア嵌頓と診断した. 全例腹腔法にてmeshinlay法を施行した. 症例2は腹腔鏡下に観察したところ, 対側の閉鎖孔ヘルニアと内鼠径ヘルニア合併例と診断し得た. 以上, 術前に診断し得た3例の閉鎖孔ヘルニアを経験した (内1例は既報例) ため, 本疾患の基本的な対応にっいて考察した.
feedback
Top