日本腹部救急医学会雑誌
Online ISSN : 1882-4781
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24 巻, 4 号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
  • 平田 敬治, 鬼塚 幸治, 柴尾 和徳, 岡崎 啓介, 鶴留 洋輔, 日暮 愛一郎, 中山 善文, 岡本 好司, 小西 鉄巳, 永田 直幹, ...
    2004 年 24 巻 4 号 p. 709-716
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    【目的】壊死型虚血性大腸炎 (本症) について, 本邦での近年における外科的治療後の予後を検討するとともに, 本症のなかでも非常にまれな病態で, 結腸のほぼ全域をおかす全結腸壊死と一般的に遭遇する限局性壊死との比較検討を行った. 【方法】自験例の検討とともに, 医学中央雑誌 (1991~2000年) で検索し得た壊死型虚血性大腸炎症例を全結腸型と限局型に分類し, 患者背景・症状・罹患範囲・手術術式・合併症・予後について回顧的検討を行った. 【結果】自験例では, 全結腸型4例中3例は救命できず, 限局型4例は全例救命できた. 検索し得た壊死型虚血性大腸炎は119例であった (平均70.1±13.6歳). 24例は術前に本症と診断された. 全症例中26例は他疾患により入院中の患者であった. 手術術式は一期的吻合27例, stoma造設64例, 吻合+stoma2例であった (不明26例). 術後死亡例は全体で31.1%にのぼり, 全結腸型 (25例) と限局型 (94例) に分類すると, 各々72.0%と17.9%で, 有意 (P<0.001, χ2 test) に全結腸型が予後不良であった. さらに全結腸型では術後死亡までの平均期間が有意に短かった (全結腸型7.4±6.1日, 限局型23.7±25.7日, p<0.05;student-t test). 全結腸型で死亡した18例中5例と限局型で死亡した14例中5例には残存腸管の壊死“on-going ischemia”を術中もしくは術後に認めた. 【結語】これまでの報告に比較し, 本邦における壊死型虚血性大腸炎全体での救命率は向上しているものの, skip lesionを伴いmulti-focalに虚血が起こっていると考えられる全結腸型は限局型と比べ明らかに予後不良でいまだにその致死率は高く, より早期の診断・外科的治療とともに, 本症における病態の具体的解明が望まれる.
  • 千野 修, 幕内 博康, 田仲 曜, 島田 英雄, 木勢 佳史, 西 隆之, 劔持 孝弘, 田島 隆行, 山本 壮一郎, 原 正, 水谷 郷 ...
    2004 年 24 巻 4 号 p. 717-725
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    教室で経験した特発性食道破裂は19例で胸腔内穿破型14例, 縦隔内限局型5例である. これらについて臨床的に解析し, その診断と治療方針の選択について検討した. 特発性食道破裂は嘔吐に伴った胸背部痛を主訴として発症することが多く早期の的確な診断が重要である. 胸腔内穿破型では緊急手術, 縦隔内限局型では保存的治療を選択し, 病態に応じた治療を行うことで良好な治療成績が得られた. 手術は開胸操作による層々2層縫合閉鎖術と経横隔膜・食道裂孔的胃底部縫着術の追加が有効であった. 術後合併症である膿胸と縦隔膿瘍の発生という過去の経緯と反省から, 最近では予防処置として通常の胸腔ドレーンに加え胸部下行大動脈沿いおよび横隔膜上背側にドレーンを挿入固定し, 持続洗浄と低圧持続吸引を行っており, 合併症の予防が可能であった.
  • 竹村 雅至, 大杉 治司, 李 栄柱, 金子 雅宏
    2004 年 24 巻 4 号 p. 727-732
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    食道癌手術の術後管理におけるエラスターゼ阻害剤投与の有用性について検討した. 胸部食道癌根治切除術施行31例 (ステロイド投与群 (S群): 11例・ステロイド・エラスターゼ阻害剤併用群 (SE群): 11例・非投与群 (N群): 9例) を対象とし, 術後血中Interleukin-6 (IL-6) ・エラスタービ・CRPの変動や, 呼吸機能障害 (P/F比) の程度について検討した. 3群間の背景因子や手術時間・出血量には差がなかった. IL-6・エラスターゼおよびCRPはN群がほかの2群に比べ高値で推移したが, 白血球数・AST・ALTの変動には差がなかった. P/F比の変動をみると, 術1日後より術5日後までSE群のみが高値で推移し, N群とS群間には差がなかった. 食道癌手術における術前ステロイド投与はサイトカインやエラスターゼの制御には有用であるが, 呼吸機能障害の抑制にはエラスターゼ阻害剤の併用が有用である.
  • 今枝 博之, 緒方 晴彦, 岩男 泰, 杉野 吉則, 熊井 浩一郎, 日比 紀文
    2004 年 24 巻 4 号 p. 733-739
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    大腸出血の診断および治療へのアプローチとして, 大腸内視鏡検査が第一選択として施行されることが多い. しかし, 緊急大腸内視鏡検査では前処置や挿入手技, 患者への侵襲性の問題などを考慮する必要がある. 止血法としてヒータープローブ止血法や高周波凝固法, レーザー凝固法, アルゴンプラズマ凝固法, エピネフリン加生理食塩水などの局注法, クリップ止血法, 結紮術などの有用性が報告されている. しかし, 内視鏡的止血が困難な場合には, interventional radiologyを施行し, 出血源が同定されればマイクロコイルなどを用いた塞栓術を施行する. 憩室出血に対してはバリウムによる注腸で憩室に充填することの有用性が報告されている. これらの手技でも止血が困難な場合には外科的な手術を考慮する. これまで各止血法の有用性を比較検討した報告はなく, 今後さらなる解析により, 状況に応じたより安全で確実な診断方法や止血法の工夫が望まれる.
  • 益子 博幸, 近藤 征文, 岡田 邦明, 石津 寛之, 秦 庸壮, 菊地 一公, 川村 秀樹, 植村 一仁, 田中 浩一, 横田 良一, 佐 ...
    2004 年 24 巻 4 号 p. 745-750
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    Crohn病は瘻孔形成をきたしやすいが, 一般に穿孔をきたすことはまれである. そこで, 穿孔をきたした症例の特徴と術式について検討した. 1985年から2002年までに当科で経験したCrohn病腸管穿孔6例 (4.9%) を対象とした. 性別はすべて男性で, 年齢は20から42歳, 平均30.2歳であった. 病型は全例小腸大腸型であった. Crohn病発症から穿孔までの期間は平均8.5年で, 1例は穿孔時の緊急手術でCrohn病と診断された (0から18年). 全例初回手術例であった. 穿孔部は回腸4例, 横行結腸1例, 回腸S状結腸瘻孔部1例であった. 穿孔部近傍に瘻孔を3例に認めた. 術式は穿孔部腸管切除・吻合1例, 切除・人工肛門造設4例, 人工肛門造設のみ1例であった. 術後合併症は2例 (33.3%) に認め, 縫合不全1例, Douglas窩膿瘍1例であった. 人工肛門造設した5例中二期的に吻合・人工肛門閉鎖を行えた症例は2例 (40.0%) のみであった. Crohn病の腸管穿孔症例では穿孔部以外の併存病変が少なからず存在し, ストーマ造設を余儀なくされる症例が多かった.
  • 橋本 拓造, 板橋 道朗, 亀岡 信悟, 飯塚 文瑛, 白鳥 敬子
    2004 年 24 巻 4 号 p. 751-757
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    Crohn病の中で膿瘍合併例では病勢を考慮した手術のタイミングが重要であり, これを明らかにすることを目的とした. 2003年3月末までに経験したCrohn病手術症例117例中, 膿瘍合併12例につき膿瘍部位および原因腸管別に検討した. 膿瘍部位は腹壁5例, 骨盤内3例, 腸腰筋2例, 傍結腸膿瘍1例, 腹壁および腸腰筋1例であった. 腹壁単独では保存的治療にて膿瘍縮小後, 手術施行した. しかし骨盤内膿瘍および腸腰筋膿瘍を合併した症例は保存的治療に抵抗性であり術前の穿刺ドレナージまたはfecal diversionを要した症例であった. 原因腸管別に検討すると右側結腸8例, 左側結腸4例であり保存的治療不応例は左半結腸であった. 膿瘍部位および責任腸管を考慮して保存的治療の適応, 手術のタイミングを考慮すべきであり保存的治療抵抗例はfecal diversionも含め早期のドレナージが必要と思われた.
  • 竹末 芳生, 香山 茂平, 大毛 宏喜, 村上 義昭, 末田 泰二郎
    2004 年 24 巻 4 号 p. 759-762
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    【目的】Crohn病患者の痔瘻に対し施行したドレナージシートン法の長期成績 (2年以上) を検討した.【方法】1990年9月から1999年9月までに, 複雑痔瘻を合併するCrohn病患者32例に, ドレナージシートン法を施行した. 観察期間の中央値は62ヵ月 (25~113ヵ月) であった. 10例 (31.3%) で肛門周囲膿瘍の再発を認め, マレコットカテーテルをそのうち8症例に挿入した. 【結果】シートンドレナージの, 全体での成功率は87.5%であった. シートン挿入後に行った手技は単純抜去 (n=9), 二期的coreout (n=7), 二期的layopen (n=4) であった. 12例ではシートン留置を継続中である. 単純抜去した症例のうち3例 (33%), 二期的core outまたはlay openを施行した症例の2例 (18.2%) で痔瘻が再発した. 最終的にcontinenceが保たれている症例は32例中の28例 (87.5%) であった. 二期的core outまたはlay openが施行された11例のうち10例でcontinenceが保たれた. 【結論】Crohn病の複雑痔瘻に対するシートンドレナージは感染の治療と肛門括約筋の温存という点で有効である. シートン抜去時に行った二期的coreoutやlayopenにより, 比較的良好な成績が得られた.
  • 木村 英明, 杉田 昭, 小金井 一隆, 山崎 安信, 原田 博文, 嶋田 紘
    2004 年 24 巻 4 号 p. 763-766
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    重症潰瘍性大腸炎に対する血球成分除去療法の治療成績から有効性や手術適応について検討した. 対象は血球成分除去療法を施行した重症潰瘍性大腸炎16例, 方法は白血球除去療法8例, 顆粒球吸着療法8例で, 全例ステロイド強力静注療法を併用した. 治療成績は, 著効はなく, 有効3例 (19%), 不変12例 (75%), 悪化1例 (6%) であった. 有効3例は, いずれも臨床症状が1週間以内に軽快し, 治療前に認めた深掘れ潰瘍が消失した. 不変, 悪化の13例中12例は手術を要した. 切除標本では, 12例全例に平均3.75領域の広範な深掘れ潰瘍を認め, 部位は横行結腸, 下行結腸 (各々75%) に多かった. 深掘れ潰瘍を伴った重症潰瘍性大腸炎に対する血球成分除去療法の有効率は19%と低く, 注腸造影で全大腸を観察して広範な深掘れ潰瘍を認める例や, 1週間程度の早期に臨床症状が改善しない例は, 手術などほかの治療法を選択するべきである.
  • 適応と術式の選択
    富田 一郎, 河野 透, 柿坂 明俊, 和久 勝昭, 上田 拓実, 海老澤 良昭, 山本 康弘, 小原 啓, 葛西 眞一
    2004 年 24 巻 4 号 p. 767-772
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎は近年患者数も増加し, 診療にあたる機会が多くなっている. 治療の第一選択は内科的治療であるが, 内科的治療に抵抗する症例も多く, われわれ外科医は外科治療の知識, 手術手技, 術後管理の向上に努めなけれぼならない. 緊急手術の適応は, 全身症状の急性増悪および重篤な急性合併症 (大腸穿孔・急性腹膜炎, 中毒性巨大結腸症, 大量出血) である. 当然完成された急性合併症の段階で難しい判断を要求されることはなく, いかに時期を逸することなく早いタイミングで手術を行うかがポイントである. 明確な治療の限界点, 客観的なスコアがなく, 複数の強力治療が併用されるなかで, 治療効果と限界を的確に判断することが要求される. 発熱, 腹痛, 下血が常に存在する特殊な病態のなかで的確な判断は勿論であるが, 手術後起こり得るすべての事柄に対して責任を持つ覚悟を決めることが手術判断への第一歩であると心がけている.
  • 硲 彰一, 的場 勝弘, 長島 淳, 松岡 功治, 岡 正朗
    2004 年 24 巻 4 号 p. 773-780
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に対する絶対的手術適応は中毒性巨大結腸症, 穿孔, 大量出血, 内科的治療抵抗性で全身状態が急速に悪化し敗血症に移行する可能性の高い症例, および癌化などであり, 可及的速やかに手術を行う. 緊急手術の適応として中毒性巨大結腸症, 穿孔, 大量出血があげられるが, このような症例では合併症の発生率が高く, 基本術式は開腹下結腸全摘・回腸人工肛門・直腸粘液痩としており複数回にわたる手術が必要となる. したがって内科的治療抵抗性症例においては病態が重篤化する前に手術を行うべきであり, 重篤化予想判断基準の整備が望まれる. 一方, 回腸嚢肛門 (管) 吻合術による術後排便機能温存や鏡視下手術による整容性の向上など, 安全・確実で術後quality of life (QOL) の高い術式が確立されたことから, 当科においても相対的適応症例が増加した. 腹腔鏡補助下大腸全摘・回腸嚢肛門 (管) 吻合術の適応は待機手術症例ならびに循環動態の安定している準緊急手術症例としている.
  • 前田 清, 八代 正和, 西原 承浩, 井上 透, 西口 幸雄, 平川 弘聖
    2004 年 24 巻 4 号 p. 781-784
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎に対する手術は従来, 二期もしくは三期手術が一般的であったが, 当教室では1997年より一期的手術を導入しており, その成績を中心に述べる. 潰瘍性大腸炎手術症例84例中49例 (58%) に一期的手術を施行した. 一期的手術を施行した49例を対象に検討した. 合併症は縫合不全が5例 (10%) にみられたが, いずれも保存的に軽快した. 緊急手術例についても待期例と比べて合併症の頻度に差はなかった. 術前ステロイド投与量と術後合併症の頻度に差はなかった. 術後の排便機能も比較的良好で, 全例社会復帰を果たしている. 一期的手術の適応についてはさらに検討が必要であるが, 本術式は患者を分割手術, 長期入院という負担から解放し, 高いquality of life (QOL) が得られる術式であると考えられた.
  • 土井 孝志, 小林 信之, 黒田 房邦, 木内 誠, 渡部 泰弘, 金子 直征, 佐藤 学
    2004 年 24 巻 4 号 p. 785-788
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    怒責後に発症したと思われるSpigelヘルニアの1例を経験したので報告する. 症例は32歳男性. 2001年3月初旬側溝に転落した乗用車を持ち上げようと怒責したところ腰痛を自覚した. その後疼痛は右下腹部に限局し同部に膨隆が出現し当科を受診した. 起立時に右下腹部に手拳大の膨隆および軽度の圧痛を認めた. 膨隆は仰臥位の状態では消失した. 腹臥位腹部CTでは右腹直筋の外側に腸管が皮下に脱出する所見を認めた. Spige1ヘルニアの診断にて4月手術を施行した. 外腹斜筋腱膜には約2cmの裂孔を認め, 外腹斜筋膜下に直径約3cmのヘルニア門が存在しそこから腹膜が膨隆していた. 膨隆した腹膜を還納しヘルニア門を縫合したうえでプロリンメッシュを用いて補強を行い手術を終えた. 本症例の発症の経過, 外腹斜筋膜・腹横筋腱膜の所見を考慮するとヘルニアは怒責を契機に生じたと考えられた.
  • 五十嵐 章, 伊藤 孝, 斉藤 孝晶, 小里 俊幸
    2004 年 24 巻 4 号 p. 789-793
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2011/08/23
    ジャーナル フリー
    症例は, 79歳の女性. 右側腹部の有痛性腫脹を主訴に来院. 腹部CT検査にて腹壁内膿瘍とそれに連続する腹腔内腫瘤を認め, 大腸癌による腹壁膿瘍と診断し初回腹壁膿瘍に対し切開排膿術を施行した. 右側腹部を切開すると約300mlの膿の排出を認めた. 10日後開腹術を施行した. 開腹所見では上行結腸の一部が後腹壁に直接侵潤していた. 右半結腸切除, 腹壁合併切除を施行した. 病理組織学的検査では, 上行結腸の高分化腺癌と診断され腹壁には腫瘍組織はみられなかった. 腹壁膿瘍で発見された大腸癌の本邦報告例は, 比較的まれである. 他臓器侵潤例の遠隔成績については比較的良好とする報告もある. 今後このような症例に対してはまずドレナージを施行しその後根治性を高める術式が必要と思われた.
  • 西島 弘二, 湊屋 剛, 伊藤 博, 黒阪 慶幸, 竹川 茂, 桐山 正人, 道場 昭太郎, 小島 靖彦
    2004 年 24 巻 4 号 p. 795-800
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    過去8年間に11例の閉鎖孔ヘルニア手術例を経験したので臨床的に検討を加えた. 症例は全例痩せた女性で, 年齢は66~91歳 (平均82歳) と高齢者が多かった. 開腹手術歴を有する症例は9例と多く, 全例が嘔吐, 腹痛を主訴とするイレウスで発症し, 閉鎖孔ヘルニアに特徴的とされるHowship-Romberg徴候は4例のみに認めた. 発症から手術までの期間は1~12日 (平均4.3日) で, 全例骨盤CT検査にて閉鎖孔ヘルニアの確定診断を得た. 全例開腹手術を行い, 嵌頓腸管は回腸10例, 空腸1例で, 嵌頓形態はRichter型9例, 全係蹄型2例であった. 腸管壊死を6例に認め, 腸管切除は8例に行った. ヘルニア門の修復は腹膜単純閉鎖を8例, 恥骨骨膜と閉鎖膜の縫合を2例, メッシュによる閉鎖を1例に行った. くも膜下出血で死亡した1例を除いた10例では, 術後経過は良好で軽快退院し, 再発は認めていない. 痩せた高齢女性のイレウス患者では, 閉鎖孔ヘルニアの可能性を念頭に置き, 骨盤CT検査による早期診断が重要であると考えられた.
  • 森田 誠市, 日野 浩二, 神原 浩, 塚田 一博
    2004 年 24 巻 4 号 p. 801-804
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は5歳の女児. 2001年12月3日, 約2mの高さの塀より墜落し, 近医を受診, 貧血から腹腔内出血を疑われ, 受傷約2時間後に当院を受診した. 来院時, 意識はやや混濁し, 腹部は右側を中心に膨隆していた. 腹部造影CT検査にて, 右腎がほぼ中央にて離断し, 傍腎腔に多量の血腫を認め, 日本外傷学会腎損傷分類のIIIb (H2) と判断した. また左腎の像が得られず, 無形成と考えられた. 貧血が進行し, 意識レベルの改善がみられないため, 血管造影検査を行った. 右腎中部付近の腎動脈に血管外露出を認め, この中枢側にマイクロコイルを留置して, 止血を行った. その後の経過は良好で, 血腫も縮小化し, 第25病日退院した. 腎の深在性損傷に対しても, vital signが比較的安定している症例に対する, 血管造影および止血を目的とした動脈塞栓術は有用と考えられた.
  • 田島 隆行, 千野 修, 島田 英雄, 西 隆之, 田仲 曜, 木勢 佳史, 劔持 孝弘, 生越 喬二, 幕内 博康
    2004 年 24 巻 4 号 p. 805-809
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は16歳, 男性. 嘔吐を主訴に近医を受診し, 血液検査の結果で急性循環不全および急性腎不全と診断され, 当院へ搬送転院となった. 胸部単純X線において頸部から前胸部に及ぶ皮下気腫を認め, 腹部単純X線では胃および十二指腸球部の顕著な拡張像を示した. 胸部CT検査では前胸部の皮下気腫と縦隔気腫を認め, また腹部CT検査にて十二指腸内および胃の拡張像と鏡面形成像を認め, 広義のdouble bubble signを示した. 上部消化管内視鏡検査にて胸部中部食道から下部食道左壁に長径3cmの裂創を認めた. また, 上部消化管X線造影検査では, 十二指腸水平脚の拡張と途絶像を示した. 以上から上腸間膜動脈症候群が誘因と考えられた縦隔内限局型食道破裂と診断した. 保存的治療にて改善を得た1例を経験したので, 文献的考察を加えて報告する.
  • 森田 康, 河野 誠之, 安積 靖友, 中本 光春
    2004 年 24 巻 4 号 p. 811-814
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    鈍的腹部外傷後の遅発性直腸狭窄は現在まで報告はなく極めてまれな疾患である. 症例は60歳, 男性. 自動車衝突事故による腹部打撲にて救急搬送となった. 左下肢阻血, 腸管虚血疑いにて緊急手術を施行, 外傷性急性左総腸骨動脈閉塞症, 胃・膵頭部損傷の診断で右一左大腿動脈バイパス術および膵頭十二指腸切除術を施行した. 術中所見で腸間膜血腫を多数認めた. 約1ヵ月後より排便困難が出現したため精査したところ, 回腸末端, 上行結腸および下部直腸に狭窄を認めたため, 右結腸切除術および直腸低位前方切除術を施行した. 病理所見で直腸狭窄の原因として血流障害による潰瘍形成, 瘢痕化が考えられた. 鈍的腹部外傷後の遅発性腸管狭窄は直腸に発症することもあり注意が必要である. また本症の診断に際しては悪性腫瘍との鑑別が重要である.
  • 佐々木 規之, 高山 宗之, 中西 正樹, 浅野 元和, 四方 裕夫, 坂本 滋, 松原 純一
    2004 年 24 巻 4 号 p. 815-818
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は50歳男性, 2トントラックを運転中, 軽自動車と接触後に電柱へ激突した. 運転席のシートとハンドルの間に挟まれた状態で救助され, 当院救急外来に搬送された. 腹部造影CTを施行したところ, 肝表面に低吸収域を認めた. 膀胱からの造影剤の漏出は認められなかった. また, GOT, GPTの有意な上昇は認められなかったものの, この時点で膀胱破裂は念頭になく, 肝挫傷を疑い入院とした. 入院後数時間して, 尿意はあるものの排尿困難をきたしたため, フォーリーカテーテルを留置した. 排尿はあったが凝血塊を伴う血尿を認めた. 翌日に腹部CTを再検したところ, freeairを認め, 消化管穿孔を疑い, 同日緊急開腹術を行った. 術中, 穿孔を思わせる消化管の損傷部位は同定できなかったが, 膀胱頂部に約7cmにも及ぶ膀胱壁の裂創が認められた. 破裂部の縫縮術を施行, 術後は経過良好で, 32日目に退院となった. 腹部の鈍的外傷では腹腔内膀胱破裂も念頭に置き, 診断を進めることが肝要である. また, 血清BUN, Crレベルの上昇は, 膀胱破裂の診断に有用であると考えられた.
  • 成田 和広, 塚田 一義, 清水 喜徳, 後藤 学, 高村 光一, 平田 滋
    2004 年 24 巻 4 号 p. 819-823
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    特発性腸間膜血腫の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する. 症例は55歳, 男性. 昼過ぎ起床時より腹部全体の痛みが出現し, 翌早朝救急外来を受診した. 来院時, 腹部全体に強い痛みがあり, 板状硬で筋性防御もみられた. CT検査にて腹腔内液体貯留と後腹膜から腸間膜に異常陰影を認め, 精査および加療目的にて入院となった. 入院後貧血が進行し, エコー下穿刺にて血性腹水を認めたため, 腹腔内出血の診断で緊急手術を施行した. 腹腔内に多量の血性腹水を認め, 十二指腸下行部から水平部, 上腸間膜動脈周囲および小腸間膜に血腫を認めた. 血腫を開放し出血源を検索するも不明であり, 出血がないことを確認し手術を終了した. 本症例では, 既往に外傷はなく血腫の原因は不明であり, 血管撮影検査や手術にても出血源が確定できなかった. 特発性腸間膜血腫はまれな疾患であるが, 原因不明の腹腔内出血を認めた場合, 本疾患も念頭に入れる必要がある.
  • 小林 真一郎, 小黒 厚, 村山 康利, 高 利守, 南里 正明, 山根 越夫
    2004 年 24 巻 4 号 p. 825-827
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は80歳, 女性. 平素より便秘傾向が認められていた. 5日ぶりの排便ののち発症した急激な腹痛のため救急受診した. 腹部CT上free airが認められ, 消化管穿孔による汎発性腹膜炎と診断された. 緊急開腹を施行したところ直腸Rsに直径4cmの楕円形の穿孔部を認めた. また穿孔部周囲の直腸壁は壊死しかけており, 口側の結腸内には硬便が充満していた. 穿孔部を含むようHartmann手術を施行した. 切除直腸の病理検査では穿孔部は好中球の浸潤が著明で虚血性の変化を呈しており, 術中所見, 病理所見から宿便性大腸穿孔と診断した. 通常, 宿便性大腸穿孔は便秘の経過中に見られることが多いが, 本例は排便を認めた点において非典型的であった.
  • 塚田 勝彦, 福島 晴夫, 宮崎 達也, 加藤 広行, 福地 稔, 中島 政信, 増田 典弘, 宗田 真, 深井 康幸, 桑野 博行
    2004 年 24 巻 4 号 p. 829-832
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性. 既往に62年前に腹膜炎を併発した虫垂炎の手術歴がある. 1週間ほど前からの右下腹部痛, 臀部痛を主訴に当院を受診した. 腹部CT検査で回盲部から右腸腰筋内までcystic lesionが広がっており, 一部に造影効果を認めた. 回盲部の炎症から波及した腸腰筋膿瘍を疑い, 抗生剤による保存的治療を開始した. 注腸造影検査, 大腸内視鏡検査で回盲部に異常は認められず開腹手術を行った. 虫垂は完全に遺残し後腹膜に癒着して腸腰筋との問に膿瘍を形成しており, 虫垂切除術およびドレナージを施行した. 腸腰筋膿瘍はまれな疾患ではあるが腹痛とともに歩行障害がみられる場合はこれを疑いエコー, CT, MRIを積極的に施行すべきである. 更に腸管との交通の疑われる腸腰筋膿瘍においては虫垂炎手術の既往があっても, 遺残虫垂が原因となっている可能性を念頭におくべきであり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 暢人, 加藤 紘之
    2004 年 24 巻 4 号 p. 833-836
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    上腸間膜動脈症候群 (superior mesenteric artery syndrome: SMAS) では, 消化性潰瘍合併の頻度が高いといわれている. 今回われわれは, 十二指腸潰瘍穿孔を合併したSMASの1例を経験した. 症例は25歳男性. 腹痛と嘔気を主訴に来院. 既往に腹腔内膿瘍の手術歴あり. 心窩部に圧痛を認めた. 上部消化管造影検査, CT検査によりSMASと診断し, 保存的治療を行った. 腹部症状は軽快し, CT検査での十二指腸拡張像も認めず経過した. また, 上部消化管内視鏡検査で活動性潰瘍は認めなかった. 入院後12日目に突然腹痛の訴えが強くなり, CT検査でSMASの再発が疑われた. さらに翌朝, 急激な腹痛の増強を認めた. CT検査, 上部消化管内視鏡検査の結果, 十二指腸潰瘍穿孔と診断し, 大網充填術を施行した. SMASの保存的治療中に腹痛が増強した際には, 消化性潰瘍の合併とその急性増悪を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 安 柄九, 大垣 雅晴, 泉 浩, 竹中 温, 柿原 直樹, 飯塚 亮二, 北村 誠
    2004 年 24 巻 4 号 p. 837-840
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, S状結腸捻転に対する緊急手術の術後に, 悪性症候群を発症し, 急激な経過をたどり死亡した1例を経験したので報告する. 症例は54歳男性. 18歳より統合失調症にて入院加療中, 突然の嘔吐, 腹痛を主訴に当院へ救急搬送された. 腹部単純X線検査・腹部CT検査では拡張したS状結腸を認めた. 緊急開腹手術を施行したところ, S状結腸は著明に拡張し, 時計回りに180度捻転していた. 術後5日目白血球数は正常化していたにもかかわらず40℃台の稽留熱, さらに錐体外路症状を認めたため, 悪性症候群と診断した. 大量輸液療法, および全身冷却療法にて対応したが, 心肺停止となり, 術後5日目に死亡した. 剖検では全身臓器および骨格筋には病理組織学的所見は認められなかった. 抗精神病薬, 抗うつ薬内服中の患者において解熱薬抵抗性の高熱を認めた場合, 悪性症候群を念頭におく必要があると考えられた.
  • 佐藤 宏彦, 長堀 順二, 木下 貴史
    2004 年 24 巻 4 号 p. 841-844
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は17歳の男性. 脳性麻痺で当院重症心身障害児病棟に入所中であった. 3月14日頃から排便がなく, 23日に腹部膨満をきたし当科を紹介, 入院となった. 腹部単純X線写真で中下腹部を中心に著明に拡張した腸管ガス像を認めたため, S状結腸軸捻転症と診断し大腸内視鏡を施行した. しかし症状の改善が認められなかったことから腸閉塞症の診断で緊急開腹術を施行した. 手術所見は盲腸から上行結腸中央部が後腹膜に固定されておらず, 盲腸が反時計回りに360°. 捻転していた. 捻転腸管の出血壊死を認めたため回盲部切除術を施行した. 盲腸軸捻転症は比較的まれな疾患で, 術前診断は困難である. 腸閉塞症を診た場合は本症例も念頭に置き, 可及的早期の開腹術が救命に必要であると思われた.
  • 島 一郎, 濱津 隆之, 井上 博道, 富崎 真一, 磯 恭典, 白水 和雄
    2004 年 24 巻 4 号 p. 845-848
    発行日: 2004/05/31
    公開日: 2010/09/24
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 慢性腎不全の女性で透析中に腹痛, 血圧低下をきたし入院となった. 腹部膨満と下腹部疼痛を訴え, 腹部CTでは腸管全体の拡張と門脈内に樹枝状のガス像を認めたが, 上・下腸間膜動脈根部は開存していた. これより非閉塞性腸管虚血症 (以下, NOMI) を疑い緊急手術を施行した. 開腹時血性腹水と暗赤色の小腸および門脈内に気泡を認め, 色調不良な約4mの小腸を切除し手術を終了した. 切除標本では腸管の全層性壊死を認めたが, 血栓形成は見られなかった. 透析中の血圧低下はNOMIを発症させることがあり, 透析患者の急な腹痛には注意深い観察と鑑別診断として本疾患を疑うことが重要である.
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